薬局DXの第一歩 「オンライン服薬指導&電子処方箋」の導入ガイド

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オンライン服薬指導と電子処方箋は、薬局DXの代名詞です。在宅訪問の効率化に役立ち、調剤報酬でも評価が整備されています。薬局DXを進めるなら、まずはオンライン服薬指導と電子処方箋を活用しましょう。

今回の記事では、オンライン服薬指導と電子処方箋の概要や利用方法を述べた上で、在宅訪問におけるオンライン化の必要性を解説します。DX推進に悩む方はもちろん、在宅に取り組む薬局経営者の方も、ぜひご覧ください。

1. 薬局DXとは?

薬局DXとは、デジタル技術を活用し、薬局のビジネスモデルや企業文化に変革を起こすことを言います。業務効率化だけではなく、薬剤師の働き方改革や患者さんの満足度向上を実現し、健全で質の高い薬局経営をめざすための施策です。

「患者のための薬局ビジョン」では、対物業務から対人業務への移行を促すため、ICTを活用した服薬情報の一元的・継続的把握が求められました。かかりつけ薬局が適切なサービスを迅速に提供するには、従来のやり方を変えてオンライン化やデジタル化に対応していく必要があります。

DX推進は、2024年度調剤報酬改定のテーマのひとつでもあり、医科・歯科・調剤それぞれで医療DX推進体制整備加算が導入されました。診療報酬改定では、在宅医療DX情報活用加算や在宅医療情報連携加算なども整備されており、今後は調剤報酬でもDXに関連する評価が増えていくと予想できます。

2. オンライン服薬指導とは?

オンライン服薬指導とは、パソコン・タブレット・スマートフォンなどの情報通信機器を利用して、服薬指導を実施するサービスです。

当初、オンライン服薬指導は2020年9月より施行される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大に配慮し、時限的・特例的な対応として、2020年4月に「0410対応」が発出されました。0410対応では、本来映像通信が必要であるところを、音声のみでも可能とする特別な措置がなされました。

その後、2022年9月の薬機法改正により、0410対応と統合する形でオンライン服薬指導の大幅な規制緩和が行われ、より使いやすいサービスとなりました。2022年度診療報酬改定では、オンライン服薬指導の回数制限の撤廃および服薬管理指導料の点数の引き上げも行われています。

(出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の 時限的・特例的な取扱いについて」

2-1. 【2022年9月改定】オンライン服薬指導の実施要件

2022年9月の薬機法改正による、オンライン服薬指導の主な実施要件を解説します。

オンライン服薬指導の実施要件

実施方法 薬剤師の判断と責任に基づき、初回からオンライン服薬指導の実施が可能
通信方法 映像及び音声(音声のみは不可)
実施する薬局・薬剤師 かかりつけ薬局・薬剤師によって行われることが望ましい
診療対象 すべての処方箋で可能
薬剤の種類 原則すべての薬剤が可能(手技が必要な薬剤は薬剤師の判断が必要)
服薬指導計画 服薬指導計画と題する書面の作成は求めず、 服薬に関する必要最低限の情報等を明らかにする
実施場所 患者:プライバシーに配慮した場所(患者の同意があれば不問)
薬剤師:患者の求めがあるもしくは異議がない場合は、薬局以外の場所でも可能。ただし、対面時と同程度に患者のプライバシーに配慮し、調剤薬剤師と連絡が取り合える状況であること。
(出典:厚生労働省「オンライン服薬指導の実施要領について」

オンライン服薬指導は、必ずビデオ通話によって行われます。かかりつけ薬剤師の対応が理想ではありますが、かかりつけ薬剤師でなくても実施することが可能です。

また、薬機法改正により、薬剤師は薬局以外の場所からも実施可能となり、薬剤師のリモートワークが実質的に認められました。

2-2. オンライン服薬指導の流れ

医師による診察 対面またはオンラインによって、患者さんが医師の診察を受けます。
処方箋の受け取り 患者さんがオンライン服薬指導を希望すると、医療機関から薬局へ処方箋が送付されます。この際、FAXやメールなどで処方箋を受け取りますが、のちに医療機関より処方箋原本を入手し、送付された情報とともに保管する必要があります。
オンライン服薬指導の実施 パソコンやスマートフォンなどを用いて、薬剤師が患者さんにオンライン服薬指導を実施します。服薬指導の内容は対面のときと同じで、薬の効果や注意すべき点、保管方法などを伝えます。
会計 クレジットカード決済や代金引換などから、患者さんが任意の会計方法を選択します。クレジットカード決済を行うには、専用アプリなどの導入が必要です。
医薬品の配送 薬局が患者さんの自宅へ医薬品を配送します。配送が不可能な医薬品の場合は、店頭受け取りとなるケースもあります。
服薬期間中のフォローアップおよび医師への情報提供 必要に応じて、患者さんの服薬状況を確認し、医師に情報を提供します。

3. オンライン服薬指導で実現できること

オンライン服薬指導は、患者さんと薬局の双方にメリットがあります。ここでは、オンライン服薬指導の導入によって実現できることを見ていきましょう。

3-1. 薬局内における感染リスクの低減

オンライン服薬指導を利用すれば、患者さんと薬剤師の双方が感染リスクを避けられます。患者さんの付き添いや、代理で薬を受け取りに来る方にとっても安心です。特に、インフルエンザやノロウイルスといった感染症が流行する季節には、オンライン服薬指導のニーズがより高まります。オンライン服薬指導という選択肢を提示できると、患者さんにより一層安心して医療サービスを受けてもらうことができます。

3-2. 患者さんの待ち時間削減

患者さんは、オンライン診療とオンライン服薬指導を受けることで、自宅にいながら診察から医薬品の受け取りまでを完結できます。オンライン服薬指導は、患者さんが予約した時間帯に実施するので、待ち時間や薬局への移動の負担も解消できます。高齢者だけでなく、子育て世代や仕事で忙しい勤労世帯にも、非常に便利なサービスです。

3-3. 在宅業務の効率化・負担軽減

オンライン服薬指導は、在宅訪問との併用が可能です。在宅患者さんの状態が安定している場合などは、オンライン服薬指導に切り替えると、薬剤師の訪問回数を減らすことができます。また、離島や医療過疎地など薬剤師が不足する地域では、オンライン服薬指導を活用することで、より多くの患者さんに質の高い医療機会を提供できます。

3-4. リモート薬剤師の採用による人員配置の適正化

オンライン服薬指導は、条件を満たせば薬局外からでも実施できるので、薬剤師のリモートワークを推進します。出産や介護といったライフスタイルの変化による薬剤師の離職防止にも役立ちます。

医療過疎地や郊外の薬局では、リモート薬剤師を採用することで、人材不足の解消が期待できます。多様な働き方を用意しておくことは、人材獲得競争でも有利です。

4. 電子処方箋とは?

電子処方箋とは、処方箋をデジタルデータ化し、オンライン上で運用する仕組みのことです。2023年1月26日から、日本全国で運用がスタートしました。

電子処方箋は、オンライン資格確認等システムを基盤とし、国が運営する「電子処方箋管理サービス」を通して、医師と薬剤師間で処方箋情報のやり取りを行います。医師や薬局は電子処方箋管理サービスを利用し、複数の医療機関・薬局での処方情報を確認することが可能です。さらに、患者さんの同意があれば、直近から過去3年分の処方・調剤内容も閲覧できます。
(出典:厚生労働省「電子処方箋」

4-1. 電子処方箋の利用方法

受付/本人確認・同意 マイナンバーカードの場合:顔認証付きカードリーダーの画面上にて行います。患者さんはマイナンバーカードにて本人確認を行った後、過去の診療・お薬情報の提供について、「同意する」もしくは「同意しない」を選択します。 健康保険証の場合:患者さんが引換番号を提示します。
処方箋の受け取り 患者さんに、提出する処方箋を画面上で選択してもらいます。
処方情報や重複投薬チェック結果の参照 薬剤師が電子処方箋管理サービスから処方情報を閲覧し、今回の処方が安全であるかを確認します。
医薬品の受け渡し 処方箋内容に基づいて薬剤師が服薬指導を行い、医薬品を渡します。
調剤内容の登録 電子処方箋管理サービスに、今回の調剤内容の情報を登録します。
(出典:厚生労働省「利用申請開始! はじめよう、電子処方箋〜準備作業から利用方法を解説!~ 」

5. 電子処方箋で実現できること

日本では普及が遅れていますが、多くの先進国で電子処方箋の普及率は90%を超えています。電子処方箋の導入による効果を見ていきましょう。

5-1. 処方・調剤情報の一元管理

電子処方箋では、直近から過去3年分の処方箋情報をリアルタイムで閲覧できるので、重複投薬や薬の飲み合わせを瞬時に確認できます。患者さんの正確な投薬状況を把握し、より適切な服薬指導を行うとともに、無駄のない処方を実現します。

また、患者さんが遠方で受診する必要が生じた際にも、スピーディーに服薬情報を入手でき、救急や災害などで大いに活用できます。

5-2. 業務効率化・コストカット

電子処方箋の活用により、システムへの入力作業やファイリングの手間がなくなり、事務業務の効率化が期待できます。電子処方箋と合わせてタブレット端末を導入すると、完全なペーパーレス化の実現も可能で、印刷にかかるコストや時間も大きくカットできます。また、処方箋の入力ミスや紛失のリスクを軽減し、医療安全の向上につながります。

5-3. 医療機関との連携強化

電子処方箋では、医師や薬剤師がコメントを登録できます。これにより、医師からの処方意図等をコメント欄で確認すれば、不要な疑義照会を回避することが可能です。

たとえば、重複投薬が確認できた場合でも、医師から「重複投薬を確認済みだが、〇〇の症状のために必要」とコメントがあれば、疑義照会を通さずスムーズに調剤が行えます。同様に、薬剤師から医師へのコメントも入力できるため、医療機関との連携強化やコミュニケーションの円滑化に役立ちます。

5-4. オンライン服薬指導の利便性向上

電子処方箋はオンライン服薬指導との親和性が高く、2つのサービスを連携させることで利便性が向上します。また、電子処方箋を利用すれば、リモートワークの薬剤師ともスムーズかつ安全な情報共有が行えるため、薬剤師の多様な働き方を支援するツールとしても有用です。

6. 在宅訪問におけるオンライン化の必要性

在宅薬局では、薬剤師の業務負担増、非効率な業務プロセス、そして多職種連携と、さまざまな課題があります。薬局DXは、これらすべてを改善するための有効な手段です。

先に述べた通り、在宅訪問はオンライン服薬指導と併用することが可能で、薬剤師の負担軽減に役立ちます。また、在宅患者さんの急変時には、緊急でオンライン服薬指導を実施することもできます。人材不足や距離的な問題で訪問が難しい場合でも、オンライン服薬指導を実施できれば、患者さんに安心してもらえるでしょう。

電子処方箋があれば、訪問先に処方箋を持参する手間や紛失のリスクもなくなります。薬局でオンライン化を進めることは、安全で正確な医療を提供することにつながるのです。

きらりプライムサービスでは、在宅薬局のDXの相談も受け付けています。オンライン服薬指導・電子処方箋導入と合わせて、在宅支援システム「ファムケア」をご利用いただくことで、さらなる業務効率化が図れるでしょう。薬局経営やオンライン化にお困りの方は、ぜひきらりプライムサービスにご相談ください。

まとめ

薬局DXによって、薬剤師の負担軽減や業務効率化、医療機関との連携強化などを実現できます。調剤報酬の評価対象にもなっているオンライン服薬指導と電子処方箋は、薬局DXの第一歩としてぜひ取り入れたいサービスです。

オンライン服薬指導や電子処方箋は、在宅訪問でも役立ちます。オンライン服薬指導と電子処方箋は親和性が高いため、ぜひ両方を導入して業務プロセスの改善とサービスの質向上を図りましょう。

在宅薬局経営を支援するきらりプライムサービスでは、在宅訪問や薬局DXにまつわるさまざまなお悩みをサポートしています。オンライン服薬指導や電子処方箋の導入・運用についてお困りの薬局経営者の方は、ぜひきらりプライムサービスにご相談ください。

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