在宅患者訪問薬剤管理指導料と服薬管理指導料 それぞれの算定要件をチェック
2024年の調剤報酬改定で、在宅患者訪問薬剤管理指導料と服薬管理指導料について、それぞれ見直しが行われました。薬剤師の仕事ぶりが評価されるとともに、今後の在宅医療への貢献が期待される内容となっています。
今回の記事では、在宅患者訪問薬剤管理指導料と服薬管理指導料について、改定の趣旨と算定要件について詳しく解説します。
1. 2024年改定「在宅患者訪問薬剤管理指導料」
在宅患者訪問薬剤管理指導料とは、医師の指示のもと、薬剤師が定期的に在宅患者さんを訪問し、服薬指導や薬歴管理を行った際の評価です。
2024年度調剤報酬改定では、注射による医療用麻薬投与が必要な患者さんに対する定期訪問の上限回数が、これまで月4回だったのが、「週2回かつ月8回まで」と改定されました。これは、末期の悪性腫瘍(末期がん)の場合と同様の条件です。
また、「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料」においても、末期の悪性腫瘍の患者さんまたは注射による医療用麻薬投与が必要な患者さんへの緊急訪問の上限回数が、原則として月4回だったのが、月8回へと見直されています。在宅患者訪問薬剤管理指導料と在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料を合わせれば、合計最大12回の訪問で点数を取ることが可能です。(※)
在宅現場では、末期がん以外にも、腎不全や神経疾患等を患い、医療用麻薬を必要とする患者さんがいます。これまでは、医療用麻薬投与を行っても上限回数に引っ掛かり、調剤報酬を算定できないというケースもあったでしょう。今回の改定では、在宅で緩和ケアに取り組む薬剤師の業務が高く評価され、上限回数のアップが実現しました。質の高い在宅医療を推進するため、薬剤師がターミナル期への関与が望まれています。
※…在宅患者訪問薬剤管理指導料と在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料とでは、週2回かつ月8回の対象となる患者さんが異なります。在宅患者訪問薬剤管理指導料では、末期の悪性腫瘍の患者さん、注射による医療用麻薬の投与が必要な患者さん及び中心静脈栄養法の対象患者さんが対象です。在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料では、中心静脈栄養法の対象患者さんは含まれません。
1-1. 算定要件・点数
在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定要件・点数
区分 |
患者数 |
点数 |
1 |
単一建物患者1人 |
650点 |
2 |
単一建物患者2~9人 |
320点 |
3 |
単一建物患者10人以上 |
290点 |
4 |
在宅患者オンライン薬剤管理指導料 |
59点 |
算定要件
在宅療養を行う患者1人につき、月4回算定する。ただし、以下の患者さんについては、週2回かつ月8回まで算定可能。
※上記の患者以外で月2回以上算定する場合、算定日の間隔を6日以上空けること |
(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」)
保険薬局の所在地と患家の所在地との距離が、16キロメ-トルを超えた場合、原則として算定できません。ただし、患家の所在地から16キロメートルの圏域の内側に、在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨を届け出ている薬局が存在しない場合は、算定することが可能です。
1-2. 同時算定ができない評価
在宅患者訪問薬剤管理指導料は、以下の薬学管理料について、同時算定及び同一月に算定できません。
同時算定不可 |
|
同一月に算定不可 |
※外来服薬支援料1以外については、薬学的管理指導計画書に係る疾病とは別の疾病または傷病に係る臨時の調剤を行った場合に限り、算定可能 |
在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する場合は、上記の項目について確認しましょう。
2. 2024年改定「服薬管理指導料」
服薬管理指導料とは、患者さんが安全に薬を服用できるよう、薬剤情報提供や服薬指導などを行った際の評価です。
2024年度調剤報酬改定では、「服薬管理指導料3」が見直され、ショートステイ(短期入所生活介護)の利用者も算定対象となりました。これには、患者さんの療養生活様式の多様化に伴い、適切な服薬管理を推進するという目的があります。
また、かかりつけ薬剤師の業務負担軽減・評価拡充を図るため、服薬管理指導料の特例も見直しが行われています。
2-1. 算定要件・点数
服薬管理指導料の算定要件・点数
区分 |
算定要件 |
点数 |
1 |
原則3ヶ月以内に再度処方箋を持参し、かつお薬手帳を提示した患者に対し行った場合 |
45点 |
2 |
「1」の患者以外 (例)
|
59点 |
3 |
介護老人福祉施設等に入所している患者を訪問し、施設職員と連携しつつ適切な指導を行った場合 [対象患者]
|
45点 (月4回まで) |
4 |
オンライン服薬指導を行った場合 |
|
イ 原則3ヶ月以内に再度処方箋を持参し、お薬手帳を提示した患者 |
45点 |
|
ロ 「イ」以外 |
59点 |
服薬管理指導料の特例(かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師が対応した場合)
かかりつけ薬剤師以外がやむを得ず対応する場合には、当該保険薬局に勤務する常勤の保険薬剤師(かかりつけ薬剤師指導料等の施設基準を満たす薬剤師)であれば、あらかじめ患者の同意を得た上で、複数人でも対応可能 |
59点 |
(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」)
2024年度の調剤報酬改定で、ショートステイの患者さんも服薬管理指導料3を算定できることが明記されました。ただし、服薬管理指導料3は月4回までの上限がある点に注意してください。
また、かかりつけ薬剤師指導料に関連する特例では、従来は1名までだったところを、複数人で対応可能となっています。規定が緩和されたことで、小規模薬局でも柔軟な対応ができるようになりました。
なお、服薬管理指導料は、特別調剤基本料Bを算定している保険薬局は算定できません。
2-2. 同時算定ができない評価
服薬管理指導料は、「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」と同時算定ができません。
「在宅患者訪問薬剤管理指導料」を算定している場合は、患者さんの薬学的管理指導計画書に係る疾病とは別の疾病または傷病に係る臨時の調剤を行った場合に限り、算定可能です。
まとめ
2024年度調剤報酬改定では、薬剤師の業務負担軽減や質の高い在宅医療の推進に向けて、「在宅患者訪問薬剤管理指導料」と「服薬管理指導料」の見直しが行われました。
在宅患者訪問薬剤管理指導料では、麻薬による注射投与が必要な患者さんへの上限回数が週2回かつ月8回へと引き上げられ、薬剤師のターミナル期への関与が後押しされています。今後は在宅患者さんの増加に伴い、かかりつけ薬剤師の役割がさらに重要なものとなるでしょう。
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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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