医師との連携を強化し、在宅薬剤師の評価を高める「診療同行」で大事にすべきこと
在宅医療の現場において、薬剤師が医師の診察に立ち会う「診療同行」は、医師からの信頼を獲得し、薬剤師としての専門性を発揮できる貴重な機会です。今後の調剤報酬改定を見据えた薬局の生存戦略という観点からも、その重要性は年々高まっています。
この記事では、診療同行の意義から薬局経営評価への影響、実際の流れと具体的な立ち振る舞いまでを詳しく解説します。
| 本記事は、2026年1月20日に開催したWEBセミナー「中医協でも注目!報酬改定に向けた診療同行の実践マニュアル 〜医師の信頼を勝ち取り、算定に繋げる薬剤師の役割〜」の内容をもとに作成しています。きらりプライムサービスのセミナー情報は、こちらよりご確認ください。 |
1. 診療同行とは
1-1. 調剤報酬改定における診療同行の評価
2. 診療同行の事前準備:心構えと薬剤師の持ち物
3. 診療同行の流れ
3-1. ①診察前の事前確認
3-2. ②事前カンファレンス
3-3. ③医師の診察
3-4. ④医師の処置等
3-5. ⑤処方箋発行
3-6. ⑥終了後の対応(情報共有・確認)
まとめ
1. 診療同行とは
診療同行とは、医師が高齢者施設や患者さんの自宅を訪問する際に、薬剤師が診察の場に立ち会うことを指します。
多くの場合、処方箋が発行されるタイミング(2週間に1回、あるいは月1回など)に合わせて実施されます。医師やクリニックの看護師に加え、施設看護師やヘルパーなど、多職種が顔を合わせる貴重な機会です。
かかりつけ薬剤師にとって診療同行は、患者さんの生活背景や療養環境を直接把握し、リアルタイムで得られる情報をその場で処方提案へと結びつける職能発揮の場です。地域医療の一員として主体的に関与する姿勢が、医師との信頼関係を深め、地域連携の質そのものを高めていきます。
1-1. 調剤報酬改定における診療同行の評価
現在、中医協では、医師と薬剤師が同時に訪問し、その場で処方調整が行われる医療提供体制について、適切な評価の在り方が議論されています。医科側の報酬として診療同行が評価されれば、クリニックにとって「診療同行に対応できる薬局」の存在価値は相対的に高まり、在宅対応の依頼増加も期待できます。
中医協資料によると、診療同行を実施している薬局は全体の9.1%にとどまっています。診療同行の体制を整えておくことで、他薬局との差別化にもつながるでしょう。
さらに、診療同行では、処方箋発行前に提案が可能なため、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料2の算定につながりやすい点も特徴です。加えて、医師の診察を直接確認できることで、減薬後のADL(日常生活動作)変化を予測しやすくなり、服用薬剤調整支援料1・2の算定にも結びつきやすくなります。
診療同行に積極的に関与することは、在宅医療の質向上に寄与するだけでなく、在宅依頼増加による処方箋枚数の拡大と、各種加算取得による処方箋単価の向上を同時に実現できる有効な経営戦略といえます。
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第626回) 議事次第|厚生労働省
2. 診療同行の事前準備:心構えと薬剤師の持ち物
診療同行で求められるのは、医師の診療を妨げず、必要な情報は確実に拾うというバランス感覚です。現場では、医師の診療を支え、処方設計のパートナーとなる意識を持ちましょう。笑顔での受け答えや目を合わせた挨拶など、基本的なマナーも欠かせません。
同行中、医師や訪問看護師から、薬剤に関する質問を受ける場面も多々あります。即答できることが理想ですが、判断に迷う場合は、決して知ったかぶりをしないことが大切です。その場では「確認のうえ、至急ご報告します」と明確に伝え、後ほど正確な情報を共有しましょう。曖昧な返答は、結果として患者さんの不利益につながりかねません。
また、診療同行中に医師や看護師へ備品を借りる行為は、失礼にあたる場合もあります。必要なものは薬剤師側で完結できるよう、持ち物の事前確認を徹底しましょう。
診療同行の薬剤師の持ち物
| ①患者さんの服薬情報 | 薬歴や過去の報告書を持参します。タブレットなどで即時確認できる環境が理想ですが、難しい場合は患者さんごとの薬歴を事前に印刷しておきましょう。 |
| 新患の場合は、あらかじめクリニックや施設に依頼し、診療情報提供書や薬剤情報提供文書を入手しておきます。 | |
| ②診療同行メモ | 同行中に得た情報を即座に記録できるフォーマットを用意します。バイタル、体調変化、薬剤変更点、残薬状況、開始日などを簡潔に記載できるものを用意しましょう。 |
| ③お道具箱 | 処方変更や現場対応に備えた、薬剤師の必須アイテムです。ハサミ、セロハンテープ、ロール付箋、マーカー、ピンセット、ユニパック、輪ゴム、ホッチキス、替え芯などを準備します。 |
| ④薬の検索ツール | 薬価を気にされる患者さんやご家族も多いため、添付文書や薬価を確認できる無料アプリ「ヤクチエ添付文書」は有用です。 |
| そのほか、薬局実習.comや日数計算サイトなども活用しましょう。 |
3. 診療同行の流れ
ここでは、事前準備から診察後の共有まで、実際の診療同行の流れとポイントを解説します。
3-1. ①診察前の事前確認
診療開始の20分前には現地に到着し、患者さんの様子と残薬のチェックを行います。
施設スタッフや看護師から、食事量、嚥下状態、排泄状況の変化をヒアリングしましょう。難しい場合は、食事量の記録を確認するだけでも後の処方提案で役立ちます。
頓服薬や外用薬の過不足、残薬の有無を確認します。この時点で処方日数の調整案を整理しておくと、その後の提案がスムーズになります。
3-2. ②事前カンファレンス
事前カンファレンスでは、医師がカルテや検査値、申し送り内容を確認します。一方、薬剤師はこれまでの経過を把握し、患者さんの状態変化や服薬状況、検査値などの客観的データを整理・記録しておきます。
診察中に特に確認してほしい点がある場合は、診察が始まる直前に、要点を絞って簡潔に伝えることが重要です。
たとえば、前回新規で処方された薬がある場合には、「前回お試しで処方された薬について、今回も継続可能かご評価をお願いします」と一言伝えておくことで、医師は診察時にその薬剤を意識した評価がしやすくなり、処方判断がスムーズになります。
3-3. ③医師の診察
診察が始まったら、原則として医師に話しかけることは控えます。聴診や問診中は医師が集中しているため、邪魔にならないように配慮しましょう。
同行中の医師、訪問看護師、ヘルパーの会話には注意深く耳を傾けましょう。患者さんの日常生活の様子、嗜好、趣味などを知ることは、患者さんとのコミュニケーションや服薬設計のヒントになります。
薬剤師はバイタルや会話内容を記録し、副作用の有無や症状経過を確認します。医師がカルテ入力を行っている際は、斜め後ろから内容を把握し、処方箋作成のタイミングを見極めます。
3-4. ④医師の処置等
バルーン交換や皮膚処置など、医師の処置を間近で見ることができる貴重な機会です。この間に、薬剤師は処方日数の整理や質問事項の最終確認を行います。
3-5. ⑤処方箋発行
薬剤師が最も職能を発揮できる場面です。医師が処方箋を書き始めたタイミングで、簡潔に提案を行いましょう。伝える内容は短く、要点を絞ることが基本です。
提案例:
「先生、処方について2点確認です。〇〇は残薬があるため、本日は△日分でお願いします。」
「腎機能低下がありますが、□□は減量不要でしょうか?」
3-6. ⑥終了後の対応(情報共有・確認)
診察後は、速やかに情報の確認と共有を確実に行い、現場と薬局の双方で認識のズレを残さないようにします。
①現地にて、処方内容の最終確認
施設スタッフと、以下の点についてその場で確認します。
・外用薬は漏れなく処方されているか
・不要な薬が残っていないか
・追加・中止・変更薬の内容に相違がないか
後から判明する不備は、薬局・施設双方の負担になります。必ず薬局へ戻る前に解消しましょう。
②現地にて、開始日・配達日の共有
変更や追加があった薬について、開始日と配達日を施設側に事前共有します。出荷調整などで納品が遅れる場合は早めに報告し、配薬時にも改めて周知しましょう。細かな事前共有が、服薬トラブルや現場混乱の防止につながります。
③薬局内へ、診療同行メモを共有
診療終了後、できるだけ早い段階で診療同行メモを撮影し、薬局内に共有します。これにより、追加薬の分包・中止薬の対応・不足薬の発注といった作業を先行でき、業務効率が大きく向上します。
まとめ
診療同行は、かかりつけ機能と地域連携を強化し、処方箋枚数と単価の双方を向上させる重要な戦略となります。最も大切なのは、医師との関係性づくりと信頼の積み重ねです。知識や経験以上に、日々の誠実な対応が評価につながります。円滑な診察に配慮しつつ、正確で有用な情報共有をスピーディーに行うことが大切です。
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