薬局の人材育成の課題と解決の方向性

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長期収載品の選定療養が2024年10月にスタート 薬局が押さえておきたい制度の内容と加算要件

高齢化や医療提供体制の変化により、薬局が担う役割は多様化しています。対人業務の質向上が求められる中、薬局が持続的な運営を実現するには、薬局スタッフの価値を最大限に引き出す「人的資本経営」が有効となるでしょう。

この記事では、薬局における人材育成の課題と、解決のためのアプローチを解説します。かかりつけ薬剤師の育成や在宅医療への取り組みにつまずいている薬局は、教育体制の見直しを行うことが、課題解決のきっかけとなるかもしれません。

1. 薬局の人材育成の重要性

近年、薬局の果たすべき役割は「薬を渡す場所」から「地域の健康ステーション」へと変化しています。地域包括ケアへの対応、DX化、在宅医療といった多様なサービスの展開に伴い、薬局スタッフに対しても高度な知識・スキルが求められています。

薬剤師には、患者さんと信頼関係を築く力や、医師や看護師との連携力、薬学的知見に基づく判断力といった広範なスキルが必要です。緩和ケアや高度薬学管理など、専門性が高度化している点も見過ごせません。また、在宅薬局でスムーズに業務を回し、加算取得を達成するためには、事務員の協力も不可欠となります。

薬局全体がチームとなって動ける職場は、業界の変化にも柔軟に対応し、持続可能な経営を実現できるでしょう。変化の多い業界を生き残るためにも、人材育成は薬局の最重要課題といえます。

2. 薬局の人材育成の課題

薬局に限らず、人材育成は難しい課題であり、多くの経営者の方が苦労しています。ここでは、薬局における人材育成の課題をいくつか取り上げます。

2-1. 在宅医療の人手・スキル不足

在宅薬局の展開で最も大きな障壁となるのが、人材不足です。小規模薬局では外来対応で手一杯で、在宅訪問に対応する余裕がない状況も珍しくありません。また、いざ在宅医療に参入しても、在宅ノウハウや知識がなく、人材育成に苦戦する例も見られます。

在宅訪問業務では、臨機応変な対応力やコミュニケーション力、疾患知識、チーム医療での連携、夜間・休日対応などが求められるため、「ハードルが高い」と感じる薬剤師も少なくありません。薬剤師の不安を取り除くためには、薬局全体での在宅医療体制やマインドセットを整える必要がありますが、これらを実現できず、薬局スタッフの歩みが揃っていないことが、さらなる人材不足の悪循環を招いています。

2-2. かかりつけ薬剤師が不足している

患者さんの服薬状況を一元的かつ継続的に把握し、治療や薬、健康についての相談を受ける「かかりつけ薬剤師」は、地域医療を支える上で重要な役割を担っています。しかし、かかりつけ薬剤師と活動している薬剤師はまだ少なく、全国的に不足している状況です。

この理由として、かかりつけ薬剤師の要件の難易度が高いことが挙げられます。認定薬剤師の資格取得や夜間・休日対応などが求められ、高い専門性と在宅医療に対する理解が必要です。また、かかりつけ薬剤師には、薬やOTC医薬品をはじめ、介護やアレルギーなどに関する詳しい知識が必要であり、薬局内での人材育成が追いついていないと考えられます。

2-3. 郊外・地方における薬剤師の採用難

薬剤師不足は都市部を中心に充足しつつあるものの、郊外・地方における薬剤師の採用難は未だ深刻な状況です。郊外・地方こそ高齢者が多く、在宅ニーズや多職種連携が重要となるものの、薬剤師が不足しているために十分なサービスを届けられないという矛盾を抱えています。

都市部であっても、夜間・早朝などの時間帯で薬剤師が不足している薬局が見られます。また、大手チェーンより小規模薬局のほうが人材獲得で不利な傾向にあり、優秀な人材の確保と長期的な育成をどのように進めるかが課題となっています。

2-4. 体系的な教育体制がない

薬局での教育体制はOJT教育が中心であり、体系的な研修プログラムが整備されていないケースが少なくありません。OJTでは実践を通じて学び実務力を養成できる一方、教育の質が指導者の経験やスキルに依存してしまうリスクがあります。具体的なスキルマップがないため、薬剤師や事務員が「何をどこまで理解できているのか」を把握しづらいというのも問題です。

薬剤師の業務が多様化している中で、新しいサービスに応じた教育体制を柔軟に取り入れることも簡単ではありません。たとえば、在宅医療ではターミナル期における薬剤師の関与が求められていますが、ベテラン薬剤師でも緩和ケア経験者は少なく、指導できる薬剤師が不足しています。薬局が教育体制を整備する上では、体系的な教育体制の整備と新しいサービスへの柔軟な対応を両立させることが重要です。

3. 薬局人材育成の課題解決に向けたアプローチ

ここからは、薬局の人材育成の課題を踏まえた上で、解決のための具体的なアプローチを考察します。

3-1. OJTと座学による研修体制の整備

薬局スタッフの育成では、OJTと座学(OFF-JT)を組み合わせ、バランスのよい教育体制を確立しましょう。座学で理論や知識を学習し、OJTで実践的な指導を受けることで、業務への理解が深まります。さらに、業務ごとの習熟度を可視化したスキルマップを作成すると、薬剤師や事務員が自身の成長を客観的に把握する際に役立ちます。

OJTは指導担当者に一任するのではなく、薬局全体で指導項目と期間を定め、育成計画を立てるとよいでしょう。フィードバックをこまめに実施し、指導対象となるスタッフそれぞれに応じたアドバイスを行います。

座学については、時間・場所を問わず学習できるe-Learningの活用がおすすめです。e-Learningは苦手な分野を繰り返し視聴できるので自己学習に適しており、多忙な在宅薬剤師も隙間時間で効率よく学べます。

薬局内で教育体制の整備が難しい場合は、きらりプライムサービスの「教育研修サービス」をご検討ください。OJTと座学の双方を実施し、薬剤師・事務員の早期スキルアップをサポートします。薬局のお悩みに応じた研修のオーダーメイド設計も可能で、往診同行や緩和ケアなどのあらゆる業務に対応いたします。完全オンラインのe-Learning教育研修サービスは、一人当たり月々5,000円程度からご利用可能です。教育研修サービスにご興味のある薬局経営者の方は、ぜひこちらよりお問い合わせください。

3-2. オンライン薬剤師の採用・強化

地方・郊外や夜間帯など、薬剤師が確保しにくい環境では、オンライン服薬指導を活用したオンライン薬剤師(リモート薬剤師)を採用しましょう。オンライン服薬指導により、遠方の患者さんの服薬指導や健康相談、医師との連携にも対応でき、人手不足の地域でも質の高い医療サービスの提供が可能となります。

また、オンライン薬剤師という働き方は、子育て中や介護中の薬剤師の雇用にもつながるため、人材確保・長期育成という観点からも有効です。多様な働き方が求められる時代だからこそ、オンライン薬剤師を上手に活用して柔軟なワークライフバランスの形成をめざしましょう。

オンライン服薬指導の導入やオンライン薬剤師の育成においては、ICTツール活用に向けた環境整備や薬剤師のITリテラシー教育が必須となります。オンライン服薬指導と親和性の高い電子処方箋についても導入を検討し、薬局DXを進めましょう。

3-3. 職種別のキャリアパスを作成

在宅薬局を運営し、薬剤師が対人業務で本領を発揮するには、薬剤師と事務員それぞれの活躍が不可欠です。職種別のキャリアパスを明確化し、成長意欲に応じてポジションをめざせる仕組みをつくりましょう。

たとえば事務員なら、一般事務員から店舗マネージャー、エリアマネージャーへ。薬剤師なら、かかりつけ薬剤師や薬局長、エリアマネージャー、本部運営など、個々の希望に応じたキャリアへ進むことも考えられます。

自分の可能性を最大限に活かせる環境があれば、薬局スタッフの自律的な学びを促すことができます。定期的なスキルチェックなども開催し、知識の定着と理解の深化をサポートしましょう。

薬局事務員のキャリアモデルについては、以下の記事もご覧ください。

薬局の在宅対応・効率化に必要となる薬局スタッフの成長のためにやっておきたいこと

まとめ

在宅医療、地域包括ケア、健康増進支援など薬局サービスの多様化に伴い、薬局スタッフに求められるスキルも高くなっています。

薬局の人材育成にあたっては、薬剤師と事務員それぞれのキャリアパスを明確化し、OJTと座学を組み合わせた体系的な教育体制を整備する必要があります。オンライン服薬指導をはじめとするDX化も進め、多様な働き方に対応することで優秀な人材を確保しましょう。

きらりプライムサービスでは、薬局のお悩みに応じた研修を設計し、OJTと座学の両方から薬局の人材育成をサポートしています。また、人材不足の薬局様には、部分的なオンコール対応を代行する人材シェアリングも行っております。薬剤師・事務員の育成や人材不足にお困りの薬局経営者の方は、ぜひきらりプライムサービスにご相談ください。

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