調剤報酬改定のベースアップ評価料対応は2024年と2026年でどう変わる?
現在、薬剤師と事務員の確実な賃上げを図るため、2026年度調剤報酬改定において、「外来・在宅ベースアップ評価料Ⅰ」を新設する方向で検討が進んでいます。
この記事では、2024年度改定と2026年度改定を比較しながら、ベースアップ評価料について詳しく解説します。
1. 2024年度と2026年度の「賃上げ対応」の違い
2. 2026年度改定のポイント
2-1. 「調剤基本料」から「評価料」へ
2-2. 賃上げ目標値の明確化(3.2%と5.7%)
2-3. 届出と報告の義務化(プロセスの厳格化)
3. 薬局経営者が対応すべきことと注意点
まとめ
1. 2024年度と2026年度の「賃上げ対応」の違い
2024年度調剤報酬改定では、薬局は医科や歯科とは異なる独自の仕組みで賃上げに対応していました。
しかし2026年度からは、医科の仕組みに合わせる形で、「ベースアップ評価料Ⅰ」という独立した評価を新設することが検討されています。
| 2024(令和6)年度改定 | 2026(令和8)年度改定(予定) | |
| 主な評価項目 | 調剤基本料の引き上げ(+3点) | 外来・在宅ベースアップ評価料I(新設) |
| 賃上げ目標 | 2024年:+2.5% 2025年:+2.0% |
2026年:+3.2% 2027年:+3.2% |
| 事務員の賃上げ | 上記目標に含まれる(一律) | +5.7% (重点的な引き上げ対象) |
| 仕組みの性質 | 基本料への一律上乗せ | 賃上げ実績に連動した評価 (届出制) |
| 事務負担 | 上乗せのため、特になし | 実績報告や届出が必要 |
出典:厚生労働省|中央社会保険医療協議会 総会(第641回) 議事次第
2024年度改定では、物価高騰や他産業の賃上げに遅れないよう、調剤基本料を全区分一律で3点(30円)引き上げ、その原資をもって薬剤師や事務職員の賃上げに充てる仕組みが採用されました。
一方、医科・歯科では「ベースアップ評価Ⅰ・ⅡI」という加算が新設されていましたが、薬局では基本料に組み込む方式が採られたため、引き上げ分が実際に賃上げへ回っているかを検証しにくいという課題がありました。
こうした背景を踏まえ、2026年度改定では、賃上げ原資を明確に薬剤師や事務員へ届けるため、評価料という形で制度を再設計することが検討されています。
2. 2026年度改定のポイントは独立した「評価料」への移行
2026年度改定の最大の特徴は、賃上げ対応を基本料から切り離し、人件費への充当を前提とした独立評価として位置づけた点にあります。
2-1. 「調剤基本料」から「評価料」へ
2026年度調剤報酬改定では、「ベースアップ評価料Ⅰ」が新設され、人件費への充当を目的とした独立評価が導入される予定です。
基本料の中に賃上げ原資を組み込む方式ではなく、賃上げを行った薬局を評価する仕組みへと転換します。
中医協では、医科における「外来・在宅ベースアップ評価料I(初診6点、再診2点)」との制度的な整合性を確保するとともに、薬局経営実態調査の結果を踏まえ、処方箋1受付あたり「4点」程度を軸とした評価が検討されています。
これは、2024年度の「3点」を実質的に上回る水準であり、より確実に賃上げ原資を確保する狙いがうかがえます。
また、評価料として独立させることで、国としても「賃上げに取り組む薬局」と「そうでない薬局」を明確に区別できるようになります。
単に点数を引き上げるのではなく、「待遇改善に取り組む薬局を評価する」という国の姿勢が表れているといえるでしょう。
2026年度改定は、点数水準以上に、「賃上げを実行したかどうか」が問われます。
薬局にとっては、評価料を算定するか否かが、今後の人材確保や職場環境の競争力にも直結する重要な判断材料となることが想定されます。
2-2. 賃上げ目標値の明確化(3.2%と5.7%)
2026年度改定で特に注目すべき点が、職種別に明確な賃上げ目標が示されたことです。
政府はデフレ脱却に向け、医療業界にも他産業と同水準の賃上げを求めています。
| 薬剤師 (40歳未満の勤務薬剤師等) |
2026年度・2027年度 それぞれで+3.2% |
| 薬局事務職員 | 2026年度・2027年度 それぞれで+5.7% |
中医協のシミュレーションでは、薬剤師3.2%、事務職員5.7%の賃上げを実現するために必要な原資を点数換算すると、中央値は処方箋1枚あたり3.9点となりました。
この結果から、4点の評価料を新設すれば、多くの薬局において国が掲げる目標水準を概ね達成できると考えられています。
特に、事務職員の5.7%という数字は極めて高く、最低賃金の引き上げや待遇改善を強く意識した設定であることがわかります。
2-3. 届出と報告の義務化(プロセスの厳格化)
これまでは「上乗せ」でしたが、ベースアップ評価料Ⅰの加算には算定要件が設けられます。
2026年度からは、ベースアップ評価料の算定にあたり、地方厚生局への事前届出が必須となる見込みです。
賃上げ計画を示さなければ、処方箋1枚あたり4点を算定することはできません。
さらに、実績報告の義務化も検討されており、報告が行われない場合や、正当な理由なく賃上げが実施されていない場合には、算定が認められなくなる可能性があります。
一方で、現場負担に配慮し、賃金計画書の廃止や報告様式の簡素化・統合といった見直しも議論されており、今後の詳細な制度設計が注目されます。
3. 薬剤師・事務員・経営者への影響は?
2026年度のベースアップ評価料の新設によって、給与明細にも大きく影響が及ぶ可能性があります。
特に、事務職員に対する5.7%という目標値は、これまでに例を見ない水準であり、待遇改善への期待は非常に大きいといえるでしょう。
一方で注意が必要なのが、薬剤師の賃上げ支援が「40歳未満の勤務薬剤師等」に限定されている点です。
管理薬剤師や薬局長、40代以上の中堅層は、原則として対象外となります。
若手薬剤師の処遇改善が進む一方で、中堅・ベテラン層の給与が据え置かれれば、「責任は重いのに報酬は上がらない」という不満が生じかねません。
現場では、管理薬剤師や中堅層が中心となり、指導、トラブル対応、在庫管理といった重要な役割を担っています。
これらの層の処遇改善を怠れば、組織のバランスが崩れ、離職リスクが高まる恐れがあります。
薬局経営者には、評価料の対象外となる職員についても、独自の賃上げや手当によるフォローを検討する必要があるでしょう。
まとめ
2026年度調剤報酬改定におけるベースアップ評価料の詳細は、3月にかけて段階的に明らかになる見込みです。
薬局では、薬剤師3.2%、事務職員5.7%の賃上げに必要な原資をあらかじめ試算し、「外来・在宅ベースアップ評価料Ⅰ」の算定に向けた準備を進めておきましょう。
また、この評価が給与にどのように影響を与えるかという点についても、薬剤師・事務員と共有することが大切です。
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