調剤報酬改定を薬局の収益につなげる組織マネジメントのノウハウ
2026年度調剤報酬改定は、在宅や服薬フォローアップといった対人業務の実績を重視する評価体系へと大きく変わりました。
管理者が「この加算を取得しよう」「在宅の件数を増やそう」と目標を掲げるだけでは、現場の行動が変わるとは限りません。最初は取り組めても、忙しさなどを理由に次第に形だけになってしまうケースもあります。
重要なのは、目標を現場の具体的な行動へ落とし込み、結果を振り返りながら次の改善につなげていく組織マネジメントです。
では、スタッフが自ら考えて動き、取り組みを継続できる組織をつくるには、管理職やマネージャーは何をすればよいのでしょうか。
この記事では、きらり薬局のWebセミナーで紹介された内容をもとに、調剤報酬改定への対応を組織づくりにつなげる考え方を解説します。目標の設定から進捗の確認、現場への浸透まで、きらり薬局が実践している具体的なマネジメントの工夫を見ていきましょう。
| この記事は、2026年5月12日に開催したWEBセミナー「「計画倒れ」で終わらせない!2026報酬改定対応・必達の実行マネジメント ~きらり薬局が実践している、現場が自然と数字を追いかける仕組み作り~」の内容をもとに作成しています。きらりプライムサービスのセミナー情報は、こちらよりご確認ください。 |
1. 2026年度調剤報酬改定:対人業務の細分化と実績重視への転換
2. 薬局管理者が実践したい「現場の心を動かすマインドセット」
3. 施設基準のある加算は、優先順位を明確化する
4. 【きらり薬局実例】在宅薬学総合体制加算2の「CAPD」サイクル
4-1. Check:店舗別管理表による現状把握
4-2. Analyze:原因の特定と深掘り
4-3. Plan:原因別のアクションプランと個人単位の数値目標
4-4. Do:進捗を確認し、行動を調整
5. CAPDサイクルを効果的に機能させるポイント
5-1. 「誰が・何をするのか」を明確にする
5-2. 進捗が悪いときの「早期対応フロー」を決める
6. まとめ
1. 2026年度調剤報酬改定:対人業務の細分化と実績重視への転換
2026年度調剤報酬改定では、従来の包括的な評価から、実際に行った業務の実績を個別に評価する仕組みへと変わりました。施設基準においても、具体的な実績がこれまで以上に重視されています。
ここでは、調剤報酬改定の3つのポイントを見ていきましょう。
対人業務の加算が細分化・高点数化
かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料の廃止に伴い、「かかりつけ薬剤師フォローアップ加算」と「かかりつけ薬剤師訪問加算」が新設されました。同意書という形式的な枠組みではなく、かかりつけ薬剤師の業務が、支援内容ごとに評価される仕組みへと変わっています。
実績が求められる施設基準が増加
在宅薬学総合体制加算2では、個人在宅への対応や緊急訪問の実績が要件として設定されました。また、麻薬調剤や無菌調剤などについても、体制の有無ではなく、実際の対応実績が求められます。届出の提出をすれば算定できる加算ではなく、日々の業務を通じて実績を積み重ね、その状態を継続して維持することが重要になっている点が特徴です。
短期処方の処方箋単価の下落リスクも
門前薬局が特に注意したいのが、調剤管理料の見直しです。従来の4段階評価から2段階へと集約され、「27日分以下」の処方箋に対する評価は10点へと引き下げられました。短期処方の比率が高い薬局では、処方箋枚数を維持しても、1枚あたりの収益が低下し、薬局全体の収益に影響する可能性があります。こうした環境では、在宅医療や継続的な服薬フォロー、多職種連携など、対人業務を実績として積み上げていくことが重要です。
2. 薬局管理者が実践したい「現場の心を動かすマインドセット」
2026年度調剤報酬改定では、実績が重視されているものの、在宅患者さんへの緊急対応や多職種連携など、薬剤師が果たすべき役割そのものが変わったわけではありません。
だからこそ、管理者が現場に加算取得を促す際には、「数字を達成するために行動する」という伝え方ではなく、「患者さんのために必要な行動を積み重ねた結果として、加算という評価がついてくる」という考え方を共有することが大切です。
同じ目標を掲げていても、管理者がどのような言葉で伝えるかによって、スタッフの受け止め方や、その後の行動は大きく変わります。
| ✖ NG:現場が疲弊する伝え方」 | 〇 OK:現場が自発的に動く伝え方 |
| ・加算が取れるから、緊急対応の件数を増やしてほしい。 ・経営を維持するために、今月はもっと件数を上げてほしい。 ・算定割合が基準に足りていないから、何とか数字を合わせてほしい。 |
・夜間や休日でも、地域から一番に頼られる薬剤師をめざしましょう。 ・患者さんが本当に困ったときに、すぐに動ける薬局をつくりたい。 ・私たちの誇りある行動が、最終的に国からの評価(加算)にもつながります。 |
加算そのものを目標にしてしまうと、現場は「数字を合わせるための業務を求められている」と感じやすくなります。一時的に件数が増えたとしても、スタッフの負担感や反発につながれば、継続的な取り組みにはなりません。
一方で、「患者さんのために何ができるか」を起点に考えれば、スタッフ自身が仕事の意味を理解しやすくなります。自分の行動と患者さんへの提供価値を紐づけることができれば、納得感を持って業務に取り組めるでしょう。
スタッフ一人ひとりの行動を積み重ねた先に、加算の算定や薬局の収益向上があります。
大切なのは、数字を追わせるのではなく、「患者さんのために行動した結果として、数字がついてくる」組織をつくることです。調剤報酬改定への対応を単なる収益対策で終わらせず、薬局として提供する医療の質を高める機会として捉えることが、継続的な成果につながります。
3. 施設基準のある加算は、優先順位を明確化する
施設基準のある加算に対応するとき、すべての項目を同時に追いかけようとすると、現場の負担が大きくなり、かえって取り組みが進まなくなることがあります。
そこで重要になるのが、「どの加算を、どの順番で取得するのか」という優先順位を明確にすることです。
特に、薬局経営へのインパクトが大きい加算や、ほかの加算を取得するための土台となる要件から優先的に取り組むことで、限られた人員や時間を効果的に配分できます。
たとえば、きらり薬局では、施設基準の達成に向けて、以下のように優先順位を設定しています。
①最優先「地域支援・医薬品供給対応体制加算1」
地域支援・医薬品供給対応体制加算の取得に向けた土台として、まず「後発医薬品調剤割合85%以上」の達成を最優先に置きます。全店舗で調剤割合を継続的にモニタリングし、基準を安定して維持できる状態をめざします。
②第二位「地域支援・医薬品供給対応体制加算2〜5」
現現在取得できる区分で止まるのではなく、将来的には上位区分である加算3・5の取得も見据えて計画を立てます。現状と必要な要件との差を把握し、店舗ごとに不足している要件を確実に埋めていきます。
③第三位「在宅薬学総合体制加算2」
難易度の高い加算2の取得に向けて、在宅患者さんへの対応や緊急訪問など、必要となる実績を計画的に積み上げます。
まずは店舗ごとに管理表を作成し、現在どの要件を満たしていて、どこが不足しているのかを可視化します。そのうえで、不足している項目について原因を分析し、店舗ごとに具体的な対策を立てましょう。
地域支援・医薬品供給対応体制加算については、ぜひ上位区分である加算3・5の取得を目標としてください。必要な要件と現状との差を把握して、一つひとつ行動に落とし込んでいけば、達成への道筋は見えてきます。
要件達成に向けた具体的な方法が、次に紹介するCAPDサイクルです。現状を把握し、原因を分析し、具体的な計画を立て、実行する。このサイクルを継続的に回すことで、施設基準の取得を目標だけで終わらせず、現場の行動へとつなげていきます。
4. 【きらり薬局実例】在宅薬学総合体制加算2の「CAPD」サイクル
施設基準の達成においては、いきなり行動するのではなく、まず「現状を正確に把握する」ことから始めましょう。
きらり薬局では、一般的に用いられるPDCAサイクルを、「C(Check:現状把握)」から始まるCAPDサイクルとして運用しています。
| タイミング | ステップ | 主な取り組み |
| 月初5日まで | ・Check(現状把握) | ・前月実績の集計 ・管理表による〇✖判定 ・不足項目の洗い出し |
| 翌週まで | ・Analyze(原因分析) ・Plan(対策・目標設定) |
・未達原因の深掘り ・店舗ごとの課題整理 ・必要件数の逆算 ・個人レベルの行動目標の設定 |
| 第2週末まで | ・Do(現場への落とし込み) | ・算定機会を逃さない体制の稼働 ・進捗共有と継続フォロー |
ここからは、きらり薬局が実践する、在宅薬学総合体制加算2のCAPDサイクルを紹介します。
なお、地域支援・医薬品供給対応体制加算におけるPDCAサイクルについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。
▶2024年度の診療報酬改定にどう対応するか?きらり薬局の対策を紹介
4-1. Check:店舗別管理表による現状把握
最初に行うのが、店舗ごとの現状把握です。
Excelなどで店舗別の管理表を作成し、全店舗の実績と施設基準の達成状況を一覧で確認できるようにします。
「個人在宅割合」「緊急訪問割合」など、在宅薬学総合体制加算2の取得に関わる項目を集計し、項目ごとに「〇・✕」を付けます。これにより、「どの店舗が、どの要件を、どの程度達成できているのか」を一目で把握することが可能です。
さらに、麻薬調剤、無菌調剤、乳幼児の在宅対応など、関連する要件についてもあわせて確認しましょう。
「あと何件必要なのか」「どの項目が未達なのか」「現在のペースで達成可能なのか」まで数字で把握すると、次のAnalyze(原因分析)で取り組むべき課題が明確になります。
4-2. Analyze:原因の特定と深掘り
管理表で「✕」が付いた箇所については、「なぜ達成できていないのか」を分析します。
同じ項目であっても、未達の原因は店舗によって異なります。在宅患者そのものが不足しているケースもあれば、記録や入力が漏れているケース、スタッフの意識がボトルネックになっているケースもあるでしょう。
管理者には、あらゆる可能性を考慮したうえで、未達の原因を特定し、原因に応じて対策を変えることが求められます。
以下では、代表的なケースと、解決に向けたアプローチを紹介します。薬局の原因分析をする際の参考にしてください。
CASE① 在宅件数そのものが不足している
| 原因 | 個人在宅の新規患者が獲得できていない 個人宅への訪問頻度が低い 医療依存度の高い患者の対応を避けており、緊急依頼につながっていない |
| アプローチ | 地域のクリニックや居宅介護支援事業所への周知活動を行う 医師、ケアマネジャー、訪問看護師などとの多職種連携を強化する 緊急時にも対応できる24時間体制を地域に向けて改めて周知する |
CASE② 実績はあるものの、記録・入力が漏れている
| 原因 | 緊急訪問を実施したものの、医師の指示書や報告書に関する事務連携が漏れている レセコンへの入力を忘れている 返戻やクレームを懸念し、算定を控えてしまっている |
| アプローチ | 緊急訪問に関する算定ルールを改めて周知する 薬剤師と事務員の間で、報告から入力までのフローを整備する 算定に対する過度な遠慮や不安を解消し、適切に算定できる環境をつくる |
CASE③ 付随要件(麻薬・無菌調剤など)が不足している
| 原因 | 麻薬の対応実績が年間10回未満である 無菌調剤の設備がない、または実績が不足している 小児在宅のニーズを把握できていない |
| アプローチ | 近隣の基幹病院や訪問看護ステーションとの連携を強化する 無菌調剤について、対応可能な他薬局や共同利用施設の活用を検討する ケアマネジャーなどへのヒアリングを通じて、小児在宅のニーズを把握する |
4-3. Plan:原因別のアクションプランと個人単位の数値目標
原因を特定したら、まずは店舗全体のアクションプランを決め、それをスタッフ一人ひとりの行動目標へと落とし込んでいきます。
たとえば、店舗で「来月までに、緊急訪問割合10%を達成する」という目標を立てたとします。
しかし、この目標をそのまま薬剤師に伝えるだけでは、「自分は何をすればよいのか」までイメージするのは難しいでしょう。
そこで、「〇〇さんの担当患者さんの中から、緊急対応につながりそうなケースが2件あれば、店舗目標を達成できます」というように、個人レベルの行動にまで分解して伝えます。
「自分が何を、どれだけ行えばよいのか」を明確にすることで、スタッフ自身が日々の業務と目標達成とのつながりを意識しやすくなります。店舗全体の目標を一人ひとりの具体的な行動に落とし込むことが、実行力を高めるポイントです。
4-4. Do:進捗を確認し、行動を調整
Planで決めたアクションを実行したら、管理者が定期的に進捗を確認します。
単に目標を達成できたかを見るのではなく、
・予定していた行動を実施できているか
・目標に対してどこまで進んでいるか
・実行するうえで、どのような障壁があるか
といった点まで確認することが重要です。
進捗が思うように進んでいない場合は、その原因を確認し、担当者の変更や行動方法の見直しなど、必要に応じて軌道修正を行います。
また、進捗をスタッフ間で共有することで、店舗全体の目標に対する現在地を把握しやすくなります。互いの状況を共有しながら課題を早期に発見し、必要なサポートにつなげることが、目標達成のコツです。
5. CAPDサイクルを効果的に機能させるポイント
CAPDサイクルを運用して成果を出すためには、「誰が管理するのか」を明確にし、問題が発生した際に「いつ・どう対応するのか」まで仕組み化することが重要です。
5-1. 「誰が・何をするのか」を明確にする
管理者や担当者が曖昧なままでは、進捗の停滞や「誰に報告すればよいかわからない」といった現場の混乱を招きます。
そうした事態を防ぐため、「誰が・何を・いつまでに・誰へ報告するのか」という役割と報告フローをあらかじめ決めておくことが重要です。
たとえば、以下のような役割分担が考えられます。
| エリア長 | 月次の管理表を作成・全店舗の実績を集計 〇✕判定の基準を設定し、各店舗へ結果をフィードバック |
| 薬局長 | 自店舗の実績を入力し、緊急訪問件数などを現場へ共有 日々の進捗を確認 |
| 担当薬剤師 | 担当患者さんの算定状況を確認し、対応や記録の抜け漏れをチェック |
役割をあらかじめ明確にしておけば、「誰かがやってくれるだろう」という他人任せを防ぎ、確認・報告の属人化も避けられます。
こうした運用を毎月同じ流れで定着させておくことで、担当者が変わってもCAPDサイクルが自然と回り続ける組織づくりにつながります。
5-2. 進捗が悪いときの「早期対応フロー」を決める
CAPDサイクルを運用する際に、必ず決めておきたいのが、進捗が悪いときの早期対応フローです。
月末になってから「目標に届かない」と気づいても、そこからできる対策には限りがあります。
問題が起きてから対応するのではなく、未達の兆候を早い段階で捉えて、早急に軌道修正が行える仕組みをつくりましょう。
たとえば、週次や隔週で進捗を確認し、一定の基準を下回った店舗については、エリア長や薬局長が原因を確認するルールを設けます。
①進捗確認
エリア長や薬局長が管理表を確認し、全店舗の〇✖判定を集計
②状況確認
✖判定となった店舗へ個別に連絡し、進捗が遅れている理由や現場の課題を確認する。
③Planの修正
原因を整理し、実行可能な改善策を検討する。
必要に応じて、担当者や期限、行動内容を見直す。
④改善策の実行
修正したPlanを店舗で実行し、短期間で改善状況を確認する
⑤月次ミーティング
結果を振り返り、達成できた点・できなかった点を整理して、次月の計画につなげる
早期対応フローは、目標達成を妨げている要因をいち早く見つけ、現場が動きやすい状態に戻すための仕組みです。✕判定になった店舗には、状況や背景を詳しくヒアリングし、原因を特定したうえで、改善策へつなげましょう。
早期対応フローは、スピードが勝負です。問題の発見から1週間以内を目安に改善策を実行できる体制を整え、月末まで問題を持ち越さないことをめざしましょう。
6. まとめ
2026年度調剤報酬改定では、対人業務や在宅医療への取り組みが、実績に基づいて評価される仕組みへと変わりました。
薬局管理者には、スタッフが患者さんへの対応に集中しながら、着実に実績を積み上げられる環境を整えることが求められます。記事内で紹介したCAPDサイクルを活用し、現状把握から原因分析、具体的な行動、進捗確認までを継続的に回していきましょう。
薬局の組織マネジメントで大切なのは、「加算を取ること」を目的にしないことです。
患者さんに必要な支援を積み重ねた結果が、加算や収益につながるという考え方を共有することが、スタッフの主体性を高め、地域から選ばれる薬局づくりにもつながります。
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