医療DX推進体制整備加算の施設基準を解説 薬局が取り組むべきこととは?

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医療DX推進体制整備加算の施設基準を解説 薬局が取り組むべきこととは?

2024年調剤報酬改定で新設された「医療DX推進体制整備加算」は、マイナ保険証や電子処方箋等のデジタル技術を活用する体制を整備することで算定できる加算です。2024年10月以降は、マイナ保険証の利用率に応じて、3段階評価へと変更になりました。

今回の記事では、2024年10月の改定を踏まえた上で、医療DX推進体制加算の施設基準について詳しく解説します。加算算定のために薬局が取り組むべきこともお伝えするので、薬局の体制整備にお役立てください。

1. 医療DX推進体制整備加算とは?

医療DX推進体制整備加算とは、医療DXに対応する体制を評価するため、2024年度調剤報酬改定で新設された調剤基本料の加算です。2024年10月からは、マイナ保険証の利用率の導入に伴い、3段階評価へと変更になります。

医療DX推進体制整備加算は、月1回という限りはあるものの、すべての患者さんが算定対象なので、算定できれば薬局経営を有利に進められる可能性があります。施設基準をクリアすれば継続的に取れるので、ぜひ算定をめざしましょう。

なお、医療DX推進体制整備加算には、経過措置が設けられている項目もあります。それぞれの要件や期日を確認し、対応できるように準備を進めてください。

2. 【2024年10月~】医療DX推進体制整備加算の点数・利用率

医療DX推進体制整備加算は、2024年10月1日以降、マイナ保険証の利用率に応じて3区分へと変更されました。

【改定前】

2024年9月30日まで

4点(月1回)

【改定後】

2024年10月1日~

施設基準

医療DX推進体制整備加算1

7点(月1回)

  • マイナンバーカード保険証の利用について、十分な実績を有していること
  • マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じること

医療DX推進体制整備加算2

6点(月1回)

  • マイナンバーカード保険証の利用について、必要な実績を有していること
  • マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じること

医療DX推進体制整備加算3

4点(月1回)

  • マイナンバーカード保険証の利用について、実績を有していること

【改定後】マイナ保険証利用率

 

2024年10月~

(利用実績2024年7、8月~)

2025年1月~

(利用実績2024年10、11月~)

加算1

15%

30%

加算2

10%

20%

加算3

5%

10%

(出典:厚生労働省「医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて」

医療DX推進体制整備加算加算1及び2の施設基準については、それぞれマイナ保険証の”十分な実績”と”必要な実績”という文言が加えられました。また、マイナポータルの医療情報等に基づき、患者さんの相談に応じることも要件となっています。

マイナ保険証の利用率は、段階的に引き上げられます。2025年4月以降のマイナ保険証利用率の実績は、実施状況を見て本年末を目途に検討される予定です。紙の保険証は2024年12月2日をもって廃止されるため、求められるマイナ保険証利用率の実績はさらに高くなると予想できます。

原則として、マイナ保険証の利用率は、「適用時期の3か月前のレセプト件数ベースマイナ保険証利用率」(マイナ保険証の利用者合計÷レセプト枚数)を用います。

ただし、2024年10月~2025年1月までは、適用時期の2ヶ月前の「オンライン資格確認件数ベースマイナ保険証利用率」(マイナ保険証の利用件数÷オンライン資格確認等システムの利用件数)を用いても構いません。

医療DX推進体制整備加算の算定に用いるマイナ保険証利用率については、社会保険診療報酬支払基金からの通知、あるいは「医療機関等向け総合ポータルサイト」のマイページから確認できます。

3. 医療DX推進体制整備加算の施設基準

医療DX推進体制整備加算の施設基準の概要は、以下の通りです。

  1. 電子レセプト・オンライン請求を実施している

(オンライン資格確認は、2023年4月より保険医療機関・薬局で原則義務化)

  1. オンライン資格確認体制がある
  1. オンライン資格確認等システムを通じて患者の診療情報や薬剤情報を取得し、その情報を調剤や服薬指導を行う際に閲覧・活用できる体制がある
  1. 電子処方箋を受け付ける体制を整備している[経過措置:2025年3月31日まで]
  1. 電磁的記録による調剤録及び薬剤服用歴の管理の体制(電子薬歴による管理体制)がある(オンライン資格確認、薬剤服用歴等の管理、レセプト請求業務等を担う当該薬局内の医療情報システム間で、情報連携が取られていることが望ましい)
  1. 電子カルテ情報共有サービスにより取得した診療情報等を活用する体制がある[経過措置:2025年9月30日まで]
  1. マイナ保険証の一定割合以上の実績がある[2024年10月1日より適用]
  1. 次に挙げる医療DXの体制について、保険薬局内とウェブサイトに掲載している
  • オンライン資格確認システムを通じて、患者の診療情報や薬剤情報等を取得し、調剤や服薬指導等を行う際にそれらの情報を閲覧・活用していること
  • マイナンバーカードの健康保険証利用を促進するなど、医療DXを通じて質の高い医療を提供できるよう取り組んでいること
  • 電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスを活用するなど、医療DXに係る取組を実施していること 
  1. サイバーセキュリティの確保のために必要な措置を行っている

「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」「薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」を活用して、サイバー攻撃対策を含めたセキュリティ全般について適切な対応を行っている)

6)電子カルテ情報共有サービスは、2025年春の運用をめざし、現在構築中です。2025年度中には本格的に稼働するので、今後の情報に注意しつつ、導入の心構えを持っておきましょう。

8)薬局内掲示については、1枚で要件を満たせる掲示用ポスターを厚生労働省が公開しています。ぜひ活用してください。

▶参照:厚生労働省「オンライン資格確認に関する広報素材について」

3-1. 医療DX推進体制整備加算の届出について

DX推進体制整備加算を算定するには、施設基準を満たした上で、地域厚生局長等への届出が必要です。地方厚生局等のホームページで様式87の3の6「医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出書添付書類」をダウンロードし、必要事項を記入した上で提出してください。

なお、2024年10月に改定が行われましたが、以前より医療DX推進体制整備加算の届出を行っている場合、再申請は不要です。これから新たに医療DX推進体制整備加算の届出を行う場合は、所定の手続きに従って申請を行いましょう。

4. 加算算定のために薬局が取り組むべきこと

ここでは、医療DX推進体制整備加算を算定するために、薬局が取り組むべきことを解説します。経過措置が取られている項目は、期間中に対応できるよう準備しておきましょう。

4-1. 電子処方箋の受付体制の整備(2025年3月31日まで)

医療DX推進体制整備加算の算定には、2025年3月31日までに電子処方箋の受付体制を整備する必要があります。HPKIカードの発行やシステム事業者との調整に時間がかかるため、運用開始の2〜3ヶ月前から準備を始めましょう。

電子処方箋導入の主な流れ



導入準備

①オンライン資格確認の導入

②HPKIカードの発行【運用開始の1~2ヶ月前まで】

③システム事業者への見積依頼



発注

④システム事業者への発注【運用開始の約1ヶ月前まで】

⑤HPKIカード読取用のICカードリーダーの準備

⑥電子処方箋利用申請



導入準備

⑦システム事業者より、電子処方箋対応版ソフトの提供

⑧パソコン設定・操作確認

⑨医療機関等向け総合ポータルサイトにて、運用開始日の入力


運用準備

⑩患者動線や業務フロー、変更点の確認

⑪患者向け掲示物の準備

(参照:厚生労働省「電子処方箋に関する周知素材」

運用開始



補助金申請

⑫システム事業者より領収書・領収書内訳を受領、必要書類の準備

⑬補助金申請

(電子処方箋管理サービスの場合、2025年3月31日までに完了し、2025年9月30日までの申請分が補助金交付の対象)

電子処方箋対応システムには、紙の処方箋であっても、処方・調剤情報をリアルタイムで閲覧できるというメリットがあります。HPKIカードが届く前でも、電子処方箋対応システムについてシステム事業者に相談し、導入の準備を進めておきましょう。

(出典:厚生労働省「電子処方箋導入に向けた準備作業の手引き【医療機関・薬局の方々へ】令和5年12月 1.4版」

4-2. サイバーセキュリティ対策

2023年4月1日より、薬局のサイバーセキュリティ対策が原則義務化されました。近年増加している医療機関や薬局に対するサイバー攻撃から、患者さんの医療情報を守ることが目的です。

薬局のサイバーセキュリティ対策については、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を参照するように求められています。合わせて「薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリストマニュアル〜薬局・事業者向け〜 」「令和6年度版薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」(以下、チェックリスト)も活用しましょう。

薬局のサイバーセキュリティ対策の主なポイントは、次の通りです。

  • サーバー、PC、ネットワーク機器の台帳管理
  • 医療情報システムの利用者の職種や業務ごとのアクセス利用権限の設定
  • 医療情報システムのアクセスログの管理
  • ネットワーク機器におけるセキュリティパッチの適用
  • ネットワーク機器の接続元制限
  • サイバー攻撃に備えた事業継続計画の策定

2024年度より、薬局への個別指導や立入検査でも、サイバーセキュリティ対策が追加されました。チェックリストは定期的に確認し、常に万全なセキュリティ対策を維持しましょう。薬局スタッフ全員に教育研修を実施し、高いセキュリティ意識を持ってもらうことも大切です。

4-3. マイナ保険証利用の利用率を上げるには?

2024年10月1日より、マイナ保険証利用の実績が適用されました。これにより、医療DX推進体制整備加算は3段階評価となり、より高い点数をめざすためにはマイナ保険証の利用率を上げる必要があります。

マイナ保険証の利用率を上げるためには、次のような取り組みを行いましょう。

  • 患者さんへの声かけの徹底
  • マイナンバーカードのリーフレットの配布
  • 利用実績の見える化
  • 患者さん個々のニーズに応じた柔軟な対応

マイナ保険証を持っていない患者さんに対しては、マイナ保険証のメリットを伝えたり、リーフレットを配布したりなどの丁寧なフォローによって、利用を促すことができます。患者さんへの声かけについては、厚生労働省より「医療機関向けマイナ保険証促進トークスクリプト」が公開されているので、ぜひ参考にしてください。

マイナ保険証の利用実績を定期的に確認すると、声かけの成果が分かります。利用実績が伸びない場合は、声かけやアプローチの方法を変えることも検討しましょう。

とはいえ、マイナンバーカードの取得はあくまでも任意であり、マイナ保険証に否定的な患者さんもいます。そのような患者さんには、マイナ保険証の利用を強要するような声かけは避けるなど、柔軟に対応することも必要です。

まとめ

「医療DX推進体制加算」は、2024年10月以降、3段階評価へと改定されました。マイナ保険証の利用率が高いほど、算定できる点数も高くなります。マイナ保険証の利用率を上げるためには、患者さんに対してこまめな声かけや丁寧な案内を行いましょう。

以下の項目については、経過措置が設けられています。電子処方箋の導入には時間がかかるため、運用時期の2〜3ヶ月前より取りかかりましょう。

  • 2025年3月31日まで:電子処方箋の受付体制の整備
  • 2025年9月30日まで:電子カルテ情報共有サービスの導入

きらりプライムサービスでは、加算取得や薬局DXなど、在宅薬局の経営を支援しています。加算の対策にお困りの薬局経営者の方は、ぜひきらりプライムサービスにご相談ください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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