在宅薬局の店長・リーダーは必読! 組織力強化と部下の成長を実現するマネジメントとは
在宅薬局の現場スタッフに求められるスキルは、調剤業務、多職種連携、訪問スケジュールの調整、患者さんやご家族への細やかな対応など多岐にわたります。柔軟性と判断力が問われる環境下において、薬局の安定運営を左右するのは、店長やリーダーのマネジメント力です。
この記事では、きらり薬局における店舗管理者やエリアマネージャーが語るノウハウをもとに、薬局のリーダーが身につけるべきマネジメントの在り方を解説します。
| 本記事は、2025年11月25日に開催したWEBセミナー「「指導」から「設計」へ! 店舗の組織力を高め、部下の成長を加速させるマネジメントの考え方」の内容をもとに作成しています。きらりプライムサービスの最新セミナー情報は、こちらよりご確認ください。 |
1. 薬局におけるリーダー(管理職)の役割の再定義
2. 「指導」から「設計」へ — 自走する組織を作る3つのステップ
2-1. 仕事の権限と責任を明文化する
2-2. 失敗を投資と捉える環境づくり
2-3. 行動KPIで因果関係を可視化する
3. 在宅薬局エリアマネージャーの1日から見る管理職の動き
4. 組織力を高めるためにリーダーが意識すべき視点
4-1. 感情論ではなく「数字」を共通言語にする
4-2. スタッフに成功体験を積ませる
4-3. 店長やリーダー間の関係性が組織の空気を決める
まとめ
1. 薬局におけるリーダー(管理職)の役割の再定義
在宅訪問を行う薬局は業務工程が複雑で、突発的な対応も頻発します。このとき、多くの現場では、「自分でやったほうが早い」と判断し、管理職があらゆる業務を抱え込むという様子が見られます。
確かに、経験豊富なリーダーが介入すれば、目の前のトラブルは迅速に解決するでしょう。しかし、リーダーが解決を一手に引き受け続けると、現場スタッフは「困ったらリーダーが何とかしてくれる」という思考停止に陥ります。 この「解決のループ」は、リーダー自身の業務負荷を高めるだけでなく、組織としての成長を止めてしまいます。
さらに、日々のトラブル対応に忙殺されることで、リーダー本来の役割である戦略立案や人材育成にリソースを割けなくなります。結果として、業務の成果が特定の個人の能力に依存する「属人化」が進行します。属人化した組織は脆く、スタッフの退職や異動のたびにパフォーマンスが低下し、在宅実績や加算算定の継続性にも悪影響を及ぼしかねません。
在宅薬局のリーダーに今求められているのは、プレイヤーとして走り回ることではなく、「指導者」から「仕組みの設計者」へと役割をシフトすることなのです。
2. 「指導」から「設計」へ — 自走する組織を作る3つのステップ
現場を変えるには、マネジメントの構造を変える必要があります。部下が自然と成長し、自律的に動けるような環境を設計するための3つのステップを紹介します。
2-1. 仕事の権限と責任を明文化する
スタッフに仕事を任せる際、「困ったときは助けるから、とりあえずやってみて」という曖昧な表現を使っていないでしょうか。一見優しい言葉かけですが、これではスタッフに当事者意識は芽生えにくくなります。
重要なのは、「この業務の最終責任と権限はあなたにあります」と明文化して伝えることです。 責任の所在を明確にすることで、業務は「やらされ仕事」から「自分の仕事」へと昇華されます。もちろん、リーダーは放置するのではなく、セーフティーネットとして見守る姿勢が必要ですが、あくまでハンドリングは本人に委ねることが主体性を育む第一歩です。
2-2. 失敗を投資と捉える環境づくり
権限を委譲すれば、当然ながら失敗のリスクも生じます。人材育成で大切なのは、「失敗はコストではなく、成長のための投資」であるという認識です。
「人は教えられた時ではなく、経験して振り返った時に育つ」と言われます。知識として知っていることと、実践できることには大きな隔たりがあります。 失敗も含めた試行錯誤のプロセス自体を評価し、チャレンジする姿勢を承認する土壌を整えることが、店長やリーダーの役割のひとつです。
2-3. 行動KPIで因果関係を可視化する
薬局経営において、売上や加算件数などの結果数値を目標にすることは一般的ですが、それだけではスタッフの具体的な行動は変わりません。 結果を変えるには、その結果を生み出すための「行動KPI」を設計することが重要です。
たとえば、「かかりつけ薬剤師指導料」の算定数を伸ばしたい場合、「何件取れたか」を問うのではなく、プロセスに焦点を当てます。
- かかりつけ薬剤師機能に関する「お声がけ」を何人に実施したか
- かかりつけ薬剤師の同意書を何枚取得できたか
このように行動レベルで目標設定を行い、振り返りを繰り返すことで、スタッフは「この行動を積み重ねれば成果に繋がる」というロジックを体感的に理解できるようになります。これが、再現性のある成長へとつながります。
3. 在宅薬局エリアマネージャーの1日から見る管理職の動き
では、実際に組織をマネジメントする立場にある人間は、どのような動きをしているのでしょうか。きらり薬局のエリア長(複数店舗を統括するエリアマネージャー職)の実務を例に、その動きを見てみましょう。
きらり薬局エリア長の主な業務フロー
| 業務カテゴリ | 業務内容 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 現場管理 | ・人員配置確認、各店舗とのオンライン朝礼
・スケジュール確認 ・店舗での調剤・監査・在宅訪問 ・トラブル対応、施設の定期訪問 ・棚卸進捗や在庫月数のチェック ・店舗巡回 |
|||||
| 育成 | ・スタッフとの面談、教育指導
・エリア長巡回(各店舗のコンプライアンス遵守状況の確認) |
|||||
| 意思決定 | ・稟議や報告書の承認業務
・新規開局や施設契約時の導入準備 |
|||||
| 戦略・分析 | ・各種会議への参加(直営店会議、経営会議、薬局長会議等)
・経営数値のデータ管理・分析 ・会議資料作成 ・日誌作成 |
|||||
エリア長は、現場の薬局長をはじめ、経営層や管理職、営業などと密に連携し、薬局経営に携わります。業務は多岐にわたりますが、きらり薬局のエリア長が特に注力しているのは、以下の「仕組みの運用」です。
①「逆算思考」に基づく詳細なスケジュール管理
予定を入れるだけのスケジュール管理ではなく、期限と最終ゴール(いつまでに、どうなっていればよいか)を設定させ、そこから逆算してタスクを配置するよう指導します。これにより、スタッフに「先を見通す力」を養わせます。
②エリア長巡回による業務品質の標準化
各店舗を訪問するエリア長巡回では、チェックリストのフォーマットを使用し、客観的に項目を判定します。具体的には、
- オペレーションは守られているか
- スケジュール管理は機能しているか
- 新人教育の進捗は計画通りか
- 廃棄薬の処理は適切か
いった内容をリスト化し、店舗ごとのバラつきをなくすための指導を行います。
②課題の早期発見・メンタルサポート
月1回程度の店舗ミーティングに加え、期ごとにスタッフ面談を実施し、現状を細かく把握します。数字には表れないスタッフのモチベーションや職場の人間関係を定点観測することで、問題が大きくなる前に対処することが可能です。
4. 組織力を高めるためにリーダーが意識すべき視点
仕組みだけでなく、リーダー自身のマインドセットも組織の空気に大きく影響します。
4-1. 感情論ではなく「数字」を共通言語にする
「最近なんとなく忙しい」「みんな頑張っている」といった感覚的な会話では、適切な解決策が見つかりません。
たとえば、売上の増減が見られた場合は、「なぜ売上が増えたのか/減ったのか」ということを、数字を交えて対話します。「先週に比べて在宅訪問が5件増えたため、調剤時間が◯時間増加している」といったように、事実と数字をベースに話す文化(ファクトベース)を作りましょう。数字は誰の目にも明らかであり、感情的な対立を防ぎ、建設的な議論が行えます。
4-2. スタッフに成功体験を積ませる
部下の成長を最優先にするならば、あえて「正解を教えない」というのも、選択肢のひとつです。 見込み数値と実績に乖離がある場合も、その理由を本人に考えてもらいましょう。
自分で考えた仮説をもとに行動し、それが成果に繋がったとき、はじめて成功体験が得られます。この積み重ねこそが、自走するスタッフを育てる秘訣です。
4-3. 店長やリーダー間の関係性が組織の空気を決める
店長、エリア長、リーダー同士の関係性は、現場スタッフにも影響を与えます。管理職同士が信頼し合い、良好な関係を築いている職場は、心理的安全性が高く、離職率も低い傾向にあります。
また、リーダー自身が「楽しそうに働いているか」も重要です。「店長のようになりたい」と憧れられる姿を見せることは、どんなに優れた研修よりも強力な動機づけとなり、一人ひとりの自律的な成長を促します。
まとめ
在宅薬局は業務工程が複雑で、属人化しやすい環境だからこそ、店長・リーダーには「自分がやる」から「考えて動く人を育てる」への意識改革が求められています。
マネジメントのポイントは、「指導」から「設計」への転換です。 トップダウンの一方的な指示ではなく、スタッフ一人ひとりの成長をサポートする伴走型のマネジメントを実践することで、現場の成長と地域医療への貢献を両立する強い組織を築いていきましょう。
きらりプライムサービスでは、薬局管理者向けの研修や、実践的なマネジメントのアドバイスを行っています。属人化からの脱却や、自走する組織づくりにお悩みの薬局経営者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


