在宅医療で使われる薬品「エンシュアリキッド」
エンシュアリキッドの歴史
エンシュアリキッドは、1988年の6月6日に発売された半消化態経腸栄養剤です。
(半消化態経腸栄養剤とは、窒素源がたんぱく質のため消化の必要がややあるものです)
初の液体タイプの経腸栄養剤として、主要栄養素およびビタミン・ミネラルの効率的な摂取を目的として発売されました。
液体タイプの経腸栄養剤のメリットとして、粉末タイプの欠点(溶解の手間,溶解後の安定性等)が改良され、滅菌もされているため無菌的な投与が可能となっています。
その後、1995年に高濃度タイプのエンシュア(R)・H、1996年にはバッグタイプのエンシュア・リキッド(R)バッグが発売されました。
エンシュアの名前はENSURE(確実にする)に由来し、栄養補給を確実に行いたいという想いが込められています。
在宅医療のどの場面でエンシュアリキッドはでるの?
高齢になっても健康寿命を維持するためには、在宅での長期的な栄養管理が必要になります。
栄養状態が悪くなると褥瘡が出来やすくなったり、筋力が低下して寝たきりになってしまうこともあるためです。
高齢者では嚥下機能の低下や病的理由により食事量が減少するため、そのような場合は経腸栄養剤などで栄養を補うことが重要となってきます。
エンシュアリキッドは、経口および経管投与どちらでも使用可能なため、口から飲めない場合は経管投与として鼻の穴(経鼻)または胃や腸に開けた穴(胃瘻、腸瘻)からチューブで注入します。
短期間の場合は経鼻チューブを使用しますが、6週間以上の長期となる場合は胃瘻や腸瘻を作成します。
経静脈栄養より維持管理が簡単なため、在宅医療に適した栄養療法といえます。
他にも経腸栄養を使用することにより、
・消化管の機能が維持できる
・腸管粘膜の萎縮を予防できる
・腸管免疫機能を維持できる
・感染性合併症の頻度が減少する
などのメリットがあります。
エンシュアリキッドの味の種類
エンシュアリキッドの味には
①バニラ
②ストロベリー
の2種類があります。
味の違いは香料によるものであり、実際にバニラなどの成分が入っているわけではありません。
そのため、各味のアレルギーを持っている方でも服用することができます。
エンシュアリキッドの使用感
淡褐色の懸濁液のため、少しとろっとした飲み心地です。
味に飽きないようローテーションで服用したり、ゼリーにしたりと工夫する必要があります。
エンシュアリキッドのおすすめの飲み方
① 冷やす
冷蔵庫で冷やしたり、氷を入れることにより、甘みをあまり感じず飲むことができます。
ただし、冷凍は避ける必要があります。
また、冷やすことによりお腹を下しやすくなるためゆっくりと時間をかけて服用しましょう。
② 形状を変える
とろみ剤やゼラチン、粉末寒天などで固形化すると、甘みをあまり感じず摂取することができます。また、食感も変わることで食べやすくなる場合があります。
お好みできな粉をかけるとくずもちの様な風味になるため、味を変えたい時におすすめです。
ただし、エンシュアの成分であるたんぱく質は熱に弱いため、50℃以上にならないよう直火での加熱は避けましょう。
③ 風味を変える
市販のジュースや食品など混ぜる事で、風味を変えて飲むことができます。
果物の生ジュースなどは、酸性のため混ぜると固まることもあるので避けるようにしましょう。
甘味が苦手な方は、濃いめに作ったインスタントコーヒーやプレーンヨーグルトと混ぜると甘味をあまり感じずに飲むことができます。
エンシュアリキッドで知っておきたいこと
・開缶後は48時間以内に使用する必要があります。一度に飲み切らない場合は必要量だけコップにとり服用し、残りはラップなどで密閉し冷蔵庫内に保管しましょう。
もし缶のままやストローで服用した場合は、汚染を防ぐため飲み残しは廃棄しましょう。
・ 妊娠3か月以内又は妊娠を希望する女性へのビタミンAの投与は、5,000 IU/日未満に留める必要があります。(1缶250ml中にビタミンAは625IU含まれる)
これは、妊娠前3か月~妊娠3か月までにビタミンAを10,000IU/日以上摂取した女性の出生児に奇形発現の増加が推定される疫学調査結果があるためです。
・牛乳由来のカゼインを含むため、牛乳たんぱくアレルギーを有する方は禁忌です。
まとめ
エンシュアリキッドは最も古くからある液体経腸栄養剤のため、使用経験が多く
味も選択できるため処方される機会が多いかと思います。
また、他の半消化態経腸栄養剤より価格も安いため、経済的にメリットがあります。
しかし、誰にでも使えるわけではなく禁忌もありますので、ぜひ特徴について一度確認しておきましょう。
医薬品ではありますが、味が選べたり美味しく飲めるよう患者さん自身で工夫できる面白いお薬です。
参考資料:エンシュア添付文書
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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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