調剤薬局の経営は厳しい?業界の最新トレンドと経営改善のポイント

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調剤薬局の経営は厳しい?業界の最新トレンドと経営改善のポイント

1. 調剤薬局業界の最新トレンド

薬局業界は目まぐるしく変化しており、調剤薬局は大きな転換期を迎えています。薬局経営を見直す前に、まずは調剤薬局業界の現状を把握しておきましょう。

1-1. 医療費削減の推進

高齢化が進む日本では年々医療費が増加しており、2022年度では前年度に比べて約1.8兆円の増加(*)となりました。団塊世代が75歳以上となる2025年以降はさらなる医療費の増大が予想されており、国はさまざまな政策を打ち出して医療費の削減を図っています。

医療費を削減するということは、調剤報酬や薬価による収益が見込めなくなり、薬局の収入が減るということです。このため、以前と同じ経営を続けていても、利益を確保することは難しくなっています。

  • 後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及推進

医療費削減の施策のひとつに、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及推進があります。ジェネリック医薬品は薬価が低いので、薬局としては先発医薬品を扱う場合よりも利益が減ってしまいます。

  • 薬価改定による薬価の引き下げ

薬価改定では原則として薬価が引き下げられるため、薬価差益による収益が見込めなくなっています。以前は薬価差益が30%を超えることもありましたが、現在では10〜20%が妥当です。

  • 調剤報酬改定による対物業務の引き下げ

調剤報酬改定では、対物業務よりも対人業務への移行を促しています。処方箋調剤よりも、地域医療への貢献や、患者さんへのサポートに対する評価が拡充しています。処方箋調剤に依存した薬局経営は見直す必要があるでしょう。

*(参照:「令和4年度 医療費の動向」を公表します ~概算医療費の年度集計結果~(厚生労働省

1-2. 大手チェーン薬局によるM&A

薬局業界で勢力を拡大しているのが、大手ドラッグストアです。ここ4年ほど調剤薬局市場が横這いであるのに比べて、ドラッグストア市場は約1.3兆円もの規模拡大に成功しています。

調剤薬局市場とドラッグストア市場の市場規模比較

 

調剤薬局市場

ドラッグストア市場

2018年

約7.4兆円

約7.2兆円

2021年

約7.7兆円

約8.5兆円

(出典:厚生労働省 調剤医療費の動向

これまで大手ドラッグストアでは、特定の地域に多数の店舗を出店し、その地域において競合よりも優位性を得る「ドミナント戦略」が採用されてきました。しかし、現在は大手ドラッグストアの店舗数は過剰傾向にあり、ドミナント戦略にも限界が訪れています。そこで、新規出店による市場拡大よりも、M&Aによるシェアの奪い合いが加速しているのです。

今では、大手ドラッグストアの大半が調剤薬局を併設しています。資金力やブランド力で劣る中小規模の調剤薬局は、非常に不利な状況です。今後も薬局業界では、大手ドラッグストアのM&Aによる再編が進むと予想されています。

1-3. 中小薬局の後継者不足の深刻化

調剤薬局では、経営者の高齢化と後継者の不在も課題となっています。高齢化が進む日本では、後継者問題は薬局に限らず、すべての業界で共通する課題といっても過言ではありません。

これまでは家業として、経営者の子どもが調剤薬局を継承するのが一般的でした。しかし、今は経営者の子どもが必ずしも後を継ぐというわけではありません。中には、診療報酬改定や薬価改定を不安視し、子どもへの承継を躊躇する薬局経営者もいます。

薬局の事業承継の方法として、主に以下3つがあります。

①親族や従業員から後継者を探す
②M&Aにより第三者に事業承継をする
③外部から経営者を招いて第三者に承継する

どのような選択肢を選ぶ場合でも、事業承継を行うには事前準備が必要です。社内で十分に検討を重ね、スケジュールを立ててじっくり取り組む必要があります。特に、経営者が高齢の場合は万一の事態を考慮し、早めに後継者問題に取り組みましょう。

1-4. オンライン化の促進

薬局業界では、急速にオンライン化が進んでいます。2021年にオンライン服薬指導が恒久化され、2023年には電子処方箋の運用も始まりました。患者さんは、診療からお薬の受け取りまでを自宅で完結することが可能です。

また、日本でも大手ECサイトによる処方薬の配送が始まりました。

患者さんにとって利便性の高い大手ECサイトによる処方薬配送サービスへの参入は、調剤薬局にとって大きな脅威となりえます。薬局はオンライン化に対応しつつ、実店舗としての強みを備える必要があるでしょう。アプリやLINEを使用した処方箋受付やお薬手帳にも積極的に取り組み、地域医療への貢献体制を整えましょう。

2. 調剤薬局の経営改善に向けたポイント

かつては「出店するだけで儲かる」と言われた調剤薬局ですが、今はさまざまな要因が重なり、薬局経営は厳しくなっています。薬局の規模が小さくなるほど、経営が厳しいと感じる場面は多いでしょう。

調剤薬局の経営を安定させるには、これからの時代を見据えた経営へとシフトすることが大切です。ここでは、厳しい薬局経営を改善するためのポイントを解説します。

2-1. 医薬品購入コストの削減

薬価差益を少しでも多く確保するには、医薬品購入コストを抑える必要があります。ただ、中小薬局は大手チェーン薬局に比べて購入規模が小さいので、医薬品卸との価格交渉が進まないケースがほとんどです。

中小薬局が医薬品購入コストの削減を図る方法として、「医薬品購入交渉代行」もしくは「共同購入」があります。医薬品購入交渉代行・共同購入サービスを活用すれば、大手並みの購買力によって医薬品購入価格を抑えることが可能です。

  • 医薬品交渉購入代行サービス

薬局と医薬品卸との間に第三者の企業が介入し、価格交渉などを行うこと。


  • 共同購入サービス

ボランタリーチェーンなどに加盟し、複数の薬局と同時注文・大量購入を行い、価格を抑えて医薬品を仕入れること。

さまざまな企業や団体が、医薬品交渉購入代行・共同購入サービスを提供していますが、サービスの内容はそれぞれ異なるため、比較検討を行うことが大切です。具体的には、以下の点に注意するとよいでしょう

✓ 購入先の医薬品卸に指定はあるか
✓ 購入医薬品の指定はあるか
✓ 月会費や加盟金、キャンセル料等のコスト関連
✓ 注文システム・支払い方法の指定はあるか

薬局内でサービス導入による混乱を避けるためには、懇意にしている医薬品卸との関係性に変化がなく、従来通りの注文方法を継続できるサービスがおすすめです。きらりプライムの医薬品購入交渉代行では、これまでの発注体制はそのままに、価格交渉だけをお任せいただけます。導入シミュレーションも作成できるため、ぜひ他社との比較検討にお役立てください。

2-2. 人件費の削減

薬局の経費のうち、医薬品購入コストに次いで割合が高いのが人件費です。経営店舗数が少ない中小薬局ほど、人件費が高い傾向にあります。

ただし、人件費は、削ればよいというものではありません。過度に人員を削減すると、1人あたりの業務負荷が増大し、薬剤師の離職につながる恐れもあります。人件費の見直しは、薬剤師に負担がかからない範囲で行うことが大切です。

薬剤師が対人業務に専念できるよう、調剤補助員を採用するという方法もあります。調剤補助員は、専門職である薬剤師に比べると、人件費が低いのが特徴です。薬剤師の業務負荷が大きい場合は調剤補助員の採用も検討し、適材適所の薬局体制を構築しましょう。

きらりプライムの人材シェアリングでは、早朝深夜等、人材が不足する時間帯でのオンコール対応を代行しております。採用コストを抑えて24時間体制を整備できるため、人材不足でお悩みの薬局経営者の方は、ぜひご検討ください。

2-3. 在宅医療への進出

まだ在宅医療へ参入していない薬局は、在宅対応・24時間対応を整備することで、新たな収入源が得られます。在宅訪問・24時間対応は、かかりつけ薬局となるための必須要件です。今後、かかりつけ機能を持たない薬局は、大手ドラッグストアや大手チェーン薬局に淘汰されていくと考えられます。

ただ、中小薬局では薬剤師不足が深刻で、在宅医療に参入したくても時間や労力を割くことができないケースが珍しくありません。中小薬局が限られた薬剤師の数で在宅医療に参入するためには、薬局DXによる組織変革が鍵となります。

在宅医療参入のために薬局がすべきこと

  • オンライン服薬指導の導入
  • 在宅業務効率化システムの導入
  • スムーズな多職種連携の実現
  • 医療機関との信頼関係の構築
  • 在宅薬剤師の採用・教育

薬局DXで効率的な働き方を実現できれば、「この薬局で働きたい」と思う薬剤師も増えるでしょう。オンライン服薬指導や報告書作成システムなどをうまく活用し、在宅業務の無理・無駄を省きましょう。

資金が少ない中小薬局は、薬価コストの削減等にも取り組み、在宅薬局経営の投資余力を確保できるよう工夫することも大切です。

2-4. 事業承継のための後継者育成

薬局後継者の育成スケジュールを立て、計画的に事業承継を進めましょう。親族に適任者がいない場合は、従業員や外部から後継者に適切な人材を選定します。

親族の薬剤師に事業承継を行う場合は、知見を広げるために、ほかの薬局や病院へ勤務することを検討してもよいでしょう。薬剤師の知識だけでなく、経営者としての資金管理力やマネジメントスキルも養う必要があります。

M&Aによる事業承継を検討する場合は、信頼できる仲介会社を選ぶことが重要です。薬局のM&Aについて豊富な実績があるかを確認し、サポート内容や料金体系を比較検討しましょう。

2-5. 薬局DXの推進

薬局DXによって、薬剤師の業務負担軽減・薬剤師の働き方改革・対人業務の拡充化が実現します。必要最低限の人材で質の高いサービスを提供できるようになるため、人材不足に悩む中小薬局こそ薬局DXに取り組みましょう。

薬局DXの例

  • 調剤ロボットによる調剤業務の自動化
  • オンライン服薬指導によるリモート薬剤師の採用
  • 報告書作成システムによる在宅業務の効率化
  • ICT活用による情報連携の強化
  • 医薬品在庫管理システムによる管理・発注業務の自動化・半自動化
  • チャットツールによる服薬フォローアップのサポート

薬局経営者の中には、薬局DXは難しいというイメージを持つ人も多いでしょう。新しい取り組みを敬遠するのではなく、薬剤師が困っていることや、ミスが多い工程を改善する手段としてシステムやツールの導入を検討すれば、薬局DXへのハードルを下げることができます。

たとえば、在宅業務で報告書の記載ミスや送付漏れが多発しているなら、クラウド上で報告書を作成できるシステムを導入し、薬剤師の負担を軽減しましょう。医薬品発注のために毎週残業しているなら、在庫管理システムを導入してAIに発注予測を立ててもらうと、発注作業にかかる時間を大幅に削減できます。

きらりプライムサービスでは、在宅支援システム「ファムケア」を提供しています。在宅における報告書作成業務を効率化し、リアルタイムな情報共有体制をサポートするクラウド型システムです。

2-6. かかりつけ薬剤師の育成

かかりつけ薬剤師の育成制度を体系化し、薬剤師の質向上を図りましょう。在宅医療では、薬剤師としての知識・経験はもとより、医師や看護師、ケアマネジャーら多職種と円滑な情報共有を行うコミュニケーション能力が必要です。また、在宅患者さんの多様化に伴い、緩和ケアや特殊調剤など、より専門的な技術が求められます。

薬剤師に対しては、資格取得援助や研修の参加支援など、時間的・費用的なサポートを行うのが理想です。また、薬剤師が自発的に在宅医療へ参画できるよう、かかりつけ薬局の役割や在宅医療の意義など、かかりつけ薬剤師としてのマインドセットを促すことも大切です。

薬局内にかかりつけ薬剤師の育成ノウハウが蓄積されていない場合は、外部の研修を活用するのもおすすめです。きらりプライムでは、在宅現場経験豊富な講師による教育研修サービスも実施しています。管理者育成、薬剤師育成にお悩みの方は、ぜひご相談ください。

まとめ

医療費削減、大手ドラッグストアによるM&A、後継者不足など、薬局業界ではさまざまな課題が深刻化しています。特に、資金力・ブランド力の低い中小薬局は、大手薬局より不利な状況を強いられています。

調剤薬局の経営を改善するには、薬価コスト削減・人件費削減による利益確保や、在宅医療参入による売上確保のための施策を練ることが大切です。オンライン服薬指導やシステムの導入を検討し、薬剤師の働き方改革を進めて組織としての変革を促しましょう。

「KIRARI PRIME サービス」では、在宅訪問スタートから患者獲得まで、在宅薬局経営をトータルサポートしています。在宅業務の効率化、薬価コスト削減など、薬局経営でのお悩みがあればお気軽にご相談ください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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