2026年の調剤報酬改定はどうなる? 全体の方向性と見直しポイントをレポート!
2026年(令和8年)度の調剤報酬改定は、2024年度の「医療・介護・障害福祉」のトリプル改定を経て、2040年の社会保障制度の再構築を見据えた重要なステップです。薬局・薬剤師が「対物」から「対人」へと完全に脱皮し、地域医療のインフラとして機能しているかを厳格に問われます。
この記事では、現在進められている議論の全体像と、特に注目すべき5つのポイントについて詳しく解説します。
1. 2026年度調剤報酬改定の全体像
2. 門前薬局(面前薬局)の役割見直しと地域偏在の解消
3. 「栄養保持の医薬品」の給付適正化
4. OTC類似薬の保険見直しと選定療養の拡大
5. 調剤基本料の見直しと「調剤管理」の充実
まとめ
1. 2026年度調剤報酬改定の全体像
2026年度調剤報酬改定の根底にあるのは、「価値に基づく評価」への本格的な移行です。厚生労働省は、これまでの数量ベースの評価を改め、患者さんの健康維持にどれだけ寄与したかという「アウトカム」を重視する姿勢を鮮明にしています。
中央社会保険医療協議会(中医協)での議論では、以下の3点が重点課題として挙げられています。
①対人業務の高度化とエビデンスの提示
対人業務の実施有無ではなく、「医療的価値」が問われる流れが加速すると考えられます。具体的には、副作用の早期発見・重篤化防止、服薬アドヒアランス向上による治療継続率の改善、医師への処方提案など、具体的な実績が評価のポイントとなります。
②薬剤師の偏在解消と薬局の機能分化
現在、都市部や特定医療機関の門前薬局に薬剤師が集中している一方、地方や在宅医療を担う現場では慢性的な人材不足が課題となっています。こうした構造的問題を是正するため、地域包括ケア・在宅医療・高度薬学管理といった役割を明確に持つ薬局を重点的に評価する仕組みが議論されています。
③社会保障の持続可能性の確保
物価高騰や賃上げへの対応を考慮しつつも、社会保障制度の持続可能性を確保する視点が、これまで以上に強く打ち出されています。その中で議論されているのが、「保険給付として評価すべき行為・薬剤を、医学的必要性の高いものに絞り込む」という考え方です。形式的な算定は見直しの対象になりやすく、薬剤師による専門的な判断・介入が必要な業務に評価が集中する可能性は高いでしょう。
2. 門前薬局(面前薬局)の役割見直しと地域偏在の解消
これまでも門前薬局(面前薬局)に対しては厳しい適正化が行われてきましたが、2026年度調剤報酬改定では、「2035年に地域で暮らす患者本位の医薬分業の実現」に向け、薬局の立地評価がさらに厳格化される見通しです。
特定の医療機関との癒着解消
処方箋集中率が高い薬局、特に敷地内薬局や特定のクリニックモールに依存する薬局に対する調剤基本料のさらなる引き下げが議論されています。
「門前から地域へ」のインセンティブ転換
夜間・休日の対応実績、小児や周産期医療への貢献、地域の備蓄拠点としての役割を果たす薬局には、新たな加点や基本料の優遇が検討されています。
薬剤師の地域偏在対策
都市部と地方での薬剤師の偏在を解消するため、過疎地や医療資源の乏しい地域での開局・継続を支援する地域限定の評価体系が導入される可能性があります。
出典:厚生労働省|中央社会保険医療協議会 総会(第631回)議事次第|調剤について(その2)
3. 「栄養保持の医薬品」の給付適正化
エンシュア・リキッドやラコールなどの経腸栄養剤について、保険給付の在り方が大きな論点となっています。
本来、経腸栄養剤は疾患により経口摂取が困難な患者さんのためのものですが、実態として「栄養補助食品」のような利用が見受けられます。2026年度改定では、「医学的必要性」の定義をより厳格化する方向です。
市販の栄養補助食品との価格差を考慮し、自己負担額を上乗せする「選定療養」の考え方の導入や、嚥下機能評価等の具体的な臨床データがない場合の算定制限が予測されます。薬剤師には、安易な処方継続ではなく、食事形態の工夫や多職種連携による栄養管理への関与が求められます。
出典:厚生労働省|中央社会保険医療協議会 総会(第635回)議事次第|個別事項について(その15)医薬品その他
4. OTC類似薬の保険見直しと選定療養の拡大
セルフメディケーションの推進と医療費抑制のため、OTC医薬品(市販薬)と成分が類似する薬剤(湿布、ビタミン剤、花粉症薬など)の保険給付を制限する議論が活発化しています。2024年10月から始まった「長期収載品の選定療養」の仕組みを、OTC類似薬にも広げる案が有力です。
医師が医学的に必要と判断した場合は従来通り保険適用を維持しつつ、患者さんの希望による処方の場合は、市販薬相当額との差額を「選定療養費」として自己負担となる可能性があります。
とはいえ、こどもや慢性疾患を抱えている人などへの配慮も求められており、具体的な方針は現在検討中です。薬剤師には、選定療養の仕組みやOTC医薬品の有効性について、患者さんが納得できるよう具体的かつ専門的に説明する役割がより強く求められます。
出典
厚生労働省|第205回社会保障審議会医療保険部会議事次第
厚生労働省|中央社会保険医療協議会 総会(第636回)議事次第
5. 調剤基本料の見直しと「調剤管理」の充実
門前から地域への見直しに伴い、調剤報酬の根幹である「調剤基本料」は、経営実態を反映したよりシビアな区分へと再編される可能性が高いです。
基本料の区分再編
「患者のための薬局ビジョン」策定から10年が経過しましたが、依然として処方箋集中率が85%を超える薬局が増加しています。このため、調剤基本料については、損益率の実態調査に基づいた再編が検討されており、特に大型チェーン薬局が算定する「基本料3」や、特定の医療機関と賃貸関係にある場合の「特別調剤基本料」は、さらなる引き下げの圧力がかかっています。
「調剤管理料」と対人業務の評価
2022年度に新設された「調剤管理料」については、より高度な薬学的管理を評価するために、さらなる充実へ進む方向です。たとえば、服薬フォローアップは、副作用検出率と患者満足度が高いことから、点数配分の比重がさらに大きくなると考えられます。また、かかりつけ薬剤師については、形式的な同意書の取得ではなく、「重複投薬の解消」「残薬調整による薬剤費削減」といった機能と実績が評価される仕組みが検討されています。
まとめ
2026年度調剤報酬改定は、薬局の淘汰と集約がさらに進む厳しいものとなります。薬局は、かかりつけ薬剤師指導料や地域支援体制加算の要件をクリアするだけでなく、実際に地域医療に貢献している「証拠」をデータで示せるように準備しておきましょう。
具体的な報酬設定は、2025年末から2026年初頭にかけて公表される答申で明らかになります。特に「選定療養に係るOTC類似薬の対象範囲」と「調剤基本料の区分統合」の動向には、引き続き注視が必要です。
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