オンライン服薬指導を展開するなら知っておきたい「5つの留意ポイント」とは?

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オンライン服薬指導を展開するなら知っておきたい「5つの留意ポイント」とは?

画面上で服薬指導を行い、自宅にいながら薬を受け取れるオンライン服薬指導。ウィズコロナ時代やライフスタイルの多様化により、今後オンライン服薬指導のニーズは高まることが予想されます。

本記事では、オンライン服薬指導を実施する上で、押さえておきたい5つのポイントを解説します。

1. オンライン服薬指導とは?

オンライン服薬指導とは、スマートフォンやタブレット等の情報通信機器を用いて、画面上で服薬指導を実施する制度のことです。オンライン服薬指導には、次のようなメリットがあります。

  • 患者さんの移動負担や待ち時間の解消
  • 感染リスクの低減
  • 在宅訪問との併用による、薬剤師の業務負担軽減
  • 薬剤師の在宅勤務・リモート薬剤師の実現

オンライン服薬指導は、2020年9月に施行予定だったものの、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、時限的措置として「0410対応」により解禁されました。その後、2022年3月の改正省令により多くの規制が緩和され、診療報酬改定でもオンライン服薬指導の点数が引き上げられました。0410対応は2023年7月を以て終了しましたが、同年9月には「オンライン服薬指導の実施要領について」が出され、薬局以外でのオンライン服薬指導も可能となりました。

2. 連携強化加算はオンライン服薬指導の体制整備が必須に

2024年6月に施行予定の調剤報酬改定では、連携強化加算の施設要件に、オンライン服薬指導の体制整備が追加されました。

2024年度調剤報酬改定では、連携強化加算が2点から5点へとアップ。また、連携強化加算において、地域支援体制加算の届出が不要となりました。それに伴い、連携強化加算の施設基準が見直され、要件のひとつに「情報通信機器を用いた服薬指導を行う体制の整備」、つまりオンライン服薬指導の体制整備が加えられています。

点数引き上げと算定のハードルが下がることから、連携強化加算の取得に取り組む薬局は増えるでしょう。地域支援体制加算が7点マイナスになっていることからも、基本料の加算である連携強化加算は、確実に加算したいところです。

早めにオンライン服薬指導の体制を整備し、連携強化加算を算定できるように準備しておきましょう。

(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」

3. オンライン服薬指導の5つの留意ポイント

オンライン服薬指導は、患者さんと薬剤師、双方にとって便利な制度であるものの、運用方法を誤るとトラブルにつながる恐れもあります。ここでは、「オンライン服薬指導の実施要領について(厚生労働省)」をもとに、オンライン服薬指導の留意点を5つ解説します。

3-1. オンライン上でのコミュニケーション

オンライン服薬指導では、表情や仕草等の非言語コミュニケーションが伝わりにくいため、対面の服薬指導以上に丁寧なコミュニケーションを取る必要があります。一方的なコミュニケーションにならないよう、オンラインに適した伝え方・聴き方に注意することが大切です。

オンライン服薬指導でのコミュニケーションのコツ

  • 口の動きや表情を大きく動かす
  • ジェスチャーを取り入れる
  • 患者さんが理解度を確認しながら進める
  • こそあど言葉(これ・それ・あれ・どれ)を使わず、具体的に述べる
  • 患者さんの話を途中で遮らず、最後まで聴く
  • 資料を画面共有する、実物を映す等、視覚的要素を活用する

オンラインでは、普段よりもリアクションを大きめに取ることで、意思疎通が図りやすくなります。大きくうなずく、相槌を打つ、手ぶりを添えるといったことを意識しましょう。

オンライン服薬指導でより鮮明に情報をやり取りするためには、質のよいカメラやマイクを用意するのも有効な手段となります。オンライン服薬指導での画面共有用として、薬の情報や副作用についてまとめた資料を作成するのもおすすめです。

3-2. 通信環境(IT環境・情報セキュリティ・利用端末)の整備

オンライン服薬指導は、患者さんの個人情報及びプライバシー保護に最大限配慮し、使用するシステムに伴うリスクを踏まえた対策を講じた上で実施する必要があります。「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を参考に、必要な通信環境を確保してください。

以下に、オンライン服薬指導で通信環境を整備する上でのポイントをまとめます。

  • OS・ソフトウェアのアップデート、ウイルス対策ソフトの導入を定期的に実施する
  • 薬剤師が負う情報漏洩・不正アクセス等のセキュリティリスクを説明する
  • 第三者のオンライン服薬指導への参加を防ぐ
  • 同意のない録音・録画・撮影は禁止する
  • 薬剤師の身分証明書を示す
  • 汎用サービスを用いる場合はリスクを理解し、必要な対策を取る
  • 汎用サービスを使用する際は、患者側からの発信は行わない
  • 原則、チャット機能やファイル送付は行わない
  • 端末立ち上げ時、パスワードや生体認証等による操作者の認証を行う

オンライン服薬指導の専用アプリと汎用ツール、どちらを使用するかによっても取るべき対策が異なります。日本薬剤師会の「【各論1】 オンライン服薬指導について(後半)~オンライン服薬指導とセキュリティ~」も参考にしながら、安全な運用に努めてください。

3-3. オンライン服薬指導の体制の確認

オンライン服薬指導は、かかりつけ薬剤師による実施が望ましいとされています。患者さんの病歴や生活習慣を継続的に把握しているかかりつけ薬剤師であれば、オンライン服薬指導でも適切に薬歴管理が行えるためです。オンライン服薬指導の導入を検討している薬局は、かかりつけ薬剤師・薬局としての体制も整備しましょう。

また、電子処方箋があると、オンライン服薬指導をよりスムーズに行えます。医療機関や患者さんから処方箋原本を送付してもらう必要がなく、スピーディーかつ正確な調剤が可能です。リモート薬剤師がオンライン服薬指導を行う際も連携しやすくなるので、オンライン服薬指導と合わせて電子処方箋の導入も検討しましょう。

【オンライン服薬指導を薬局外(薬剤師の自宅等)から実施する場合】

オンライン服薬指導は、以下の要件を満たせば、薬局外から実施することが可能です。

  • 実施する場所(薬剤師の自宅等)で、調剤を行う薬剤師と連絡が取れる
  • 対面と同程度に、患者のプライバシーに配慮できる
  • オンライン服薬指導開始後、患者から対面での服薬指導への移行の求めがあった場合に、オンライン服薬指導を行った薬剤師または他の薬剤師によって対応できる

薬剤師の働き方の選択肢として在宅勤務を導入すれば、育児や介護等のライフスタイルの変化による離職も防げます。薬剤師の働き方改革を推進するためにも、オンライン服薬指導を導入する際は、ぜひ在宅勤務の体制も整えましょう。

3-4. 業務フローの設計

オンライン服薬指導を円滑に実施するために、業務フローやマニュアルを作成します。

オンライン服薬指導の業務フロー・マニュアル作成のポイント

  • 専用アプリや汎用ツールの立ち上げ方、操作方法
  • カメラやマイクの設定
  • オンライン服薬指導の順序(薬剤師の身分証確認、処方箋確認、ヒアリング等)
  • 対面に切り替えるべきポイント 等

実施中に困ったことがあれば速やかに確認できるよう、マニュアルはパソコンやタブレットの近くに設置します。

リモート薬剤師を許可する場合は、在宅勤務用の業務フローやマニュアルを作成し、薬剤師に配布しましょう。薬剤師が自宅で確認しやすいよう、実施場所やセキュリティ対策に関するチェックリストもあると安心です。

3-5. 薬剤師の採用・スキルアップ

既存薬剤師ではオンライン服薬指導に対応できない場合、新規でリモート薬剤師を採用することも検討しましょう。特に、郊外や地方の薬局では、リモート薬剤師の採用によって人材不足の解消が期待できます。

オンライン服薬指導を行う薬剤師には、薬学的知識だけでなく、情報セキュリティやITリテラシーに関する知識・技術の習得も必要です。薬局経営者には、オンライン服薬指導を行う薬剤師に対する研修を充実させることが義務づけられています。

日本薬剤師会では、ホームページで「オンライン服薬指導に関する研修スライド」を公開しています。薬剤師の育成に役立ててください。

▼参照

日本薬剤師会「【各論1】 オンライン服薬指導について(前半)~制度と実務~」
日本薬剤師会「【各論1】 オンライン服薬指導について(後半)~オンライン服薬指導とセキュリティ~」

まとめ

オンライン服薬指導は、画面上で服薬指導を行い、患者さんの自宅へ薬を配達するサービスです。感染リスク低減や待ち時間解消のほか、業務効率化や薬剤師の働き方改革推進にも役立ちます。

オンライン服薬指導を実施する際は、セキュリティ対策や利用端末等を整備し、安全に運用できるよう十分注意してください。オンライン服薬指導を行う薬剤師には、情報セキュリティやITリテラシーに関する教育も実施します。場合によっては、リモート薬剤師の採用も検討しましょう。

きらりプライムサービスでは、在宅薬局経営を支援するため、薬局DXや薬剤師育成をサポートしています。在宅医療や薬局DXにお困りの方は、ぜひきらりプライムサービスにお問い合わせください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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