健康サポート薬局のメリット・要件・研修内容を解説

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健康サポート薬局のメリット・要件・研修内容を解説

1. 健康サポート薬局とは

健康サポート薬局とは、かかりつけ薬局のうち、地域住民の健康の維持・促進を積極的に支援する薬局のことです。疾患予防から介護まで、ライフステージを通して地域住民の健康をサポートします。具体的には、以下のような取り組みを行います。

  • 医薬品や介護用品等の安全かつ適正な使用についてのアドバイス
  • 食事、介護、生活習慣、育児等、幅広い健康相談の受け付け
  • 必要に応じた医療機関への受診勧奨
  • 健康イベント等の実施
  • 地域の薬局への情報発信、健康サポート機能の取り組み支援

健康サポート薬局は、地域包括ケアシステムの中で、地域住民の健康意識の向上や健康寿命の延伸に貢献します。病気になったときだけでなく、地域住民が自らの健康のために気軽に利用できる場所が、健康サポート薬局です。

1-1. 健康サポート薬局の認定数(2024年3月時点)

健康サポート薬局制度が施行されたのは、2016年4月。2024年3月31日時点では、日本全国で3,195軒の薬局が健康サポート薬局の認定を受けています。最も多いのが東京都の384軒、次いで大阪府が317軒、神奈川県が196軒です。

日本全国の薬局数が2020年で約6万軒であることを考慮すると、健康サポート薬局の数はまだまだ少ないと言えます。特に地方では数が不足しており、健康サポート薬局の必要性が高い高齢者に対し、十分な支援を届けられていない状態です。

今後は、高齢者が多く薬剤師が不足している地域で、どのように健康サポート薬局への転換を進めていくかが課題となります。
(出典:厚生労働省「健康サポート薬局 ▼健康サポート薬局の件数」)

2. 健康サポート薬局のメリット

健康サポート薬局を利用することで、地域住民には以下のようなメリットがあります。

  • 専門知識と経験のある薬剤師に相談できる
  • 必要に応じて、医療機関に紹介してもらえる
  • 要指導医薬品や介護用品を選ぶ際にアドバイスがもらえる
  • 土日も利用できる
  • 健康にまつわるイベントに参加して、健康への知識を習得できる

健康サポート薬局が近くにあれば、健康や生活で悩みを抱えたときに、住民はすぐに相談できます。健康相談に対するハードルが下がり、地域全体の健康意識向上が期待できます。

もちろん薬局側にとっても、厳しい要件をクリアして健康サポート薬局になることには、大きな意義があります。ここでは、薬局が健康サポート薬局になることによるメリットを解説します。

2-1. ほかの薬局と差別化できる

調剤薬局が飽和状態にある中、健康サポート薬局であることは大きなアピールポイントのひとつです。「健康サポート薬局」の表示があると、地域住民の関心を集めることができます。定期的に健康相談会や体験イベントを実施すると、活気ある様子に惹かれて、薬局に興味を持つ住民も増えるでしょう。

健康サポート薬局として活動する中で、患者さんや住民同士の口コミが広まる可能性もあります。「あの薬局にはいい薬剤師さんがいるよ」「いろんなイベントをしていておもしろい」といった評判が広まれば、地域における薬局の認知度向上が期待できます。

2-2. 健康食品・OTC医薬品の販売増が期待できる

薬局で物販の売上を上げるには、患者さんの購買意欲を高めるための工夫が必要です。ただ商品を陳列するだけではなく、ニーズを把握してアドバイスを行ったり、患者さんとの信頼関係を構築したりといった細やかなフォローが大切です。

健康サポート薬局では、OTC医薬品や健康食品・サプリメントなどを選択する際のアドバイスを行います。患者さんとのコミュニケーションを通し、生活習慣やライフスタイルに合わせた商品選びをアドバイスすることで、物販の売上アップが期待できるでしょう。薬剤師の専門性が高いため、患者さんが安心して相談できる点もポイントです。

また、健康イベントや相談会などの開催により、地域住民が薬局に気軽に立ち寄れる場所になれば、販売機会の創出にもつながります。

2-3. 薬剤師の専門性を向上できる

健康サポート薬局には、所定の研修を修了し、かつ実務経験のある「研修修了薬剤師」の配置が定められています。研修修了薬剤師には、OTC医薬品や介護用品等、健康にまつわる幅広い知識が身につきます。

研修修了薬剤師には、研修修了後も健康サポートに関する知識を習得し、自己研鑽に努めることが義務づけられています。薬局が研修修了薬剤師のスキルアップを支援することで、ほかの薬剤師の意識も刺激できるでしょう。

健康サポート薬局では、日頃から患者さんや利用者と接する機会も多くなるため、薬剤師のコミュニケーション能力も養えます。通常の保険薬局よりも、より多くの学びの機会を与えられるでしょう。

2-4. 「薬局機能情報提供サービス」で検索できる

「薬局機能情報提供サービス」とは、各都道府県が提供している公的な薬局検索サービスです。東京都では「医療機関・薬局案内サービス」、大阪府では「薬局機能情報検索」など、地域で名称は異なるものの、基本的な検索機能は変わりません。

薬局機能情報提供サービスでは、各曜日の開局時間や所在地のほか、健康サポート薬局も検索条件に含まれています。健康サポート薬局を探している患者さんに、ダイレクトにアピールすることが可能です。今後は薬局機能情報提供サービス以外にも、健康サポート薬局を検索できるシステムやアプリが開発される可能性があります。

3. 健康サポート薬局になるには

かかりつけ薬局としての機能を備えた上で、厚生労働大臣が定める一定の基準を満たし、都道府県知事に届出を行うと「健康サポート薬局」の表示が可能となります。

健康サポート薬局になるまでの主な流れは、以下の通りです。

①かかりつけ薬局になる
②健康サポート薬局の設備や開局体制を整備する
③地域の連携機関と協力関係を築く
④積極的な健康イベント開催や情報発信等を行う
⑤薬剤師が研修を受講する
⑥健康サポート薬局の掲示物を用意する
⑦必要な書類を揃えて都道府県知事へ提出する

②~⑥は並行して準備し、必要な体制を整えた上で、届出を行いましょう。ここでは、健康サポート薬局の要件についてわかりやすく解説します。

3-1. 健康サポート薬局の要件

健康サポート薬局には、「かかりつけ薬局としての基本的機能」と「健康サポート機能」が求められます。以下は、厚生労働省による健康サポート薬局の基準告示をまとめた表です。

求められる機能

機能の詳細






かかりつけ薬局の

基本的機能


服薬情報の一元的・継続的把握

  • 副作用や効果の継続的な確認
  • 重複投薬・相互作用の防止
  • 処方情報の把握

24時間対応・在宅対応

  • 夜間・休日対応
  • 在宅患者への薬学的管理及び指導

医療機関との連携強化

  • 疑義照会・処方提案
  • 医師へのフィードバック
  • 多職種との情報共有
  • 受診勧奨















健康サポート機能


地域における連携体制の構築

  • 受診勧奨
  • 地域の連携機関の紹介
  • 紹介文書の作成

薬剤師の資質確保

  • 有効な研修を修了し、薬局薬剤師の実務経験が5年以上ある薬剤師の常駐

薬局の設備

  • 個人情報に配慮した相談窓口の設置

薬局における表示

  • 健康サポート薬局の表示
  • 要指導医薬品等や健康食品等の相談実施の表示
  • 健康サポートの具体的な内容の提示

要指導医薬品等の取扱い

  • 要指導医薬品・介護用品・衛生材料等の取扱い


土日の一定時間の開局

  • 平日の営業費には連続して開局し、かつ土曜日または日曜日のいずれかに4時間以上の開局
  • (平日は8~19時までに8時間以上の開局が望ましい)





健康相談・健康サポート

  • 健康サポートの取り組み(薬の相談会や糖尿病予防教室等)を月1回程度実施するのが望ましい
  • 薬剤師会等での発表や広報誌への掲載、学術論文の投稿等による情報発信
  • 健康の保持増進に関するポスター掲示、パンフレット配布

(出典:厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律    施行規則の一部を改正する省令の施行等について 」

健康サポート薬局となるには、上記の基準に適合することを明らかにする書類を添付して、都道府県知事に届出を行います。健康相談窓口や、掲示予定の資料、研修終了証については、写真等で確認できる資料が必要です。

健康サポート薬局の基準に適合しているかどうかは、厚生労働省の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律    施行規則の一部を改正する省令の施行等について 」の本文や、別紙1及び2を用いて確認してください。

申請に必要な書類や、申請先については、所轄の都道府県ホームページを確認しましょう。たとえば、東京都保健医療局では、健康サポート薬局の届出に必要な書類として、以下を指定しています。

1. 変更届書
2. 別紙1届出書添付書類(チェックリスト)
3. 上記チェックリストに規定されている項目に関する書類
(上記書類を所轄保健所に提出)

(出典:東京都保健医療局「健康サポート薬局について」)

4. 健康サポート薬局研修について

健康サポート薬局の基準のひとつが、「所定の研修を修了し、薬局薬剤師として実務経験5年以上の薬剤師の常駐」です。健康サポート薬局の届出にあたっては、薬剤師の研修修了証の提出が求められます。

健康サポート薬局研修は、さまざまな企業や団体が実施しています。研修内容は同じですが、すべての過程で同じ研修実施団体のものを受講しなければ、研修終了証は発行されません。また、研修終了証には有効期限が設けられており、更新する際も発行団体の研修を受講する必要があります。

ここでは、日本薬剤師会・日本薬剤師研修センターが実施する健康サポート薬局研修について紹介します。

4-1. 研修の種類・実施方法

健康サポート薬局の研修は3種類あり、演習を含む集合研修2つと、e-ラーニングによって構成されています。

研修の実施内容

研修項目




技能習得型研修

(集合研修)

健康サポートのための多職種連携研修(研修会A)/4時間

※都道府県薬剤師会実施

健康サポート薬局の基本概念、地域包括ケアシステムにおける多職種連携と薬剤師対応

健康サポートのための薬剤師の対応研修(研修会B)/4時間

※都道府県薬剤師会実施

利用者の状態把握と対応


知識習得型研修

e-ラーニング/22時間

※日本薬剤師会実施

地域住民の健康維持・増進、要指導医薬品等概説、感染対策等

(受講時間:計30時間)
(出典:日本薬剤師会「健康サポート薬局研修について」)

それぞれの研修終了後に発行される受講証明書を3通集めて、研修終了証の発行申請を行います。受講証明書の有効期限は3年間です。有効期限内にすべての受講証明書を受け取り、研修修了証の発行申請を済ませましょう。

4-2. 受講~修了の流れ

健康サポート薬局研修の受講から修了までの主な流れを紹介します。

①受講申し込み
②研修の受講と受講証明書の取得(計3通)
③研修終了証発行申請
④研修終了証の交付

研修修了証の有効期限は、発行日より6年間です。有効期限2年前から有効期限の間に「研修会A」を再履修すると、修了証の更新申請が行えます。

薬局において5年以上の実務経験のない薬剤師には、修了証は発行されません。研修を受講する薬剤師には、5年以上の実務経験があることを確認しておきましょう。
(出典:日本薬剤師会「健康サポート薬局研修について」)

5. 健康サポート薬局の将来性

2040年には高齢化率が40%を超えると言われており、介護・医療現場の崩壊が危惧されています。不安定な医療業界の中で、日頃から地域住民の健康を支える健康サポート薬局の役割は非常に重要です。健康サポート薬局は、地域包括ケアシステムの中で、より意義のあるサービスを提供し続けることができます。

また、健康サポート薬局は、薬局の競争優位性を見出すためにも有効です。ただし、健康サポート薬局の表示を目的とせず、地域住民の相談役として十分な役割を果たすことを忘れてはなりません。

健康サポート薬局は国が推進していることもあり、今後は診療報酬で評価される可能性も高いです。現に、2024年度調剤報酬改定では、地域支援体制加算の共通施設基準の要件に、健康サポート薬局届出要件と同様なOTC医薬品48薬効群の取り扱いが追加されます。健康サポート薬局に対する直接的な加算はないものの、健康サポート薬局として活動することで、加算を算定しやすくなると言えるでしょう。

まとめ

健康サポート薬局とは、かかりつけ機能に加えて、地域住民の健康の維持・増進を積極的に支援する薬局です。健康サポート薬局となるためには、厚生労働省が定めた要件を満たし、都道府県知事から認定を受ける必要があります。

健康サポート薬局になることで、薬局の差別化や薬剤師の専門性向上、OTC医薬品等の売上増も期待できます。健康サポート薬局に対する直接的な加算はないものの、地域支援体制加算と対応する部分も多いので、加算取得の上でも有利です。

KIRARI PRIME サービスは、在宅訪問や薬剤師育成など、薬局経営を支援するサービスです。健康サポート薬局への転換に関するお悩みや、患者獲得の相談も受け付けています。薬局経営にお悩みの方は、ぜひKIRARI PRIME サービスにご相談ください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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【当コラムの掲載内容に関するご注意点】
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