在宅訪問の始め方!必要な書類から手順書まで解説!

「在宅訪問を始めようと思っているけど、何から始めたらいいのかわからない」とお悩みではありませんか?
1985年にはまだ10.3%だった高齢化率は、2018年に28.1%となり2040年には35%を超えると予測されています。
高齢者の割合が増えていくにつれ在宅訪問の需要は間違いなく高まるでしょう。
生き残る薬局になるためには在宅訪問をすべきだと言われることも少なくありません。
そこで今回は、薬局が在宅訪問を始めるために必要な書類や手順などを詳しく解説します。
目次薬局における在宅訪問の概要
薬局が行う在宅訪問では、次のような業務が一般的です。
①患者さんの自宅に薬を届けて管理する
調剤した薬を患者さんの自宅に直接届けます。処方箋に基づき調剤を行い、監査まで行ったうえで届けることが基本です。自宅で服薬指導を行い、服用方法をしっかり理解してもらえたかどうかまで確認しましょう。
②薬の残薬調整を行う
残薬の数に合わせて、次に処方してもらう薬の量を調整します。患者さんの自宅に行くと残薬がいくつもあることが多いため、残薬の調整は在宅訪問を行ううえで欠かせないものとも言えるでしょう。
③残薬が出ないようサポートを行う
なぜ残薬が出てしまうのか、原因にもしっかりフォーカスすることが大切です。錠剤が大きくて飲み込めない、PTPシートから上手に取り出せない、お昼の服用を忘れてしまうなど原因はいろいろと考えられます。
潰せる原因はしっかり対処をし、患者さんの服薬コンプライアンスを上げていきましょう。
④報告書を作成し情報を共有する
患者さんの服薬状況や副作用、治療効果などについて報告書を作成し、担当医とケアマネジャーにしっかりと報告をしましょう。
報告書の内容で治療方針が変わることもあるため、患者さんの状況をしっかり見て書くことが大切です。
在宅訪問の始め方
薬局が在宅訪問を始める大まかなステップは
医師の指示⇒ケアプラン作成⇒薬剤師の居宅療養管理指導の開始が一般的です。
こちらではもう少し具体的に見ていきましょう。
①医師やケアマネージャーと親しくなっておく
在宅訪問を始める1番の近道と言われているのが、医師やケアマネージャーなどと親しくしておくことです。とくに医師と親しくなっておくのは最低限の条件だとも言えます。
なぜなら、在宅訪問を開始した方の80%以上が医師から在宅訪問をしてくれないかと依頼を受けたことがきっかけで始めているからです。在宅訪問を開始するには医師の指示を受けることが必須になるので、薬局や薬剤師の地道な声掛けが必要となります。
「在宅訪問を始めようか考えている」ということを医師に伝えておくだけではなく、薬局として飲み合わせの確認が丁寧に実施できる旨など薬剤師として医療のサー
ビスを提案できると依頼を受ける確率が上がります。
患者さんにケアマネージャーがついている場合は、その方に服薬状況を確認するのもありです。
②医師に訪問薬剤管理指導依頼書もしくは情報提供書を記入してもらう
訪問薬剤管理指導依頼書・情報提供書とは、医師が薬剤師に在宅訪問を依頼する際に必要になる書類です。「残薬がありそうだし、服薬状況が気になる」という患者さんがいる場合は、薬剤師から医師へ相談するなどして訪問薬剤管理指導依頼書もしくは情報提供書を記載してもらうようにお願いをします。
ちなみに都度訪問薬剤管理指導依頼書を作成しなくても、処方箋に「訪問指示」の内容を記載するだけでもOKなので、覚えておきましょう。
③薬剤師による居宅療養管理指導の同意書を患者さんから書いてもらう
訪問を始めるために必要な情報をケアマネージャーに提出することが必要です。しかし、実際にはケアマネジャーから情報を共有してもらうことが殆どです。なので薬局は患者さんの嗜好品や家族背景などを共有し合うことが大切になります。
居宅サービスの利用に問題がないことなどに同意が確認できれば、患者さんのスケジュールを伺って訪問を行えるようになります。
在宅訪問を始める際に必要な書類とは?
在宅訪問を始めるためには、次のように多くの書類が必要です。
- 在宅患者訪問薬剤管理指導に係る届出
- 介護給付費の請求及び受領に関する届
- 居宅療養管理指導・介護予防居宅療養管理指導事務所の指定に係る記載事項
- 生活保護法指定介護機関指定申請書
このほかに居宅療養管理指導の契約書や居宅療養管理指導の訪問記録簿などの書類も準備する必要があります。
ここでは、在宅訪問を始める際に必要となる4つの種類についてそれぞれ見ていきましょう。
①在宅患者訪問薬剤管理指導に係る届出
在宅患者訪問薬剤管理指導に係る届出は、「うちの薬局で在宅訪問を始めますよ」ということを申請するための書類です。保険薬局の所在地や名称、電話番号などを記入して地方厚生局に提出します。
②介護給付費の請求及び受領に関する届
介護保険を利用した場合、患者さんの負担とならない分の金額は介護給付費として在宅訪問を行っている薬局に直接支払われます。
この介護給付費を請求して受け取るために必要なのが介護給付費の請求及び受領に関する届です。事業所番号や名称、住所や請求者などを記載し、国保連合会介護保険係に提出します。
③居宅療養管理指導・介護予防居宅療養管理指導事務所の指定に係る記載事項
こちらは在宅訪問を行う事業所として認定を受けるための書類です。ほとんどの薬局で提出の必要はありません。保険薬局の場合は介護保険の指定事業所として見なされているためです。
④生活保護法指定介護機関指定申請書
生活保護の方や中国残留邦人に対して在宅訪問を行う際に必要になる書類です。介護保険法による指定日や開設許可日が平成26年6月30日より以前の方は提出の必要があります。
また、生活保護法による見直し指定を受けていない薬局も提出が必要です。事業所名や住所、開設者の氏名などを記入して都道府県にある生活保護の担当部署へ提出します。
在宅訪問の手順書ってあるの?
在宅訪問を始めるためには、大きく3つの手順を踏む必要があります。次のステップを参考に在宅訪問を始める準備をしていきましょう。
①申請書や届出を提出する
在宅訪問を始めることになったら、書類をまずは提出します。書類とは、先ほども紹介した次の4つの書類のことです。
- 在宅患者訪問薬剤管理指導に係る届出
- 介護給付費の請求及び受領に関する届
- 居宅療養管理指導・介護予防居宅療養管理指導事務所の指定に係る記載事項
- 生活保護法指定介護機関指定申請書
これに加えて、麻薬小売業の免許申請も必要です。在宅訪問では麻薬を取り扱うこともあるため、保健所に申請を行っておきます。
②薬局内の掲示物を作る
薬局内にも在宅訪問に関する掲示が必要です。
- 運営規程の概要
- 介護保険サービス提供事業者としての掲示
- 在宅患者訪問薬剤管理指導の届出を行なっている旨の掲示
- 無菌製剤処理加算に関する掲示
運営規定の概要には、在宅訪問で具体的にどのようなことをしているのかを詳しく記載します。また、そのほかの掲示も基本的には行っているサービス内容を書くものです。無菌製剤処理加算については、許可を受けている場合にのみ掲示しておきましょう。
③※契約書類を作成する
患者さんと薬局とで契約を交わす際に必要な書類も準備しておきます。具体的には、重要事項説明書や契約書です。どちらも2通ずつ作成し、1通は薬局内で5年間保管しておかなければいけません。(※契約書類が必要なのは居宅療養管理指導の場合のみになります)
まとめ
薬局が新しく在宅訪問を始めるには、医師から在宅訪問について依頼を受けてから始めるケースがほとんどです。しかし患者さんの目線に立って、医師やケアマネジャーと患者さんの情報を共有し、積極的に医療サービスを実施すれば在宅訪問も始めることができるでしょう。
また、提出するべき書類がいくつかあるので、まずは書類の作成と準備を行いましょう。それができたら薬局内の掲示物や患者さんと交わす契約書などを作成します。
手順を1つずつ踏んでいけば、在宅訪問の始め方は決して難しいものではありません。
お役立ち資料:調剤訪問チェックリスト(DL資料)
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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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