地域医療、健康サポート、かかりつけ薬剤師…今後の薬局が求められる役割と取り組み
少子高齢化が急速に進む中、薬局に求められる役割も大きく変化しています。すでに多くの薬局が、かかりつけ薬局への転換に乗り出しています。薬局が果たすべき役割、取り組むべきことを理解し、ニーズに応じたサービスを提供していきましょう。
本記事では、厚生労働省「かかりつけ薬剤師・薬局に求められる機能とあるべき姿」をベースに、薬局・薬剤師に求められる役割と具体的なアクションを、テーマごとに考察します。
1. すべての薬局が備えるべき3つの機能
厚生労働省が2015年に公表した「患者のための薬局ビジョン」の中で、すべての薬局は以下3つの機能を備えるべきとしています。
- かかりつけ薬局・薬剤師としての機能
- 健康サポート機能(地域住民の健康維持・増進への貢献)
- 高度薬学管理機能(高度な薬学的管理ニーズへの対応)
上記機能について基準を満たした薬局は、それぞれ地域連携薬局、健康サポート薬局、専門医療機関連携薬局の認定を受けることができます。薬局の機能の「見える化」は、国民が主体的に薬局を選択するための方策です。
薬機法改正や調剤報酬改定でも、上記の薬局機能を明確化する流れとなっています。薬局には、より高い専門性や、地域に対する能動的な働きかけが求められているといえるでしょう。
以下では、厚生労働省「かかりつけ薬剤師・薬局に求められる機能とあるべき姿(公益社団法人 日本薬剤師会)」をベースに、今後の薬局・薬剤師に求められる役割と、薬局が取るべき具体的なアクションについて解説します。
2. 【地域医療】在宅医療推進
薬局・薬剤師には、在宅医療を中心として、地域包括ケアシステムへの積極的な介入が求められています。在宅薬剤師の主な役割は、地域の在宅医師や訪問看護師をはじめとする多職種と連携し、安全かつ有効な薬物療法の実施に貢献することです。
在宅薬剤師は、入院から在宅療養への移行を促進し、患者さん個人の体調や生活状況に合わせた薬学的管理・指導を行います。同時に、処方提案やフィードバックを通して、医師の負担を軽減する役割も担っています。
地域医療への参画に向けたアクションプラン
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薬局が在宅医療を進めるためには、医療機関や福祉施設等との連携も重要です。在宅薬局としての取り組みを地域の医療機関や施設にアピールし、積極的な情報発信を行いましょう。在宅に関わる多職種が参加する地域ケア会議等に参加したり、ケアマネジャーに連絡を取ったりなど、薬局側から積極的な働きかけを行ってください。
3. 【健康サポート】ライフステージに応じた健康づくり
薬局が果たすべき役割として、地域住民の健康維持・増進を主体的に支援する健康サポート機能のさらなる強化が掲げられています。栄養相談や公衆衛生、病気の発症から治療サポート、そして介護まで、誕生から終末期に至るライフステージすべてを通じた健康サポートが求められています。
健康サポート強化に向けたアクションプラン
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薬局における健康サポートのポイントは、地域全体を巻き込んだ取り組みと、年齢や健康状態に関わらないすべての地域住民に対する健康支援です。地域の実情を汲み取り、住民のニーズが高いサポートを提供しましょう。患者さんとコミュニケーションを取りつつ、薬局に求めるサービスについてヒアリングすることもおすすめです。
4. 【かかりつけ薬局・薬剤師】機能の強化・専門性向上
かかりつけ薬局・薬剤師には、かかりつけ機能の向上と、薬剤師の資質向上の両方が求められています。かかりつけ薬局・薬剤師の主な役割は、以下3つです。
- 患者さんの服薬情報の一元的・継続的把握
- 24時間対応・在宅対応の整備
- 医療機関との連携体制の構築
かかりつけ機能を強化するには、薬局・薬剤師が地域医療の一員としての自負を持ち、対人業務の充実を図る必要があります。薬剤師が必要なスキルを習得できるよう、計画的・継続的な教育体制基盤を整えましょう。
かかりつけ機能強化・薬剤師の資質向上に向けたアクションプラン
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対人業務の強化を進めるためには、対物業務の効率化が欠かせません。対物業務の自動化・半自動化は、次項の薬局薬剤師DXにもつながります。
5. 【薬局薬剤師DX】医療情報連携基盤の構築
対人業務の充実や多職種連携の構築に大きく貢献するのが、薬局DXです。調剤業務の自動化・半自動化や、オンライン服薬指導等を導入し、薬剤師の働き方改革を促しましょう。
なかでも注目されているのが、ICTを用いた多職種連携の情報共有基盤の整備です。ICTを活用すれば、いつでもどこでも情報の伝達・閲覧が可能となります。在宅医療では多職種の相互理解が必須であるため、ICTを活用して気軽にコミュニケーションが取れる関係を築きましょう。
薬局薬剤師DXの推進に向けたアクションプラン
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特に在宅医療は業務工程が多いため、システムやツールを導入すると大幅な業務改善が図れます。まずは、薬局で何が負担となっているのか、非効率的な部分はないかを洗い出し、必要なツールを少しずつ導入しましょう。
まとめ
かかりつけ機能、健康サポート機能、高度薬学管理機能は、すべての薬局が備えるべき役割です。今後、薬局にはかかりつけ機能の強化や薬剤師の資質向上をめざし、地域医療に貢献することが求められています。自治体や多職種とも協力して、地域包括ケアシステムの構築をめざしましょう。また、ICTやAIを用いて、対物業務の効率化や多職種連携基盤の構築を図り、在宅サービスの質を高めてください。
きらりプライムサービスでは、薬局の在宅医療推進をサポートしています。在宅医療を始めたい、在宅業務を効率化したい等、在宅医療にまつわるお悩みがあればお気軽にお問い合わせください。
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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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