薬局が求められる介護施設の服薬介助とは

在宅の施設訪問では、介護施設との連携が非常に重要です。事故が起きやすい服薬介助も、薬剤師が介入することでリスクを回避できます。介護施設での服薬介助・薬剤管理の現状を知り、安全かつスムーズな薬物療法の提供に努めましょう。
この記事では、KIRARI PRIME(きらりプライム)が開催したセミナーの内容をもとに、介護施設における服薬介助の課題、介護施設が薬局に求めること、さらに薬局と介護施設との連携の在り方を紹介します。
本記事は、2025年4月22日に開催したWEBセミナー「介護施設における 服薬介助の課題と薬局に求める薬剤管理とは?」の内容をもとに作成しています。きらりプライムサービスの最新セミナー情報は、こちらよりご確認いただけます。
1. 介護施設における服薬介助の課題
2. きらりプライムサービス活用による在宅患者獲得の事例
2-1. 薬剤管理の簡素化
2-2. 迅速な対応
2-3. 薬剤師の専門的知見から見た誤薬防止・処方提案
2-4. 円滑なコミュニケーション
3. 高齢者向けの服薬管理のポイント
4. 薬局と介護施設の連携の在り方
まとめ
1. 介護施設の服薬介助における課題
服薬介助とは、介護職員が入居者(利用者)さんの服薬を手伝うことです。介護職員は一人ひとりの入居者さんの服薬状況を把握し、正しい服薬をサポートします。
介護職員は、医療行為に該当しない範囲内で服薬介助を行います。具体的には、一包化された薬の準備・内服の手伝いや声掛け・服薬後の確認と後片付けです。軟膏の塗布や湿布の貼り付けなども認められています。
介護施設では、人員不足や連携不足により、服薬介助でトラブルが発生することも少なくありません。実際に、以下のような服薬介助での事故事例が発生しています。
- 誤薬事故の発生
多くの介護施設では、入居者さんが集まって食事を行い、その場で服薬介助も行います。この際、誤ってほかの入居者さんの薬を服薬させてしまうことがあります。また、薬を落としてしまう、薬包を破る際に中身が飛び出る、入居者さんが薬を吐き出してしまうなどの理由で、適正量を正しく服薬できないケースもあります。
- 介護職員の薬の知識が乏しい
介護職員に薬や血中濃度についての知識がないことで、発生する事故もあります。たとえば、粉砕してはいけない錠剤を無断で粉砕してしまう、薬を飲み忘れたら次のタイミングで2回分を服薬させてしまうなどです。
- 施設看護師の業務過多により、薬剤管理が疎かになる
施設看護師の仕事は、看護記録の記載・報告、介護のヘルプ、点滴や点眼などの処置対応、夜間緊急時のオンコール対応など多岐にわたります。このため、薬剤の管理が後回しになり、薬剤の取り間違いや紛失といったトラブルが起こりやすくなります。
薬物療法は年々高度化しており、介護施設内で薬剤の情報をすべて把握するのは困難です。「薬剤の種類が同じだが剤形が違う」「服薬に時間がかかる」など、服薬介助が大きな負担となっています。そこで、介護施設における服薬介助のトラブルを防ぐために、薬剤師の関与が望まれているのです。
2. 介護施設が薬局に求めること
服薬管理・服薬介助を適切に行えるよう、薬剤師との連携を強化したいと考える介護施設が増えています。ここでは、介護施設が求める薬局像を見ていきます。
2-1. 薬剤管理の簡素化
介護施設では入居者さんの薬剤を大量に保管しているため、薬剤管理が大変です。薬剤師が少し工夫することで、介護施設の日常的な薬剤管理を楽にすることができます。
- 薬局側で入居者さんの服薬情報を一元的・継続的に管理し、こまめに残薬管理を行う
- 配薬は1週間に1~2度を目安に、必要な薬だけを施設に持参する
- 外用薬の本体に、わかりやすく名前シールを貼る
- 減薬提案により、過剰な薬や服薬回数を減らす
薬をこまめに配薬すると、介護施設側は余分な在庫を管理する手間が省けます。何日間隔がベストなのか、施設と相談して配薬スケジュールを決めましょう。介護施設側からピルケースや印字について希望がある場合は、それに沿った形で提供します。
2-2. 迅速な対応
介護施設からの要望には、スピーディーに対応しましょう。入居時・入退院時に、シームレスに薬剤管理を行えるかどうかは、介護施設と入居者さんの信頼関係に関わります。薬剤師が速やかに服薬状況を把握して情報を提供することで、介護施設のサービスの質向上に貢献できます。
薬剤師の対応の中で、特に重要視されるのが、夜間・休日などの開局時間外における臨時処方です。臨時の処方依頼に対して、当日中に対応できる薬局は、介護施設から頼りにしてもらえます。
入居者さんが体調を崩されたり、精神的に不安定な状態に陥ったりしたときは、「できるだけ早くお薬を飲んで楽になってほしい」というのが介護施設側の願いです。介護施設と入居者さんの気持ちに寄り添い、夜間・休日対応体制を整備しておきましょう。
2-3. 薬剤師の専門的知見から見た誤薬防止・処方提案
入居者さんの安全を守るために、調剤業務の安全性を確保する体制があるかも問われます。薬剤師の手作業・目視による調剤では、薬剤の不足や錠剤の取り間違いなどが起こりやすく、介護施設側も不安です。調剤ロボットを活用し、調剤ミスの軽減・撲滅に真剣に取り組んでいる薬局は、信頼度も高くなります。
また、薬剤師の専門性も重要です。副作用の早期発見や効果の判断など、薬学的知見を活かして機敏に動ける人材は歓迎されます。特に、ホスピス・終末医療について専門的知見を持つ薬剤師は、介護施設にとって有益な情報を提供できるので、重宝されるでしょう。
2-4. 円滑なコミュニケーション
介護施設から求められるのは、「この薬剤師になら気軽に相談できる」と思える、頼りがいのある薬剤師です。そのためには、医療介護連携を円滑にするためのコミュニケーション力が求められます。基本ですが、挨拶と報連相をしっかり行うことは大切です。
薬剤師は、多職種間で情報共有を行うためのコツを理解する必要があります。たとえば、専門用語をなるべく使用しない、わかりやすく簡潔に伝えるなどです。介護施設の状況を理解したり、介護業界の知識を学んだりと、歩み寄る姿勢も評価されます。介護職員からの求めがなくても、服薬方法や注意点などの役立つ情報は、どんどん伝えていきましょう。
3. 高齢者向けの服薬管理のポイント
介護施設と連携する際は、どれだけ高齢者や介護職員に配慮した服薬管理ができるかがポイントです。介護施設の服薬管理では、以下の点に注意しましょう。
- 残薬情報を共有する
外部受診の薬も含めて、入居者さんの残薬情報をまとめます。残薬の種類やいつまで残っているのかをリスト化し、介護施設に共有しましょう。
- 外用薬の取り違えを防ぐために、薬本体にシールを貼る
入居者さんは、似たような外用薬を処方されていることも多いです。一目で誰の外用薬なのかわかるように、薬本体に名前シールを貼ることで、薬の取り間違いを防げます。
- 処方薬・服薬回数を削減する
処方薬や服薬回数を適正な範囲内で削減することで、施設での薬剤管理の負担を軽減できます。薬学的知見を活かし、医師へ積極的な処方提案を行うことが求められます。
- ピルケースの管理のルール化
配薬でピルケースを用いる際は、服薬タイミングや入居者さんごとなどで分け、施設側で管理しやすいように工夫します。ピルケースに空のマスができる場合、目印をつけておくと、「薬の入れ忘れではない」ということが一目でわかります。
介護施設と連携する際は、その施設で困っていることについてヒアリングし、適切な服薬管理ができるよう、介護施設と薬局が一緒になって対策を考えていきましょう。
4. 薬局と介護施設の連携の在り方
薬局と介護施設間の連携では、お互いの業務の線引きが曖昧な部分もあります。そのため、お互いの役割を明確にして無理のない協力体制を築き、ともに入居者さんの安全を守ることが大切です。
薬剤師に望まれていることは、入居者さんの安全かつ適正な薬物療法の実施です。薬の調剤・配達だけでなく、入居者さんが薬を飲むまで関与できるのが理想です。たとえば、服薬支援システム「服やっくん」を導入すると、介護施設での服薬状況をリアルタイムで確認することができます。「服やっくん」を導入している介護施設は増えているため、連携強化のためにも導入を検討しましょう。
訪問診療時には、薬剤師も同行することを基本とします。薬剤の日数調整や医師への処方提案を行い、処方変更があれば速やかに介護施設へ報告するなど、細やかな連携体制を取りましょう。
多様な入居者さんをカバーできるかという点では、薬局における取扱薬剤品目数や無菌調剤の体制も重視されるポイントです。高度な調剤体制と柔軟な対応、そして密な情報共有によって、医療介護連携を成功させましょう。
(出典:株式会社ノアコンツェル「服薬支援システム 服やっくん」) |
まとめ
在宅の訪問診療において、薬局と介護施設との連携は非常に重要です。薬剤師の関与により、介護施設における服薬介助のトラブルや、煩雑な薬剤管理の負担を軽減できます。
介護施設から薬局への要望として、薬剤管理の簡素化や円滑なコミュニケーション、処方提案などがあります。特に、夜間・休日における臨時対応が迅速に行える薬局は、介護施設側からの需要も高いです。介護施設側のニーズを把握した上で、安全な薬物療法をスピーディーに提供することをめざしましょう。
きらりプライムサービスでは、在宅薬局の経営を支援しています。施設訪問や介護施設との連携のほか、夜間・休日対応体制の整備、緩和ケアなど、在宅に関するお悩みは何でもご相談ください。