服薬のフォローアップが義務化、薬局や薬剤師に求められる内容とは

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服薬のフォローアップが義務化、薬局や薬剤師に求められる内容とは

1. 服薬フォローアップとは?

服薬フォローアップとは、服薬指導をして患者さんにお薬を渡した後も、継続して使用状況を把握し、情報提供を行うことです。以前は努力義務でしたが、2020年9月の薬機法改正によって、服薬フォローアップを行うことが義務化されました。

薬剤師法(第25条)には、薬剤師が調剤をした際には、患者さんに対して必要な情報提供・服薬指導を行う義務があると記載されています。ただ、これはあくまでも調剤時に限定したものです。薬機法改正により、薬剤師の服薬指導や情報提供は、必要性が認められれば調剤後も継続して行うことが必須となりました。

服薬フォローアップでは、薬剤師は患者さんの状況を把握した上で薬学的知見に基づく分析・評価を行い、服薬指導や関係者への情報提供など、必要に応じた対応を実施します。

2020年9月の薬機法改正では、服薬フォローアップの義務化とあわせて、オンライン服薬指導も解禁されました。服薬フォローアップは必ずしも対面で行う必要はなく、電話やメールを含めたオンラインにて実施することも認められています。

 

1-1. 服薬フォローアップが義務化された理由

服薬のフォローアップが義務化された背景としては、かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師を推進する動きがあります。厚生労働省は「患者のための薬局ビジョン」の中で、2025年までにすべての薬局をかかりつけ薬局にすることを目標として掲げています。

現状では、調剤薬局の約8割が門前薬局であり、受診する医療機関に合わせて利用する薬局を変える患者さんがほとんどです。門前薬局が多い状態では、服薬情報を一元化して患者さんを継続的にサポートすることはなかなかできません。そこで、かかりつけ薬局と患者さんの関係性を強化し、薬物療法の個別最適化を進めるために、服薬フォローアップが義務化されました。

服薬フォローアップを定期的に行うと、患者さんから薬局・薬剤師に対する信頼が生まれ、患者さんがかかりつけ薬剤師を選ぶ動きも加速するでしょう。服薬フォローアップの義務化は、かかりつけ薬局・薬剤師を増やすための施策ではあるものの、薬物療法の安全性確保に関わる重要なサポートだということをしっかりと理解して取り組むことが大切です。

1-2. 服薬フォローアップに期待されていること

服薬フォローアップは、充実化していくべき対人業務の1つです。薬剤師による服薬フォローアップでは、以下のような効果が期待されています。

  • 薬剤の適正な使用の推進
  • 服薬アドヒアランスの向上
  • 副作用・症状悪化の予防
  • 受診勧奨や処方提案などのフィードバックの強化

服薬フォローアップによって、重大な副作用や重篤化を回避できた例は多くあります。令和4年度では服薬フォローアップを実施した355例のうち、処方変更を行った事例は225件と、約6割にも上りました。まだ実施件数が少ないため、服薬フォローアップによって状況が改善できる患者さんはもっと多いでしょう。

実際に、服薬フォローアップを受けた患者さんの多くが、「薬物治療による不安が解消した」「薬物治療に対する意識が高まった」と感じています。今後ますます高齢社会が進み、在宅医療ではさまざまな症状を抱える患者さんが増えるでしょう。そのような中で、患者さんの特性を踏まえた安全かつ最適な薬物療法を実施するために、薬剤師による服薬フォローアップに期待が集まっているのです。
(出典:中医協総会資料「調剤について(その1)」

2. 服薬フォローの基本サイクル

服薬フォローアップは、①初回来局時、②薬剤交付から次回来局まで、③次回来局時の3つのサイクルに応じて実施します。

①初回来局時

医師からの情報や患者さんへのヒアリングにより情報収集を行い、薬学的知見に基づいて処方内容や薬歴を分析・評価します。患者個人の特性に応じて、次回来局までのフォローアップを計画します。

②薬剤交付から次回来局まで

初回来局時に得た情報をもとに、服薬指導や服薬管理、受診勧奨、残薬調整、医師への情報提供といった必要な対応を行います。

③次回来局時

これまでのフォローアップの結果に基づき、次回来局までのフォローアップについて再検討します。

初回来局移行は②③を繰り返し、フォローアップの精度を高めていきます。

3. 服薬フォローアップ実践の流れ

確認すべきポイントや判断基準を明確に持っていると、服薬フォローアップは決して難しいものではありません。ここでは、服薬フォローアップを実践する際の、大まかな流れを解説します。

3-1. ①服薬フォローアップの必要性を検討する

まず、患者さんに服薬フォローアップが必要なのかを見極めます。①患者さんの特性、②病気の特性、③使用する薬剤の特性の3つを軸に、服薬フォローアップの必要性を判断します。

服薬フォローアップの必要性が高いと判断できる患者さんの例

  • 高齢者
  • 妊娠中・授乳中の女性
  • 腎機能・肝機能が低下している
  • 身体機能が低下している
  • 生活習慣に問題がある
  • ハイリスク薬・服用に注意が必要な薬剤を処方されている
  • 新しい薬が処方された
  • 用量が変更された
  • 服用している医薬品・サプリメント、喫煙・飲酒歴などに不安がある

服薬フォローアップの必要性があると判断された場合は、患者さんにフォローアップを実施する旨を伝えておくと親切です。何も説明しないまま後日連絡が来ると、患者さんが驚くことも多いので、実施する目的や理由を理解してもらいましょう。

3-2. ②連絡手段を選ぶ

服薬のフォローアップを行う連絡手段として、電話/メール/SMS/SNS/専用アプリの5つが挙げられます。

高齢の患者さんには、普段から使い慣れている電話が好まれます。ただ、業務の合間に電話をかける必要があるので、薬剤師にとっては負担の多い連絡手段となります。

日中働いている人や、若い年代の患者さんは、メール・SMS・SNS・専用アプリでのフォローアップを希望するケースが多い傾向です。メッセージ機能であれば都合のよいときに返信できるため、電話よりも利便性に優れており返答率も高いという特徴があります。

ただし、実際にはさまざまな状況の患者さんがいるため、フォローアップの手段をひとつに限定することはおすすめできません。患者さんの希望によって柔軟に対応できるよう、複数の連絡手段を用意しておきましょう。

3-3. ③服薬フォローアップを実践する

  • 服薬フォローアップのタイミング

患者さんによって、フォローアップのタイミングは異なります。処方薬の内容に不安がある場合は、副作用が表れやすい頃や、お薬の刺激が表れやすいタイミングを見計らってフォローアップを行います。患者さんの不安解消が目的である場合は、体調の変化が出やすい頃や、次の来局日までの中日に設定するとよいでしょう。

  • 連絡を入れる時間帯

高齢の患者さんの場合は、食事や就寝の時間帯を避けて、10〜11時・14〜16時頃。日中働いている患者さんには、お昼休みの12時頃や、就業後の18時以降がひとつの目安となります。電話の場合は、予め都合のよい曜日や時間帯を聞いておくとよいでしょう。

  • フォローアップの内容

メール、SNS、アプリなどで連絡する場合、すべての患者さんに定型文を一斉送信するのは避けましょう。フォローアップの内容が患者さんの状況にそぐわない場合、患者さんやご家族はもちろん、医師やケアマネジャーなどの関係者からも信頼を失う恐れがあります。

フォローアップでは、以下の内容を中心に患者さんの状況を窺います。

  • お薬を問題なく服用できているか
  • 不安に思っていることはないか
  • お薬の服用を始めたことで生活に影響が出ていないか

すでに窓口で話した内容であっても、不安な点があれば再度伝えなおしましょう。必要に応じて、数日後に再度フォローアップを実施します。重篤な副作用の疑いがある場合や、薬物療法の継続が難しい場合は、速やかに医師に報告してください。

3-4. ④結果を分析・評価及び記録する

服薬フォローアップで得た情報は、調剤録もしくは薬歴に記録します。患者さんの生活状況や処方内容、症状などを総合的に評価し、慎重に分析することが大切です。

お薬の用法用量が適切でないと判断できる場合などは、医師にフィードバックを行います。特に、医療機関側は薬剤師からの処方提案に信頼を置いているため、積極的に介入して医療の質向上に努めましょう。

4. 薬品ごとのフォローアップのポイント

お薬は大きく分けて、医療用医薬品・要指導医薬品・一般用医薬品の3つがあります。薬の種類に関わらず、必要性が認められれば服薬フォローアップの対象となります。

ここでは、薬品ごとのフォローアップのポイントを解説します。

4-1. 処方箋医薬品以外の医療用医薬品

「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」とは、医療用医薬品のうち、医師の処方箋がなくても薬剤師がカウンセリングを行った上で販売できる医薬品のことです。そして、「処方箋がなくても病院の薬が買える薬局」のことを、一般的に零売薬局といいます。

零売薬局で医療用医薬品を販売する場合、医師の診察がないため、薬剤師の指導・判断が非常に重要です。患者さんが購入を検討する時点から、症状や生活習慣についてしっかりとヒアリングを行いましょう。

はじめて服用するお薬を販売した場合や、患者さんの経過が気になる場合などは、必ず服薬フォローアップを実施します。患者さんの状況によっては医療機関の受診が望ましいケースもあるため、必要に応じて受診勧奨をすることも大切です。

4-2. 要指導医薬品/一般用医薬品

「要指導医薬品」「一般用医薬品」は、一般的にOTC医薬品や市販薬と言われます。要指導医薬品は、薬剤師との対面による情報提供が義務となっているため、患者さんが過剰に購入・使用するケースは少ないでしょう。しかし、副作用などのリスクが高い薬である点に注意が必要です。

一般用医薬品のほとんどは、患者さんが自分で選んで購入できます。このため、誤った目的で購入・使用されているケースも珍しくありません。患者さんの中には、お薬の内容を確認せず、習慣的に一般用医薬品を使用している人もいます。

要指導医薬品・一般用医薬品では次の点に注意し、必要に応じてフォローアップを実施しましょう

  • 市販薬を使い過ぎていないか
  • 大きな病気の兆候を隠している可能性はないか
  • 市販薬の選び方・使用方法は正しいか
  • 患者さんの生活習慣に問題はないか

服薬フォローアップのために電話番号を聞くだけでも、誤った使用目的での購入を減らすことができます。市販薬の健全な使用を確保するためにも、服薬フォローアップに取り組みましょう。

5. 服薬フォローアップにおけるLINE活用のススメ

近年、注目が高まっているのが、ユーザーの多いLINEアプリを使用した服薬フォローアップです。LINEで使えるお薬手帳や、LINEがあれば登録不要で使えるお薬手帳アプリなど、LINEを活用する薬局ツールが数多く公開されています。

LINEのお薬手帳ツールでは、メッセージの送信予約や回答ボタンの設置など、便利な機能が豊富に用意されています。上手に利用することで、服薬フォローアップの効率化が図れるでしょう。ToDo管理でフォロー予定を登録すれば、アラート機能で服薬フォローアップの対応漏れも防げます。

また、LINEのお薬手帳ツールでは、LINEを介した処方箋送信・健康相談・オンライン服薬指導なども実施できます。服薬フォローアップだけでなく、さまざまな業務のオンライン化を一度に叶えることが可能です。

患者さんにとっては、普段使い慣れているLINEだからこそ、対面では言いにくいことでも相談できるというメリットもあります。

ただし、LINEでのコミュニケーションは希薄になりやすい点に注意してください。来局時は対面コミュニケーションを通して、患者さんとの信頼関係を深めることが大切です。

まとめ

服薬フォローアップとは、患者さんにお薬を渡した後も、継続的に服薬状況の把握や情報提供を行うことです。薬機法改正により義務化されたため、必要性があると判断された場合は、必ず服薬フォローアップを実施します。服薬フォローアップは、服薬状況の一元管理を果たす役割も担っており、かかりつけ薬局・薬剤師の促進にもつながっています。

服薬フォローアップは、医師から処方されたお薬だけでなく、市販薬も対象です。患者さんの状況やリスクを踏まえた上で、一人ひとりに応じたフォローアップを行ってください。

「KIRARI PRIME サービス」では、在宅薬局の経営をサポートしています。服薬フォローアップをはじめ、在宅訪問業務の効率化や薬剤師の育成などにお困りの薬局経営者の方は、ぜひKIRARI PRIME サービスにお問い合わせください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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【当コラムの掲載内容に関するご注意点】
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参考 患者のための薬局ビジョンP7

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/gaiyou_1.pdf

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