儲かる薬局と厳しい薬局の経営者はどう違う? 事業と施策を徹底比較

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長期収載品の選定療養が2024年10月にスタート 薬局が押さえておきたい制度の内容と加算要件

調剤薬局業界では、対人業務への移行やDXが重要なテーマとなっており、従来の経営体制のままでは利益を出すことが難しくなっています。「忙しいのに利益が上がらない」といった悩みを持つ薬局では、ビジネスモデルを根本的に見直す必要があるでしょう。

この記事では、経営が厳しい薬局の特徴を5つ述べ、儲かる薬局が取り組んでいる施策と、儲かる薬局になるためにすべきことを解説します。ぜひ、薬局経営の方針を見直す際の参考にしてください。

1. 経営が厳しい薬局の特徴

近年、薬局経営は複雑化しており、儲かる薬局と厳しい薬局の差が顕著に表れています。ここでは、厳しい薬局の特徴を5つ紹介します。

1-1. 外来の処方箋調剤に依存している

調剤薬局のうち、約8割が診療所や病院の近隣にある門前薬局です。門前薬局は特定の医療機関からの処方箋を集中して受け付けており、経営の大部分を門前に依存しています。

ところが近年の調剤報酬改定では、処方箋集中率の高い門前薬局への評価が下がっており、処方箋調剤だけでは以前のように利益を出すことが難しくなっています。処方箋枚数が多いからといって、必ずしも利益が上がるわけではありません。

門前薬局は、近隣の医療機関がなくなったら、一気に経営難に陥る可能性もあります。電子処方箋の普及によって薬局を選ぶ患者さんも増えており、「医療機関に近いから」という理由だけではアピールポイントとして不十分です。

処方箋調剤は薬局の基本ですが、それだけに頼るのはハイリスクです。安定した経営をめざすには、処方箋調剤以外にも複数の収益の柱を持つ必要があります。

1-2. 新サービスの展開に消極的

近年は薬局の役割が拡大しており、加速度的にさまざまなサービスが登場しています。薬局業界が転機を迎えている今、従来の経営体制に固執するのは危険です。

厚生労働省は、患者本位の医薬分業実現に向けて、2025年までにすべての薬局をかかりつけ薬局とするという目標を掲げました。2024年度調剤報酬改定では、地域支援体制加算の施設基準にも「かかりつけ薬剤師の届出」が加えられています。今、しっかり利益を確保できている薬局は、ほとんどがかかりつけ機能を持っています。

オンライン服薬指導や電子処方箋も導入され、薬局DXも本格化しています。これからの調剤報酬改定では、今登場している新しいサービスを中心に評価が高まっていくと考えてよいでしょう。「ITは苦手だから」「人手が足りないから」といった理由で、新サービスの導入を遠ざけていては、経営は悪化するばかりです。

1-3. 慢性的な人材不足が続いている

都市部を中心に薬剤師不足は解消されつつあるものの、地方や郊外、離島などでは薬剤師不足が深刻です。夜間や休日など、特定の時間帯に限って薬剤師が不足する状況も課題となっています。

特に、中小薬局は、大手に比べて資金力が弱くネームバリューにも劣るため、薬剤師の採用で不利になりがちです。選ばれる薬局となるためには、薬局の魅力付け(=ブランディング)が必要ですが、そのノウハウがないことも大きな壁となっています。

1-4. 患者さんとの関係が浅い

リピーターの患者さんを増やすためには、こまめなコミュニケーションによって信頼を深めることが大事です。かかりつけ薬剤師はその最たる例で、患者さんと継続的な信頼関係を築き、健康や生活全般を支援しています。

ただ処方箋調剤を行い、薬の受け渡しを行うだけの一時的な関係では、患者さんの信頼は得られません。患者さんの名前と顔を覚えたり、丁寧に話に応じたりと、細やかなコミュニケーションの積み重ねが大切です。

経営が厳しい薬局は、今一度患者さんとの関係性について考えてみてください。一元的・継続的な服薬管理を行うためのツールを導入するなど、体制を整備することでコミュニケーションの質を改善できる可能性もあります。

1-5. 無駄なコストが嵩んでいる

「何にどれだけ経費がかかっているかわからない」という状態では、医薬品の廃棄や過剰在庫、無駄な光熱費などで、余分に経費が発生している可能性が高いです。

人員配置についても同様で、患者さんの少ない時間帯に、薬剤師・事務員のシフトが集中していることはないでしょうか。人件費は薬局経費の中でも大部分を占めており、人員配置の適正化によって利益率の向上が図れます。

広告やチラシなどの宣伝費についても、期待する費用対効果が得られているか、定期的に確認する必要があります。最近はアナログよりもデジタルのほうが主流であるため、WEB広告やSNSをうまく活用できるかがポイントとなります。

2. 「儲かる薬局」が取り組んでいる施策

儲かる薬局は、具体的にどのような施策に取り組んでいるのでしょうか。これから利益をしっかり確保したい薬局は、ここで紹介する施策を参考にして、経営を見直してみてください。

2-1. 在宅医療の本格的な展開

儲かる薬局は、すでに在宅医療への参入を済ませ、現在は専門性の強化や高度な体制整備といった次のステップへと進んでいます。

特に重要なのが、在宅薬局のターミナルケアへの参画です。2024年度調剤報酬改定では、ターミナル期への患者さんへの評価を拡充するため、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の夜間・休日・深夜訪問加算などが新設されました。

今、求められているのは、在宅への移行から看取りまで、在宅におけるすべての段階で患者さんと伴走できる薬局です。在宅業務を薬局の主要な収益柱にできれば、利益率も向上します。

2-2. 薬局DX

薬局のデジタル化・自動化を進めることで、業務負担軽減、人件費削減、対人業務の質向上などが実現できます。薬局DXを推進できているかどうかも、儲かる薬局・厳しい薬局の分かれ目となっています。

薬局におけるデジタル化・自動化のシステムは、さまざまな企業より提供されています。すべてを導入する必要はなく、薬局に必要なものを選択し、活用することが大事です。

たとえば在宅薬局の場合、患者さんが増えてきたら、報告書管理をデジタル化することで事務作業の負担を大幅に軽減できます。さらに在宅患者数が数百人規模になってくると、一包化監査支援システムによる業務改善も検討できるでしょう。このように、薬局の状況や課題に応じて適切なシステムを選ぶことで、高い費用対効果が得られます。

2-3. 薬剤師の専門性向上による強みづくり

在宅医療への貢献が強く求められる中で、薬剤師に期待される知識・スキルのレベルも上がっています。末期がんや神経難病といった専門的な薬学知識のほか、多職種連携におけるコミュニケーション力や共感性といった人間力も重要です。

薬剤師の特化した専門性は、薬局の強みとなります。薬局としてどのような領域に強みを持ちたいかを明確にし、薬剤師の学習意欲を後押しすることも大事です。

薬剤師育成のノウハウがなくても、外部サービスを活用して教育制度を整備することができます。研修への参加や資格取得を支援し、薬剤師のスキルアップをサポートしましょう。

2-4. M&Aの戦略的な活用

戦略的M&Aを展開していくことで、リスクを抑えて事業を拡大、または経営を改善することができます。

在宅業務を拡大したい薬局は、小規模の薬局をM&Aで買収することで、在宅専門店舗を立ち上げることができます。新たに新規出店するよりもコストが抑えられ、既存の外来患者を引き継げる分、赤字経営のリスクが低くなります。

多店舗経営が難しくなった薬局は、一部を売却することで、経営が改善する可能性もあります。従業員の雇用や患者さんの信頼を守りつつ、経営を立て直すための手段として、M&Aは有効な選択肢となるでしょう。

3. 「儲かる薬局」になるためにすべきこと

ここでは、経営が厳しい薬局が、儲かる薬局となるために、取り組むべきことを解説します。いきなり経営を変えようとすると、スタッフにも混乱を招いてしまいます。まずはできるところから取り組み、少しずつ改善をめざしましょう。

3-1. 収益構造の見える化

まずは薬局の収益構造を見える化し、経営の仕組みを具体的な数値で把握しましょう。「何で儲かっているのか」「何にどれだけ経費を使っているのか」がわかり、今後伸ばす分野や改善すべき業務を冷静に見極めることができます。

一般的に「儲け」とは、売上総利益(粗利)から経費を差し引いた「営業利益」を指します。調剤薬局でいうと、主な収入源に調剤報酬と物販があり、ここから医薬品購入費や人件費、家賃などを差し引いたものが営業利益です。

注意したいのが、いくら売上が高くても、経費が多ければ営業利益は残らず、儲けているとは言えないということです。「売上を最大に伸ばし、経費を最小に抑える」ことが利益率を高めるポイントであり、そのための戦略を練るために収益構造の可視化が重要となります。

薬局の収益構造については、以下の記事もご覧ください。
薬局経営を見直すために押さえておきたい収益構造と利益・経費のチェックポイント

3-2. 処方箋単価の向上

収益構造を可視化した結果、「処方箋枚数に対し1枚当たりの単価が低い」というような場合は、加算を算定して利益率を上げることが重要となります。

高単価処方箋を作るためには、加算を最大限取得することがポイントです。地域支援体制加算や在宅薬学総合体制加算など、薬局の努力次第で取れる加算は確実に算定できるようにしましょう。

また、加算の取りこぼしにも注意が必要です。「トレーシングレポート提出件数と加算数が一致していない」「残薬を確認するが加算を取っていない」など、気づかないうちに機会を損失していることもあります。加算の算定要件は薬局スタッフ全員で共有し、取得に向けたアクションが取れるように日頃から備えておくことが大事です。

3-3. デジタル化・自動化の推進

デジタル化・自動化は、人材不足や業務効率化、安全性向上など、薬局に多くのメリットをもたらします。特に在宅薬局は業務工程が多いため、いかにシステムを活用できるかが事業拡大を成功させるポイントとなります。

たとえば薬局では、以下のようなデジタル化・自動化が可能です。

  • 報告書管理のシステム化:業務負担軽減、記入漏れ・送付漏れの防止
  • 在庫管理システム:在庫管理の適正化、デッドストック防止
  • 調剤ロボット:調剤時間の短縮、安全性・衛生面の向上
  • 処方箋のネット受付:薬局内の混雑軽減、患者さんの待ち時間軽減

作業性が向上すると、少ない人数でも、効率よく在宅患者さんを増やしていくことができます。また、薬剤師の残業が減り、間接的に人件費も減らせるでしょう。システムの導入には初期投資がかかるものの、それを上回るメリットが期待できます。

3-4. 医薬品購入コストや人件費の見直し

利益率を上げて「儲かる薬局」となるには、経費をできるだけ小さくすることが大事です。薬局の主な経費には、医薬品購入費や人件費があり、この2つをどれだけ最適化できるかがポイントとなります。

中小薬局が医薬品購入費を抑えるなら、共同購入もしくは医薬品購入交渉代行サービスの活用がおすすめです。加盟店同士の協力によってスケールメリットを広げ、大手並みの割引率を実現することができます。

人件費の見直しについては、先に述べたシステム化・自動化と並行し、人員配置が適切であるか検討しましょう。落ち着いている時間帯には薬剤師の数を減らす、薬剤師と事務員の業務を明確に切り分けるなどの対策によって、余分な人件費を削減できます。

まとめ

経営が厳しい薬局は、近隣の医療機関の処方箋調剤に依存しており、人材不足や業務効率に悩んでいるといった特徴があります。今後、薬局経営で利益を出すためには、在宅訪問や薬局DXに取り組み、地域包括ケアシステムの役割を担っていくことが大切です。

きらりプライムサービスでは、在宅薬局経営の改善を総合的にサポートしています。調剤報酬加算、コスト削減、在宅業務の効率化など、課題に合わせたサービスをご提案いたします。在宅訪問経営にお悩みの薬局経営者の方は、ぜひ一度きらりプライムサービスにご相談ください。

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