かかりつけ薬剤師指導料の算定要件・業務・施設基準を解説

かかりつけ薬剤師指導料は、かかりつけ薬剤師が医師と連携し、患者さんの服薬状況を的確に把握したうえで指導を行った場合に算定できる評価です。薬局が地域において果たす役割が高まる中、かかりつけ薬剤師指導料の重要性も増しています。
この記事では、かかりつけ薬剤師指導料の算定要件や施設基準、かかりつけ薬剤師の業務内容をわかりやすく解説します。
1. かかりつけ薬剤師指導料の概要・点数
2. 2024年度調剤報酬改定での変更点
3. かかりつけ薬剤師指導料の算定要件
4. かかりつけ薬剤師指導料の施設基準
5. かかりつけ薬剤師の主な業務
まとめ
1. かかりつけ薬剤師指導料の概要・点数
かかりつけ薬剤師指導料とは、患者さんが「この薬剤師に継続して薬の管理をお願いしたい」と同意したうえで、その薬剤師が医師と連携して服薬状況を一元的・継続的に管理し、必要な服薬指導を行った場合に算定できる薬学管理料です。
かかりつけ薬剤師指導料の概要
点数 |
76点 |
要件 |
かかりつけ薬剤師が、医師と連携して、患者さんの服薬状況を一元的・継続的に把握した上で、必要な服薬指導等を行った場合に算定する。かかりつけ薬剤師指導料の届出には、施設基準を満たす必要がある。 ※「服薬管理指導料」及び「かかりつけ薬剤師保活管理料」との併算定は不可 |
(出典:厚生労働省|特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(通知)|保医発0305第6号)
かかりつけ薬剤師指導料の点数は、76点です。通常の服薬管理指導料より高く評価されており、薬局経営においても重要な加算となります。
2. 2024年度調剤報酬改定での変更点
2024年度の調剤報酬改定では、かかりつけ薬剤師指導料に関して以下の見直しが行われました。
- 休日・夜間対応の体制を緩和
夜間・休日対応は、原則かかりつけ薬剤師が対応するとしたうえで、やむを得ない場合は薬局単位での対応が認められました。また、これまでは「24時間」と記されていましたが、改定によって「休日、夜間」という文言に変わり、表現が緩やかになっています。ただし、かかりつけ薬剤師ではない薬剤師が対応した場合は、「服薬管理指導料の特例(59点)」での算定となります。
- 複数薬剤師による対応が可能に
これまでかかりつけ薬剤師と連携する薬剤師は1名に限られていましたが、改定後は患者さんの同意を得ることで、複数薬剤師による対応が可能となりました。この場合も、算定できる加算は「服薬管理指導料の特例」となります。
- 併算定できる加算の拡大
「吸入薬指導加算」「調剤後薬剤管理指導料(旧調剤後薬剤管理指導加算)」「特定薬剤管理指導加算」が、かかりつけ薬剤師指導料との併算定が可能となりました。かかりつけ薬剤師による患者さんへの支援が、より適切に評価される仕組みが整えられました。
- 地域支援体制加算での施設基準に追加
「かかりつけ薬剤師指導料の届出」が、地域支援体制加算の共通施設基準として新たに加えられました。さらに、「麻薬小売業者の免許」「在宅実績24回以上/年」といった要件も追加されており、在宅医療への関与とかかりつけの機能を備えた薬局でなければ、地域支援体制加算を算定できない仕組みとなっています。
3. かかりつけ薬剤師指導料の算定要件
かかりつけ薬剤師指導料は、以下すべてを満たした患者さんに算定できます。
- 当該薬局に複数回来局している患者さんであること
- 患者さんに制度の意義を説明し、書面などで同意を得ていること
患者さんの同意を得る際には、以下4つの点について説明が必要です。
①かかりつけ薬剤師の業務内容
②かかりつけ薬剤師を持つことの意義・役割など
③かかりつけ薬剤師指導料の費用
④患者さんにかかりつけ薬剤師が必要であると判断した理由
かかりつけ薬剤師指導料の同意を得た当日は算定できず、次回来局時以降の処方箋受付から算定可能となります。同一月内は、同一薬剤師のみ算定可能です。月の途中でかかりつけ薬剤師を変更する場合は、翌月から新しい薬剤師にて算定できます。
出典:厚生労働省|診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)|保医発0305第4号|別添3 調剤報酬点数表に関する事項
4. かかりつけ薬剤師指導料の施設基準
かかりつけ薬剤師指導料の算定には、薬局が一定の基準を満たしている必要があります。主な要件は以下のとおりです。
①勤務経験
- 保険薬局で 3年以上の勤務経験があること。
- 病院薬剤師の経験がある場合、1年を上限に算入可能。
②勤務時間・在籍期間
- 薬局に週32時間以上勤務していること。
- 時短勤務(育児・介護など)の場合は、週24時間以上かつ週4日以上勤務で可。
- 継続して1年以上、当該薬局に在籍していること。
③研修認定資格
- 薬剤師認定制度認証機構が認める研修認定を取得していること。
④地域活動への参画
- 地域ケア会議、多職種連携会議、行政機関や薬剤師会などが主催する住民向け研修会など、地域医療に関わる活動に主体的・継続的に参加していること。
⑤プライバシー配慮
- 患者さんとの相談内容が周囲に聞こえないよう、パーテーションや独立した相談スペースを設けていること。
これらを満たしたうえで、初めてかかりつけ薬剤師指導料の届出が可能となります。届出にあたっては、認定取得や地域活動を証明する資料の添付が必要です。
出典:厚生労働省|特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|保医発0305第6号
5. かかりつけ薬剤師の主な業務
かかりつけ薬剤師の業務は、調剤や服薬説明をはじめ、患者さんの生活に寄り添い、他職種と連携しながら総合的に薬物療法を支援する点に特徴があります。具体的には、以下のような役割が求められます。
- 服薬状況の一元的・継続的管理
複数の医療機関を受診している患者さんは、異なる医師から処方された薬が重複していたり、相互作用の危険があったりするケースも少なくありません。かかりつけ薬剤師は、すべての処方を統合的に確認し、問題がある場合には医師へ疑義照会を行い、適正な処方内容に調整できるよう働きかけます。また、薬剤服用歴を丁寧に記録することで、次回以降の調剤や指導に活用し、継続的なフォローアップを行います。
- 在宅患者さんへの訪問と夜間・休日対応
在宅患者さんに対しては、医師の指示に基づいて訪問し、服薬状況や副作用、残薬の確認を行います。患者さんのご家族やケアマネジャーとも密に交流し、実際の生活場面に寄り添ったフォローが必要です。終末期の患者さんには、苦痛を軽減しつつ尊厳を保つための薬学的支援を行うなど、より高度で柔軟な対応が求められます。
また、患者さんや家族が安心して治療を続けられるよう、休日や夜間に緊急の問い合わせにも対応します。服薬を忘れた場合や副作用が現れたとき、あるいは急な体調変化があった際に電話で応対するほか、必要に応じて患者宅へ訪問します。
- 多職種との連携
かかりつけ薬剤師は、医師や訪問看護師、ケアマネジャー、管理栄養士らと協力し、地域医療チームの一員として専門性を発揮します。服薬状況や残薬、副作用の有無などを薬剤師が多職種へ情報提供することで、在宅医療の質を高めることが期待されています。在宅医療では薬剤師がカンファレンスに参加し、薬物療法の観点から具体的な助言を行うケースも増えています。
まとめ
かかりつけ薬剤師指導料は、薬剤師が患者さんに寄り添い、医師と連携しながら継続的にサポートする体制を評価するものです。算定には、患者さんからの同意取得や、薬剤師の勤務経験、地域活動の実績など、細かな要件が定められています。
2024年度調剤報酬改定では、休日・夜間対応の緩和や併算定の拡大など、薬局にとって活用しやすい評価へと改善され、かかりつけ薬剤師の負担軽減と現場に即した評価体系が整えられたといえます。
かかりつけ薬剤師の活躍は、地域医療における薬局の存在価値を高める重要な要素です。在宅薬局経営をサポートするきらりプライムサービスでは、かかりつけ薬剤師の育成や、調剤報酬改定へのスムーズな対応を支援しています。お悩みを持つ薬局経営者の方は、どうぞお気軽にご相談ください。