在宅医療における薬剤師のメリットは?やりがいを解説!
「在宅医療に挑戦してみたいけど、経験を積むことでどういったメリットがあるの?」と気になっていませんか?経験がない薬剤師にとって、在宅医療の業務は未知の部分が少なくありません。
そこで今回は、在宅医療を行うことで薬剤師にどのようなメリットがあるのかを紹介します。メリットはやりがいにもつながるものです。
在宅医療に少しでも興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
目次在宅医療の歴史
在宅医療が正式に始まったのは、1986年だと言われています。それまでは病院に通うことが難しかったり、治療が困難な患者さんがいたりしても自宅で過ごしてもらう環境が整っていませんでした。
そのため、長期間にわたって病院に入院せざるを得ない状況があったのです。
患者さんが希望する治療を行うためにも、自宅で患者さんを見られるように在宅医療が始まりました。
患者さんの自宅を定期的に訪問する定期往診で点数を取れるようになったのが1986年です。
もちろん、1986年より前にも在宅医療に近い往診は行われていましたが、保険診療として認められたのはこのときが初めてでした。
薬剤師が在宅医療に介入するようになったのは1990年頃だと言われています。
この頃から在宅で経管栄養法や中心静脈栄養法、麻薬の投与なども行われるようになり、より高度な医療を在宅でも提供できるようになりました。
薬局薬剤師と在宅医療の背景
厚生労働省が公表した「後期高齢者の服薬における問題と薬剤師の在宅患者訪問薬剤管理指導ならびに居宅療養管理指導の効果に関する調査研究」によると、薬局薬剤師が在宅医療を始めたきっかけでもっとも多かったものは「処方医からの訪問依頼」でした。
ほかには、患者さんのご家族や施設から依頼されるケースや、薬剤師の判断で始めるケースもあります。患者さん本人から在宅医療を頼まれることはあまりないようです。
在宅医療を始める原因には、脳血管疾患やがん、認知症や歩行困難、パーキンソン病などが挙げられます。
やはり、通院の難しさが決定打となりやすいことが特徴でしょう。
これらの患者さんの自宅に行くと、薬剤の飲み忘れや飲み残しが多いことが目立ちます。
服用する意思はあるものの、指先を思うように動かせず服用できない方も少なくありません。
薬剤師が在宅医療に介入することにより薬局の窓口ではわからない患者さんの問題点が浮き彫りになるため、患者さんが本当に治療をスムーズに進められているのかをしっかり目で見て確認できます。
地域に根ざした医療を届ける活動を進めている薬局薬剤師だからこそ、在宅医療を行うことで患者さんに寄り添ったケアができるでしょう。
薬剤師が在宅医療を行うことのメリット
在宅医療は患者さんにとっても私たち薬剤師にとっても、そして国にとってもさまざまなメリットがあります。
①患者さんのライフスタイルに合った服薬支援ができる
患者さんの生活にフィットした服薬支援ができることは、在宅医療の大きなメリットでありやりがいです。薬局で「薬はしっかり飲めています」と言われている患者さんの自宅に行くと、袋がいっぱいになるほど薬が残っていることがあります。これは決して珍しいことではありません。
「余っている薬があるけどどうしたらいいかわからない」「余っていることを言ったら怒られるかもしれない」と感じる方が多く、そのままどんどん残っている薬が増えていってしまうのです。
薬が残ってしまう背景をしっかり把握することは、薬局の窓口で服薬指導をするだけではなかなかできません。残薬があることすら気づけないでしょう。
在宅医療では患者さんが生活している空間にお邪魔することになるため、比較的リラックスした雰囲気のなか会話ができます。そのため、悩みを打ち明けやすくなることからも、ライフスタイルに合わせた服薬支援が可能です。
②患者さんに安心感を与えられる
いつでも気になることを相談できる環境があるということは、患者さんの安心感につながります。
薬についての相談はもちろん、医師には言いづらいことも薬剤師にならと打ち明けてくれる方は多いものです。
在宅を担当する薬剤師はほとんど毎回同じ人のため、次第に打ち解けていろいろ話しやすくなるのもメリットでしょう。
担当の薬剤師をまるで家族の一員のように扱ってくれ、「何かあったときはあなたに連絡するから」と言ってもらえることもあります。在宅医療は患者さんの治療を進めるだけではなく、日々の暮らしにも安心感を与えることができるのです。
③残薬を減らすことで医療費削減に貢献できる
残薬を減らすことは、医療費削減につながります。日本では年間に500億円分もの残薬が生まれているのをご存知でしょうか。うっかり飲み忘れたものや、何かあったときのためにストックしているものなどを合わせるとこれだけの金額になるのです。
在宅医療を行うことで、残薬の調整がしやすくなります。副作用が出て飲めず余ってしまった薬もあることを考えると残薬すべてをゼロにすることは現実的ではありません。しかし、できる限りの調整を行うことで、500億円にものぼる残薬を減らし医療費を削減することができるでしょう。
まとめ
在宅医療は1986年から正式に始められました。現在は在宅でも薬剤の高度な管理が可能となり、通院が難しかったり自宅でゆっくり過ごしたいと思ったりしている方を在宅でしっかり管理できるようになっています。
薬剤師が在宅医療に介入することで得られるメリットは、ライフスタイルに合わせた服薬支援ができたり、患者さんに大きな安心感を与えられたりすることです。高齢者の増加がますます進む日本では、これからさらに在宅医療の需要が高まっていくことでしょう。
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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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参考資料
在宅医療の今日的意義
http://www.zaitakuiryo-yuumizaidan.com/textbook/pdf/1-1.pdf
後期高齢者の服薬における問題と薬剤師の在宅患者訪問薬剤管理指導ならびに居宅療養管理指導の効果に関する調査研究
https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/activities/19houkoku.pdf
家庭・薬局・病院、各ステージでの残薬見直しで財政再建-
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h29pdf/201716304.pdf