在宅訪問サービスの強化を求められる調剤薬局 調剤報酬改定で評価が高まったサービス・業務を解説

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在宅訪問サービスの強化を求められる調剤薬局 調剤報酬改定で評価が高まったサービス・業務を解説

【2024年度改定】評価が高まった薬剤師の在宅業務

2024年度調剤報酬改定では、これまで取り上げられなかった薬局の在宅訪問サービスにも焦点が当たりました。薬剤師の在宅医療への関与が改めて評価され、地域医療へのさらなる貢献が求められています。

ここからは、2024年度改定で評価が高まった薬剤師の在宅業務と、それに関連する評価について解説します。

 ①在宅訪問開始前の必要な指導の実施[在宅移行初期管理料]

これまでは在宅療養期間中の評価が中心でしたが、2024年度には在宅移行期の評価として「在宅移行初期管理料」が新設されました。

在宅移行初期管理料

計画的に実施する在宅訪問の段階で患者宅を訪問し、必要な情報収集や指導を行い、医師等へ文書による情報提供を行った場合の評価

[対象患者]

以下のア及びイを満たす患者

ア)服薬管理が困難な認知症患者、精神障害者等/障害児(18歳未満)/6歳未満の乳幼児/末期がん患者/注射による麻薬の投与が必要な患者

イ)在宅患者訪問薬剤管理指導料、居宅療養管理指導費及び介護予防居宅療養管理指導費(いずれも単一建物診療患者が1人の場合)にかかる医師の訪問指示のある患者

230点(1回に限り)

在宅医療に移行する前に、訪問薬剤管理指導とは別の日に患家を訪問し、今後の在宅訪問に向けて服薬状況の確認や薬剤管理等の必要な指導を行った際に算定できます。具体的には、以下の業務を実施することが求められます。

  • 患者及びその家族等から、服薬状況、居住環境、家族関係等、薬学的管理に必要な情報収集
  • 残薬確認・整理、服薬管理方法の検討や調整
  • ポリファーマシー対策に向けた医師との処方調整
  • 在宅医師をはじめとする多職種との情報共有
  • 退院直後の場合、入院していた医療機関と連携し、情報提供文書を活用しつつ、退院時の処方内容や服薬指導を踏まえた上で服薬支援を実施することが望ましい

(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」

在宅移行初期管理料は、基本的に単一建物診療患者が1人の場合、つまり個人の在宅患者さんが対象です。また、訪問後は医師とケアマネジャーへ文書で情報提供を行う必要があります。

これまでも、在宅訪問の開始前に残薬管理や服薬支援を行ってきた薬剤師は多かったものの、対応する評価がなかったため、事実上サービス業務となっていました。今回、そのような在宅移行期にかかる薬剤師の関与が評価され、在宅移行初期管理料の新設が実現しました。スムーズな在宅療養への移行にあたって、薬剤師の活躍が期待されています。

 ②注射による医療用麻薬の投与[在宅患者訪問薬剤管理指導料等]

2024年度調剤報酬改定では、注射による医療用麻薬の投与が必要な患者さんに対する定期訪問及び緊急訪問の上限回数が見直されました。

在宅患者訪問薬剤管理指導料

旧制度

新制度

患者1人につき月4回に限り算定

(ただし、末期の悪性腫瘍の患者及び中心静脈栄養法の対象患者は、週2回かつ月8回)

患者1人につき月4回に限り算定

(ただし、末期の悪性腫瘍の患者、注射による麻薬の投与が必要な患者及び中心静脈栄養法の対象患者は、週2回かつ月8回)

在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料

旧制度

新制度

緊急に患家を訪問して、必要な薬学的管理及び指導を行った場合に、1と2を合わせて月4回に限り算定

緊急に患家を訪問して、必要な薬学的管理及び指導を行った場合に、1と2を合わせて月4回に限り算定

(ただし、末期の悪性腫瘍の患者or注射による麻薬の投与が必要な患者は、原則として月8回

(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」

2024年度改定により、在宅患者訪問薬剤管理指導料において、月8回の算定対象に注射による医療用麻薬の投与が必要な患者さんが追加されました。また、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料では、注射による医療用麻薬の投与が必要な患者さんは、月4回→月8回へと算定回数が増加しました。

医療用麻薬の投与が必要な患者さんに対する評価の拡充により、薬剤師のターミナル期への関与が後押しされています。

 ③夜間・休日の緊急訪問[在宅患者訪問薬剤管理指導料の加算]

2024年度調剤報酬改定で、対象患者における開局時間外の緊急訪問について、休日・夜間・深夜の加算が新設されました。

在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1

医師の指示に基づき、休日・夜間・深夜に緊急訪問を行った場合の加算

[対象患者]末期の悪性腫瘍の患者、注射による麻薬の投与が必要な患者

夜間訪問加算  400点
休日訪問加算  600点
深夜訪問加算  1,000点

(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」

深夜訪問加算の対象となる時間帯は、午後10時〜午前6時です。深夜の訪問は薬剤師にとっても負担の大きい業務であるため、1,000点と非常に高い点数が設定されています。

注射による麻薬の投与については、在宅患者訪問薬剤管理指導料等でも評価が高まっています。今後、ニーズの高い薬剤師の業務として、押さえておきたいポイントです。

 ④ショートステイ利用者への服薬指導[服薬管理指導料3]

「服薬管理指導料3」の対象患者に、短期入所生活介護(ショートステイ)の利用者も算定可能となりました。

服薬管理指導料3

介護老人福祉施設等の患者を訪問し、患者や薬剤を管理する職員に対して、対面により服薬管理指導を行った場合に算定

[対象患者]

  • 地域密着型介護老人福祉施設もしくは介護老人福祉施設に入所している患者、または短期入所生活介護もしくは介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)サービスを受けている患者
  • 介護医療院または介護老人保健施設に入所している患者で、医師が専門的な薬学的管理を必要とする薬剤に係る処方箋を発行した患者

45点(月4回に限り)

(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」
(出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 p23」

月4回という上限があるものの、患者さんの多様な生活スタイルに対応できるように評価が見直されました。服薬管理指導の内容としては、「服薬管理指導料2」と同様に、薬剤の服用に関する説明や、患者さんの状態に応じた服薬指導を継続的に実施することが求められます。

処方箋交付前の処方提案の反映[在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料2]

「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料2」では、処方箋交付前に薬剤師の処方提案が反映された場合も、算定対象として追加されました。

在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料2

処方箋交付前に、処方医と処方内容を相談し、処方提案が反映された処方箋を受け付けた場合

イ)残薬調整以外(重複投薬、相互作用等):40点
ロ)残薬調整:20点

(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」

診察同行のほか、ICTツールを活用し服薬状況等の情報共有を行った上での処方提案が反映された場合も算定対象です。算定するには、処方箋交付前に行った処方医への処方提案の内容の要点と、処方提案の実施日時を薬剤服用歴等に記載する必要があります。

在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料2によって、チーム医療の中での薬局薬剤師の関与について、はじめて評価が設けられました。医師との連携を強化し、積極的に在宅医療に関わる薬剤師の姿に期待が集まっています。

薬局の在宅訪問体制[在宅薬学総合体制加算]

最後に、薬剤師の業務ではないものの、薬局の在宅対応体制を評価する加算として、「在宅薬学総合体制加算」を紹介します。従来の「在宅患者調剤加算」の廃止に代わって、2024年度調剤報酬改定で新設されました。

在宅薬学総合体制加算

在宅患者に対する薬学的管理及び指導を行うにあたって、必要な体制を評価する加算。
以下の患者が提出する処方箋を受け付けて調剤を行った場合に算定できる。

  • 在宅患者訪問薬剤管理指導料
  • 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
  • 在宅患者緊急時等共同指導料
  • 居宅療養管理指導費・介護予防居宅療養管理指導費(介護保険)

在宅薬学総合体制加算1(15点)


在宅薬学総合体制加算2(50点)

  • 在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨の届出
  • 在宅薬剤管理の実績24回以上/年
  • 開局時間外における在宅業務対応
  • 在宅業務実施体制に係る地域への周知
  • 在宅業務に関する研修実施計画の作成・研修参加(認知症・緩和医療・ターミナルケア)及び定期的な学術研修への参加
  • 医療材料・衛生材料の供給体制
  • 麻薬小売業者免許の取得


  • 加算1の施設基準をすべて満たしていること
  • 開局時間の調剤応需体制(2名以上の保険薬剤師が勤務)
  • かかりつけ薬剤師指導料等の算定回数が合計24回以上/年
  • 高度管理医療機器販売業の許可
  • アまたはイを満たすこと

(ア)がん末期などターミナルケア患者に対する体制(以下①②すべて満たすこと)

 ①医療用麻薬の備蓄・取扱(注射剤1品目以上を含む6品目以上)
 ②無菌室、クリーンベンチまたは安全キャビネットの整備

(イ)小児在宅患者に対する体制(在宅訪問薬剤管理指導等に係る小児特定加算もしくは乳幼児加算の算定回数の合計6回以上/年)

(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」

2024年度調剤報酬改定で、在宅薬学総合体制加算は2区分になり、加算2は50点と配点が高くなっています。在宅薬学総合体制加算2は、高度な在宅訪問体制を持つ薬局を評価するものです。高度管理医療機器販売業の許可や、医療用麻薬の備蓄等が求められます。また、薬局内に無菌製剤処理を実施するための整備が必要であり、他薬局のクリーンルームを共同利用している場合は算定できません。

無菌製剤処理体制の整備にはコストがかかるものの、地域医療への貢献を考えると、ぜひ取り入れたい設備です。在宅薬局として実績を上げたい薬局は、在宅薬学総合体制加算2の取得をめざし、より質の高い医療サービスの提供を視野に入れてみてください。

まとめ

2024年度調剤報酬改定では、質の高い在宅訪問サービスに対する評価の拡充が行われました。注射による麻薬の投与や、在宅移行期のサポートといった薬剤師の業務が注目されています。また、在宅薬学総合体制加算2では、高度な在宅訪問体制を持つ薬局が高く評価されました。豊富な知識と経験を活かし、主体的に在宅医療へ参入する薬局像が示されています。

きらりプライムサービスでは、在宅薬局経営をサポートしています。加算取得のお悩みや在宅体制整備等、在宅訪問体制にお困りの薬局経営者の方は、ぜひきらりプライムサービスにご相談ください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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