在宅訪問を始める薬局のための在宅患者獲得ノウハウ

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在宅訪問を始める薬局のための在宅患者獲得ノウハウ

在宅医療の需要が高まり、在宅訪問に取り組む薬局が増えています。しかし、在宅訪問を始めたものの患者さんを獲得できずに悩むケースは少なくありません。特に、開業当初や小規模の薬局では、在宅患者さんの獲得が大きな課題となっています。

本記事では、在宅患者獲得のためのアプローチや、在宅訪問体制を整備するポイント、在宅薬剤師に必要なスキルなどを紹介します。在宅患者獲得にお困りの薬局経営者の方は、ぜひお役立てください。

目次

1. 在宅訪問が開始する3つのパターン

2. 在宅患者獲得のためのアプローチ
2-1. 医療機関や介護施設へ営業に行く
2-2. ケアマネジャーとつながりを持つ
2-3. 外来患者さんに提案する

3. 在宅訪問体制を整備するポイント
3-1. 在宅医療を行う医師と連携する
3-2. 薬局の人員を確保する
3-3. クリーンルームを設置する
3-4. 薬局DXを推進する

4. 在宅薬剤師に必要なスキル
4-1. コミュニケーション能力
4-2. 観察力・想像力

5. 患者さんに在宅医療を提案するポイント
5-1. 住み慣れた場所で療養できる
5-2. 24時間対応体制が整備されている
5-3. 入院を継続するよりも費用を抑えられる

まとめ

1. 在宅訪問が開始する3つのパターン

在宅訪問を開始するきっかけには、大きく分けて、医師の指示型・薬局提案型・他職種提案型の3つのパターンがあります。

①医師の指示型

医師から直接依頼を受けて、薬剤師の在宅訪問が始まるパターンです。在宅訪問が始まるケースとして最も多いのが特徴です。

②薬局提案型

在宅訪問の必要性が認められる患者さんについて、薬剤師から医師に情報提供を行い、在宅訪問を依頼するパターンです。

③他職種提案型

患者本人やご家族、ケアマネジャー、訪問看護師などの他職種から相談を受けるパターンです。相談を受けたら、薬剤師が在宅訪問の必要性を確認し、医師に在宅訪問を依頼します。

在宅訪問を始めるためには、医師からの訪問指示が必要です。患者さん本人が強く希望しても、医師からの訪問指示がなければ在宅訪問を開始することはできません。「①医師の指示型」以外のケースでは、必ず薬剤師から医師に依頼し、訪問指示を受けましょう。

2. 在宅患者獲得のためのアプローチ

在宅患者さんを増やすためには、薬局がさまざまな方面に働きかけることが大切です。ここでは、在宅患者獲得に向けた3つのアプローチを紹介します。

2-1. 医療機関や介護施設へ営業に行く

在宅訪問を開始したら、地域の病院やクリニック、介護福祉施設などに営業へ行きましょう。溢れかえる調剤薬局の中で、今後「地域になくてはならない薬局」として地位を築くためには、薬局側から積極的に売り込むことが大切です。

薬局の営業活動は、一般的な企業の営業活動とは異なります。地域の特色や薬局の強み、対応エリアなどを考慮して、効果的なアピールを繰り返し、信頼関係へつなげていくことが大切です。

営業にあたっては、パンフレットやリーフレットがあると便利です。協力が得られれば、病院や施設などにパンフレットを置いてもらうのもよいでしょう。

2-2. 外来患者さんに提案する

飲み忘れ・飲み間違いが多い、処方薬が多い、高齢で一人暮らしをしているなど、服薬に問題があると判断できる場合には、窓口で患者さんに在宅訪問を提案しましょう。患者さん自身がお薬を飲むことに困っている様子であれば、在宅訪問を受け入れてもらえる可能性は高いようです。

また、患者さんのご家族やケアマネジャーなど、患者さん以外の人がお薬を受け取りに来ている場合も、在宅訪問を勧めてみましょう。在宅訪問に切り替えることで代理の方の負担が軽減し、患者さんと直接指導できるのでより安全な薬物療法を提供できます。

医師は、患者さんが自宅でどのように薬を飲んでいるのかを、正確に把握することはできません。服薬に問題点が見られたら、患者さんの同意を得た上で、医師に在宅訪問を依頼しましょう。

3. 在宅訪問体制を整備するポイント

在宅訪問の質を高めるためには、薬局内の体制や整備を整えることが大切です。体制が整っていれば、薬剤師の業務負担が軽減し、緊急時にもスムーズに対応できます。

3-1. 在宅医療を行う医師と連携する

安全な在宅医療を勧めるためには、薬局・医師間の連携が最も重要です。薬剤師による報告書によって、医師は患者さんの情報を薬学的視点から詳しく知ることができます。中には、「医師には言いにくくても薬剤師には話しやすい」という患者さんもいます。薬剤師は、患者さんに適切な服薬指導・管理を行い、些細な情報でも医師と共有することが大切です。

また、急変時の対応をスムーズにするためにも、医師との連携が重要になります。医療機関よりも、地域密着型の薬局のほうが小回りが利くので、急変時に一番最初に駆けつけるのが薬剤師であるケースは少なくありません。在宅訪問を行っているタイミングで、患者さんが急変する可能性もあるでしょう。このような有事の際に、すぐに入院病床を確保できるよう、地域の医療機関との協力体制を築いておくことが大切です。

3-2. 薬局の人員を確保する

薬剤師が不足している薬局では、外来と在宅訪問を両立できるように人員を確保することが先決です。経営者の薬剤師1人で外来と在宅訪問を受け持っている場合、在宅訪問で外出する際には薬局を閉めることになります。在宅医療への関心が高い薬剤師を採用し、在宅に関する知識・ノウハウを伝えましょう。

薬剤師以外にも、ピッキングや一包化などを任せる調剤事務員を採用する手もあります。薬剤師は調剤業務から離れ、患者さんへの対応に時間を充てることができるので、対人業務の充実化が図れるでしょう。

3-3. クリーンルームを設置する

クリーンルーム(無菌調剤室)は、抗がん剤や注射薬などの調剤で必要となります。在宅医療のニーズが拡大し、今後さまざまな病気を抱える患者さんが増える中、クリーンルームの重要性も高まるでしょう。無菌調剤に対応できる薬局は、高い医療サービスを提供できると判断され、医師や患者さんからの信頼を得やすくなります。

クリーンルームは、他薬局との共同利用も認められています。導入予定のない薬局は、クリーンルームを持つ薬局に問い合わせてみるとよいでしょう。ただ、緊急時においてスピーディーな対応を実現するには、薬局内にクリーンルームがあると有利です。クリーンルームの導入は費用がかかるものの、いずれは設置できるように準備を進めましょう。

3-4. 薬局DXを推進する

デジタル化やICTツールの活用により、薬局DXを推進することで、理想的な在宅医療体制を構築できます。たとえば、在宅訪問における報告書作成をクラウド型システムで管理すれば、薬剤師は外出先からでも報告書の作成・送信ができるようになります。時間を有効活用でき、効率よく在宅訪問軒数を増やせるでしょう。

医師や訪問看護師、ケアマネジャーなど、多職種連携を強化するためには、ICTツールの導入が欠かせません。ICTツールを利用することで、必要な情報を迅速に共有でき、患者さんの状態に応じた医療サービスを切れ目なく提供し続けることが可能です。

4. 在宅薬剤師に必要なスキル

在宅訪問と外来対応は、どちらも患者さんの安全な薬物療法を提供するために服薬指導を行うことに変わりはありません。しかし、在宅訪問は患者さんとの距離が近く、よりきめ細かなフォローが求められます。

ここでは、薬剤師としての知識・スキルのほかに、在宅薬剤師に求められるスキルを2つ紹介します。

4-1. コミュニケーション能力

在宅訪問では、患者さんやご家族のほか、医師・訪問看護師・ケアマネジャーといった多職種などさまざまな立場の人と関わります。それぞれの関係性で、適切なコミュニケーションを図ることが大切です。

患者さんやご家族に対しては、相手の気持ちに寄り添う穏やかなコミュニケーションが求められます。不安や悩みを引き出し、患者さんやご家族の心のケアをすることも、在宅薬剤師の役割です。

多職種と円滑な連携を図るためのコミュニケーションは、患者さんに対するものとは質が異なります。共有事項をわかりやすく記載すること、内容を簡潔かつ正確に伝えること、他職種を尊重することなど、チーム医療の一員としてのスキルが求められます。チーム医療の中では、薬剤師としての専門性を発揮したいと思いがちですが、他職種の意見を柔軟に取り入れることも大切です。

4-2. 観察力・想像力

在宅訪問の現場では、患者さんの自宅に行き、実際の生活の様子を知ることができます。患者さんとの会話や顔色だけでなく、服装や寝具の状態、お薬の管理状況なども確認し、さまざまな要素を総合的に考えて判断する必要があります。

たとえば、寝具に使われた形跡がない場合は、ただ綺麗に整えられていると判断するのではなく、「夜眠れていないかもしれない」と気づくことが大切です。患者本人は気に留めず薬剤師に伝えなかったとしても、お薬の副作用で眠りにくくなっている可能性があります。「夜眠れていますか?」と薬剤師がひと言声をかけるだけで、患者さんの健康が守られることもあるのです。

患者さんの状況とお薬の副作用を結びつけて考えるためには、豊富な知識と想像力が必要です。目の前にあることをただ受け止めるだけでなく、「どうしてこうなったのだろう」「何があったのだろう」と、一歩踏み込んで考えることを習慣にしましょう。

また、薬剤師には些細なことでも、他職種にとっては貴重な情報となることもあります。何か異変を感じたものは、小さなことでも情報共有をすることが大切です。

5. 患者さんに在宅医療を提案する際のポイント

外来患者さんに在宅医療への切り替えを提案する際に、患者さんにとってのメリットを理解してもらうと、受け入れてもらいやすくなります。ただし、患者さんに在宅医療を強要するような、語気の強い伝え方は避けましょう。メリットを伝えつつ、最終的な判断は患者さんに委ねるようにしてください。

ここでは、患者さんに在宅医療を提案する際のポイントを3つ紹介します。

5-1. 住み慣れた場所で療養できる

在宅医療の大きなメリットは、患者さんが住み慣れた場所で日々を過ごせることです。厚生労働省による「令和元年(2019)人口動態調査」によると、病院で最期を迎える人は約70%にもなります。しかし、約60%の人が「自宅で最期を迎えたい」と回答しています。

自宅で療養したいという気持ちのある患者さんにとって、在宅医療は有力な選択肢となります。患者さんに対して失礼にならない場合は、看取りの場所としてどこを希望しているのかをヒアリングしてもよいでしょう。

5-2. 24時間対応体制が整備されている

患者さんの多くは、「在宅医療だと体調が悪化したときに対応してもらえないのでは」という不安を抱いています。いつでも医師や看護師がいる病院に比べて、在宅医療は心細いと感じる人も多いのです。

患者さんには、在宅医療は24時間体制であること、薬剤師をはじめ医師や看護師といつでも連絡が取れることをしっかりと伝えましょう。夜間や休日でも対応してもらえるとわかれば、患者さんも前向きに検討できます。

5-3. 入院を継続するよりも費用を抑えられる

一般的に、入院するよりも、在宅医療を受けるほうが医療費を抑えられます。内容や自己負担割合にもよるものの、在宅医療に切り替えると、入院の半分ほどの費用で済むケースもあります。入院費用が気になる患者さんには、在宅医療を勧めてみてもよいでしょう。

在宅医療に切り替えると、入院時の面会や検査時の付き添いの必要もなくなるので、ご家族の負担も減らせます。家族で一緒に過ごすことができるので、患者さんのQOLの向上も大きく期待できるでしょう。

まとめ

在宅患者を獲得する方法として、医療機関や介護福祉施設へ営業活動へ行く、外来患者さんに窓口で勧めるといった手段があります。薬局側からの働きかけにより、在宅訪問サービスの特徴や強みをアピールすることが大切です。

在宅医療の質を高めるためには、人員を確保するほか、医療機関との連携強化、24時間対応体制の整備、薬局DXの導入にも取り組みましょう。

ただし、患者さんに在宅医療を強要することのないようにしてください。在宅訪問のメリットを伝えつつ、最終的な判断は患者さんに委ねましょう。

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<在宅患者獲得サービスの活用事例

■1人薬剤師で実際に患者獲得し、地域支援体制加算を算定した事例
https://www.zaitaku-prime.com/blog/case/a174

■在宅薬局を立ち上げ、在宅患者を獲得した事例
https://www.zaitaku-prime.com/blog/case/a181



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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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【当コラムの掲載内容に関するご注意点】
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