薬局経営のチェックポイント 成功する薬局と経営が厳しい薬局の違いとは?

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薬局経営のチェックポイント 成功する薬局と経営が厳しい薬局の違いとは?

1. 薬局経営の見直しが必要な理由

これまでの調剤薬局は、処方箋に基づいた調剤をするだけでも、安定した経営を維持することができました。しかし、薬局業界には大きな変化の波が訪れており、対策を取らなければ十分な利益を確保するのは難しくなっています。

①調剤報酬改定の厳格化

調剤報酬改定では対人業務の評価が強化され、対物業務は実質的な引き下げとなっています。この流れは今後も続くと考えられるため、処方箋調剤だけを行っている薬局は加算が取れず、経営も厳しくなるでしょう。

②地域包括ケアシステムの推進

日本は人口が減少する一方で、高齢者の割合が増加しています。2025年には団塊世代が75歳以上となり、2040年には高齢者人口がピークに達する見込みです。高齢者の生活や介護を地域で支える仕組みを作るため、各自治体では地域包括ケアシステムの構築を重要課題としています。薬局・薬剤師も地域包括ケアシステムを構築する一員であり、主体的な在宅医療への参入が望まれています。

③調剤薬局業界の再編の本格化

調剤薬局は年々数が増え続け、現在は全国で6万軒を超えています。今後は大手チェーン薬局への集約化が進み、新たな制度に対応できない薬局は淘汰されると見られています。

薬局が生き残るためには、新たなニーズに対応していく必要があります。業界が転換期にある今こそ、薬局経営を見直す絶好のチャンスです。業界の変化に取り残されないよう、不足している部分を補い、患者主体の薬局経営に切り替えていきましょう。

2. 薬局経営のチェックポイント

成功する薬局は、経営方針を固めて計画的にサービスを展開しています。ここで紹介する「薬局経営のチェックポイント」を参考に、薬局の経営状況を見直しましょう。

2-1. 薬局独自の強みがあるか

薬局の集客競争は激化しており、強みを持たない薬局は患者さんを呼び込むことが難しくなっています。地域住民から「この薬局に行きたい」「ここの薬剤師さんなら信頼できる」と思ってもらうために、薬局独自の強みを作る必要があります。

薬局の強みを作るにはさまざまな方法がありますが、まずは薬局経営者がどのような薬局にしたいかを明確にすることが大切です。地域の特性に応じて、必要なサービスを導入しましょう。

薬局の強みづくりのヒント

  • 処方箋調剤の待ち時間を削減できる処方箋予約システムがある
  • 在宅訪問やオンライン服薬指導などを利用できる
  • 物販で他の薬局にはない商品を購入できる
  • キッズスペースが充実している
  • 薬剤師のスキル・専門性が高い
  • 店内が車いす・ベビーカーでも移動しやすい
  • 駐車場が広く、停めやすい
  • 用事がなくても気軽に訪問できる雰囲気がある

上記は、薬局の強みづくりの一例に過ぎません。地域住民の意見も取り入れつつ、独自性の高い薬局をめざしましょう。

2-2. 在宅訪問など新たなサービスを展開できているか

患者本位の医薬分業の実現に向けて、在宅訪問やICTツールの制度が整えられています。多様化するニーズに応えるためには、薬局がすすんで新たなサービスを導入する必要があります。

 

中小薬局では、薬剤師がIT機器を使えない、薬剤師の人数が足りないなど、さまざまな課題を抱えていることでしょう。しかし、それらを理由に新しいサービスの導入を先延ばしにしていては、市場に取り残されてしまいます。厚生労働省は「患者のための薬局ビジョン」にて、2025年までにすべての薬局をかかりつけ薬局にすることを目標として掲げました。かかりつけ機能は、これからの薬局に最低限必要なサービスとして位置づけられているのです。

 

かかりつけ薬局となるためには、在宅対応・24時間対応が必須です。在宅対応やオンコール体制を整えるには、ICTツールの導入も欠かせません。オンライン服薬指導や電子処方箋をはじめ、デジタル化・オンライン化に取り組むことが求められています。

2-3. 経費を抑えられているか

薬局の利益率を確保するためには、経費を抑えることも大切です。薬局の主な経費には、家賃・人件費・薬剤費の3つがあります。

  • 家賃

店舗を借りて薬局を経営している場合、必ず家賃がかかります。家賃を下げる方法として、まず1つ目に家賃交渉があります。契約期間が長い場合や、土地価格が低下している場合などは、家賃交渉が受け入れられやすい傾向にあります。契約更新時など、切り出しやすいタイミングを狙って値下げを交渉してみましょう。

2つ目が、家賃の安い店舗に移動する方法です。引越し費用がかかるものの、長い目で見れば家賃の安い店舗に移動したほうがお得になるケースもあります。基本的に、都心や繁華街といった交通の便がいいところほど、家賃が高くなります。その分、医療機関が近隣にあったり、人通りが多かったりと、患者数の見込みが大きいかもしれません。ただ、今後は薬局の立地よりも、機能で評価される時代です。あえて住宅街や郊外といった都心と離れた場所に店舗を構えるのも、生き残りの策の1つと言えるでしょう。

  • 人件費

薬局の人件費が適切かどうかは、労働分配率によって知ることができます。労働分配率は、薬局が生み出した付加価値の中で、人件費が占める割合を示す指標です。

 労働分配率(%)=人件費 ÷ 付加価値 × 100

人件費には、役員報酬や給与、福利厚生費などを含みます。付加価値の計算方法はいくつかありますが、中小薬局であれば「売上高-外部購入価額(控除法)」にて算出するとよいでしょう。

労働分配率が高いほど、人件費率が高いことを意味します。労働分配率は低ければよいというわけではなく、適正な水準で保つことが大切です。

労働分配率の理想は、50%前後とされています。ただ、薬局の場合は薬剤師という専門性の高い人材を雇っているため、目安として60%を超えない目安にするとよいでしょう。

むやみに給与や福利厚生をカットしてしまうと、薬剤師が離職を選ぶ可能性もあります。薬局の人件費を削減する際には、給与水準の低い調剤補助員を採用したり、自動化を進めて薬剤師の業務負担を軽減したりといった対策を取り、働きやすい環境を維持することが大切です。

  • 薬剤費

近年は薬価の引き下げが続き、薬価差益を確保するのが難しくなっています。少しでも利益を確保するためには、いかに薬剤購入費を抑えられるかが重要です。

個人薬局や中小薬局は大量購入ができないため、大手に比べると医薬品卸への価格交渉が難しい傾向にあります。このような場合、医薬品購入交渉代行や共同購入といったサービスを利用すると、薬価コストの削減が見込めます。

医薬品購入交渉代行とは、薬局と医薬品卸の間に第三者の企業が介入し、価格調整を行ってもらうサービスのことです。共同購入は、ボランタリーチェーンなどに加盟し、他の薬局と同時注文・大量購入をすることで、医薬品購入費用を抑えられる仕組みとなっています。それぞれのサービスによって規定やコストが異なるので、しっかりと比較検討を行うことが大切です。

2-4. 伸びるサービス・見直すサービスが明確か

今ある薬局のサービスのうち、今後必要となるものと見直すべきものを見極めて、本当に求められる機能を強化しましょう。薬局の経営状況を客観的に判断し、ときには大きく方針を変更する勇気も必要です。

たとえば、処方箋枚数が一定の量を確保できているにもかかわらず、なかなか利益が上がらない場合は、ただ処方箋枚数を増やすよりも、処方箋単価を上げるための施策が必要です。薬剤師の残業が多い場合は、「残業をしないこと」を薬剤師に強いるよりも、「自動化による業務効率化」を進めるほうが効果は見込めるでしょう。

薬剤師の教育費や自動化推進のための導入費などは、薬局の質を高めるための必要経費です。目の前の状況だけで判断せず、今後のビジョン達成に向けた経営戦略を練りましょう。

2-5. 業務が見える化できているか

業務効率化を促し、適正な状態で薬局経営を回すためには、薬剤師の人員配置や業務フローなどを「見える化」することが大切です。

薬歴作成や在宅訪問、多職種連携など、薬剤師の業務は多岐にわたります。漠然と業務を行っていては生産性が上がらず、人件費も増大するばかりです。業務を細かく見える化して標準化を図ることで、薬剤師の業務負荷が軽減され、利益率向上につながります。

薬局で「見える化」に取り組むこと

  • 業務フローの洗い出し・整理
  • 事務対応のルール化
  • 各スタッフのタスクの見える化
  • 各店舗の在庫状況の見える化
  • 情報共有の仕組み作り
  • スケジュールボードの設置

見える化に取り組む際には、業務の工程を一つずつ洗い出し、細かく分析を行います。現場の意見は重要ですが、あえて現場関係者ではない立場から、客観的に問題点を指摘することが有効となるケースもあります。すべての業務を見える化するには時間がかかるものの、まずは取り組みやすい部分から始めて、徐々に範囲を広げていきましょう。

3. 成功する薬局が取り組んでいる施策

ここでは、薬局経営を成功させるための、具体的な施策を紹介します。ぜひ、薬局経営のチェックポイントと合わせて確認してください。

3-1. 薬局DXの推進

薬局DXとは、デジタル化やICTツールの導入によって、薬剤師の働き方改革や薬局の組織改革を促すことです。オンライン服薬指導や電子処方箋の導入が始まり、オンライン体制が整いつつあります。デジタル化やICT活用によって、薬剤師の働き方や患者さんとの関わり方が、より便利な形へと変わるでしょう。

たとえば、オンライン服薬指導を導入すると、薬剤師のリモートワークが可能となるので、育児中の薬剤師も仕事に復帰しやすくなります。離島や郊外の薬局では、在宅薬剤師の採用によって人材不足解消が期待できるでしょう。

在宅業務では、リアルタイムで情報共有ができるクラウド型システムが役立ちます。最新の情報を共有できるので、薬局間・薬剤師間の連携を強化することが可能です。

そのほか、在庫管理システム、調剤監査システム、電子版お薬手帳、調剤ロボットなど、さまざまなツールがあります。薬剤師の業務効率化が叶えば、その分を患者さんへのサポートに時間を費やすことができるので、必要性の高いツールから導入を始めましょう。

3-2. 多職種連携・薬薬連携の強化

在宅医療の需要が増している医療・介護業界では、多職種連携の強化に注目が集まっています。これまでも多職種連携の重要性は述べられてきたものの、DXに遅れを取っている医療・介護業界では、十分な多職種連携が機能できていないのが現状です。

多職種連携を強化するためには、先に述べた薬局DXが重要となります。リアルタイムで情報共有ができるシステムを導入し、医療機関や医療関係者と、些細な情報でもこまめにやり取りできる関係性を築きましょう。

薬局薬剤師・病院薬剤師間の「薬薬連携」の強化も重要です。薬薬連携がしっかり取れていれば、患者さんの入退院時に切れ目のないサポートを提供できます。

地域の医療機関や専門職種との関わりを持つために、勉強会や地域ケア会議などにも積極的に参加することが望まれます。薬局外の活動にも目を向けて、他職種や地域との関わりを深めましょう。

3-3. 薬局認定制度の取得

強みづくりの一環として、薬局認定制度を取得する薬局も増えています。薬局認定制度とは、患者さんが自分に適した薬局を選択できるよう、特定の機能を持つ薬局に対して、都道府県知事による認定が受けられる制度です。

地域連携薬局

「地域連携薬局」とは、患者さんの入退院時や在宅医療の対応時に、地域の医療機関や他の薬局と連携し、患者さんの療養をサポートする薬局のことです。かかりつけ機能と対応する認定制度として位置づけられています。

専門医療機関連携薬局

「専門医療機関連携薬局」とは、がんなどの専門医療機関と連携を取りつつ、より高度な薬学管理や特殊な調剤に対応できる薬局のことです。他の薬局に対して医薬品の提供や情報発信を行い、地域における専門的な薬学管理の対応体制の仕組みづくりにも貢献します。高度薬学管理機能に対応する認定制度です。

2023年11月時点では、地域連携薬局数は4,011軒、専門医療機関連携薬局は173軒となっています。地域連携薬局は順調に数を伸ばしていますが、専門医療機関連携薬局はまだまだ少ないのが現状です。
(出典:厚生労働省「薬局・薬剤師に関する情報「認定薬局の件数」

今後、在宅医療の需要増加に伴い、地域連携薬局や専門医療機関連携薬局を選択する患者さんも増えると考えられます。認定薬局であることは薬局として大きなアピールとなるので、ぜひ取得に挑戦してください。

まとめ

薬局経営を成功させるには、薬局独自の強みをつくり、在宅訪問などの新しいサービスを積極的に導入する必要があります。また、業務を見える化すると、無駄な経費や労力を削減でき、生産性向上をめざせます。

薬剤師の業務を効率化し、多様なサービスに対応するためには、薬局DXや多職種連携の強化に取り組むことも大切です。あらゆる角度から薬局経営の戦略を練り直しましょう。

「KIRARI PRIME サービス」では、在宅薬局の運営をサポートしています。コスト削減に向けた医薬品購入交渉代行サービスや、在宅薬剤師の育成、加算算定のためのポイントなどをお伝えしています。在宅業務にお悩みの薬局経営者の方は、ぜひ一度「KIRARI PRIME サービス」にお問い合わせください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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