薬局経営は「2040年問題」にどう対応する?2026年調剤報酬改定をふまえた7つのポイント
2040年、団塊ジュニア世代が75歳以上となり、日本の高齢者人口はピークを迎えます。医療・介護需要が最大化する一方で、現役世代は急減し、社会保障制度の存続が危惧されています。
「患者のための薬局ビジョン」が示されてから約10年。薬局機能の転換は進みつつあるものの、依然として門前依存型の構造は根強く残っています。2026年の調剤報酬改定は、この停滞に対する明確なメッセージでもあります。
本記事では、2026年調剤報酬改定を踏まえ、2040年を見据えた薬局経営の7つの戦略を整理します。
1. 「2040年問題」とは?
2. 2040年問題と報酬改定を見据えた7つのポイント
2-1. かかりつけ薬剤師の育成・採用
2-2. 対物から対人業務へのシフト
2-3. 薬局DXによる生産性向上
2-4. 外来減少に備えた在宅医療の強化
2-5. 地域連携・医療/介護連携
2-6. 基本料と立地を考慮した薬局展開
2-7. 調剤ベースアップ評価料を踏まえた賃金設計
まとめ
1. 「2040年問題」とは?
「2040年問題」とは、日本の現役世代が急減し、高齢者人口がピークを迎えることで起こる社会構造の変化と、それに伴う諸問題の総称です。
これまで注目されてきたのは、団塊世代(1947〜49年生)が75歳以上となる「2025年問題」でした。しかし、その先にある2040年は、より深刻で構造的な課題が顕在化すると予測されています。
現役世代の不足
2040年には団塊ジュニア世代(1971〜74年生)が65歳以上となり、高齢者人口は約3,921万人と過去最多に達します。一方、それを支える現役世代は大きく減少。2000年には高齢者1人を3.3人で支えていた構造が、2040年には1.5人で1人を支える「肩車型」へ移行します。
社会保障制度の限界と多死社会
医療・介護費はさらに膨張し、医療・福祉分野では約96万人の人手不足が見込まれています。「お金を払ってもサービスが受けられない」状況が現実味を帯びるなか、年間死亡者数は約160万人に達する見通しです。病床不足を背景に、「在宅での療養・看取り」へのシフトが迫られています。
2. 2040年問題と報酬改定を見据えた7つのポイント
2026年度調剤報酬改定では、「対物から対人へ」を深化するため、地域医療への実質的な貢献度を評価する方針が示されています。以下では、中医協の答申を踏まえ、“選ばれる薬局”へ転換するための指針を整理します。
2-1. かかりつけ薬剤師の育成・採用
2026年調剤報酬改定では、かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料が廃止され、服薬管理指導料に組み込まれます。
これに伴い、同意書は廃止。代わって、以下の加算が新設されます。
・かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(50点/3ヶ月に1回)
・かかりつけ薬剤師訪問加算(230点/6ヶ月に1回)
今後は同意書の枚数ではなく、実績ベースでかかりつけ薬剤師の評価を行う方針です。
かかりつけ薬剤師の要件は、一部緩和されます。在籍期間1年以上から、6ヶ月以上へ短縮。休業前期間が合算可能となり、産休・育休後の復職も現実的となりました。
かかりつけ薬剤師の在籍は、薬局にとっての資産です。今回の改定を機に、かかりつけ薬剤師の育成ロードマップを見直してみましょう。
さらに、2027年6月適用予定の服用薬剤調整支援料2は、1,000点へと引き上げられる予定です。大幅な点数アップの背景には、ポリファーマシー対策や減薬提案といった薬剤師の主体的介入を、より多くの薬局に実践してもらうという狙いがあります。服用薬剤調整支援料2の適用開始までには時間があるので、要件の確認と算定の準備を進めましょう。
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第647回) 個別改定項目について 令和8年2月13日|厚生労働省
2-2. 対物から対人業務へのシフト
2026年度調剤報酬改定でも、引き続き対人業務の評価が強化されます。「どれだけ地域医療に貢献し、患者さんの治療アウトカムを向上させたか」という実効性が問われます。
令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査では、かかりつけ薬剤師を持つ患者さんは、持たない患者さんに比べ、「指導が役に立った」と感じる割合が16.6ポイント高いことが示されています。この貢献を患者さんの満足度向上だけで終わらせず、副作用の早期発見やポリファーマシー解消といった目に見える成果をデータで積み上げることが大切です。
2-3. 薬局DXによる生産性向上
対人業務へのシフトを進める上で重要となるのが、薬局DXです。
特に業務負荷の高い在宅対応薬局において、調剤ロボットや一包化監査システムの導入は、ヒューマンエラーの防止と大幅な時間短縮に寄与します。効率化で得た時間を、コスト削減に留めず、患者さんとの対話や他職種連携といった「付加価値(対人業務)」へ再投資することが大事です。
2026年調剤報酬改定では、医療情報取得加算と医療DX推進体制整備加算が廃止され、電子的調剤情報連携体制整備加算が新設される見込みです。電子処方箋システムを用いたリアルタイムの重複投薬チェック体制が要件化されるなど、情報のデジタル連携が算定の必須条件となります。
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第647回) 個別改定項目について 令和8年2月13日|厚生労働省
2-4. 外来減少に備えた在宅医療の強化
2040年に向けて外来患者は減少に転じ、在宅医療ニーズはピークを迎えます。処方箋枚数が伸びない時代において、単価向上・継続性・地域密着性を兼ね備えるのが、在宅医療です。
医療過疎地や住宅密集地など、きめ細やかな対応が求められるエリアでは、小規模薬局の機動力が強みとなります。その地域に深く入り込み、薬と健康のパートナーとしての存在を確立しましょう。
また、無菌調剤への対応や、緩和ケア・看取り期における薬学的管理など、対応領域を高度化させることで、地域住民や他職種からの信頼を勝ち取れます。
2-5. 地域連携・医療/介護連携
在宅医療チームの一員として薬剤師が活躍するには、医療機関や介護施設との強い連携が不可欠です。診療同行や他職種会議にも積極的に参加し、他職種と「顔が見える関係」を築いて信頼関係を深めましょう。
2026年度調剤報酬改定では、訪問薬剤管理医師同時指導料(150点/6ヶ月に1回)が新設されます。これは、医師と薬剤師が同時に患者宅を訪問することへの評価であり、診療報酬で新設される訪問診療薬剤師同時指導料(300点/6ヶ月に1回)と対になっています。
施設でなく、個人宅への訪問が対象である点に注意が必要ですが、退院時カンファレンスや日頃の情報共有を通じ、薬剤師側から処方設計の提案や同時訪問の打診を積極的に行うことで、算定につなげられます。
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第647回) 個別改定項目について 令和8年2月13日|厚生労働省
2-6. 基本料と立地を考慮した薬局展開
2026年度調剤報酬改定では、調剤基本料の算定区分が厳格化され、調剤基本料1のハードルが高くなります。
都市部や政令指定都市に新規開設する薬局は、条件により基本料2が適用されやすくなるだけでなく、新設される門前薬局等立地依存減算(▲15点)の対象となるリスクがあります。
さらに、医療モール型薬局の集中率計算ルールが変更され、同一建物内の医療機関はひとつとしてカウントされます。医療モール型薬局の多くは、受付回数に応じて基本料2、大手チェーンであれば基本料3ロへの降格を余儀なくされます。
薬局の規模を問わず、集中率が高い薬局への風当たりが厳しくなっています。今後、新規開設を考えている薬局経営者は、立地を十分に考慮した経営戦略の設計が必要です。
門前薬局や医療モール型薬局にとって、集中率の低下は難しく感じられるかもしれませんが、まずは分散できるようにさまざまな策を試してみることが大切です。広域に処方箋を応需できるよう、SNSによる情報発信や服薬フォローアップを通じたアプローチを強化し、患者さんの定着を促進しましょう。
出典
・中央社会保険医療協議会 総会(第647回) 個別改定項目について 令和8年2月13日|厚生労働省
・中央社会保険医療協議会 総会(第647回) 別紙1-3 調剤報酬点数表 令和8年2月13日|厚生労働省
2-7. 調剤ベースアップ評価料を踏まえた賃金設計
2026年調剤報酬改定では、薬剤師・事務員の賃上げを目的として、調剤ベースアップ評価料が新設されます。これを活用しつつ、適切に賃上げを行える体制を構築し、優秀な人材の確保に努めましょう。
ベースアップ評価料による原資を活かし、かかりつけ実績や在宅業務への貢献度に連動した手当などを導入することもひとつの手です。職員のモチベーション向上と、収益拡大の好循環を生み出せるでしょう。
ただし、調剤ベースアップ評価料は、将来的に縮小・廃止されるリスクがあります。加算が廃止された際にも賃金水準を維持できるよう、薬局DXによる業務効率化で捻出した利益を原資に組み込むなど、経営体質そのものの改善も大切です。
出典:中央社会保険医療協議会 総会(第647回) 個別改定項目について 令和8年2月13日|厚生労働省
まとめ
2040年問題を乗り越えるために、薬局が取り組むべきことは、地域に根ざした対人機能の強化です。かかりつけ薬剤師を育成し、在宅医療チームの一員として役割を果たしましょう。人材不足を補いつつ質の高いサービスを維持するには、薬局DXによる環境整備も欠かせません。
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