薬局オートメーション化・AI活用で変わる薬局の業務とサービス

薬局業界では、オートメーション化・AI活用が急速に進んでいます。対人業務への移行を果たすうえで、自動化は重要なポイントです。大手だけでなく、中小薬局でも自動化・AI活用について検討する必要があるでしょう。
今回は、薬局のオートメーション化・AI活用について、できることとメリットについて解説します。自動化について検討中の薬局経営者の方は、ぜひご覧ください。
目次1. 薬局のオートメーション化・AI活用でできること
さまざまなメーカーから、薬局の自動化を実現するシステムが開発されています。ここでは、薬局のオートメーション化・AI活用でできることの一部を紹介します。
1-1. ピッキング・調剤の自動化
調剤ロボットを導入すれば、秤量・配分・分割・分包の自動化・半自動化が実現します。調剤業務の約9割の自動化に成功した薬局も出ています。
以下に、ピッキング・調剤の自動化の例を紹介します。
ピッキング |
事前にトレイに薬品をセットし、オーダーに応じて機械がピッキング |
散薬調剤 |
薬品の選択からプログラミングによる秤量作業までフルリモート |
抗がん薬混合調製 |
抗がん剤や輸液など必要なものをセットすると、自動で混合調剤を実施 |
水剤調剤 |
投薬瓶をセットして分注作業を自動化 |
一包化 |
全自動で一包 |
一包化監査 |
画像を撮影し、分包された複数種の錠剤や薬剤を一包毎に照合 |
錠剤一包化仕分け |
返却された一包化錠剤を自動で仕分け |
現時点でも、ほぼすべての調剤工程はロボットで対応可能です。軽量化・スリム化・高速化など、性能は進化を続けています。
一包化や混合に対する加算は、いわば薬剤師の手間賃でしたが、今後調剤ロボットが普及すれば加算そのものがなくなる可能性も考えられます。
1-2. 服薬指導・フォローアップのサポート
薬剤師の重要な業務である服薬指導や服薬フォローアップでも、AIの活用が始まっています。処方箋やお薬手帳、薬歴等のデータをAIが学習して服薬指導のポイントを表示し、薬剤師はAIが作成した内容をもとに服薬指導を実施するというものです。薬剤師の熟練度に合わせて、サポートのレベルを調整することもできます。
特に、経験の浅い新人薬剤師にとっては、AIがはじき出した服薬指導が大いに参考になるでしょう。AIの介入によって薬剤師のスキル差を最小限に収め、質の高い服薬指導が保てます。
ChatGPT(AIチャットボット)を用いた服薬フォローアップ支援機能も、実用化に至っています。用法用量や使用上の注意といった簡単な質問であれば、薬剤師を通さずとも、チャットボットにより速やかに回答することが可能です。
1-3. 在庫管理・発注サポート
AIが在庫を管理し、発注予測・自動発注ができるシステムです。数量の確認や、期限切れの監視などを自動的に行います。デッドストックや欠品のリスクを回避し、在庫を適正量に保てます。
発注予測ができるシステムでは、過去の処方や来局データ、また天気予報や地域特性などから、AIが最適な発注数を自動で算出します。アルゴリズムは機械学習により発展するため、使えば使うほど精度の高い需要予測ができるようになります。
在庫管理システムにはさまざまな機能があり、グループの在庫を一括で管理できるものや、会計システムや薬歴と連動できるものもあります。一部のシステムでは、近隣薬局との在庫データをやり取りできるので、店舗間での交換・売買も可能です。
2. 薬局のオートメーション化・AI活用のメリット
AIによって、薬剤師の仕事が奪われると懸念する人もいます。しかし、人材不足やサービスの多様化を受けて、薬局の自動化は進んでいくでしょう。薬剤師にはAIを利用しつつ、薬剤師にしかできない業務で力を発揮することが望まれているのです。
ここでは、薬局のオートメーション化・AI活用によるメリットを解説します。
2-1. 自動化・効率化を大幅に促進できる
調剤ロボットやシステムの導入では、次のような業務効率化の効果が得られます。
- 薬剤師の残業削減
- 過剰な人件費の削減
- 属人化解消
- 衛生面での安全確保
- 患者さんの待ち時間の軽減
たとえば全自動錠剤分包機は、薬剤師2人分の働きをするとも言われています。お薬が空気に触れる時間が少ないため、衛生面でも安心です。
システムによって在庫管理や薬歴作成の作業時間が短縮すれば、薬剤師の残業が減らせます。少人数でも効率よく店舗を運営できるので、無理なく人件費を削減できるでしょう。
調剤スピードがアップすると、患者さんの待ち時間の軽減にもつながります。薬局の利便性が向上することで、利用者も増えるでしょう。
2-2. ヒューマンエラー撲滅につながる
オートメーション化・AI活用による大きなメリットのひとつが、ヒューマンエラーの防止です。薬剤師が細心の注意を払っても、入力ミスや薬品の選択ミスを完全に防ぐことはできません。小さなミスが調剤事故に発展する恐れもあるため、ヒューマンエラーの撲滅は薬局にとって大きな課題です。
ロボットやAIの最大の強みは、いつでも正確に作業できることです。調剤ロボットはプログラミングに従って動くので、大量の作業でも素早く正確に捌けます。もちろん、ロボット調剤が100%ミスが起きないわけではありませんが、人間が行うよりもはるかに精度が高いことは確実です。
服薬指導やフォローアップでも、AIが生成した文章があれば、患者さんへの伝達ミスや薬歴への記載漏れを防げます。多忙なときほど、AIが大きな支えとなるでしょう。
2-3. 薬剤師が対人業務に専念できる
対物業務をロボットやAIに任せることで、薬剤師は患者さんと向き合う時間を確保できます。患者さんに細かくヒアリングし、より丁寧な服薬指導が行えるようになるので、対人業務の強化が図れるでしょう。
調剤ロボットの導入には費用がかかるものの、高額な機械ばかりではありません。中には、数十万円で購入できるものもあります。小規模薬局でも、部分的にロボットを取り入れることは可能です。一包化や在庫管理など、薬剤師でなくてもできる業務については、積極的にオートメーション化・AI活用を進めましょう。
特に、在宅薬局は調剤工程が多いため、オートメーション化によって対物業務を自動化することが重要となります。在宅業務に力を入れたい薬局こそ、積極的にオートメーション化・自動化を進めるべきと言えます。
まとめ
薬局では、調剤ロボットやシステムによる自動化が進んでいます。薬剤師の業務の一部を自動化できれば、その分を患者さんとのコミュニケーションに充て、対人業務を強化できるでしょう。
自動化は、衛生面や安全面から見ても非常に有効です。調剤や在庫管理など、薬剤師でなくてもできる業務については、積極的に導入を検討しましょう。特に、多忙な在宅薬局の現場では、オートメーション化・AI活用が不可欠です。
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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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参考
医療保険財政への残薬の影響と その解消方策に関する研究(中間報告) (平成27年度厚生労働科学特別研究)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000103268.pdf