「門前から地域へ」2026年調剤報酬改定を受けて 薬局経営をどう変える?何を始める?
2026年度(令和8年度)調剤報酬改定は、これまでの「対物から対人へ」という流れをさらに加速させ、薬局のあり方を根本から問い直すものとなります。これまでの「門前で処方箋を待つ」形態から、「地域に飛び出し、患者さんの生活を支える」スタイルへの完全な移行が求められます。
この記事では、2026年度調剤報酬改定のポイントを整理し、薬局経営者が今取り組むべき具体的なアクションプランを解説します。
1. 【2026年度改定】「門前」から「地域」への完全移行
2. 薬局経営者が実践したい4つの経営転換
3. 調剤報酬改定対応に向けた具体的な戦略
3-1. 【在宅機能の強化】実績を作りに行く
3-2. 【DX推進】効率的な収益構造を確立する
3-3. 【人材育成】薬剤師と事務員の役割の再認識
まとめ
1. 【2026年度改定】「門前」から「地域」への完全移行
2026年度調剤報酬改定の最大の特徴は、「立地による収益モデルの終焉」と「機能と実績による評価の定着」です。
「患者のための薬局ビジョン」策定から10年が経過しました。しかし、実態としては処方箋集中率が85%を超える薬局数の割合は依然として高く、門前薬局が大半を占める状況が続いています。この現状を打破し、薬局の地域進出を促すため、2026年度調剤報酬改定では調剤基本料の抜本的な再編が検討されています。
具体的には、大型チェーン薬局や医療モール内薬局、特定の医療機関に依存する門前薬局への評価は、実質的な引き下げとなる見込みです。一方で、かかりつけ薬剤師機能や地域支援体制加算については、「届出」という形式要件から、「地域医療への具体的な貢献度・実績値」へと評価の軸が移ります。
今後は、施設基準を満たし、在宅薬局の看板を掲げるだけでは不十分です。夜間・休日の対応実績、在宅医療への介入件数、多職種連携の回数など、地域の中で役割を果たしている実態が数値として証明できなければ、薬局経営を維持することは困難となるでしょう。
出典:厚生労働省|中央社会保険医療協議会 総会(第631回) 議事次第
2. 薬局経営者が実践したい4つの経営転換
2026年度調剤報酬改定では、加算取得を目的とした経営から脱却し、薬局の収益構造と存在意義を根本から見直すパラダイムシフトが必要です。ここでは、具体的なアクションの土台となる、経営判断の4つの「軸」を解説します。
①立地から「信頼・提案型ビジネス」への転換
2026年度改定以降、門前という立地はもはや資産ではなく、場合によっては「減算のリスク」となり得ます。処方箋が来るのを待つ受動的な経営から、薬剤師が自ら地域の中に入り込み、医師、ケアマネジャー、訪問看護師などの多職種と連携しながら、「自分たちの薬局が地域にどう貢献できるか」をプレゼンする営業的視点を持つことが不可欠です。
②「患者アウトカムの最大化」を重視
治療期間を通じて患者さんを支え、いかに健康に寄与したかという「治療結果(アウトカム)」へと評価の軸をシフトさせます。服薬フォローアップによるアドヒアランス向上や、副作用の早期発見による重症化予防など、中長期的な視点で患者さんとの信頼関係を築くことが、結果としてかかりつけ率の向上や収益の安定につながります。
③薬局DXによるデータ駆動型経営へ
薬局DXの目的は、単なるツールの導入ではなく、生産性向上や経営改善です。電子処方箋やフォローアップツールから得られたデータを、経営の意思決定へ活用していきましょう。副作用報告、フォローアップ実施率、在庫回転率などをリアルタイムで数値化し、AIや分析ツールを使って客観的な経営判断を行うことで、労働集約型からの脱却を図ります。
④「人的資本の最適化」の実践
地域医療において「選ばれる薬局」となるためには、組織再編が急務です。薬剤師を対物業務から解放し、アセスメントや処方提案に特化させること。そして、事務員を調剤補助や店舗経営を担うパートナーとして再定義すること。それぞれの専門性を最大化させる人材配置こそが、これからの薬局の競争力となります。
3. 調剤報酬改定対応に向けた具体的な戦略
経営の軸を具体化するために、以下の3つの柱に沿って戦略を構築します。
3-1. 【在宅機能の強化】実績を作りに行く
在宅業務への評価は調剤報酬改定のたびに高まってきましたが、2026年度はそれが「できれば望ましい業務」から「生き残りのための絶対条件」へと変わる可能性が高いです。
多職種連携への積極参加
薬剤師の多職種連携への参加率は、他職種に比べて依然として低いのが現状です。在宅初期段階から関与することが望ましいとされています。薬局としては、地域のサービス担当者会議や多職種カンファレンスへの参加を、重要な「主業務」として位置づける必要があります。薬剤師が介入することでポリファーマシーが解消され、医療費削減に貢献できることを、具体的症例(トレーシングレポート)をもって地域に示しましょう。
麻薬管理・高度な調剤への対応
在宅医療の中でも、特に終末期医療(ターミナルケア)における薬剤師の関与は高く評価されます。医療用麻薬の備蓄や無菌調剤への対応は、地域医療における薬局の信頼度を決定づける差別化要因のひとつです。設備投資はもちろん、24時間対応できる体制を構築することが望まれます。
トレーシングレポートや処方提案の質向上
医師との情報共有を単なる事実報告ではなく、「患者さんのADLや認知機能から判断して、この剤形は不適切ではないか」「副作用の初期症状が見られるため、減量を検討してはどうか」といった専門的な処方提案を盛り込みます。薬剤師の専門性を高めることは、医師をはじめとする他職種との信頼構築にも大きく寄与します。
3-2. 【DX推進】効率的な収益構造を確立する
対人業務を拡充するためには、対物業務を徹底的に効率化し、薬剤師の時間を創出する必要があります。
対物業務の自動化
調剤ロボット、自動分割機、一包化監査システムなどを導入することで、薬剤師が調剤業務に縛られる時間を削減します。導入の際は「在宅患者が〇名を超えたら導入する」といった数値基準を設け、投資対効果を明確にします。機械化によって生まれた時間を、患者さんとの対話や在宅訪問に充てることで、対人業務報酬の最大化を図ります。
電子処方箋・マイナ保険証の活用
2026年度には、電子処方箋の普及がさらに進む見通しです。リアルタイムで併用薬や検査値を把握できるメリットを活かし、重複投薬の回避や適切な処方設計分析を行うことで、処方設計分析料などの高度な加算算定につなげます。
オンライン服薬指導とフォローアップツールの導入
公式LINEや専用アプリを活用し、患者さんの服薬中の体調変化を継続的にキャッチアップする仕組みを整えます。服薬期間中フォローアップの実績づくりはもちろん、次回来局時の指導の質向上や患者さんとの関係強化にもつながります。
3-3. 【人材育成】薬剤師と事務員の役割の再認識
「薬剤師にしかできないこと」にリソースを集中させるため、薬局チーム全体の底上げを行います。
薬局事務員(調剤補助)の活用と戦力化
薬剤師から事務員へのタスクシフトを完遂させ、事務員を戦力化します。事務員に求めるスキルを明確化し、キャリアパスや評価制度を整備することで、モチベーションを高めながら組織の生産性向上を図ります。
コミュニケーションとアセスメントの教育
これからの薬剤師に求められるのは、高度な薬学知識と「患者さんの生活に踏み込む力」です。フィジカルアセスメントのスキルや、コーチングを用いた指導技術の習得を支援する研修制度を整え、オーダーメイドの服薬指導ができる人材を育成します。
まとめ
2026年度の調剤報酬改定は、門前薬局にとっては厳しい試練となりますが、在宅や地域密着型経営を推進してきた薬局にとっては、その価値が正当に評価される大きなチャンスです。
地域支援体制加算や在宅業務に関する実績を積み上げ、対人業務拡充に向けた薬局DXを進めましょう。薬剤師と事務員が一丸となり、在宅薬局として地域の患者さんを支えるビジョンを共有することが重要です。
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