調剤報酬改定で変わる「かかりつけ薬剤師」評価が高まる「対人業務」「在宅訪問」「連携」
2026年度調剤報酬改定では、かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料が廃止され、実績ベースの加算が新設されます。これには、患者さんへの実質的な関わりを評価するとともに、かかりつけをすべての薬剤師が対応するべき標準業務へと引き上げる狙いもあります。
この記事では、調剤報酬改定におけるかかりつけ薬剤師の新たな評価体系と、今後評価が高まる領域について解説します。
1. かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料の廃止の背景
2. 【同意書廃止】かかりつけ薬剤師の同意はお薬手帳に記載
3. 【2026年改定】かかりつけ薬剤師の同意実績を可視化する新加算
3-1. かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(50点)
3-2. かかりつけ薬剤師訪問加算(230点)
4. 調剤報酬改定で評価が高まる領域
4-1. 対人業務:伴走型支援とアウトカム評価
4-2. 医師との連携:治療計画へ主体的に参画する
4-3. 在宅訪問:専門性の深化と緩和ケアでの価値発揮
5. まとめ
1. かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料の廃止の背景
2026年度調剤報酬改定において、「かかりつけ薬剤師指導料」および「かかりつけ薬剤師包括管理料」が廃止されました。
この制度は本来、患者さんの服薬情報を一元管理し、重複投薬や副作用を防ぎながら、継続的に療養を支えることを目的として導入されたものです。
しかし、現場では「同意書をもらうこと」自体がノルマのようになってしまったり、登録後の継続的なフォローや24時間対応などが十分にされなかったりと、実態が伴っていないケースが問題視されていました。
そのため、今回の改定では、同意書が廃止されます。今後は服薬管理指導料の加算として組み込まれ、「かかりつけ薬剤師として登録されているか」ではなく、「かかりつけ薬剤師として具体的にどのようなサポートをしたか」という実際の行動や実績を個別に評価する仕組みへと変わります。
薬局には、書類上の「形式的な囲い込み」をやめ、質の高い対人サービスの実績によって、薬剤師本来の価値を証明していくことが求められます。
2. 【同意書廃止】かかりつけ薬剤師の同意はお薬手帳に記載
2026年度調剤報酬改定により、かかりつけ薬剤師の同意書が廃止されました。
今後は、原則として「患者さんのお薬手帳への必要事項の記載」をもって、かかりつけ薬剤師として登録されることとなります。なお、既に同意書を取得済みの患者さんについても、お薬手帳への記載・移行が必要です。
お薬手帳の「表紙裏」や「プロフィール欄」など、患者さんの基本情報やアレルギー歴、既往歴等が記載されているページに、以下を記載します。
・かかりつけ薬剤師の氏名
・かかりつけ薬剤師の保険薬局の名称
・連絡先(電話番号)
・薬剤師の氏名付近に「かかりつけ」の文字を明記
これらを記載した該当ページについては、コピー等を保管することが義務づけられています。コピーは紙媒体に限定されておらず、スキャンデータや写真データ、電子版お薬手帳のスクリーンショットなどの電子データでの保存も認められています。
ただし、電子データで保管する場合には、個人情報保護はもちろん、サイバー攻撃に対する備えやアクセス制限、バックアップ管理など、セキュリティ全般において適切な対策を講じることが必須となります。
また、電子版お薬手帳では、画面上でかかりつけ薬剤師の情報が容易に確認できる状態であれば、「かかりつけ」の文字を入力・表示するためのシステム改修は不要とされています。
出典:厚生労働省|疑義解釈資料の送付について(その2)令和8年4月1日
3. 【2026年改定】かかりつけ実績を可視化する新加算
包括的な指導料が廃止された受け皿として、薬剤師の具体的なアクションと介入実績をピンポイントで評価する2つの加算が新設されました。
出典:厚生労働省|令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】
3-1. かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(50点)
かかりつけ薬剤師フォローアップ加算は、調剤後から次回来局までの間に、電話やICTツールを活用し、必要な指導を行った場合に算定できる加算です。
| 点数 | 50点(3ヵ月に1回) |
| 対象患者 | ・服薬管理指導料1のイ、2のイを算定している。 ・直近6ヵ月以内に、【外来服薬支援料1/服用薬剤調整支援料1・2/調剤管理料の調剤時残薬調整加算/薬学的有害事象等防止加算】のいずれかを算定している。 |
| 算定要件 | ・あらかじめ、患者さんやご家族に説明を行い、了承を得ていること。 ・調剤後〜再度処方箋を持参するまでの間に、かかりつけ薬剤師が電話やICTツール(アプリ、メール、チャット等)を用いて、服薬状況の確認、副作用の有無のモニタリング、残薬状況の把握などの個別具体的な指導を実施すること。 |
| 記録義務 | フォローアップを実施した旨、実施日時、患者さんから聞き取った内容、およびそれに対して行った指導やアドバイスの具体的内容を薬歴に記載すること。 |
フォローアップについては電話のほかに、アプリやメール、チャットなどのICTツールも含まれます。しかし、一斉メールの送信や、アプリのチェック入力といった形式的な確認は認められません。
アプリなどを利用する場合は、チャットで個別の状況に応じたアドバイスを行うなど、患者さんと双方向的なやり取りができるかが判断基準となります。
また、「調剤当日」や「次回来局日当日」のフォローアップは対象外です。必ず自宅等での服用期間中にアプローチを行ってください。
なお、対象となる処方箋は、処方箋を発行した医療機関のものに限ります。
3-2. かかりつけ薬剤師訪問加算(230点)
かかりつけ薬剤師訪問加算は、かかりつけ薬剤師が、患者さんの自宅や入居施設を訪問し、残薬の整理や服薬支援を行い、医師へ情報提供を行った場合に算定できる評価です。
高齢化や疾病の重症化に伴い在宅医療のニーズが急増していることを踏まえて、かかりつけ薬剤師には、患者さんの療養環境にまで踏み込んで支援する役割が求められています。
| 点数 | 230点(6ヵ月に1回) |
| 対象患者 | 服薬管理指導料1のイ、2のイを算定している。 |
| 算定要件 | ・あらかじめ、患者さんやご家族に説明を行い、了承を得ていること。 ・患家に訪問し、服用薬の服薬管理、残薬状況の確認等を行い、その結果を保険医療機関に情報提供する。 |
| 記録義務 | 患家を訪問した旨、残薬状況、実施した指導内容等について、薬歴に記載する。 |
具体的には、家の中の残薬整理、認知機能の低下に合わせた服薬カレンダーの導入、生活動線に合わせた服薬タイミングの見直しといった支援が想定されています。算定にあたっては、医師への情報提供も必要です。
かかりつけ薬剤師訪問加算は、本格的な在宅訪問へ移行する前段階として、「まずは外来患者さんに対して、スポットで必要な在宅支援を試みる」というアプローチとしての側面もあります。
薬局側にとっても、在宅医療が必要となる患者さんの早期発見や、潜在的な服薬課題の抽出、さらには医師やケアマネジャーといった多職種連携のきっかけづくりにつながる、まさに「外来と在宅をつなぐ入り口」として活用価値の高い加算といえます。
4. 調剤報酬改定で評価が高まる領域
今回の調剤報酬改定では、実績を重視し、対物業務から対人業務へのシフトを明確に打ち出しています。ここでは、薬局経営において、特に評価が高まる3つの領域について解説します。
4-1. 対人業務:伴走型支援とアウトカム評価
2026年改定における対人業務の評価は、「患者さんの療養生活にどう貢献し、どのような成果をもたらしたか」というアウトカム(成果)評価が、より重視されています。
その中心にあるのが、患者さんのアドヒアランス向上です。薬局の現場には、薬の使い方を説明するだけでなく、一歩踏み込んだアプローチが求められています。
・なぜ薬が飲めていないのか
・生活リズムにどのような課題があるのか
・副作用への不安や、治療に対する価値観はどのように変化しているか
薬剤師には、これらを丁寧にヒアリングし、患者さん自身が「これなら続けられる」「この治療に納得できる」と思える状態をつくり出すことが求められています。
一方で、患者さんに合わせた指導やアドバイスを行うには、一人ひとりと深く関わる時間が必要です。しかし現実には、調剤、監査、在庫管理、問い合わせ対応など、多くの対物業務に追われ、十分な時間を確保できていない薬局も少なくありません。
対人業務を充実させるためには、従来の対物業務や事務作業を効率化しなければなりません。そこで重要となるのが、「薬局DXの推進」と「調剤事務員へのタスクシフト」です。
現状で対人業務の不足を感じている場合は、システムの導入やワークフローの見直しを進めて、薬剤師が対人業務に集中できる環境づくりに取り組みましょう。
4-2. 医師との連携:治療計画へ主体的に参画する
在宅医療や地域包括ケアの推進には、医師や訪問看護師、ケアマネジャーをはじめとする多職種連携が重要です。薬剤師には、医療チームの一員として、どこまで主体的に治療に関与できるかが問われています。
2026年度調剤報酬改定では、「訪問薬剤管理医師同時指導料(150点)」が新設されました。これは、薬剤師が単独で患家を訪問するのではなく、医師の訪問診療に同行し、その場で協力して服薬指導や処方設計を行った場合に算定できる評価です。
診療に同行することで、「この症状を抑えるために、どの薬剤が適切か」「次回訪問までに、この副作用の初期症状をチェックしてほしい」といった、リアルタイムなディスカッションが可能となります。医師にとっても、臨床現場で即座に薬学的知見を得られるのは大きなメリットです。
訪問薬剤管理医師同時指導料は、医科側の診療報酬とも連動しており、医師と薬剤師が一体となって患者さんを支えることで、質の高い在宅医療の提供が期待されています。
診療同行については、以下の記事もご覧ください。
▶「医師との連携を強化し、在宅薬剤師の評価を高める「診療同行」で大事にすべきこと」
4-3. 在宅訪問:専門性の深化と緩和ケアでの価値発揮
超高齢化社会の先にある多死社会を迎え、在宅訪問において薬局に求められる役割は、患者さんの生活と尊厳を支える高度な医療機能へと進化しています。
なかでも重要課題となっているのが、緩和ケア(ターミナルケア)への対応です。最期を住み慣れた自宅で迎えたいと願う患者さんに対し、薬剤師には以下のような役割が求められています。
・痛みや苦痛をコントロールする医療用麻薬の適正管理
・無菌室やクリーンベンチ等を用いた無菌調剤への対応
・24時間365日、急変時にも臨機応変に対応できる体制
・ご家族への精神的なグリーフケア・サポート
緩和ケアの現場では、病状が急変することも珍しくありません。薬剤師には、高い観察力と、医師への迅速なフィードバック、状況に応じた処方提案といった、高度な専門性が求められます。
2026年度調剤報酬改定では、「在宅薬学総合体制加算2」において、個人在宅への対応実績に対し、施設在宅の倍となる100点が設けられました。
老老介護や認認介護、がん末期、医療依存度の高い独居高齢者など、複雑な背景を抱える個人在宅こそ、薬剤師の介入価値が最も発揮される場所です。在宅での看取りが増加していくこれからの社会において、患者さんのQOL(生活の質)を最期まで支え切る存在として、薬剤師の存在感はこれまで以上に高まっていくでしょう。
5. まとめ
2026年度の調剤報酬改定は、まさに「患者のための薬局ビジョン」の具現化を強く迫る内容となりました。
今後は、継続的なフォローアップや在宅訪問、多職種連携といった対人業務への取り組みが、これまで以上に重要性を増していきます。患者さん一人ひとりの生活に深く関わり、医療チームの一員として治療成果に貢献する姿勢が不可欠です。
こうした変化に対応するためには、制度の理解にとどまらず、現場のオペレーションや薬剤師自身の行動変容まで落とし込んでいくことが求められます。
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