薬局事務員の採用・戦力化・定着の事例とノウハウを人事のプロが紹介!

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長期収載品の選定療養が2024年10月にスタート 薬局が押さえておきたい制度の内容と加算要件

薬局事務員の採用・育成は、薬局経営の安定化や業務効率化、顧客満足度向上に直結する重要な取り組みです。しかし、未経験者の採用や定着は容易ではなく、母集団形成から入社後の教育・フォローまで、戦略的な計画が求められます。

この記事では、2025年7月に開催された「未経験者を即戦力に!HYUGA式 薬局事務 採用・育成 実践セミナー」の内容をもとに、きらり薬局の実例を交え、採用から戦力化・定着までの具体的ノウハウを紹介します。

この記事は、2025年7月15日に開催したWEBセミナー「未経験者を即戦力に!HYUGA式 薬局事務 採用・育成 実践セミナー」の内容をもとに作成しています。きらりプライムサービスのセミナー情報は、こちらからご確認ください。

1. 薬局事務採用の現状と課題

近年、日本の労働力不足は深刻さを増しており、2024年には倒産件数が前年比32%増の342件に達しました(*1)。人材確保は企業の存続に直結し、薬局業界も例外ではありません。

調剤事務は未経験者が高く、宿泊・飲食サービス業など他業種と採用ターゲットが重なっています。特に、宿泊や飲食業では時給や福利厚生の急速な改善が進んでおり、調剤事務の採用難易度は非常に高くなっているのが現状です。

さらに、応募から面接に至るまでの過程で、求職者の音信不通や他社での内定決定も頻発しています。このため採用では、スピード感を持つことが大切です。

(*1)出典:帝国データバンク|人手不足倒産の動向調査(2024年)

2. 【きらり薬局実例】薬局事務採用の戦略的アプローチ

きらり薬局では、2023〜2025年度で、薬局事務員の入社者数60〜70名を確保し、応募入社率は約10%を維持しています。ここからは、きらり薬局での具体例を交えて、調剤事務の採用戦略を解説します。

2-1. ①母集団形成:求人の新着表示

採用活動で最も重要となるのが、母集団形成です。求職者の目に留まるために、求人情報は毎月更新し、新着表示に掲載されるよう管理します。

きらり薬局の事務員のうち、約7割が未経験者です。このため、「研修環境あり」「未経験者活躍中」といった安心感をアピールし、未経験者が興味を持つ文面づくりにも力を入れています。

給与条件は、3〜4ヵ月ごとに周辺のサービス業や他薬局の条件を確認し、競合に負けない水準を維持します。理論年収や福利厚生などもチェックし、改善できる点はないか見直すことも大切です。

きらり薬局では、スカウト応募も活用しています。応募の5割以上はスカウト経由で、返信率は6〜10%と低いものの、短期決戦で優秀な人材を確保したいケースでは有効です。スカウトメッセージはテンプレートではなく、特別感のある内容を意識し、研修体制や福利厚生などを箇条書きで明示します。

2-2. ②書類選考:電話面接で効率アップ

応募者の50〜60%が、選考過程で離脱します。有望な人材を逃さないためには、書類選考は遅くとも翌日までに行うなど、スピード感を持って採用に臨むことが重要です。

きらり薬局では、書類選考前に、10〜15分程度の電話面談を実施しています。就職時期、通勤範囲、過去の経歴、転職軸、他社選考状況などを確認する簡単なものですが、このワンクッションがあるだけで採用効率を向上できます。

電話面談の実施前・実施後を比較すると、内定受託率は10%で同水準ですが、「書類選考から対面面接への移行率」は32%から79%へ上昇しました。また、早い段階から応募者とのフィーリングを確認できるため、有望な人材に絞って面接を行えることも大きなメリットです。

電話面談の評価ポイント

未経験者での電話面談では、主に以下3つの点に注目しています。

  • ホスピタリティ(医療機関への関心)がある
  • 研修・教育制度への関心がある
  • 会話のキャッチボールがスムーズにできる(コミュニケーション力がある)

電話面談で好印象だった応募者には、「対面面接に来てほしい」ということを積極的にアピールします。

2-3. ③面接:店舗と連携・適性検査の活用

きらり薬局の対面面接は、「会社説明→店舗見学→面接」という流れで、所要時間は約90分です。面接前には店舗スタッフと打ち合わせを行い、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を徹底し、店舗全体で応募者に快適に過ごせる環境を整えます。

面接では、適性検査も実施します。過去の早期離職者のデータから特徴的な項目をピックアップし、面接時に確認することも可能です。たとえば、きらり薬局では、自尊心・自主性・秩序欲求・自律欲求といった数値が低い人が早期離職の傾向が高いため、これらの数値が低い応募者に対しては面接時に重点的なチェックを行います

採用意向の高い応募者に対しては、面接終了時に内定意思を直接伝えます。また、他社の選考状況をヒアリングし、

他社選考がある場合:他社面接終了後にアポイントを取り、温度感を確認して条件提示
他社選考がない場合:翌日に条件提示

というように、応募者の状況に応じてスピーディーかつ柔軟に条件提示を行います。

2-4. ④内定受諾~入社後:研修とチューター制度

きらり薬局では、入社から3ヵ月を特に重要な定着期間と位置づけ、手厚くサポートしています。

入社時には、業務基礎研修をはじめ、会社理念や組織体制、ハラスメント防止・コンプライアンスなどもしっかりと伝えます。薬局事務としてのスキルだけでなく、安心して働くための基礎知識を身につけてもらうことが目的です。

また、「仕事について教えてもらえない・聞きづらい」という新入社員の声に応えるために、チューター制度を導入。新入社員一人ひとりに専任のチューター(仕事を教える先輩社員)を配置し、「多忙な現場で誰に聞けばいいのかわからない」という不安を解消します。チューターは、毎月のミーティングを通じて教育プランに沿った成長をサポートし、信頼関係を築きながら業務定着を後押しします。

3. 薬局事務員の早期定着・戦力化の取り組み

薬局事務員の採用で、大きな壁となるのが“定着”です。ここでは、きらり薬局の早期定着・戦力化に向けた工夫を紹介します。

3-1. OJTとOff-JT

きらり薬局では、薬局事務員がスピーディーに業務を覚えられるよう、OJT(実務研修)とOff-JT(座学研修)の二本柱で教育を行っています。

OJTは、実務を通じて即戦力となるスキルを習得できるものの、指導者によって質がバラつきやすいという特徴があります。また、Off-JTは体系的に基礎知識を学べますが、現場感覚をつかみにくいのがデメリットです。両者を組み合わせることで、お互いの不足を補いつつ、実践力と知識の両面から育成を図ります。

3-2. 薬局事務員育成の育成ロードマップの作成

薬局事務員の育成では、目標を設定して計画的に育成することが大切です。きらり薬局では、事務員が一人前として自立することをめざして、段階的な育成ロードマップを策定しています。

育成ロードマップの例

導入期(入社~2ヶ月)

Off-JT:接遇研修・薬局基礎研修
OJT:受付・電話対応、入力補助

実践期(2ヶ月~4ヶ月)

Off-JT:保険知識基礎研修
OJT:入力業務、調剤補助

定着期(4ヶ月~7ヶ月)

Off-JT:保険知識応用研修
OJT:入力業務、調剤補助、レセプト業務

「いつまでに、どのレベルに到達するか」を明確に設定します。評価月には、目標と達成度を照合して進捗を確認し、個々のスキルに応じて育成スケジュールの調整を行います。

さらに、きらり薬局では、定期的なスキルチェックも実施。ダミー患者の処方箋入力や、一対一での口頭テストなどを通じて一人ひとりのスキルを可視化し、育成計画に反映させています。

4. まとめ

薬局事務の採用・教育は、コストではなく投資と捉えることが重要です。薬局事務の定着は、職場の安定化と業務効率化、そして顧客満足度の向上に直結します。

自社に合う人材を採用するためには、母集団形成、入社後の丁寧なフォロー、戦略的な教育計画の実行を徹底することが求められます。時間も手間もかかりますが、これらを着実に積み重ねることで、長期的な経営成果につながります。

きらりプライムサービスでは、薬局事務員の研修制度構築コンサルティングをはじめ、採用から教育・定着までをサポートしています。薬局のお悩みに合わせた研修の設計や、評価者へのフォローについてのご相談も可能です。人材採用にお悩みの薬局経営者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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