地域支援・医薬品供給対応体制加算の算定要件と重要な施策
2026年度調剤報酬改定では、従来の「地域支援体制加算」と「後発医薬品調剤体制加算」を統合・再編する形で、「地域支援・医薬品供給対応体制加算」が新設されました。対人業務と医薬品供給体制が一体で評価される仕組みへ変わり、地域医療を支える実践的な役割が重視されています。
本記事では、地域支援・医薬品供給対応体制加算の算定要件を整理したうえで、対人業務の実績づくりのポイントについて解説します。
1. 【2026年改定】「地域支援・医薬品供給対応体制加算」新設の背景
1-1. 点数は4段階から「5段階」へ
1-2. 加算1の算定要件
1-3. 加算2~5の算定要件
2. 【地域支援・医薬品供給対応体制加算2~5】施設基準の変更点
2-1. 調剤室の面積が16㎡以上(新規・改築等)
2-2. 緊急避妊薬の調剤「または販売」
2-3. セルフメディケーション関連機器の設置
2-4. 薬事未承認の研究用試薬・検査サービスを提供していない
3. 【地域支援・医薬品供給対応体制加算2~5】実績要件
4. 加算算定に向けた実践ポイント
4-1. 対人業務の機会を増やす
4-2. 実績を見える化して管理する
4-3. 薬局全体で継続的に取り組む
5. まとめ
1. 【2026年改定】「地域支援・医薬品供給対応体制加算」新設の背景
近年、後発医薬品メーカーの行政処分や製造停止の影響により、多くの医療機関や薬局で医薬品の確保が困難となり、患者さんへの安定供給が大きな課題となりました。
こうした状況を受け、国は後発医薬品を採用していることだけでなく、「供給不安時でも地域医療を止めない薬局」を評価する方向へ転換しています。
2026年度調剤報酬改定では、後発医薬品調剤体制加算と地域支援体制加算を統合し、「地域支援・医薬品供給対応体制加算」が新設されました。
地域支援・医薬品供給対応体制加算は、
・医薬品の安定供給に貢献する機能
・地域医療に貢献する機能
・質の高い対人業務を提供する機能
という3つの役割を評価する加算です。
後発品の使用割合に加え、供給リスクを踏まえた在庫管理、在宅対応、地域連携といった、「供給リスクを理解しながら地域医療を支える実践力」を持つ薬局が評価対象となっています。
1-1. 点数は4段階から「5段階」へ
「地域支援・医薬品供給対応体制加算」は、旧評価の4段階評価から、5段階評価へと再編されました。まずは点数設計と、従来の加算との関係性を整理します。
| 旧地域支援体制加算 (旧後発医薬品使用体制加算) |
地域支援・医薬品供給対応体制加算 | 対象薬局 |
| 加算1:27点 | 全区分 | |
| 加算1:32点 | 加算2:59点 | 調剤基本料1 |
| 加算2:40点 | 加算3:67点 | 調剤基本料1 |
| 加算3:10点 | 加算4:37点 | 調剤基本料1以外 |
| 加算4:32点 | 加算5:59点 | 調剤基本料1以外 |
加算2〜5の点数は、一律で加算1(27点)を上乗せした設計です。
旧後発医薬品調剤体制加算を、「地域支援・医薬品供給対応体制加算1」が引き継いでいます。そして、「加算1」の上に、地域医療の実績を評価する「地域支援・医薬品供給対応体制加算2〜5」が積み上がる、二階建ての構造となりました。
つまり、後発医薬品使用体制を満たしていなければ、地域支援・医薬品供給対応体制加算を算定することはできません。
従来であれば、「後発品割合は低いが、在宅実績が豊富なので地域支援体制加算を取得する」という選択が可能でしたが、今後は後発品の使用促進と供給体制をクリアしたうえで、対人業務や地域医療への貢献実績を積み上げることが求められます。
さらに2026年度改定では、調剤基本料1の維持要件が厳格化され、基本料2の対象範囲が拡大しました。これまで基本料1を算定できていた薬局も、基本料2へ降格する可能性があります。自薬局がどの基本料に該当し、どの加算をめざせるのかを確認しておきましょう。
1-2. 加算1の算定要件
地域支援・医薬品供給対応体制加算1を算定するには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
①地域への医薬品の安定供給を確保するために必要な体制を整備していること
医薬品の供給不足が発生した場合でも、患者さんへ必要な薬を届けられるよう、適切な在庫管理や供給対応の体制を整えていることが求められます。
② 後発医薬品の使用割合が85%以上であること
直近3か月間に調剤した後発医薬品について、後発医薬品のある先発医薬品と後発医薬品を合わせた数量のうち、後発医薬品の使用割合が85%以上である必要があります。
加算1で求められる「医薬品の安定供給体制」については、供給不足などの不測の事態にも対応できるよう、以下のような取り組みが必要です。
・医薬品の供給状況を踏まえた計画的な発注や在庫管理を行うこと
・他の保険薬局(同一グループを除く)へ医薬品を融通した実績があること
・医薬品の入手が困難な場合に、在庫を持つ薬局の確認や処方変更について医師へ照会するなど、患者さんへの影響を最小限にする対応を行うこと
・重要供給確保医薬品のうち、内用薬・外用薬について一定期間分の備蓄に努めること
・医薬品の価格交渉では、原則として単品単価交渉を実施すること
・卸売販売業者に対して、過度な頻回配送や緊急配送を依頼しないこと
・温度管理が必要な医薬品や在庫調整を目的とした返品を避けること
・地域の医療機関や薬局、関係団体と医薬品情報を共有し、供給対応について連携体制を整えておくこと
参考:厚生労働省|特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて
なお、地域支援・医薬品供給対応体制加算1については、加算2〜5の施設基準や実績要件は求められず、また調剤基本料の区分に関わらず全ての薬局が算定可能です。
1-3. 加算2~5の算定要件
地域支援・医薬品供給対応体制加算2〜5を算定するには、まず基本となる加算1の施設基準を満たしていることが前提となります。
そのうえで、各区分に応じた調剤基本料の算定状況や、地域医療への貢献体制・実績などが評価対象となります。
加算2〜5に共通する主な要件は、以下のとおりです。
①地域支援・医薬品供給対応体制加算1の基準を満たしていること
②対象となる調剤基本料を算定していること
算定できる区分は、薬局が届け出ている調剤基本料によって異なります。
・地域支援・医薬品供給対応体制加算2・3 → 調剤基本料1を算定している薬局が対象
・地域支援・医薬品供給対応体制加算4・5 → 調剤基本料1以外、かつ特別調剤基本料B以外を算定している薬局が対象
③加算2~5の施設基準を満たしていること
④対象となる加算の実績要件を満たしていること
参考:厚生労働省|特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて
ここからは、地域支援・医薬品供給対応体制加算2〜5の施設基準と実績要件について、詳しく見ていきましょう。
2. 【地域支援・医薬品供給対応体制加算2~5】施設基準の変更点
従来の地域支援体制加算の基準を概ね踏襲しつつ、2026年改定では新たに以下4つの要件が追加・変更されました。
参考:厚生労働省|特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて
2-1. 調剤室の面積が16㎡以上(新規・改築等)
今回の改定では、医薬品の安定供給や在宅対応の強化に伴い、調剤室に一定の広さが求められるようになりました。具体的には「調剤室の面積が16㎡以上」であることが新要件として課されます。
「2026年6月以降の開設・改築・増築店舗」が対象となるため、既存の薬局には猶予措置が取られていますが、今後の新規出店や店舗改装の大きなハードルとなります。特に、地価が高くスペースの限られる都市部においては、物件選定やレイアウト設計の段階から、「16㎡の壁」を意識した戦略見直しが不可欠です。
2-2. 緊急避妊薬の調剤「または販売」
女性の健康サポートにおける薬局の役割を強化するため、従来は調剤のみが対象だった緊急避妊薬の要件に、「販売」の文言が正式に加えられました。
これは、オンライン診療およびオンライン服薬指導の普及や、国が進める緊急避妊薬のスイッチOTC化の流れを踏まえたものです。薬局には、適切な情報提供や服薬支援を行いながら、女性が安心して相談できる身近な医療資源としての役割が期待されています。
2-3. セルフメディケーション関連機器の設置
薬局を「健康管理を支える場所」へと転換させる狙いから、具体的な測定機器の設置要件が新設されました。
以下7つの指定機器のうち、3つ以上の常時設置が必要です。
・体重計
・体温計
・血圧測定器
・体組成計
・血中酸素飽和度測定器(パルスオキシメータ)
・握力計
・骨密度測定器
血圧測定器や体組成計、握力計などを店内に配置することで、地域住民が日々の身体の変化にいち早く気づくきっかけを提供できます。特に、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の予防や、高齢者のフレイルの早期発見・予防に大きく貢献します。
さらに、測定結果を活用し、薬剤師や管理栄養士が食事や運動などの生活習慣についてアドバイスを行うことで、セルフメディケーションを支援できます。数値に異常が見られる場合には、適切な医療機関への受診を勧めるなど、地域住民の健康を継続的に支える対人業務へと発展させることが大切です。
2-4. 薬事未承認の研究用試薬・検査サービスを提供していない
コロナ禍において、科学的根拠が不十分な「研究用」の抗原検査キットの販売が問題視されました。医療提供施設としての信頼性を担保するため、エビデンスのない未承認の検査サービスや試薬を排除することが、厳格に求められています。
今後は、薬局で販売する一般用医薬品(OTC医薬品)や検査キット、受託する検査サービスにおいて、それらが厚生労働省に承認されたものであるか、承認外の「研究用」でないかをチェックする必要があります。
万が一、不適切な商品を取り扱っていた場合は、地域支援・医薬品供給対応体制加算そのものが算定できなくなるリスクがあるため、本部の購買部門や管理薬剤師によるガバナンス(管理体制)を構築しておきましょう。
3. 【地域支援・医薬品供給対応体制加算2~5】実績要件
地域支援・医薬品供給対応体制加算2~5の実績要件
| 調剤基本料1 | 調剤基本料1以外 | |||
| 加算2 | 加算3 | 加算4 | 加算5 | |
| 59点 ④を含む 3項目以上 |
67点 7項目以上 |
37点 ④⑥を含む 3項目以上 |
59点 7項目以上 |
|
| ①夜間・休日等の対応加算 | 40回 | 400回 | ||
| ②麻薬の調剤実績 | 1回 | 10回 | ||
| ③調剤時残薬調整加算および薬学的有害事象等防止加算(旧重複投薬・相互作用等防止加算) | 20回 | 40回 | ||
| ④かかりつけ薬剤師の算定実績 | 20回 | 40回 | ||
| ⑤外来服薬支援料1 | 1回 | 12回 | ||
| ⑥単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績 | 24回 | 24回 | ||
| ⑦服薬情報等提供料 | 30回 | 60回 | ||
| ⑧小児特定加算 | 1回 | 1回 | ||
| ⑨多職種連携会議への参加(年間回数) | 1回 | 5回 | ||
参考:厚生労働省|令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】
参考:厚生労働省|特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて
主な変更点として、「服用薬剤調整支援料1・2」が削除されています。
また、重複投薬・相互作用等防止加算の廃止に伴い、「調剤時残薬調整加算」および「薬学的有害事象等防止加算」が新たな実績要件として組み込まれました。
調剤時残薬調整加算
患者さんや家族からの聞き取りで残薬が確認され、処方医へ照会した結果、7日分以上相当の調剤日数の変更が行われた場合に算定できます。在宅患者さんへの実施や、かかりつけ薬剤師が対応した場合は50点、それ以外は30点です。
薬学的有害事象等防止加算
残薬以外の理由(重複投薬や相互作用、副作用リスクなど)で処方医に確認すべき点があり、薬歴等に基づく照会の結果、実際に処方変更が行われた場合に算定できます。こちらも、在宅患者さんへの実施やかかりつけ薬剤師が対応した場合は50点、それ以外は30点です。
4. 加算算定に向けた実践ポイント
地域支援・医薬品供給対応体制加算で、上位区分となる「加算3」「加算5」を取得するには、対人業務実績を継続して積み重ねることが求められます。
4-1. 対人業務の機会を増やす
対人業務の機会を増やすには、患者さんからの相談を待つのではなく、薬局側から能動的に関わる姿勢を持つことを意識しましょう。
対象患者をリストアップしておく
夜間・休日対応や麻薬調剤、服薬情報等提供料など、実績要件の対象となる対人業務については、対象患者をあらかじめ抽出し、計画的に実施できる体制を整えましょう。薬歴や処方内容をもとに対象患者をリストアップしておくことで、算定機会を逃しにくくなります。
多職種連携を強化する
日頃から医師やケアマネジャー、訪問看護師などと密に情報共有を行い、継続的なフォローや在宅医療が必要な患者さんを相互に紹介し合える関係を築くことも重要です。地域の多職種との連携が深まるほど、対人業務の機会は自然と増えていきます。
地域住民との接点を増やす
健康相談や健康測定イベント、セルフメディケーション支援を通じて地域住民との接点を増やすことも有効です。日常的な健康相談をきっかけに受診勧奨や継続的な服薬支援へつなげることで、地域住民の健康を継続的に支えることができます。また、患者さんやその家族からの紹介など、新たな利用者との接点が生まれることも期待できます。こうした積み重ねが、地域における「かかりつけ薬局」としての信頼の獲得につながります。
4-2. 実績を見える化して管理する
実績要件を継続的に満たすためには、その場しのぎの対応ではなく、毎月同じ流れで取り組める仕組みを作ることが有効です。
おすすめなのが、現状把握から始める「CAPDサイクル」です。まずは前月の実績を確認し、何が不足しているのかを把握したうえで、原因分析・対策・実行へとつなげます。
まずは、Excelなどで「項目・現状・目標・不足件数」を一覧化した管理表を作成しましょう。達成状況を一目で確認できるようにしておくと、課題の発見や進捗管理がスムーズになります。
そして作成した管理表をもとに、以下の流れでCAPDサイクルを回します。
CAPDサイクルのスケジュール例
| 月初5日まで | Check(現状把握) | ・前月実績の集計 ・管理表で達成・未達を確認 ・不足項目の洗い出し |
| 翌週まで | Analyze(原因分析) Plan(対策・目標設定) |
・未達の原因を分析する ・店舗ごとの課題整理 ・目標達成に必要な件数の逆算 ・スタッフ一人ひとりの行動目標の設定 |
| 第2週末まで | Do(現場への落とし込み) | ・算定機会を逃さない運用体制の徹底 ・進捗を共有し、必要に応じてフォロー ・月中の達成率を確認し、未達が見込まれる場合は早めに対策を見直す |
「誰が実績を集計するのか」「誰が内容を確認し、改善策を決定するのか」「いつまでに報告・共有するのか」といった役割を明確にし、薬局内で報告・連絡・相談のルールを標準化しておきましょう。
毎月の実績を見える化し、課題を分析して改善策を実行するサイクルが定着すれば、対人業務の質や業務効率の向上にもつながります。
4-3. 薬局全体で継続的に取り組む
加算取得を目標として現場へ働きかける際は、数字の達成を目的とするのではなく、「患者さんに必要な支援を積み重ねた結果として評価される」という共通認識を持ってもらうことが大切です。
管理者の言葉や姿勢は、現場の行動に大きな影響を与えます。加算取得だけを前面に押し出せば、「数字合わせを求められている」と受け止められ、疲弊や反発を招く恐れもあるでしょう。
一方で、「患者さんのために何ができるか」を軸にマネジメントを行えば、現場の納得感が生まれ、自発的な取り組みへとつながります。その積み重ねは、対人業務の質の向上だけでなく、加算取得や薬局経営の安定にも結び付きます。
薬局に求められているのは、地域で患者さんを支える存在として、継続的に役割を果たすことです。加算のためではなく、「患者さんに選ばれる薬局づくり」のきっかけと捉えること。そして、組織全体で対人業務の質を高めていくことが、これからの薬局経営において重要となるでしょう。
5. まとめ
2026年度調剤報酬改定で新設された「地域支援・医薬品供給対応体制加算」では、医薬品供給体制の強化、地域包括ケアへの対応、在宅医療の推進という、薬局の機能と役割が明確に示されました。
今回の改定では全面的に、これまでの体制要件から、実績重視の評価へと移行しています。今後の薬局経営で加算を取得・維持するためには、かかりつけ機能の強化、在宅医療への参画、地域連携といった対人業務を強化することが重要です。
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