在宅医療を見据えた調剤薬局のM&A戦略とは

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在宅医療に取り組む薬局では、患者さんの増加による業務負荷の増大に注意したいものです。サービスの質を維持しながら患者さんを増やすためには、新たに在宅患者さんの「受け皿」となる在宅専門店舗の出店を検討する必要性も生じます。その手段のひとつとしてM&Aがあり、成功すればリスクを抑えて複数店舗の運営をスタートさせることが可能です。

今回は、在宅薬局の店舗展開とM&A戦略、対象となる店舗を探すポイント、在宅専門店舗のオペレーションについて解説します。

本記事は、2025年2月25日に開催したWEBセミナー「薬局経営者必見!在宅医療×M&A 成功への実践的アプローチ」の内容をもとに作成しています。きらりプライムサービスのセミナー情報は、こちらよりご確認いただけます。

1. 薬局が在宅専門店舗を出店するタイミング

在宅患者さんが増加している薬局では、外来+在宅の両立のために、在宅専門店舗の新規出店を考える必要が出てきます。在宅専門店舗の出店が遅れると、いずれ以下のような問題が生じます。

在宅専門店舗の立ち上げが遅れることのリスク

  • スタッフの数が増え、人間関係が悪化する
  • スタッフのマネジメントや人材育成が難しくなる
  • 患者さんの情報把握の難易度が高くなる

必要な業務が現場のキャパシティを超えてしまうと、サービスの質が保てなくなり、結果として患者さんが離れてしまうこともあります。かといって、出店タイミングが早すぎると、収支の採算が合わず赤字期間が長引いてしまいます。

そこで、在宅専門店舗の出店タイミングの目安を紹介します。以下で紹介する出店タイミングを参考に、ある程度の規模を超えたら在宅専門店舗の出店を検討しましょう。

1-1. 店舗面積で許容範囲を超えたとき

在宅患者さんの調剤では、一包化やホッチキス止め、カレンダーへのセットなど、一定の作業スペースを確保する必要があります。このため、薬局の調剤室の面積に応じて、受け入れ可能な在宅患者数を設定し、それを超過した場合に在宅専門店舗の出店を検討します。

【きらり薬局の目安】

在宅患者数上限=(調剤室坪数ー2.88坪)×50人

きらり薬局の目安にある「2.88坪」とは、調剤棚や監査棚、分包機等の備品スペースです。きらり薬局では、備品スペースを除いた「薬局スタッフが動ける坪数」で、1坪あたり50人を在宅患者数の上限としています。

この備品スペースは、薬局ごとによって差があるので、ひとつの目安として参考にしてください。

1-2. 外来+在宅の粗利が基準を超えたとき

在宅患者数が少なくても、外来が多ければ、その分人員や作業スペースも必要となります。外来を含めた薬局の運営状況を総合的に判断し、薬剤師が効率よく働ける体制を確保できなくなったときに、在宅専門薬局の出店を検討することになります。

【きらり薬局の目安】

外来+在宅の合計の粗利が650万円以上

店舗責任者の負担にならない範囲内で、スタッフの数を維持するために、「粗利650万円」がひとつの基準となります。

粗利650万円程度であれば、薬剤師3人、事務スタッフ4名の合計7人程度で店舗を回すことができます。これくらいの規模であれば、店舗責任者も一人ひとりのスタッフに目を行き届かせることができ、健全なマネジメントができるでしょう。

人材が過剰に増え、薬局スタッフのストレスが溜まる前に、在宅専門店舗の出店を検討しましょう。

2. 在宅専門店舗を黒字でスタートするにはM&Aが有効

在宅専門店舗を新規出店する際は、在宅患者数200人程度からスタートし、ゆくゆくは350人程度まで増やしていくのが理想です。したがって、在宅専門店舗を立ち上げる際は、最終的な目標患者数と、患者獲得までの営業戦略を立てておく必要があります。

とはいえ、新規店舗で在宅患者さんを100人、200人と増やしていくのは簡単ではありません。そこで考えたいのが、M&Aによる店舗拡大です。新規店舗を開設するかわりに、M&Aで買収した薬局を在宅専門店舗にすると、リスクを抑えて運営をスタートできます。

たとえば、外来で粗利170万円の薬局を買収すると、在宅患者数が100人前後からのスタートでも、外来+在宅のハイブリッド経営によって、最初から黒字経営を実現できます。

粗利170万円程度の薬局であれば、1,000〜2,000万円と、比較的手頃な価格で購入できるというメリットもあります。既存店と在宅専門店舗、それぞれで在宅患者さんを増やしていければ、将来的に大きな利益が見込めるでしょう。

2-1. 在宅拠点としてM&A店舗を探すポイント

M&Aによる店舗拡大を検討し始めたら、仲介会社などに希望エリアで対象の薬局がないか聞いてみましょう。「閉局したいが門前ドクターとの関係があるのでやむなく継続している」「後継者がいないので薬局を譲渡したい」といった理由で、売却を考えている小規模薬局は少なくありません。

在宅拠点としてM&A店舗を探す際には、以下3つのポイントに注目してください。

①調剤室の面積が7坪程度ある

在宅薬局では調剤にスペースが必要となるため、調剤室の広さは7坪程度を目安とします。たとえ調剤室が7坪に満たなくても、店舗面積が広い場合は、改装して調剤室を広げるという考え方もできます。

②対象エリアで200人以上の在宅患者さんを獲得できる見込みがある

周辺の高齢者施設や今後の開設予定を調べ、在宅患者さんを増やせる地域であるかを確認します。対象エリアは、薬局から片道10〜15分(3〜5km程度)が理想です。

③既存店舗からの距離が離れすぎていないか

既存店からM&A店舗の距離が離れていると、在宅患者さんを移すことが難しくなります。薬局間連携も考慮すると、店舗間の移動距離は30分程度が望ましいでしょう。

もうひとつ、大事なポイントは、M&A店舗を探す前に出店時期を決めておくことです。先にも述べましたが、在宅専門店舗の出店が遅れると、既存店がパンクして経営が滞ってしまいます。出店時期までに上記3つに該当する薬局が見つからなければ、在宅専門店舗を新規出店し、店舗運営を維持することを優先しましょう。

3. 在宅専門薬局に適したオペレーションを作るポイント

在宅専門薬局の運営では、以下3つがポイントとなります。

  • スケジュール管理を行い、効率的な人員配置を行う
  • 適正な在庫量を維持する
  • サービスの質を安定し、シェア率アップを図る

ここでは、在宅専門店舗で、無理のない人員配置やオペレーションを組み立てるための方法を紹介します。

3-1. オペレーションフローを確立する

在宅専門店舗では、外来と異なり、その日に受け付ける患者さんの情報が事前にわかります。在宅訪問をスムーズに行うためには、在宅患者さんの情報をスケジュールに登録し、受付管理を徹底することがとても大事です。

薬剤師と事務スタッフの業務は、明確に切り分けましょう。薬剤師でなくてもできる業務は、可能な限り事務スタッフが担当するように仕分けると業務の効率が上がります。

きらり薬局では、薬剤師が行う業務は、主に入力チェック・計量調剤(粉砕)・監査・服薬指導の4つです。受付管理や入力、一包化の補助などは事務スタッフが担当し、配薬は「配薬専門事務スタッフ」が近隣3店舗分をまとめて行っています。

3-2. 店内の動線を作る

店内の動線は、「処方箋入力→ピッキング→調剤→ホッチキス止め等→監査」という流れで、スタッフが動きやすいように設計します。薬剤師の作業スペースを中心に、円を描くように動線を作ると効率的です。

在宅専門薬局ではほとんどが一包化処方となるため、分包機を導入して作業効率がアップを図ります。在宅患者数が400〜500人の店舗では、一包化監査支援システムもあると便利です。

きらり薬局では、薬棚の隣に発注システムを置き、欠品が出るタイミングで発注しています。在宅専門店舗ではある程度必要な医薬品の数量を特定できるので、在庫月数を平均0.5〜0.6に抑えることが可能です。

3-3. 往診予定に応じてシフトを組む

薬剤師と事務スタッフのシフトは、在宅患者さんのスケジュールに合わせて調整します。日によって、薬剤師が忙しいタイミングと、事務スタッフが忙しいタイミングは異なるため、往診予定に合わせてシフトを組むことがポイントです。

サービスの質にバラつきが出ると、在宅患者さんが離れてしまう可能性もあるので要注意。既存の在宅患者さんが満足できるサービスを維持するために、業務の質やスピードに差が出ないようにシフトを調整しましょう。

4. きらりプライムサービス活用による在宅専門店舗の運営

きらりプライムサービスは、在宅薬局の運営を総合的に支援するサービスです。全店舗で外来+在宅のハイブリッド経営を行うきらり薬局のオペレーションをもとに、現場ですぐに役立つノウハウや運営のコツをお伝えします。

  • WEBセミナーや在宅ノウハウの提供

きらりプライムサービスの基本サービスです。きらり薬局の店舗見学やWEBセミナーにご参加いただけます。

  • 在宅支援システム「ファムケア」の提供

クラウド型報告書管理システムです。報告書や計画書、トレーシングレポートの作成・送信・管理を効率よくスピーディに行えます。薬剤師間の連携やオンコール体制の構築にも役立ちます。

  • 在宅患者獲得サポート

地域の実情や薬局の強みに応じ、在宅患者獲得に向けた営業活動を実施します。営業同行により具体的な手法をお伝えするため、営業力の内製化にもお役立てください。

  • 教育研修

在宅薬剤師や店舗管理者、事務スタッフなどの職種別や、緩和ケア、マインドセットなどの目的に応じた研修を計画・実施します。完全オンラインのe-Learningの教育動画研修もご準備しています。

  • 医薬品購入交渉代行

卸との関係性や発注方法は変えずに、医薬品購入費の削減を実現します。加盟店同士で医薬品のやり取りを行うデッドストック活用サービスもご利用いただけます。

  • 薬局経営コンサルティング

調剤報酬の加算獲得やオペレーション改善など、お悩みに応じたアドバイスを行います。M&Aや後継者問題、現状の課題がわからないなど、薬局経営に関するお悩みは何でもご相談ください。

上記のほかにも、ホームページ運営や人材シェアリングなどの多彩なサービスをご用意し、あらゆる面から在宅薬局の経営をサポートしています。在宅薬局の開設から運営、経営改善まで、在宅薬局にまつわるお悩みは、ぜひ一度きらりプライムサービスにご相談ください。

まとめ

薬局が在宅専門店舗を出店するタイミングは、「店舗面積」と「外来患者数」の2つの軸で見極めることができます。患者さんが増え続けると、既存店の業務効率が悪化しかねないため、適切な時期に在宅専門店舗を出店することが大切です。在宅専門店舗の出店でM&Aを活用すれば、リスクを抑えつつ早い段階から黒字化することも可能です。

きらりプライムサービスでは、在宅薬局のコンサルティングを実施しています。M&Aを含む経営相談や在宅専門店舗のオペレーション改善、加算取得などにお困りの薬局経営者の方は、ぜひきらりプライムサービスにご相談ください。きらり薬局のノウハウと経験をもとに、薬局様のご事情に応じたアドバイスを行います。

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