検討したい薬局経営層は必見! オンライン服薬指導の導入メリットと必要な準備
オンライン服薬指導は、薬局の在宅医療推進や薬剤師の働き方改革を進める上で欠かせないサービスです。2023年3月の日本保険薬局協会「管理薬剤師アンケート報告書」では、薬局の81.0%が「導入あり」と回答したものの、直近3ヶ月における実績は13.1%に留まっています。オンライン服薬指導はただ導入するだけでなく、活用できるように体制を整えておくことが大切です。
本記事では、オンライン服薬指導の流れとメリットを解説した上で、導入に向けて必要な準備と、運用にかかるコストを解説します。オンライン服薬指導を導入にお悩みの薬局経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
1. オンライン服薬指導とは
オンライン服薬指導とは、スマートフォンやパソコン等のビデオ通話機能を利用して、画面上で服薬指導を実施することです。オンライン服薬指導は徐々に規制が緩和され、2022年4月の薬機法改正では初診患者さんに対しても実施可能となり、同年9月には薬局外からのオンライン服薬指導も解禁されています。
オンライン服薬指導の主な流れ
①患者さんが対面もしくはオンラインで医療機関を受診する |
2. オンライン服薬指導導入のメリット
オンライン服薬指導は、患者さんと薬剤師、双方にとって利便性の高いサービスです。以下に、オンライン服薬指導を導入するメリットを4つ紹介します。
- 患者さんの待ち時間を削減できる
オンライン服薬指導を利用すれば、患者さんの薬局での待ち時間を削減できます。患者さんは自宅や職場にいながら、希望の予約時間に服薬指導を受けることが可能です。薬局に行って薬を受け取るという体力的な負担も軽減できます。
- 感染リスクを低減できる
薬局に行く必要がないため、薬局での滞在や外出による感染リスクを避けられます。オンライン診療と併用すれば、受診から薬の受け取りまでを自宅で完結できるので、より感染リスクを抑えられます。薬剤師はもちろん、子どもや高齢者に付き添う保護者・介助者にとっても安心です。
- 薬剤師のリモートワークが可能になる
オンライン服薬指導は薬局外からの実施も可能なため、薬剤師のリモートワークを促進できます。リモート薬剤師の採用は、人材不足を解消する手段としても有効です。柔軟な働き方を提示できることで、育児や介護等による薬剤師の離職防止にもつながります。
- 在宅訪問と併用できる
条件のもとで、在宅患者さんへの訪問をオンライン服薬指導に切り替えることができます。たとえば月2回訪問のうち、1回をオンライン服薬指導で対応した場合、「在宅患者オンライン服薬指導料」の算定が可能です。オンライン服薬指導を併用することで、薬剤師の在宅訪問にかかる業務負担を軽減できます。
3. オンライン服薬指導に必要な準備
オンライン服薬指導は、導入後にいかに運用できるかがポイントとなります。安心して運用できるように、必要な体制を整えてオンライン服薬指導を実施しましょう。
3-1. ビデオ通話機能のある情報通信機器・使用ツールの準備
オンライン服薬指導を実施する上で、まず必要となるのがビデオ通話機能のある情報通信機器の設置です。主に、以下の3種類のうちから通信機器を選ぶことになります。
- スマートフォン
- タブレット
- パソコン(Webカメラ、マイクが使用できるもの)
使用する機器が決まったら、オンライン服薬指導で使用するツールを選びます。現状ではツールの指定はなく、zoom、Skype、Google Meet、LINEといった汎用ビデオ通話ツールでも対応可能です。一方で、有料で利用できるオンライン服薬指導専用システムも登場しています。
以下に、汎用ビデオ通話ツールと専用システム、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
汎用ビデオ通話ツール |
専用システム |
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メリット |
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デメリット |
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専用システムは機能が豊富で利便性が高いものの、患者さんが使い慣れていないため、普及までに時間がかかる可能性もあります。専用システムは、機能や料金、契約内容等がそれぞれ異なるため、しっかり比較検討をすることが重要です。
セキュリティ面での信頼性が高く、患者さんの使いやすさも考慮した上で、薬局に適したシステムを選びましょう。
3-2. オペレーションの可視化
オンライン服薬指導を円滑に進めるために、業務フローを可視化して、オペレーションを整備しましょう。オンライン服薬指導の流れだけでなく、実施要件や対面に切り替えるべきポイントなども細かく明記し、薬剤師がいつでも確認できるようにしてください。システムやアプリの使い方もまとめましょう。
リモートワークでオンライン服薬指導を実施する場合は、リモートワーク用のオペレーションも整備します。運用する中で困ったことがあれば共有し、オペレーションを最適化していきましょう。
3-3. 薬剤師のICTリテラシー教育
オンライン服薬指導の実施にあたっては、薬学的知識のほか、情報通信機器の使用や情報セキュリティ等に関する知識が必要です。薬局経営者には、薬剤師に対してオンライン服薬指導に必要な知識・技能等を習得させるための研修を充実させる義務があります。
公益社団法人日本薬剤師会では、オンライン服薬指導に関する研修スライドが公開されています。「日本薬剤師会研修プラットフォーム」への会員登録を済ませた方は、ICTを活用した薬剤師業務の資的向上等を目的とした研修プログラムも利用できます。これらの研修を活用しつつ、実際にシステムを使いながら、実務で役立つ知識・技術の習得をめざしましょう。
3-4. 電子版お薬手帳や電子処方箋の導入
オンライン服薬指導の効率的な運用に向けて、電子版お薬手帳や電子処方箋の導入が推奨されています。電子版お薬手帳は、紙のお薬手帳を電子化したもの。電子処方箋は、処方箋を電子化し、デジタルデータで運用する仕組みのことです。
電子版お薬手帳や電子処方箋を活用すると、紙の原本をやり取りする必要がないため、医師・薬剤師・患者さんとの間で、よりスムーズかつ正確な情報共有が可能となります。また、リモートワークでオンライン服薬指導を行う薬剤師と薬局間における連携体制の構築にも役立ちます。
4. オンライン服薬指導の導入・運用にかかるコスト
オンライン服薬指導を始めるだけであれば、ビデオ通話機能のある通信機器が用意できればOKです。薬局内にあるスマートフォンやパソコンを活用すれば、すぐにでもオンライン服薬指導に対応できるでしょう。
ただ、オンライン服薬指導を行うにあたってどのようなシステムを用いるのかなどにより、導入・運用にかかるコストが異なります。
オンライン服薬指導の導入・運用にかかるコスト
必須 |
(スマートフォン・タブレット・PCなど)
(例)LINE公式アカウント(無料~15,000円/月) オンライン服薬指導専用システム(無料~約10,000円/月 ※料金体系はシステムによる) |
必要に応じて |
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電子版お薬手帳や電子処方箋があるとより利便性は増すものの、一度にすべてを導入すると薬剤師や患者さんの混乱を招く恐れもあります。まずはオンライン服薬指導から始め、徐々にオンライン体制を整備するとよいでしょう。
まとめ
オンライン服薬指導は、薬局DX推進に欠かせないサービスのひとつです。患者さんの待ち時間削減や、薬剤師のリモートワーク推進、在宅訪問との併用による業務負担軽減に役立ちます。
ビデオ通話機能のあるスマートフォンやパソコンがあれば、すぐにでもオンライン服薬指導を始めることが可能です。ただ、安全な運用にあたっては、業務フローや運用体制を整備することが重要となります。より効率化を図る際には、電子版お薬手帳や電子処方箋の導入も検討してください。
きらりプライムサービスでは、薬局の在宅医療を推進するため、在宅ノウハウの提供やオンライン体制構築をサポートしています。オンライン服薬指導の導入に興味のある薬局経営者の方は、ぜひきらりプライムサービスにご相談ください。
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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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