ドラッグストアとの競合が課題となった門前薬局のこれからの役割と生き残るポイント

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長期収載品の選定療養が2024年10月にスタート 薬局が押さえておきたい制度の内容と加算要件

大手ドラッグストアの調剤事業への本格参入や、薬価・調剤報酬改定による収益性の低下、患者ニーズの多様化など、門前薬局を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。

一方で国は、「患者本位の医薬分業」の実現に向けて、薬局に対し、地域医療を支える役割を求めています。国の方向性に沿って、かかりつけ機能や在宅医療、地域との連携を強化することは、ドラッグストアとの差別化を図り、門前薬局が持続的に成長していくための重要なポイントです。

この記事では、門前薬局を取り巻く現状と課題を整理するとともに、これからの門前薬局が果たすべき役割と生き残り戦略について解説します。

1. 調剤併設ドラッグストアの台頭と門前薬局の課題

2025年度の調剤薬局の倒産件数は30件となり、2年連続で過去最多を更新しました。そのうち8割以上を資本金1,000万円未満の小規模薬局が占めており、地域に根差した薬局ほど厳しい経営環境に直面していることがうかがえます(*1)。

こうした背景のひとつにあるのが、調剤併設型ドラッグストアの急速な拡大です。

調剤併設型ドラッグストアは、処方箋による調剤だけでなく、食品や日用品、化粧品などの買い物を一度に済ませられる利便性に加え、広い駐車場や夜間・土日の営業、ポイントサービスなど、利用しやすい環境を整えています。患者さんにとっては「薬を受け取る場所」という枠を超えて、日常生活を支える身近な施設です。

さらに、大手ドラッグストアは豊富な資本力を背景に、データを活用した店舗運営やマーケティングを進めています。購買データを活用した販売戦略や効率的な在庫管理に加え、給与や福利厚生の充実によって人材確保を進めており、薬剤師の採用面でも優位性を持っています。

一方、地域の門前薬局では薬剤師不足が続く中、人材確保の難しさが経営課題となっています。薬価・調剤報酬改定による収益性の低下も重なり、従来のように処方箋応需を中心とした経営だけでは、大手ドラッグストアとの競争に対応することが難しいのが現状です。

*1 出典:帝国データバンク|「調剤薬局」の倒産動向(2025年度)

2. 2026年度改定で門前薬局への評価はさらに厳格化

調剤併設ドラッグストアとの競争が激化するなか、2026年度調剤報酬改定では、立地に依存した薬局経営から、地域医療への貢献を重視する薬局経営への転換が、より明確に打ち出されました。

2026年6月以降に新規開設される薬局では、都市部(特別区・政令指定都市など)に立地し、小規模で特定の医療機関への処方箋集中率が高い場合、調剤基本料2が適用されます。

さらに、都市部の門前薬局や密集薬局、医療モール内の薬局などで一定以上の処方箋集中率となる場合には、「門前薬局等立地依存減算(▲15点)」が適用され、基本料が減算されます。

医療モールでは、処方箋集中率の算定において同一建物内の複数の医療機関をひとつの医療機関として扱うルールへ変更されました。これにより、特定の医療機関への依存度が高い薬局は、これまで以上に厳しく評価されることになります。

一方で、在宅医療への参画や多職種連携など、地域医療に積極的に貢献する薬局を評価する仕組みは、さらに強化されています。

今後の薬局経営で問われるのは、「どこに立地しているか」ではなく、「地域医療にどのような価値を提供しているか」です。制度の評価軸は、立地から機能・実績へと、確実にシフトしています。

3. これからの門前薬局に求められる役割

門前薬局がこれからも選ばれ続けるためには、ドラッグストアにはない専門性や継続的な支援を提供し、地域医療に欠かせない存在としての価値を高めていくことが重要です。

3-1. 「処方箋を受け取る場所」から「地域の健康拠点」への転換

これまで門前薬局は、「病気になったときに処方箋を持って訪れる場所」という役割を中心に発展してきました。しかし、処方箋枚数の大幅な増加が見込みにくい今、処方箋応需だけに依存した経営には限界があります。

このような変化の中で薬局に求められているのが、地域住民の健康を継続的に支える「地域の健康拠点」としての役割です。処方箋の有無を問わず、日常的な相談の窓口となることで、患者さんとの接点が増え、健康を身近で支える存在としての価値を高められます。

具体的には、次のような取り組みが挙げられます。

・軽度な体調不良や未病に対するセルフメディケーションの提案
・生活習慣病の予防や健康づくりに関するアドバイス
・OTC医薬品やサプリメントの適切な活用支援
・血圧・体組成などの健康測定サービス
・健康イベントや相談会の開催

こうした活動は、ただサービスを増やすことが目的ではありません。地域住民との継続的な接点を生み出し、健康なときから相談できる関係を築くことで、かかりつけ薬局としての信頼につながります。

ドラッグストアが利便性を強みとする一方で、門前薬局は一人ひとりの健康状態や生活背景に寄り添った継続的な支援を提供できることが強みです。患者さん一人ひとりとの丁寧なコミュニケーションの積み重ねが、将来的な処方箋応需や在宅医療への参画にもつながっていくでしょう。

3-2. 高度薬学管理機能を強化し、地域医療へ貢献する

門前薬局は、医療機関の近くで、長年にわたり専門性の高い処方箋を応需してきました。がん治療や糖尿病、循環器疾患、精神疾患など、特定の診療科に関する処方や服薬指導の経験を豊富に積み重ねてきた薬局も多く、こうした専門性は門前薬局ならではの強みとなります。

門前の医療機関の診療内容に合わせて専門知識をさらに深め、認定薬剤師や専門薬剤師などの資格取得を進めることで、より高度な薬学的管理や質の高い服薬支援を提供できます。また、副作用のモニタリングや疑義照会、薬学的観点からの処方提案などを通じて、安全で適切な薬物療法を支える役割も、これまで以上に重要です。

高度な薬学管理と地域医療への貢献を両立し、「病院の近くにある」だけにとどまらない薬局の価値を発信することで、地域に信頼される薬局をめざしましょう。

4. ドラッグストアと差別化を図る「店舗経営・組織づくり」のポイント

ドラッグストアとの競争において、営業時間や店舗規模、品揃えで勝負することは容易ではありません。だからこそ門前薬局が力を入れるべきなのは、「人」と「組織」の質です。

薬剤師や事務員の高い専門性、チームワーク、地域とのつながりといったソフト面の価値を高めることで、「この薬局だから利用したい」と選ばれる存在になることができます。

4-1. コミュニケーション力を高め、患者さんの「ファン化」を図る

患者さんが特定の門前薬局を選び続ける最大の理由は、「あの薬剤師・スタッフがいるから安心できる」という、人への信頼です。

服薬指導を正確に行うことはもちろん、患者さんの不安や生活背景にも目を向け、一人ひとりに寄り添った対応を積み重ねることで、信頼関係はより深まります。

・笑顔での挨拶や丁寧な言葉遣いを徹底する
・患者さんの名前を呼んで対応する
・前回の相談内容や生活状況を踏まえた声掛けを行う
・待ち時間を短縮する仕組みを整える
・プライバシーに配慮した投薬カウンターを設置する

こうした取り組みは、患者さんに安心感を与え、「困ったときはこの薬局に相談したい」という信頼につながります。日々の丁寧な対応を積み重ねることが、かかりつけ薬局として継続的に選ばれる基盤となるでしょう。

4-2. 薬剤師・事務員が働きやすい環境をつくる

質の高い対人サービスを提供するためには、スタッフが安心して働き、専門性を発揮できる職場づくりが欠かせません。

対物業務に追われ、慢性的な人手不足や業務負担によって現場が疲弊している状態では、患者さん一人ひとりに十分な時間をかけた対応は難しくなります。患者満足度を高めるためには、その土台となる職場環境を整えることが大切です。

薬剤師と事務員、それぞれに応じた教育・研修制度や資格取得支援を充実させるとともに、明確なキャリアパスや公平な評価制度を整えることで、仕事へのモチベーション向上につながります。また、医療現場は業務負担や対人対応による精神的な負荷も大きいため、定期的な面談や相談しやすい職場環境を整え、業務上の悩みや人間関係の課題を早期に把握・解決できる体制を構築することも重要です。

薬剤師と事務スタッフが密に情報共有し、それぞれの専門性や役割を尊重しながらチームとして患者さんを支える組織文化を醸成することで、より質の高い医療サービスを提供できます。働きやすい職場づくりによって人材の定着も進み、安定した経営につながっていくでしょう。

4-3. 多職種連携による地域ネットワークの構築

門前薬局の強みのひとつは、近隣の医療機関との距離が近く、日頃から医師をはじめとする医療従事者と連携を図りやすい環境にあることです。この強みを生かし、医療機関との関係にとどまらず、地域全体の医療・介護ネットワークへと連携を広げることで、地域医療を支える役割を担うことができます。

訪問診療への同行や退院時カンファレンスなどに積極的に参加し、医師や看護師、ケアマネジャー等と顔の見える関係を築きましょう。密な連携は、切れ目のない医療・介護サービスの提供につながるだけでなく、多職種から信頼される薬局づくりにもつながります。

多職種連携では、薬学的な専門知識を生かしながら、必要な情報を適切なタイミングで共有し、相手の立場を理解したコミュニケーションを心掛けることも大切です。

服薬状況や副作用などの情報を迅速に共有するとともに、飲み忘れが多い患者さんへの服薬方法の見直しや、一包化・剤形変更の提案、患者さんの状態を踏まえた投与量への気付きなど、薬学的な視点から情報提供を行うことで、「患者さんをともに支えるパートナー」として信頼を築くことができます。

5. 対人業務の拡充を実現する「薬局DX」

多くの中小規模の門前薬局では、「患者さんともっと向き合いたい」という思いがあっても、調剤や事務作業に多くの時間を費やし、十分な対人サービスを提供できないという課題を抱えています。こうした課題を解決する手段として注目されているのが、薬局DXです。

5-1. 自動化による業務効率化と時間創出

対人業務を充実させるためには、まず対物業務を効率化し、薬剤師が患者さんと向き合う時間を生み出す必要があります。

近年は、自動調剤ロボットや電子処方箋、AI鑑査支援システムなど、薬局DXを支えるさまざまな技術が普及しています。これらを活用すれば、調剤や事務作業の負担を軽減し、限られた人員でも質の高い対人業務に時間を充てることが可能です。

DXを進める際には、創出した時間をどのような対人業務へ振り向けるのかを、あらかじめ明確にしておくことが重要です。業務効率化を目的とするのではなく、対人サービスの質を高めることを目的に活用しましょう。

たとえば、

・服薬が続かない理由や副作用への不安を丁寧に聞き取る
・治療に対する疑問や不安を解消し、服薬アドヒアランスを高める
・認知機能や生活環境、家族背景まで踏まえた服薬指導を行う
・医師へ処方提案や服薬状況を積極的にフィードバックする

といった取り組みに時間を充てることで、患者さん一人ひとりに寄り添った、質の高い薬学的支援を実践できます。

人材不足が続く中小規模の門前薬局こそ、薬局DXを積極的に取り入れ、薬剤師が本来担うべき対人業務に集中できる環境を整えましょう。

5-2. オンライン服薬指導と継続フォローアップ

オンライン服薬指導やアプリを活用した継続的なフォローアップは、重要な対人業務のひとつです。

特に、仕事や育児で忙しい現役世代や、通院・来局が負担となる高齢者、在宅患者さんにとって、「薬局へ行かなくても相談できる環境」は大きな安心につながります。

オンラインの最大のメリットは、薬を渡した時点で関係が終わるのではなく、服薬開始後も継続して患者さんを支えられることです。LINEや専用アプリを活用して服薬状況や体調変化を定期的に確認することで、飲み忘れや自己中断の防止につながるほか、治療に対する不安や疑問にも迅速に対応できます。

継続的なフォローアップは、「困ったときにいつでも相談できる薬剤師」として、患者さんと信頼関係を深めることにもつながります。対面の服薬指導とオンラインを組み合わせ、患者さん一人ひとりに寄り添った継続的な服薬支援を実現しましょう。

5-3. データ活用による患者エンゲージメントの向上

電子薬歴や電子お薬手帳には、服薬履歴や副作用歴、アレルギー情報に加え、血圧や血糖値などの健康データが蓄積されます。これらの情報を継続的に活用することで、患者さん一人ひとりの状態変化を把握し、より適切な服薬支援や健康管理につなげることが可能です。

たとえば、過去の記録をもとに「血圧が安定してきましたね」「前回ご相談いただいた副作用は改善しましたか」といった継続的な声掛けを行ったり、残薬の増加や服薬状況の変化を早期に把握してフォローしたりすることで、患者さんの状態に応じたきめ細かな対応ができます。また、副作用の発現状況や服薬状況を医師へ適切にフィードバックすることで、より安全で効果的な薬物療法にもつながります。

さらに、患者情報を薬局内で適切に共有すれば、担当のかかりつけ薬剤師だけでなく、どの薬剤師が対応しても継続性のある服薬支援を提供できます。スタッフ間の情報共有が進むことで、組織全体で患者さんを支える体制が整い、薬局全体のサービス品質向上にもつながるでしょう。

6. まとめ

調剤併設型ドラッグストアの台頭や調剤報酬改定により、門前薬局を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。

しかし、門前薬局には、医療機関との連携を生かした高度な薬学管理や、患者さん一人ひとりに寄り添った継続的な服薬支援を提供できるという強みがあります。これから求められるのは、専門性をさらに高めるとともに、在宅医療や薬局DX、かかりつけ機能の充実を通じて、地域医療を支える役割を積極的に担っていくことです。

門前という立地を強みに変え、ドラッグストアにはない専門性と信頼を提供することが、地域から選ばれ続ける薬局づくりにつながります。

きらりプライムサービスでは、地域密着型薬局の経営を総合的にサポートしています。在宅医療体制の構築や各種加算の取得支援、人材育成、薬局DXの推進など、薬局経営の課題に応じた支援を行っています。門前薬局の経営や今後の方向性についてお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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