2024年度診療報酬改定で点数引き上げ 連携強化加算の算定要件と対応のポイント

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2024年度診療報酬改定で点数引き上げ 連携強化加算の算定要件と対応のポイント

2024年度の診療報酬改定で、連携強化加算の点数や施設要件が見直されました。点数アップ、地域支援体制加算の届出が不要になった一方で、第二種協定指定医療機関の指定といった条件が追加されています。

今回の記事では、連携強化加算の変更点や主な施設基準、対応ポイントについて解説します。在宅に取り組む薬局であれば取りやすい加算なので、ぜひ取得をめざしてください。

1. 【2024年度診療報酬改定】連携強化加算の変更点

連携強化加算とは、災害や感染症発生等の非常時に、必要な医薬品や衛生材料を提供できる体制を整備した薬局を評価する、調剤基本料の加算です。新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、非常時の対応体制の確保を目的とし、2022年度に新設されました。

この連携強化加算が、改正感染症法の第二種協定指定医療機関の指定要件を踏まえ、2024年度診療報酬改定で見直されました。

連携強化加算の主な変更点は、以下の通りです。

  • 点数は2点→5点に引き上げ
  • 地域支援体制加算の届出が不要に
  • 医療措置協定「第二種協定指定医療機関」の指定が必須

以下では、2024年度診療報酬改定の連携強化加算について、詳しく見ていきます。

1-1. 点数・算定要件

旧制度

新制度(2024年度6月~)

地域支援体制加算に該当し、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しており、地方厚生局長等に届け出た保険薬局において調剤を行った場合、2点加算する。

別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しており、地方厚生局長等に届け出た保険薬局において調剤を行った場合、5点加算する。また、対応可能な体制について、薬局や行政機関、薬剤師会等のホームページ等で広く周知すること。

※特別調剤基本料A:当該敷地内保険医療機関が、「外来感染対策向上加算」or「感染対策向上加算」の届出を行っている場合、算定不可
※特別調剤基本料B:算定不可

(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」

新制度の連携強化加算は、点数が3点増加し、地域支援体制加算の届出は不要となりました。地域支援体制加算と切り離されたため、これまで算定できなかった薬局も、取得しやすくなっています。ただし、次項で解説する施設基準については、厳格化されている部分もあるので注意が必要です。

2. 連携強化加算の主な施設基準

連携強化加算の施設基準

  • 都道府県知事による「第二種協定指定医療機関」の指定を受けており、次の体制を整備している

ア)感染症に係る最新の知識習得についての研修を年1回以上実施
イ)感染症に係る医療提供の訓練を年1回以上実施
ウ)感染症の公表期間において、都道府県知事からの要請を受けて、在宅訪問またはオンライン服薬指導及び薬剤の交付ができる
エ)個人防護具の備蓄
オ)要指導医薬品及び一般用医薬品の提供、検査キットの提供、マスク等の感染症対応に必要な衛生材料等の提供ができる体制を平時より整備

  • 災害発生時において、次の体制を整備している

ア)自治体からの要請に応じて、避難所・救護所等における医薬品の供給または調剤所の設置に係る人員派遣等の協力体制
イ)災害発生時の医療提供についての研修・訓練を年1回程度実施
ウ)災害発生時の夜間・休日対応及び在宅訪問体制

  • 災害・感染症発生時等における対応体制についての周知
  • 災害や新興感染症発生時における薬局の体制や対応について、状況に応じた手順書等の作成
  • オンライン服薬指導の体制整備及びサイバーセキュリティ対策
  • 要指導医薬品及び一般用医薬品の販売、検査キット(体外診断用医薬品)の取扱い

(出典:厚生労働省「保医発0305第6号 令和6年3月5日 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて/p331-p333

連携強化加算の感染症とは、主に感染症法に規定する新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症を指します。

2024年度改定で特に注目すべき点は、第二種協定指定医療機関の指定が必須となったことです。第二種協定指定医療機関については、次項で詳しく解説します。

2-1. 第二種協定指定医療機関とは

第二種協定指定医療機関とは、都道府県と医療機関の間における「医療措置協定」のひとつです。

医療措置協定とは?

新型コロナウイルス感染症の流行時に、病床を確保できず医療人材が不足するなど、医療現場に大きな混乱が生じました。この対応を踏まえ、新興感染症の発生時に円滑な医療提供体制等を確保することを目的とし、あらかじめ医療機関等と都道府県で協定を締結するという仕組みが、2022年12月の感染症法改正によって法定化されました。この協定を「医療措置協定」と言います。医療措置協定は、医療機関の種類や協議項目によって、「第一種協定指定医療機関」と「第二種協定指定医療機関」に分類されます。

  • 第一種協定指定医療機関…病床を確保する病院や有床診療所
  • 第二種協定指定医療機関…発熱外来、自宅療養者等への医療提供を行う診療所、薬局、訪問看護事業者等

協定を締結した医療機関等は、新興感染症発生の発生等公表期間中、都道府県の要請によって締結内容に基づき医療を提供します。医療措置協定の措置の対象となる感染症は、新型インフルエンザ等感染症・指定感染症・新感染症ですが、新興感染症の性状が想定と大きく異なる場合は、措置の内容を変更するなど、機動的な対応が行われます。

薬局が第二種協定指定医療機関となる要件は、以下の通りです。

  • 最新の知見に基づき、適切な感染防止対策等の措置を実施できること
  • 感染症発生等の公表期間に、都道府県知事からの要請を受けて、自宅療養者・施設内療養者へ対し、在宅訪問または電話・オンライン服薬指導の実施や、医薬品の配送ができること

第二種協定指定医療機関の指定を受けるには、各都道府県のホームページの協議フォームより申請を行い、協議内容の同意をした上で医療措置協定を締結する必要があります。協定締結までには約2ヵ月要するため、余裕をもって申請を行ってください。

2-2. 薬剤師の研修実施について

連携強化加算では、以下の研修実施が求められます。

研修の種類・内容

実施回数





感染症

感染症に係る最新の科学的知見に基づいた適切な知識を習得することを目的とし、薬剤師に対して研修を実施すること。または、外部機関が実施する研修に薬剤師を参加させること。



年1回以上

新型インフルエンザ等感染症、指定感染症または新感染症に係る医療提供についての訓練を薬局内で実施すること。または、外部機関が実施する訓練に薬剤師を参加させること。



年1回以上



災害

災害の発生時において、医薬品供給や地域の衛生管理に係る対応を行うため、被災状況に応じた対応を習得する研修を薬局内で実施すること。または、地域の協議会や、研修もしくは訓練等に参加する計画を作成し、実施すること。



年1回程度が望ましい

感染症についての研修・訓練は、年1回以上実施する必要があります。公益社団法人日本薬剤師会の「感染対策に関する研修プログラム」に研修資材が用意されているため、ぜひ活用してください。

一方で、災害についての訓練は「年1回程度が望ましい」とされており、実施回数は義務付けられていません。しかし、災害時はイレギュラーな事案が多く発生するため、地域の特徴や傾向を考慮し、あらゆるシチュエーションを想定して十分な体制を備えておくことが推奨されます。近隣の災害拠点病院や自治体指定の避難場所を確認したり、学校や行政の防災訓練に協力したりと、定期的な研修・訓練を行いましょう。厚生労働省の「改訂版 薬剤師のための災害対策マニュアル」も参考にしてください。

2-3. オンライン服薬指導体制の整備について

2024年度診療報酬改定では、連携強化加算の施設要件として、オンライン服薬指導の体制整備が追加されました。薬局には、オンライン服薬指導について、以下の体制を整備することが求められます。

(出典:厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて 」(保医発0305第6号 令和6年3月5日)p335)

オンライン服薬指導を実施する上では、十分に患者さんのプライバシー保護に注意する必要があります。薬局内でマニュアルを作成し、安全な運用に努めてください。

薬剤師の研修資材として、公益財団法人日本薬剤師会のICT研修プログラムを活用できます。薬剤師の情報リテラシーやセキュリティ意識の向上は、今後さらに加速するICT化・AI活用でも重要な課題となるので、優先順位を上げて取り掛かることをおすすめします。

「オンライン服薬指導」については、以下の記事もご覧ください。
「オンライン服薬指導を展開するなら知っておきたい「5つの留意ポイント」とは?」
「検討したい薬局経営層は必見! オンライン服薬指導の導入メリットと必要な準備」

2-4. 周知内容について

連携強化加算では、災害や新興感染症発生時における対応可能な体制の確保について、保険薬局・同一グループ、地域の行政機関、薬剤師会等のウェブサイトで広く情報の周知を行うことが定められています。

周知対象

地域住民
保険医療機関
訪問看護ステーション
福祉関係者 等

周知内容の具体例

  • 改正感染症法に基づく第二種協定指定医療機関の指定について
  • オンライン服薬指導指導の対応の可否
  • 要指導医薬品・一般用医薬品の取り扱いについて
  • 検査キット(体外診断用医薬品)の取り扱いについて
  • 感染症及び災害時における研修・訓練の実施状況

上記のほかにも、地域にとって必要な情報は積極的に周知しましょう。注意点として、厚生局の届出のウェブサイトに掲載される一覧にリンクを張ったのみでは、周知活動とは認められません。行政機関や薬剤師会等と相談し、市町村や地区単位で集約・整理した上で、適切な形で情報の周知を行ってください。

3. 連携強化加算の経過措置・届出について

経過措置

2024年3月31日時点で、連携強化加算の施設基準に係る届出を行った保険薬局については、2024年12月31日まで、都道府県知事より第二種協定指定医療機関を受けているものとみなす。

現在、経過措置を適用している薬局は、2025年1月6日(最初の開庁日)までに届出を行ってください。

連携強化加算の届出を行う際は、別添2の様式87の3の4を用います。必要事項を記載した上で、地方厚生局等へ届出を行ってください。

4. 連携強化加算の対応ポイント

  • 在宅訪問及びオンライン服薬指導の体制を整備する

第二種協定指定医療機関の指定を受けるためには、在宅訪問もしくはオンライン服薬指導の対応が必須です。在宅訪問とオンライン服薬指導は、これからの薬局に求められている地域密着型経営においても重要な機能です。在宅訪問とオンライン服薬指導の併用によって、業務効率化や薬剤師の負担軽減も図れるため、ぜひどちらの体制も導入することを検討してください。

  • 都道府県知事より、第二種協定指定医療機関の指定を受ける

第二種協定指定医療機関の指定を受けるには、各都道府県ホームページにて、医療措置協定についての案内を確認してください。協議フォームには、薬局所在地等の基本情報のほか、自宅療養者や高齢者施設への対応や、個人防護具の備蓄等について回答が求められます。なお、申請は必ず薬局開設者が行ってください。協定締結までには、約2ヵ月かかります。

  • 地域での連携体制を構築する

非常時において、限られた医療資源の中で薬剤師が職能を発揮するためには、日頃から他薬局や医療機関、行政等との連携体制を築いておくことが重要です。救護所や施設等への医療品供給や人材派遣、避難所での薬剤師の活動について、地域単位で事前に話し合い、速やかに動ける体制を整えておきましょう。

まとめ

連携強化加算は、災害時や感染症発生等の非常時における薬局の対応体制を評価する加算です。2024年度診療報酬改定において、連携強化加算が2点から5点に増加しました。算定要件では、地域支援体制加算の届出が不要となる一方で、第二種協定指定医療機関の指定やオンライン服薬指導の対応が必須となっている点に注意してください。

第二種協定指定医療機関の指定には、在宅訪問もしくはオンライン服薬指導への対応が必要です。在宅訪問とオンライン服薬指導は、地域医療に貢献する上で重要なサービスなので、ぜひどちらも導入することを検討しましょう。

きらりプライムサービスでは、地域密着型薬局の経営支援を目的とし、在宅医療やオンライン服薬指導の導入など、薬局にまつわるさまざまなお悩みをサポートしています。現状でお困りの薬局経営者の方は、ぜひきらりプライムサービスにお問い合わせください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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