薬局経営者は知っておきたい「調剤後薬剤管理指導料」の算定要件
2024年度の調剤報酬改定で、「調剤後薬剤管理指導料」は加算から指導料へと格上げされました。改定に伴い、対象となる疾患や薬剤も拡大されています。
今回の記事では、調剤後薬剤管理指導料について、算定対象や算定要件、算定のタイミング等を詳しく解説します。また、調剤後薬剤管理指導料の算定で必要となる地域支援体制加算の届出についても紹介します。
1. 【2024年度改定】調剤後薬剤管理指導料|加算から指導料に
「調剤後薬剤管理指導料」とは、対象患者さんの治療薬の適正使用を推進するため、医療機関と連携しつつ、必要な薬学的管理指導を行った際の評価です。2024年度調剤報酬改定で、調剤後薬剤管理指導料加算の廃止に伴い、調剤後薬剤管理指導料が新設されました。
旧制度 |
新制度 |
服薬管理指導料 調剤後薬剤管理指導加算 |
調剤後薬剤管理指導1・2 |
60点/月1回 |
60点/月1回 |
(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」)
これまで調剤後薬剤管理指導加算は服薬管理指導料の加算だったため、かかりつけ薬剤師指導料を併算定することができませんでした。しかし、現場ではかかりつけ薬剤師が服薬期間中フォローアップ等の業務を行うことが多く、併算定できないことが議論されていました。今回の改定で、調剤後薬剤管理指導料として独立したため、調剤後薬剤管理指導料とかかりつけ薬剤師指導料との併算定が可能となります。
なお、同様の理由で「吸入薬指導加算」についても、服薬管理指導料からかかりつけ薬剤師指導料の加算へ移動し、かかりつけ薬剤師指導料との併算定が可能となっています。
1-1. 算定対象の拡大
2024年度調剤報酬改定では、調剤後薬剤管理指導料の対象となる疾患や薬剤が拡大されました。
指導料 |
点数 |
対象患者 |
調剤後薬剤管理指導料1 |
60点/月1回 |
糖尿病用剤を使用している糖尿病患者で、新たに糖尿病用剤が処方されたものor糖尿病用剤の用法・用量の変更があったもの |
調剤後薬剤管理指導料2 |
60点/月1回 |
心疾患による入院歴のある患者で、作用機序が異なる複数の治療薬の処方を受けている慢性心不全患者 |
(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」)
これまでは使用薬剤について、インスリン製剤もしくはスルフォニル尿素系製剤(SU剤)に限定されていましたが、今回の改定で糖尿病治療薬全般に拡大されました。
また、今回新設された調剤後薬剤管理指導料2では、慢性心不全患者が対象となります。こちらも糖尿病患者と同様、60点(月1回)を算定できます。
それぞれの要件を満たす場合、調剤後薬剤管理指導料1及び2を併算定することは可能です。ただし、慢性心不全の治療に用いられることのある糖尿病剤が処方されているだけでは、要件を満たしたことにはならないので注意してください。
1-2. 施設基準・算定要件
調剤後薬剤管理指導料は、地域支援体制加算の届出を行っている薬局が対象です。その上で、以下の算定要件をすべて満たす必要があります。
①医師の指示や患者の求めがあること |
(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」)
調剤後の服薬フォローアップは、電話のほか、メールやアプリのチャット等でも可能です。ただし、定型文の一斉送信では、継続的な服薬指導を実施しているとは見なされません。患者さん一人ひとりに応じた丁寧なフォローアップを行いましょう。
処方医への情報提供は、必ず文書で行います。服薬指導の内容や患者さんの体調だけでなく、処方医が必要としている情報を伝えるようにしましょう。事前に処方医と連携し、伝えるべき情報について確認しておくとスムーズです。また、服薬フォローアップ中に患者さんに体調変化が見られた際には、速やかに医療機関へ情報提供を行ってください。
調剤後薬剤管理指導料を算定する場合、服薬情報等提供料は算定できません。ただし、「服薬情報等提供料の併算定不可となっているもので、相当する業務」に含まれるため、地域支援体制加算の「服薬情報等提供料・実績要件30回」にカウントすることができます。
(出典:厚生労働省「保医発0305第6号 「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」)
1-3. 算定のタイミング
調剤後薬剤管理指導料を算定するタイミングは、「医療機関に情報提供を行い、その後に患者さんが処方箋を持参したとき」です。情報提供を行った医療機関以外の処方箋でも、算定することができます。
ただ、患者さんは「処方箋と関係のない指導料が算定されている」と思われるかもしれません。誤解を生まぬよう、お薬をお渡しする際に、調剤後薬剤管理指導料について伝えておくと安心です。
2. 調剤後薬剤管理指導料には地域支援体制加算の届出が必須
調剤後薬剤管理指導料は、地域支援体制加算の届出を行っている薬局のみ算定できます。届出を行っていない薬局は、まずは地域支援体制加算の要件を満たすことを優先しましょう。
2024年度調剤報酬改定では、地域支援体制加算の施設基準や実績要件も大きく見直されました。地域支援体制加算の施設基準を満たすには、「かかりつけ薬剤師の届出」「在宅実績24回」が必須です。その他、麻薬小売業者免許や要指導薬品(48薬効群)および一般用医薬品の販売も要件となっています。
地域支援体制加算については、以下の記事も参考にしてください。
>>「69・【調剤報酬改定2024】地域支援体制加算の要件と変更のポイントをわかりやすく解説!」
>>「77・2024年診療報酬改定における調剤基本料・地域支援体制加算の見直しポイント」
2-1. 地域支援体制加算による薬局の経営戦略
調剤後薬剤管理指導料を算定する場合、地域支援体制加算の届出の有無によって、地域支援体制加算と調剤後薬剤管理指導料の点数分の差が開きます。たとえば、地域支援体制加算2を算定している薬局は、届出のない薬局より100点*も多くなるのです。
*(地域支援体制加算2[40点]+調剤後薬剤管理指導料[60点]=100点)
さらに、地域支援体制加算は、処方箋受付時に毎回算定できます。1日に50枚の処方箋を受け付けている場合、届出のある薬局とない薬局とでは、1日あたり500〜2,000点もの差が出ます。月20日開局する場合、単純に計算すると、地域支援体制加算の点数分だけでも年間120,000〜480,000点の差です。
調剤後薬剤管理指導料は、今回の改定でかかりつけ薬剤師指導料との併算定ができるようになったことから、意義の高い加算となりました。地域支援体制加算の届出を行っていない薬局は、ぜひ早めに体制を整えて、調剤後薬剤管理指導料の算定をめざしてください。
まとめ
2024年度調剤報酬改定で、調剤後薬剤管理指導料は、加算から指導料になりました。見直しに伴い、対象治療薬及び疾患が広げられ、すべての糖尿病剤と慢性心不全患者も対象となっています。また、今回の改定により、かかりつけ薬剤師指導料との併算定が可能となりました。
調剤後薬剤管理指導料を算定するには、地域支援体制加算の届出が必要です。地域支援体制加算が算定できるかどうかは、薬局経営に大きく影響します。まだ体制のない薬局は、ぜひ地域支援体制加算の届出をめざしてください。
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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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