調剤報酬改定を薬局の収益につなげる組織マネジメントのノウハウ
2026年度調剤報酬改定は、これまでの「届出すれば算定できる」仕組みから、具体的な「実績の積み上げ」を求める仕組みへとシフトしました。薬局経営を維持するためには、戦略的な加算獲得が不可欠です。
今回は、5月12日に開催されたセミナー内容をもとに、在宅対応や多職種連携を収益へ直結させる、きらり薬局の具体的な組織マネジメントのノウハウを紹介します。
| この記事は、2026年1月20日に開催したWEBセミナー「計画倒れ」で終わらせない!2026報酬改定対応・必達の実行マネジメント ~きらり薬局が実践している、現場が自然と数字を追いかける仕組み作り~」の内容をもとに作成しています。きらりプライムサービスのセミナー情報は、こちらよりご確認ください。 |
1. 2026年度調剤報酬改定:対人業務の細分化と実績重視への転換
2. 薬局管理者が行うべき「現場の心を動かすマインドセット」
3. きらり薬局が実践する「施設基準獲得の優先順位」と個別対策
4. 【きらり薬局実例】在宅薬学総合体制加算2の「CAPD」サイクル
4-1. Check:店舗別管理表による現状把握
4-2. Analyze:原因の特定と深掘り
4-3. Plan:原因別の具体的なアクションプラン
4-4. Do:個人単位で数値目標を設定
5. まとめ
1. 2026年度調剤報酬改定:対人業務の細分化と実績重視への転換
2026年度調剤報酬改定では、対人業務に対する評価が大きく見直されました。従来のような包括的な評価から、実施した業務内容ごとに評価する仕組みへと移行し、施設基準においても具体的な実績がこれまで以上に重視されています。
■かかりつけ薬剤師は「同意の有無」から「支援実績」へ
かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料の廃止に伴い、新たに「かかりつけ薬剤師フォローアップ加算」や「かかりつけ薬剤師訪問加算」が新設されました。
従来の患者さんから同意を得て登録すること自体を評価する仕組みから、「何をどこまで実施したのか」という支援実績を評価する仕組みへと転換されています。継続的なフォローアップ、在宅支援、多職種連携など、かかりつけ薬剤師による能動的な関与が求められています。
■在宅薬学総合体制加算2は「届出型」から「実績積み上げ型」へ
在宅薬学総合体制加算2では、在宅対応体制を整備しているだけでは算定が難しくなりました。個人在宅患者の割合や緊急訪問の実績が厳格に要件化され、さらに麻薬調剤や無菌調剤、ターミナルケア対応などの実績も明文化されています。
■調剤管理料の見直しによる、短期処方の処方箋単価の下落リスク
多くの門前薬局の経営を直撃しているのが、調剤管理料の見直しです。従来の4段階評価から2段階へと集約され、「27日分以下」の処方箋に対する評価は10点へと大幅に引き下げられました。短期処方の比率が高い薬局では、処方箋枚数が維持されていても収益が減少する可能性があります。
従来の「処方箋を受け取るだけ」の経営では、処方箋単価は下がる一方です。今後、薬局が収益を維持・拡大するには、在宅医療、継続フォロー、多職種連携、地域活動といった対人業務をどれだけ実績として積み上げられるかが重要なポイントとなります。
2. 薬局管理者が行うべき「現場の心を動かすマインドセット」
実績重視により、各加算の算定ハードルは高くなりましたが、在宅の緊急対応や多職種連携の実践といった「薬剤師としてやるべき仕事の本質」に変わりはありません。
加算取得をめざして現場へ働きかける際にも、「数字を達成するために動く」という発想ではなく、「患者さんのために必要な行動を積み重ねた結果として評価がついてくる」という考え方を共有することが重要です。
管理者が発する言葉ひとつで、現場の受け止め方や行動は大きく変わります。
| ✖現場が疲弊する「NGな伝え方」 | 〇現場が自発的に動く「OKな伝え方」 |
| ・加算が取れるから、緊急対応の件数を増やしてほしい。 ・経営を維持するために、今月はもっと件数を上げてほしい。 ・算定割合が基準に足りていないから、何とか数字を合わせてほしい。 |
・夜間や休日でも、地域から一番に頼られる薬剤師をめざしましょう。 ・患者さんが本当に困ったときに、すぐに動ける薬局を作りたい。 ・私たちの誇りある行動が、最終的に国からの評価(加算)にもつながります。 |
加算そのものを目的にしてしまうと、現場は「数字合わせを求められている」と感じ、一時的に件数が増えても、疲弊や反発を招き、長続きしない組織になってしまいます。
一方で、「患者さんのために何ができるか」を起点にした行動は、現場の納得感を生み、自発的な取り組みへとつながります。その積み重ねこそが、加算取得や収益向上という結果にも結び付いていくのです。
管理者自身が、現場の意識を「数字」ではなく「患者さん」へ向けるマネジメントを実践できるかどうかが、これからの薬局経営を左右する大きなポイントになるでしょう。
3. きらり薬局が実践する「施設基準獲得の優先順位」と個別対策
施設基準のある加算は、要件を一つひとつクリアしていく必要があります。特に複数の加算取得をめざす場合、「何から取り組むべきか」が分からず、現場が混乱してしまうケースも少なくありません。
そこで、きらり薬局では、確実な加算取得に向けて施設基準に優先順位を設け、段階的にリソースを集中させています。
| 最優先 | 地域支援・医薬品供給対応体制加算1 (後発医薬品調割合 85%以上) |
地域支援・医薬品供給対応体制加算の取得において、後発医薬品調剤割合85%以上の達成は、すべての土台となります。後発医薬品割合の管理は全店舗で徹底し、最優先事項として継続的にモニタリングを行っています。 |
| 第二位 | 地域支援・医薬品供給対応体制加算 2〜5の要件整備 |
加算2,4で妥協せず、最終目標として加算3,5の取得を見据えて計画を立てます。 |
| 第三位 | 在宅薬学総合体制加算2の要件クリア | 難易度の高い加算2の取得に向けて、実績の積み上げを戦略的に進めます。 |
きらり薬局では、「店舗別進捗管理表」を用いて、各薬局の不足している要件や現状値をリアルタイムで可視化しています。店舗ごとに課題は異なるため、一律の指示ではなく、それぞれの弱点に応じた個別対策を実施することが重要です。
4. 【きらり薬局実例】在宅薬学総合体制加算2の「CAPD」サイクル
施設基準の達成においては、「まず行動する」のではなく、「まず現状を正確に把握する」ことが重要です。
そこできらり薬局では、一般的に用いられるPDCAサイクルを、C(現状把握)から始まるCAPDサイクルとして導入しています。
| 月初5日まで | Check(現状把握) | ・前月実績の集計 ・管理表による〇✖判定 ・不足項目の洗い出し |
| 翌週まで | Analyze(原因分析) Plan(対策・目標設定) |
・未達原因の深掘り ・店舗ごとの課題整理 ・必要件数の逆算 ・個人レベルの行動目標の設定 |
| 第2週末まで | ・Do(現場への落とし込み) | ・算定機会を逃さない体制の稼働 ・進捗共有と継続フォロー |
ここからは、きらり薬局で実践している、在宅薬学総合体制加算2のCAPDサイクルについて紹介します。地域支援・医薬品供給対応体制加算のPDCAサイクルについては、以下の記事もご覧ください。
▶2024年度の診療報酬改定にどう対応するか?きらり薬局の対策を紹介
4-1. Check:店舗別管理表による現状把握
Excelなどで管理表を作成し、全店舗の全店舗の実績を可視化します。
管理対象となる「個人在宅割合」「緊急訪問割合」などを正確に追いかけ、一目で達成状況がわかるよう、項目ごとに「〇✖判定」をつけます。
また、麻薬・無菌調剤・乳幼児在宅などの付随する4要件のクリア状況も、あわせてチェックします。
4-2. Analyze:原因の特定と深掘り
管理表で✖のついた店舗に対し、「なぜ達成できていないのか」を分析します。施設基準未達の原因は店舗によって異なるため、原因を正確に特定することがポイントです。
ここでは、よくある原因と対策について、一例を紹介します。
ケース① 在宅件数そのものが不足している
| 想定される原因 | 解決に向けたアプローチ |
| ・個人在宅の新規患者が獲得できていない
・個人宅への訪問頻度が形骸化して低い ・医療依存度の高い患者の対応を避けて いる(緊急依頼が来ない) |
・地域のクリニックや居宅介護支援事業所への新規開拓
・多職種連携の強化 ・緊急対応が可能な24時間体制の再アピール |
ケース② 実績はあるが「記録・入力が漏れている」
| 想定される原因 | 解決に向けたアプローチ |
| ・緊急訪問を行ったが、医師の指示書や報告書の事務連携が漏れている
・レセコンへの入力忘れ(事務側の認識 不足) ・返戻やクレームを恐れて、算定を遠慮している |
・緊急訪問の算定ルールの再周知
・薬剤師・事務間の報告フロー整備 ・遠慮に対するマインドセットの払拭 |
ケース③ 付随要件(麻薬・無菌等)が不足している
| 想定される原因 | 解決に向けたアプローチ |
| ・麻薬実績が年間10回未満(がん末期等の患者さんを抱えていない)
・無菌調剤の設備がない、または実績ゼロ ・小児在宅へのアプローチ方法がわからない |
・近隣の基幹病院や訪問看護ステーションとの連携強化
・無菌調剤に関しては、提携可能な他局や共同利用施設の協力を検討 ・ケアマネジャーに小児在宅ニーズをヒアリング |
4-3. Plan:原因別の具体的なアクションプラン
分析を終えたら、店舗ごとに、原因に合わせたアクションプランを組み立てます。
「〇〇クリニックに、今週中にアプローチして、面会約束を取り付ける」
「担当ケアマネジャーへの情報提供を月3件実施する」
など、誰が・いつまでに・何を実施するのかを明確にします。
また、月末になってから「今月は未達だった」と振り返るのではなく、月中の段階から達成率を確認し、必要に応じて軌道修正を行うことも重要です。
進捗管理表をバックヤードの見えやすい場所に掲示するなど、現場スタッフ全員で数値を共有することで、店舗全体で取り組む組織文化の形成につながります。
4-4. Do:個人単位で数値目標を設定
店舗目標を、個人レベルの行動目標へ落とし込みます。
現場は、常に目の前の患者さんへの対応で精一杯のため、「緊急割合10%をめざして」という曖昧な伝え方では、行動につながりません。
そこで、「あなたの担当患者さんで、あと2件の緊急対応が適切に実施できれば、目標を達成できるよ」というように、個人が行動をイメージできる状態まで分解して伝えてみましょう。
自分が何をすればよいのかが明確になれば、一人ひとりの主体的な行動を促しやすくなります。また、目標達成への道筋が見えることで、数値管理が単なるプレッシャーではなく、自身の成長や患者さんへの貢献を実感できる取り組みへと変わっていくでしょう。
5. まとめ
2026年度調剤報酬改定では、対人業務や在宅医療への取り組みが、これまで以上に実績ベースで評価されるようになりました。薬局管理者に求められる役割は、現場のスタッフが目の前の患者さんへの対応に集中しながら、結果として算定漏れなく実績を積み上げられる環境と仕組みを整えることです。
エリア長、薬局長、担当薬剤師の役割を明確にし、「誰が・何を・いつまでに報告するのか」「誰が承認し、次のアクションを決定するのか」をルール化することも重要です。
管理者が適切なマネジメントを行うことで、加算取得だけでなく、地域から選ばれる薬局づくりにもつながっていくでしょう。
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