顧客拡大と業務効率化は必須! 調剤薬局経営の4大課題と解決の方向性

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顧客拡大と業務効率化は必須! 調剤薬局経営の4大課題と解決の方向性

今、調剤薬局は、生き残りをかけた厳しい局面に立たされています。2022年の調剤報酬の引き下げによって、利益を減らした薬局が多く、薬剤師不足を解消できていないという声もよく聞かれます。

2024年は、2月までで調剤薬局・ドラッグストア業界のM&Aの発表が3件あり、過去2年を上回るペースとなっています。従来の門前薬局のスタイルで、安定した経営を続けるのは難しくなりそうです。

今後は、自らが置かれている状況を客観的に把握し、地域密着型経営の観点から薬局経営の活路を見出す必要があります。この記事では、調剤薬局が抱えている4大課題について解説したうえで、課題解決のために取り組むべきことをお伝えします。

1. 調剤薬局の4大課題

以前に比べて、調剤薬局の経営は厳しさを増しています。規模を問わず、ほとんどの調剤薬局が何らかの課題を抱えているのが現状です。

ここでは、調剤薬局がぶつかる4つの大きな課題を紹介します。

1-1. ①薬局の増加・市場の成熟による集客競争の激化

医薬分業の推進を受けて、ここ10年ほどで調剤薬局の数は急激に増加しました。2021年度末における全国の薬局数は6万1791施設にものぼり、既に飽和状態です。

そんななかで、ドラッグストアをはじめ、コンビニエンスストアや家電量販店などの大手チェーンが調剤薬局を併設する動きも広まっています。資金やネームバリューに乏しい個人経営の薬局ほど、患者さんの確保が難しい状況です。

市場の成熟に伴い、薬局業界ではM&Aによる業界再編もピークを迎えています。大手調剤薬局チェーンがエリア拡大のために中小規模の薬局を買収しており、この動きは引き続き継続する見通しです。

調剤薬局の大多数が総合病院や大学病院の近隣にある門前薬局ですが、国は門前薬局に対する評価を厳しく見直しています。今後は、立地に依存しない薬局独自の経営スタイルを確立することが重要です。

1-2. ②調剤報酬額改定による利幅の悪化

2022(令和4)年度の調剤報酬改定では、対物業務と対人業務が切り分けられ、対物業務は実質的な引き下げとなっています。

たとえば、地域支援体制加算は細分化され、実績のある薬局ほど加算できるようになりました。服薬フォローアップに対する評価として、服薬管理指導料も新設されています。薬剤師としての専門性や対人スキルの重要性が増しており、患者さん一人ひとりに対する丁寧なサポートが求められています。

ここ数年は国民の調剤医療費が増加しているため、患者負担額を減らすためにも、今後ますます調剤報酬が厳しくなると考えられます。調剤業務の自動化が普及すれば、一包化や混合の加算がなくなる可能性もあるでしょう。

現在の経営で十分に加算が取れていない場合は、薬局の体制そのものを見直し、ニーズに応じた経営へと変えていく必要があります。

1-3. ③慢性的な薬剤師不足

薬局にも24時間体制が求められる中で、どのように常勤薬剤師を確保するのかは大きな課題です。特に、医療過疎地や郊外の薬局では、深刻な薬剤師不足が続いています。薬剤師不足の理由としては、薬局の立地が悪いこと、女性の薬剤師が結婚や育児などによって休職せざるを得ないことなどが挙げられます。昼間は人手が足りているものの、夕方以降の時間帯で薬剤師が不足している薬局も少なくありません。

また、新卒薬剤師は資金力と知名度のある大手チェーンへの就職を希望するケースが多いため、中小規模の薬局は人材確保でも不利な状況です。中小薬局は良好な職場環境や待遇を整備し、薬剤師が働きたいと思えるような勤務条件をアピールする必要があります。

薬剤師でなくてもできる調剤補助業務やピッキングについては、調剤事務員を雇用するという手もあります。限られた人員で、効率的に業務を進める方法を検討することも重要です。

1-4. ④処方箋依存度の高い経営

これまでの薬局は、「受け取った処方箋に基づいて調剤し、お薬をお渡しする」という受け身のスタイルでした。しかし、調剤薬局が溢れている今、薬局が生き残るためには「患者さんから選ばれる薬局」となる必要があります。ただ処方箋を待つのではなく、薬局側から能動的に働きかけ、地域住民との関係性を深めていくことが大切です。

在宅訪問やオンライン体制などを導入して薬局のサービスの幅を広げると、患者さんの利便性が増すとともに、新たな加算が算定できます。加算算定も大切ですが、最も重要なのは、「患者さんにとってどのようなサービスが必要なのか」を見極めることです。ただ、新たなサービスを導入するだけでは、他の薬局と同じと見なされてしまいます。サービスの質を高めつつ薬局独自の強みを見出し、地域住民からの支持を得られる薬局をめざしましょう。

2. 調剤薬局の課題解決のために取り組むべきこと

調剤薬局の経営を安定させるためには、需要の高いサービスを提供して、顧客拡大を図る必要があります。同時に、薬局の体制を見直し、生産性向上をめざして業務プロセス最適化に取り組むことも大切です。

ここからは、調剤薬局経営の課題解決に向けて、今の薬局に求められていることを解説します。

2-1. 在宅医療に参入し、かかりつけ薬局へ転換する

薬局の顧客拡大のための施策として、第一に取り組みたいのが在宅医療への参入です。今後は高齢者の増加に伴い、在宅医療のニーズが高まると予想されています。在宅医療へ間口を広げ、新たな顧客層を開拓しましょう。

在宅訪問に対応していれば、外来の患者さんが在宅医療に変更された際も、継続して指導に当たれます。患者さん一人ひとりを末永くサポートできることは、薬剤師のやりがいにもつながるでしょう。

在宅訪問体制を整えた薬局は、かかりつけ薬局への転換も急ぎましょう。厚生労働省は「患者のための薬局ビジョン」において、2025年までにすべての薬局をかかりつけ薬局にするという目標を示しました。裏返せば、かかりつけ機能を持たない薬局は、市場から撤退しても構わないという国の意図も汲み取れます。薬局が生き残るためにも、まずはかかりつけ薬局となることをめざしましょう。

2-2. 認定薬局・健康サポート薬局をめざす

薬局が地域から必要とされるためには、地域密着型経営を徹底し、地域住民や医療機関にとって有益なサービスを提供する必要があります。地域住民が薬局を選ぶ際のひとつの指標となるのが、認定薬局制度・健康サポート薬局です。



健康サポート薬局

かかりつけ機能に加えて、健康に関するさまざまな相談ができる健康サポート機能を備えた薬局



認定薬局



地域連携薬局

患者さんの入退院時や在宅医療の対応時に、地域の医療機関や他の薬局と連携し、適切な情報提供を行い患者さんの療養をサポートする薬局



専門医療機関連携薬局

がん等の専門医療機関と連携を取り、高度な薬学管理や特殊調剤に対応できる薬局

健康サポート薬局は、プライベートな相談窓口を設置したり、健康イベントを実施したりして、地域住民の健康を積極的にサポートします。地域住民が気軽に利用できる健康ステーションとしての役割を担えば、薬局のファンも獲得できるでしょう。

地域連携薬局は、かかりつけ機能に対応する認定制度です。かかりつけ薬局となった薬局は、ぜひ地域連携薬局の取得をめざしてください。

専門医療機関連携薬局は、高度薬学管理機能に対応する認定制度です。専門医療機関連携薬局は、全国的にもまだ認定数が少ないものの、今後複雑な症状を抱える在宅患者さんが増える中で、需要の高まりが予想されています。患者さんや地域住民のニーズを汲み取り、必要に応じて取得をめざしましょう。

2-3. 地域密着型経営を推進する

地域の実情や、患者さん一人ひとりに合わせた薬局経営を進めましょう。先ほど述べた健康サポート薬局も、患者さん個人との関係性を重視し、地域密着型経営を進めるために有効な施策のひとつです。

高齢者が多い地域では、店舗販売で介護用品を充実させたり、フレイル予防イベントを実施したりすると喜ばれます。子育て世帯が多い地域では、小児の病気に関する啓発活動や、主婦を中心とした女性への健康支援を強化すると、多くの地域住民に利用してもらえるでしょう。

服薬指導においても、紋切り型ではなく、患者さんの症状や生活習慣に基づいて相手に寄り添ったアドバイスをすることが大切です。ときには趣味やプライベートな話も伺うと、患者さんに親しみを持ってもらえます。患者さん一人ひとりと信頼関係を深め、地域に根差す薬局をめざしましょう。

2-4. 薬局DXを推進して働きやすい環境を整備する

薬局DXは、在宅訪問体制を整備し、薬剤師の働き方改革を実現するための有効な手段です。自動化やICT化により薬剤師の負担が軽減すれば、創出できた時間や労力を対人業務に充てることができます。

薬局DXの例

  • 調剤ロボットを導入して調剤業務を自動化する
  • オンライン服薬指導を実施して在宅医療の効率化を図る
  • 電子処方箋によって書類管理を効率化する
  • 電子薬歴で薬歴作成の負担を軽減する
  • クラウド管理システムによって連携体制を強化する
  • 在庫管理・発注業務をAIのサポートを受けて効率化する

たとえばオンライン服薬指導では、条件を満たせば薬剤師が薬局以外の場所から指導を行うことが認められています。これを利用すれば、育児などで休業中の薬剤師に在宅勤務で復帰してもらったり、リモート薬剤師を採用して人材不足の解消を図ったりすることが可能です。患者さんの体調が安定していれば、在宅訪問との併用が可能なため、薬剤師の業務負担軽減にも大きく貢献するでしょう。

薬局DXが進めば、最低限必要な人員で店舗を運営でき、薬剤師の残業も解消できます。特に、業務工数の多い在宅訪問業務では、AIやシステムの導入が不可欠となるでしょう。調剤ロボットは高額なものもありますが、オンライン服薬指導やクラウドシステムであれば、比較的低コストで導入が可能です。人材不足に悩む中小規模の薬局こそ、積極的に薬局DXを進めましょう。

2-5. 多職種連携・薬薬連携を強化する

地域包括ケアシステムでは、地域住民の健康と質の高い生活を包括的にサポートするために、多職種連携が重要視されています。医師や看護師、ケアマネジャー、介護スタッフといった専門職と積極的に関わりを持ち、チーム医療の一員として薬局・薬剤師の存在価値を高めましょう。

患者さんの入退院においては、病院薬剤師と薬局薬剤師が情報を共有し、シームレスな薬物療法の提供体制を構築することが求められています(薬薬連携)。ただ一方的に情報を提供するだけでなく、病院薬剤師と薬局薬剤師がお互いに負担や改善点をフィードバックし、理想的な連携体制を構築することが大切です。

多職種連携・薬薬連携は、調剤報酬改定でも、地域支援体制加算の要件や服薬情報等提供料として評価されています。疑義照会やトレーシングレポートの提出などを通して、日頃から医療機関や多職種と交流を持ち、発信力の高い薬局として活動しましょう。

まとめ

調剤薬局は飽和状態にあり、集客競争が激化しています。調剤報酬改定も年々厳しくなっており、対人業務への移行をスムーズに進めなければ、安定的な経営を続けることは困難になりつつあります。

これからの薬局には、在宅医療に参入し、地域に密着したきめ細かなサポートを提供することが求められています。在宅体制の整備や薬剤師不足の解消には、オンライン化やデジタル化による薬局DXが有効な手段となるでしょう。健康サポート薬局や薬局認定制度の取得も検討しながら、能動的に地域医療へ参加していくことが大切です。

KIRARI PRIME サービスでは、薬局の在宅関連サービスを総合的にサポートしています。在宅訪問業務の効率化や在宅患者獲得、薬価コスト削減など、在宅サービスに関する課題や悩みを抱えている方は、ぜひKIRARI PRIMEサービスにお問い合わせください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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