地域連携薬局が求められる役割と認定要件

2021年8月からスタートした機能別薬局の認定制度のひとつが、地域連携薬局です。医療機関との連携や在宅対応などを通し、主体的に地域医療へ貢献する薬局・薬剤師の姿が求められています。
本記事では、地域連携薬局の概要や役割、認定要件などを詳しく解説します。かかりつけ薬局としてさらにサービス向上をめざしたい薬局や、在宅薬局としての幅を広げたい薬局は、ぜひご覧ください。
目次
1. 地域連携薬局とは?
地域連携薬局とは、患者さんの入退院時や在宅医療において、地域の医療機関や施設等と連携し、服薬情報の一元的・継続的な情報連携に対応できる薬局に対する認定制度です。
2021年8月にスタートした認定薬局制度の1つであり、「患者のための薬局ビジョン」におけるかかりつけ薬剤師・薬局の機能に対応しています。地域連携薬局には、休日及び夜間の調剤体制や在宅医療体制の整備など、かかりつけ薬局としての基本姿勢が求められます。
地域連携薬局と名乗るためには、都道府県知事からの認定が必要です。2024年9月30日時点における地域連携薬局の認定数は、全国で4,297軒となっています。
(出典:厚生労働省「薬局・薬剤師に関する情報」)
1-1. 専門医療機関連携薬局との違い
地域連携薬局と同時に、認定薬局制度としてスタートしたのが、専門医療機関連携薬局です。専門医療機関連携薬局は、「患者のための薬局ビジョン」における高度薬学管理機能に対応しています。
地域連携薬局 |
地域の医療機関や施設と連携しながら、服薬情報を一元的・継続的に把握し、それをもとにした薬学管理・指導に対応できる薬局 |
専門医療機関連携薬局 |
がん等の専門的な医療機関と連携し、より高度な薬学管理に対応できる薬局 |
専門医療機関連携薬局は、がんやHIV等の専門医療機関と連携し、治療方針を共有しながら、より専門性が必要な調剤や薬学管理に対応します。地域の医療機関と連携するのは地域連携薬局と同じですが、専門医療機関連携薬局はより高度かつ専門的な対応ができるという点に違いがあります。
地域連携薬局と専門医療機関連携薬局は両方の認定を取得することが可能ですが、それぞれの要件を満たす必要があります。専門医療機関連携薬局の認定数は、2024年9月30日時点で全国205軒と、非常に少ないのが現状です。
ただ、外来でがん治療を行う患者さんは増えており、在宅医療の多様化・高度化も進んでいるため、専門医療機関連携薬局の需要は今後高まると予測できます。地域医療の質向上に貢献するためにも、地域連携薬局と並んでぜひ取得したい認定です。
2. 地域連携薬局の役割
地域連携薬局の主な役割
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地域連携薬局は、患者さんの入退院時や在宅医療移行時において、シームレスな薬物療法ができるようにサポートします。具体的には、医療機関と自宅・施設等の橋渡しとして、通院中の服薬相談やフォローアップ、施設や医療機関に対する服薬情報の提供、退院時カンファレンス等への参加などを行います。
患者さんへの薬学管理・指導は、基本的にかかりつけ薬剤師が対応します。また、他薬局に対しても医薬品の提供や情報発信、研修の実施等を行い、地域医療を担う薬局として主体的な活動が求められます。
3. 地域連携薬局の認定要件
地域連携薬局の認定要件は4つあり、さらにそれぞれの要件を満たす必要があります。
3-1. ①患者さんの心身の状況に配慮した構造設備
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(出典:厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係)|薬生発0129第6号 令和3年1月29日 」
患者さんのプライバシーに配慮し、パーテーション等で区切られた相談窓口の設置が必要です。ただし、単にパーテーションを用意するのではなく、十分な相談スペースを確保する、待合場所と離れた場所に相談カウンターを設置するなど、患者さんが安心して相談できるための配慮が求められます。また、座って相談できるように椅子を設置するのが望ましいとされています。
次に、高齢者や障害を持つ方も利用しやすいよう、手すりやスロープの設置、車いすで来局しやすい入口にするなど、バリアフリーの構造設備が必要です。これらに限らず、地域や利用者さんの状況に配慮し、工夫してみましょう。
3-2. ②周囲の医療提供施設との情報共有体制の構築
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(出典:厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係)|薬生発0129第6号 令和3年1月29日 」
「地域包括ケアシステム構築に役立つ会議」には、地域ケア会議、医療従事者が参加する退院時カンファレンス、介護支援専門員が主催するサービス担当者会議等が挙げられます。
周囲の薬局や医療機関の薬剤師(病院薬剤師)や医療従事者へ向けて、必要な情報をすぐに提供できる体制を整えておくことも必要です。入退院時や在宅医療への移行時において、適切な薬学管理を行えるよう、医療機関と情報連携を行います。
近隣の医療機関へ情報提供を行った実績については、以下についての報告が必要です。
- 患者さんの入院にあたって情報共有を行った実績
- 医療機関からの退院にあたって情報共有を行った実績
- 外来の患者さんに関しての医療機関との情報共有行った実績
- 在宅訪問の報告書を医療機関へ提出して情報提供を行った実績
以上の実績については、いずれか1つを行うのではなく、満遍なく実施されることが望ましいとされています。
3-3. ③医薬品を安定的に供給できる体制の整備
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(出典:厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係)|薬生発0129第6号 令和3年1月29日 」
24時間体制で患者さんの相談や調剤に対応し、医療機関や他薬局と連携して医薬品を安定的に供給できる体制を整備することが求められます。麻薬調剤や無菌製剤の処理ができる環境も必要です。
地域連携薬局では、患者さんと薬剤師が継続的に関わることで適切な薬学的管理を実施することを基本としているため、薬剤師の勤務状況についても指定されています。原則として、「常勤」は、週あたり32時間以上勤務している薬剤師、また「継続して1年以上常勤として勤務」は、認定申請(または更新申請)の前月までに、継続して1年以上常勤として勤務する薬剤師が該当します。
研修については、常勤薬剤師とすべての薬剤師、それぞれ要件が異なるため注意してください。
地域包括ケアシステムに関する研修を修了した常勤薬剤師の半数以上の配置 すべての薬剤師に対する地域包括ケアシステムに関する研修の実施 |
3-4. ④在宅医療対応体制の整備
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(出典:厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係)|薬生発0129第6号 令和3年1月29日 」
地域連携薬局の申請を行うためには、在宅医療の実績が必要です。認定申請(または更新申請)する前月までの過去1年間において、月に平均2回以上、在宅医療を行っていることが条件となります。
また、在宅患者さんだけでなく、在宅医療に関わる医療機関等に対しても、医療機器や衛生用品を提供する体制を整備します。高度管理医療機器等の販売業の許可の取得も必要です。
4. 地域連携薬局に関連する加算
2024年時点では、地域連携薬局の認定を受けたことに付随する加算はありません。しかし、地域連携薬局となることで、以下のような加算が取りやすくなります。
- 在宅薬学総合体制加算
在宅薬学総合体制加算は、薬局の在宅医療に関する体制や機能を評価する加算です。在宅薬学総合体制加算には2つの区分があり、加算2ではより高度な在宅医療体制が求められます。地域連携薬局の要件と被る項目として、麻薬小売業者免許の取得(加算1)、医療材料・衛生材料の供給体制(加算1)、高度管理医療機器等の販売業の許可(加算2)等が挙げられます。
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- 在宅移行初期管理料
在宅移行初期管理料は、計画的に訪問薬剤管理指導を実施する前の段階で患者さんの自宅を訪問し、必要な指導を行った場合の評価です。地域連携薬局は、医療機関と連携し在宅への移行もサポートするため、在宅移行初期管理料も取得しやすい環境にあります。 |
5. 地域連携薬局に向いている薬剤師
最後に、地域連携薬局に向いている薬剤師のタイプを3つ紹介します。地域連携薬局としてふさわしいサービスを提供していくには、薬剤師全員の協力が必要となるため、ぜひ参考にしてください。
①薬局外へ積極的に向かうことができる薬剤師
自ら薬局外に情報を発信し、医療機関や関係者等と関わりを持てる薬剤師は、地域連携薬局に向いていると言えます。従来の処方箋調剤は受け身の姿勢ですが、地域連携薬局は薬局外との関わりや連携が非常に重要です。医師に情報提供を行ったり、ケアマネジャーに連絡してサービス担当者会議に参加させてもらったりと、主体的な活動が求められます。
②ジェネラリストな知識を持つ薬剤師
ジェネラリストとは、幅広い知識や技能、経験などを備えた人を指す言葉です。地域連携薬局では、患者さんの薬物療法や健康的な生活を多方面からサポートするため、薬学的知識はもちろん、医療から介護、診療報酬、予防まで、幅広い知識が必要となります。たとえ医薬品に関係のない介護の相談を受けたときなども、患者さんやご家族に真摯に向き合う姿勢と思いやりが必要です。
③地域のことに詳しい薬剤師
住んでいる地域や働いている地域に愛着を持ち、地域の困りごとを率先して解決していく薬剤師は、地域連携薬局に向いているでしょう。地域連携薬局は、地域の特性を考慮した上で、適切なサポートを提供する必要があります。薬局サービスのヒントを得るには、地元で何十年も続いている飲食店や、地域伝統的に開催する祭りなど、その地域独特の風習や慣習に積極的に参加することもポイントです。地域に溶け込む薬剤師になれれば、自ずと地域住民から信頼される薬剤師となれるでしょう。
まとめ
地域連携薬局とは、地域の医療機関や施設、他薬局等と連携を取り、患者さんの薬物療法をサポートする薬局のことです。患者さんが安心して利用できる環境作りや、医療機関への情報提供などを行い、入退院時や在宅医療におけるシームレスな薬物療法を実現します。
地域連携薬局の要件を満たせば、在宅薬学総合体制加算や在宅移行初期管理料等も取得しやすくなります。現時点では、地域連携薬局の認定を受けることに付随する加算はありませんが、今後新設される可能性はあるでしょう。
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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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