在宅患者を獲得するには

とくに小規模の薬局だと、患者さんを囲えるかどうか心配になるでしょう。
残念ながら、在宅訪問を始めても何かしら行動をしなければ患者さんの獲得にはつながりません。
今回は、在宅患者を獲得する方法や薬剤師に必要なスキルなどを紹介します。
目次
在宅患者を獲得するには
在宅訪問を開始するきっかけでもっとも多いといわれているのは、処方医からの訪問依頼です。
そのため、在宅患者を獲得するには、在宅訪問を行っていることをまずは医師に知ってもらうことが有効だと考えられます。
医師に在宅訪問を行っていることを伝えたり、トレーシングレポートを使って在宅訪問の必要性があることを伝えたりすることで在宅患者の獲得につなげることが可能です。
処方医からの訪問依頼以外では、患者さんの家族から相談されたり、ケアマネジャーからの相談を受けてから訪問を開始するケースがあります。
また、患者さんの家族や患者さんご本人に在宅医療を始めてみてはどうか薬剤師から積極的にお声がけするのも在宅患者を獲得する一つの手段です。
在宅訪問をできる体制の準備
在宅訪問を行うためには、まず人員の確保が必要です。在宅訪問のために薬剤師が一人いなくなっても薬局業務が回るよう、体制を整えておく必要があります。
患者さんが急変したときに対応できるようにしたり、求めがあった場合に24時間体制で在宅医療を提供できるようにしておくことも大切です。
在宅訪問を行っているタイミングで患者さんが急変する確率はゼロではありません。
すぐに入院病床を確保できるように、近隣の医療機関と提携しながら在宅医療を提供する必要があります。
薬剤師に必要なスキル
在宅訪問を円滑に行っていくためには、薬剤師に相応のスキルが必要です。
スキル不足のまま在宅訪問を行っても、十分に患者さんのケアをすることができません。
1薬剤師としての知識
在宅訪問では、患者さんの生活スタイルに馴染むような薬剤管理や服薬指導を行うスキルが要求されます。自宅を訪問することで見えてくる患者さんの生活に寄り添ったサポートを行いましょう。薬を飲みづらそうにしている様子はないか、一包化しなくてもしっかりと服用できているか、残薬がないかなどを確認しながら薬剤師としての業務をこなしていく必要があります。
2コミュニケーション能力
在宅訪問では、コミュニケーション能力が必要不可欠です。患者さんの対応をするうえでももちろん必要ですが、医師や看護師、歯科医師などほかのスタッフとの連携も必要になります。スタッフ間で円滑なコミュニケーションが取れるように共有事項をわかりやすく書き記したり、電話やメールを使って情報をわかりやすく伝えたりする能力も必要です。在宅訪問はチームで一人の患者さんをサポートしていくため、スムーズな意思疎通を行っていかなければなりません。
3気配りができる能力
在宅訪問では、患者さんの悩みに寄り添うことが大切です。「こういう悩みがあって…」と患者さん自らが相談してくれればよいのですが、すべての方が薬剤師になんでも相談してくれるとは限りません。そのため、患者さんが困っていることはないか、手を貸してほしそうにしていることはないかなどの気配りと観察力が必要です。
患者さんにとってのメリットを理解する
在宅患者を獲得するためには、患者さんにメリットを理解してもらう必要があります。
メリットを感じなければ患者さんは在宅訪問に興味を示してくれません。
1住み慣れた場所で療養できる
大きなメリットは、住み慣れた場所で毎日を過ごせることでしょう。患者さんが亡くなる場所でもっとも多いのは病院です。
亡くなる方の約80%は病院で最期を迎えています。しかし実際には、約60%の方が自宅で療養したいと考えているのをご存知でしょうか。在宅訪問を始めることで、自宅で療養したいという気持ちを尊重することができます。
224時間体制で対応してもらえる
自宅で療養したいと考えている方は多いものの、自宅で最期まで療養するのが難しいと感じている方が少なくありません。
自宅療養が難しいと患者さんが感じる理由の一つとして、24時間体制で相談に乗ってくれるところがないというのがあります。
何かあったときのことを考えると、そう感じるのもむりはありません。在宅訪問は基本的に24時間、薬剤師をはじめ医師や看護師と連絡が取れるようになっています。いつでも駆けつけられることを前面に出すと安心する方が多いでしょう。
3入院を継続するより費用が安く済む
一般的に入院するよりも在宅医療を受けるほうが医療費は安く済みます。入院費用が気になる方は在宅医療を検討してみてもよいでしょう。入院時の面会や検査時の付き添いの必要もなくなるので、ご家族の方の負担も減らせます。また在宅医療は入院に比べると約3分の1程度の費用になると言われています。
提案時の注意点
在宅訪問を受けた方がよいと思われる患者さんが目の前にいても、突然「在宅訪問を始めてみませんか?」と勧めるのはあまりおすすめできません。なぜなら、在宅訪問を勧められることで、病状がよくないのは自分の管理力が低いと思われているのでは、と感じる方もいるからです。そのため、在宅訪問を受けるメリットを説明しながら最終的な判断は患者さんに任せるという方法を取るのが無難です。決して押しつけにならないように注意しましょう。
まとめ
在宅患者を獲得するためには、在宅訪問を行っていることを医師に伝えること、そして薬剤師が率先して患者さんに話を持ちかけることが大切です。ただし、在宅訪問を行うためには患者さんの確保だけでなく医療機関との連携や24時間対応できる体制を整えたりする必要もあります。住み慣れた土地で療養できることや24時間体制で対応してもらえることが在宅医療のメリットです。メリットをうまく伝えることができれば、在宅患者の確保にもつながるでしょう。
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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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