「門前から地域へ」2026年調剤報酬改定を受けて 薬局経営をどう変える?何を始める?

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長期収載品の選定療養が2024年10月にスタート 薬局が押さえておきたい制度の内容と加算要件

2026年の調剤報酬改定では、対人業務の実績が重視される中で、従来の処方箋依存型モデルからの脱却が求められています。合わせて、DX推進による業務効率化やサービス高度化も不可欠となりました。

こうした変化は負担である一方、薬剤師が専門性を発揮し、地域医療における存在価値を高める絶好の機会でもあります。この記事では、かかりつけ機能の強化や在宅医療への対応、人材育成など、これからの薬局経営に求められる視点を体系的に解説します。

1. 【2026年度改定のポイント】「門前」から「地域」への完全移行

2026年度調剤報酬改定の特徴は、「立地依存からの脱却」と「機能と実績評価への転換」にあります。

2015年に打ち出された「患者のための薬局ビジョン」から10年が経過したものの、依然として処方箋集中率85%超の薬局は多く、門前薬局が大半を占めています。その結果、薬局ごとの機能差や対人業務の質が、評価に反映されにくい状況が続いていました。

この課題に対応するため、2026年度改定では、薬局の評価軸を「立地」から「機能」へと大きくシフトさせる方針が明確に示されました。かかりつけ機能の発揮や在宅訪問の実績、多職種連携など、薬剤師の介入による成果(患者アウトカム)を基準とした評価体系が本格化します。

出典:厚生労働省|中央社会保険医療協議会 総会(第631回) 議事次第

2. 「2040年問題」に向けた薬局の機能強化

2040年には現役世代が急減し、高齢者人口がピークを迎える「2040年問題」を控えています。社会構造の変化に対応するため、医療資源の最適配分が急務となっています。

2026年度調剤報酬改定では、立地依存型薬局への評価が厳格化される一方、対人業務や継続的な支援に対する評価が強化されます。具体的には、薬剤調整料の引き下げと服薬管理指導料の拡充が進められ、「対物から対人へ」の流れがより鮮明になりました。

調剤基本料3(ロ・ハ)の300店舗数基準を廃止
これまで大型チェーン薬局を対象とした基本料3ロ・ハから、「同一グループの店舗数300以上」の要件が撤廃されます。今後は処方箋受付回数や集中率が判定基準となるため、薬局規模に関わらず、基本料3の対象となる可能性があります。

都市部における新規開局へのペナルティ
都市部(東京23区・政令指定都市)の新規開局において、特定の医療機関への依存度が高い場合、門前薬局等立地依存減算(▲15点)が適用されます。さらに、都市部に立地し、小規模かつ高集中率の場合は、調剤基本料2の対象となります。状況によっては、基本料2+立地依存減算(▲15点)の両方が適用されるケースもあります。

調剤管理料の再編(4区分→2区分)
内服薬の調剤に係る調剤管理料について、これまで4区分だったものを、長期処方(28日分以上:60点)とそれ以外(27日分以下:10点)の2区分へと再編されます。中間の日数(8日~27日)は実質的に引き下げられ、短期・中期処方が多い薬局は減収の可能性に注意が必要です。薬局には、処方日数に依存しない経営、つまり対物業務から対人業務へのシフトが促されています。

3. かかりつけ薬剤師・地域貢献の実績重視

かかりつけ薬剤師の評価は、形式的な同意取得数から、実績ベースの体系へと移行します。

かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(50点/3ヶ月に1回)
かかりつけ薬剤師が、電話などで服薬状況や残薬状況等を継続的に確認した場合の評価です。電話以外に、チャットやアプリなどの利用も可能ですが、定型文の一斉送信などは認められません。患者さんへ個別に対応し、双方向コミュニケーションができることが前提です。

かかりつけ薬剤師訪問加算(230点/6ヶ月に1回)
患者宅に訪問し、服薬管理や残薬状況の確認等を行い、その結果を医師に情報提供した場合の評価です。

服用薬剤調整支援料2が1,000点にアップ
服用薬剤調整支援料2は、従来のイ・ロ区分は廃止され、1,000点へと大幅に引き上げられます。これに伴い要件も厳格化され、「老年薬学服薬総合評価研修会」を修了、または「老年薬学認定薬剤師」の資格を持つかかりつけ薬剤師のみが算定できます。2027年6月1日より適用予定なので、算定に向けて体制を整えておきましょう。

4. 医師との連携強化

ポリファーマシー対策や在宅医療の質向上を目的として、医師と薬剤師の実効性のある連携が強く求められています。

2026年度改定では、医師と薬剤師が同時に患者宅を訪問し、その場で指導を行う取り組みに対する評価が新設されました。

医科:訪問診療薬剤師同時指導料(300点/6ヶ月に1回)
薬局:訪問薬剤管理医師同時指導料(150点/6ヶ月に1回)

医科・調剤双方で評価される点数設計からも、形式的な情報共有にとどまらない、現場での協働が重視されていることがわかります。

医師と薬剤師が同じ場で患者さんの状態を確認し、それぞれの専門的視点から意見を交わすことで、処方の適正化や副作用リスクの低減といった具体的なアウトカムにつながります。

算定に向けては、日頃からの密な情報共有と信頼関係の構築が不可欠です。ICTツールによるこまめなコミュニケーションに加え、問い合わせへの正確かつ誠実な対応を積み重ねることが、連携の基盤を強固にします。

5. 調剤報酬改定対応に向けた具体的な戦略

これからの薬局には、「在宅・DX・人材」の3つを軸に、地域医療への貢献を実績として積み上げていくことが求められます。
ここでは、薬局が実践したい具体的な戦略を解説します。

5-1. 【在宅訪問】主体的な実績づくり

門前薬局への評価が厳格化される中で、在宅業務は補助的な位置づけでなく、薬局経営の中核へと変化しつつあります。

在宅薬学総合体制加算2は、イ・ロの2区分に変更。ロは施設対応で50点と据え置きである一方、イでは個人宅への訪問が100点に増点されました。自宅での看取りなどのニーズが高まる中、施設対応よりも負荷の高い個人宅対応を高く評価する方針です。「常勤換算3名以上」「開局中は原則2名常駐」「麻薬製剤処理加算の実績(年1回)」などの要件も追加されています。

在宅薬学総合体制加算1(30点)は、従来の15点から30点に引き上げる一方で、要件の在宅実績が年24回以上→48回以上に変更となります。

在宅に関する評価は、専門性の高い領域ほど、点数も大きく設定されています。今後もこの流れは続くと予想されており、在宅業務の深化は重要なテーマとなっています。

5-2. 【薬局DX】効率的な収益構造の確立

人件費の上昇や薬価・調剤報酬の改定が続く中、薬局にはコスト削減と売上向上を同時に実現する経営が求められています。その鍵となるのが、薬局DXです。

対物業務の自動化(リソースの創出)
調剤ロボットや自動監査システム、書類管理システムなどの導入により、対物業務を効率化しましょう。ミスを防ぎつつ、薬剤師の時間と余力を生み出し、本来注力すべき対人業務へシフトできます。

患者満足度の向上
対物業務のデジタル化により創出した時間で、服薬フォローや在宅対応、健康相談を強化します。さらに、オンライン予約や電子お薬手帳、キャッシュレス決済などを組み合わせることで、患者さんの利便性と満足度を高め、リピート利用の増加につなげます。

データやAI活用
データやAIの活用も重要です。処方傾向や来局データを分析し、需要予測に基づいた在庫管理や業務の最適化を行うことで、無駄なコストを削減しながら収益性を高めることができます。

5-3. 【人材育成】薬剤師と事務員の役割の再認識

「薬剤師にしかできないこと」にリソースを集中させるためには、組織全体のスキル水準の底上げが不可欠です。

薬局事務員の戦力化
薬剤師から事務員へのタスクシフトを進め、事務員を戦力として位置づけます。在宅訪問などで薬剤師が不在となる場面も増える中、店舗運営の効率化を現場視点で最適化できるのは事務員です。

そのためには、事務員に求めるスキルを明確化したうえで、キャリアパスや評価制度を整備し、主体的に業務改善に関われる環境を構築することが重要です。モチベーションと生産性の向上を同時に実現しましょう。

薬剤師は専門性を高め、アセスメント力を強化
今後の薬剤師には、高度な薬学知識に加え、「患者さんの生活背景を踏まえて判断する力」が求められます。フィジカルアセスメントやコーチングスキルを体系的に習得できる研修体制を整備し、患者さん一人ひとりに最適化された服薬指導を実践できる人材を育成します。

5-4. 【賃金設計】賃金アップと生産性向上の両立

2026年度調剤報酬改定では、調剤ベースアップ評価料が新設されました。届出および実績報告を行うことで、処方箋受付1回あたり4点(2027年6月以降は8点)を算定できます。

算定には、薬剤師・事務員への賃金改善体制の整備が前提条件となります。制度が創設された以上、賃上げに対応しない薬局は、採用市場において競争力を失う可能性が高まります。

対象は「40歳未満の薬剤師と事務員」とされていますが、現場を支えるベテラン薬剤師は重要な経営資源です。経験やスキルに見合った処遇の見直しを含め、年齢にとらわれない柔軟な賃金設計が求められます。

一方で、賃上げは人件費の増加を伴うため、生産性向上への取り組みが不可欠です。専門薬剤師の育成支援や外部研修の活用、実績連動型の評価制度の導入などを通じて、一人当たりの付加価値を高める経営へと転換していく必要があります。

5-5. 【地域連携】多職種連携への積極的な参加

地域包括ケアシステムにおいて、薬剤師は「薬の専門家」として欠かせない存在です。しかし実態としては、他職種と比べて会議やカンファレンスへの参加率は依然として低い水準にとどまっています。地域医療を支えるチームの一員として現場に足を運び、関係構築に主体的に関わっていく姿勢が、これまで以上に重要になります。

多職種連携を進めるうえで鍵となるのは、薬剤師個人の努力に依存するのではなく、薬局として連携を推進する体制を整えることです。

そのためには、多職種連携の意義を組織内で共有し、会議やカンファレンスへの参加を「重要業務」として明確に位置づける必要があります。あらかじめスケジュールに組み込み、無理なく参加できる環境を整備することが、継続的な関与につながります。

また、ICTツールや電話による情報共有は、日常的な連携を支える有効な手段ですが、信頼関係の構築においては対面でのコミュニケーションが大きな役割を果たします。日頃から顔の見える関係性を築いておくことで、いざというときに頼られる存在となり、患者さんの紹介や診療同行といった次の機会にも発展していきます。

6. まとめ

2026年度の調剤報酬改定は、立地依存型の薬局経営に見直しを迫る内容となっています。一方で、薬剤師の専門性をより適切に評価する土台が整備されつつある点は、在宅やかかりつけに取り組む薬局にとって、大きな好機といえるでしょう。

今後は、DXによる業務効率化と生産性向上を進めながら、在宅医療や地域連携の現場に薬剤師が積極的に関与していくことが求められます。自ら地域に踏み出していく、能動的な薬局をめざしましょう。

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