デジタル化推進、採用難、業務負荷軽減… 薬局の経営課題を解決する「在宅薬局」に注目

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オンライン服薬指導やチーム医療への参加等、薬局に求められるサービスは複雑化しています。かかりつけ薬局は薬局の標準機能という共通認識も生まれており、以前に比べて経営が厳しくなったと感じる薬局経営者も多いでしょう。薬局の経営課題を解消しつつ、サービス多様化に対応していくには、どのような方策を立てればよいのでしょうか。
本記事では、昨今の薬局における経営課題を踏まえた上で、課題解決につながる「在宅薬局」について解説します。経営の方向性にお悩みの薬局経営者の方は、ぜひお役立てください。
目次
1-1. 薬剤師不足
1-2. 薬剤師の業務負荷の増大
1-3. 多職種連携・薬薬連携の構築・強化
2. 薬局の課題解決に「在宅薬局」がオススメな理由
2-1. オンライン服薬指導の導入で業務効率化・人材不足解消が進む
2-2. IT・ICTやデジタル化の導入により薬局DXを推進できる
2-3. 地域医療に貢献でき、在宅関連加算を算定できる
3. 在宅薬局の運営のポイント
3-1. 在宅医療に取り組む医療機関や施設と連携する
3-2. 薬剤師・スタッフのマインドセットを行う
3-3. クリーンルーム等の設備を整える
4. 在宅薬局の運営のポイント
まとめ
1. サービス多様化による薬局の経営課題
厚生労働省による「患者のための薬局ビジョン」では、薬局が備えるべき機能として、かかりつけ機能・健康サポート機能・高度薬学管理機能の3つが示されました。患者本位の医薬分業に向けて、かかりつけ薬局・薬剤師の機能強化が求められています。それに伴い、オンライン服薬指導や服薬フォローアップ、在宅ターミナルケア等、薬局が担うべき役割も広がっています。
薬局のサービス多様化はビジネスチャンスの拡大が期待できる一方で、新たな制度への対応に躊躇する薬局も少なくありません。ここでは、サービス多様化において、薬局が直面する経営課題を取り上げます。
1-1. 薬剤師不足
薬局が在宅医療や24時間体制に対応できない大きな要因として、薬剤師不足があります。全国的に薬剤師の数は増えているものの、未だ地方や郊外の薬局では薬剤師不足が深刻です。都市部においても、資金やネームバリューが乏しい中小薬局ほど、薬剤師の確保が難しい傾向にあります。
薬剤師不足の原因としては、薬局数の増加や潜在薬剤師の存在が考えられます。潜在薬剤師とは、薬剤師免許を取得していながらも、薬剤師として働いていない層のことです。薬剤師は女性の割合が約6割と多く、出産や育児などライフステージの変化によって退職し、そのまま潜在薬剤師となる例が多いと考えられます。
多くの薬局では、薬剤師不足の解消とともに、限られた人材でいかに良質なサービスを提供するかが課題となっています。ライフステージが変化しても働きやすい環境を整えて、薬剤師の離職を防ぐ方法も検討しましょう。
1-2. 薬剤師の業務負荷の増大
かかりつけ薬局となるためには在宅対応・24時間対応が必須です。多忙な外来対応に加えて、さらに在宅訪問を行うことは、薬剤師の業務負荷の増大につながります。また、24時間対応は「家族との時間が取れない」「夜間も忙しい」といったマイナスイメージが先行し、既存薬剤師からの理解が得られないケースも多いでしょう。
在宅訪問では、患者さんやご家族に対するきめ細かなサポートが求められます。ターミナルケアや小児在宅医療等、繊細なフォローが必要となるケースもあります。在宅医療では、薬剤師が安心して在宅業務に取り組めるように研修や教育を充実させるとともに、薬剤師の業務負荷を軽減するための施策を練ることが大切です。
1-3. 多職種連携・薬薬連携の構築・強化
在宅医療では、医師や看護師等と連携し、薬剤師も在宅チーム医療の一員として活躍します。また、患者さんの入退院や在宅医療への移行をスムーズにするために、病院薬剤師と薬局薬剤師の連携(薬薬連携)にも注目が集まっています。
多職種連携・薬薬連携には多くの課題があり、「連絡するタイミングがわからない」「こまめに連絡する時間がない」など、薬剤師もさまざまな悩みを抱えています。薬剤師が多職種連携・薬薬連携に取り組みやすいよう、トレーシングレポートの書き方を共有したり、情報連携で用いるツールを導入したりと、体制を整備することが大切です。
2. 薬局の課題解決に「在宅薬局」がオススメな理由
薬局が抱えるさまざまな課題は、在宅薬局導入に伴うデジタル化・IT化を進めることで、解決できる可能性があります。今後、高齢社会が進み、在宅患者さんは増えると予想されています。将来的なニーズを考慮しても、在宅医療への参入は積極的に踏み切るべきです。
ここでは、薬局の課題解決に在宅薬局化をおすすめする4つの理由について解説します。
2-1. オンライン服薬指導の導入で業務効率化・人材不足解消が進む
薬局が在宅医療を推進する上で、欠かせないのがオンライン服薬指導です。オンライン服薬指導は在宅訪問と併用できるので、上手に活用すれば薬剤師の業務負担の軽減が図れます。
2022年9月の改正薬機法では、薬局外からもオンライン服薬指導を実施できるようになりました。薬剤師の在宅勤務が可能となり、リモート薬剤師という働き方に多くの人が関心を寄せています。人材不足に悩む薬局は、オンライン服薬指導を活用したリモート薬剤師の採用により、在宅薬局の効率化と人材不足解消を並行して進めることができるでしょう。
オンライン服薬指導を活用したリモートワーク体制を整備すれば、育児や介護等の事情で退職を選ぶ薬剤師も少なくなると考えられます。もちろん、潜在薬剤師の復帰・採用にも有用です。新卒採用ではなく「自宅で働きたい」という層へアピールすることで、大手との人材獲得競争で対面勝負を避けつつ、優秀な人材を確保できる可能性があります。
2-2. IT・ICTやデジタル化の導入により薬局DXを推進できる
在宅薬局で業務効率化を図るにあたって、必然的にICTツールやデジタル化の導入を検討する機会が増えるため、薬局DXの推進にもつながります。在宅訪問では、時間や場所を問わず報告書や薬歴の入力・送信ができるシステムが非常に便利です。多職種連携やオンコール体制の構築に向けて、リアルタイムで情報共有ができるICTツールを導入する在宅薬局も増えています。
在宅薬局のDXで実現できること
- クラウド型報告書・薬歴管理ツールでいつでもどこでも作成・送信ができる
- 重複投薬や併用禁忌チェックの自動化で業務負荷を軽減できる
- ICT活用によって多職種連携を強化できる
- 電子版お薬手帳の導入で処方薬を正確に確認できる
- 対物業務の自動化によって対人業務に専念できる
- 電子処方箋や電子薬歴により書類の管理業務を削減できる
- 調剤ロボット導入でヒューマンエラーを防止できる
- 在庫管理・発注を自動化できる
調剤業務や事務業務の一部にシステムやロボットを導入すると、薬剤師の業務負担が軽減するので、限られた人材で効率よく在宅薬局を運営できます。在宅医療では業務工程が多いので、積極的に自動化・半自動化を検討し、薬局DXを進めましょう。
2-3. 地域医療に貢献でき、在宅関連加算を算定できる
調剤報酬改定では、地域医療への貢献や在宅業務に対する評価が強化されています。2024年調剤報酬改定でも、在宅移行初期管理料や在宅ターミナル期の加算が新設されるなど、在宅関連の評価が高くなる予定です。
在宅医療に参入すれば、単純に在宅関連加算を算定できるチャンスが増えるので、利益も上がると期待できます。現に、対物業務から対人業務への移行が進められる中で、薬剤師に負担がかかる業務、高い専門性が求められる業務については、点数が引き上げられています。
ただ、薬局の在宅医療参入には、利益以上の意義があることもしっかり理解しておきましょう。地域住民が必要とするサービスを追求し、在宅医療で求められている薬局の役割に向き合うことが大切です。
3. 在宅薬局の運営のポイント
多くの中小薬局は、薬剤師不足等の問題から、在宅医療への参入に難しさを感じているでしょう。ただ、在宅対応に適した体制を整えれば、薬剤師の業務負担軽減と対人業務の質向上を両立することも難しくはありません。
ここからは、薬局が在宅訪問・在宅対応に取り組む上でのポイントを解説します。
3-1. 在宅医療に取り組む医療機関や施設と連携する
在宅薬局として活躍するには、在宅医師やケアマネジャー等と信頼関係を構築することが大切です。特に、在宅患者さんのほとんどが医師からの紹介であるため、在宅医療に取り組む医師とのつながりを持っておきましょう。
地域の医療機関や施設と関係性を築くためには、薬局側から周知を行う必要があります。パンフレットやリーフレットを作成し、営業活動を行いましょう。地域の在宅薬局と差別化するには、競合調査も必要です。
地域ケア会議などに出席し、多職種が集まる場所に積極的に顔を出すことも大切です。多職種と良好な関係を築けるよう、薬剤師のコミュニケーション能力や伝達力の向上にも取り組みましょう。
3-2. 薬剤師・スタッフのマインドセットを行う
かかりつけ薬局や在宅薬局へ移行する際には、「なぜ在宅医療へ参入するのか」を薬局スタッフに十分理解してもらうことが大切です。在宅訪問の現場では、薬剤師本人の裁量による部分が大きいため、薬剤師の協力がなければ質のよいサービスを提供することはできません。薬剤師の主体的な行動を促すためにも、在宅薬剤師の意義や役割について、しっかり伝えてください。
薬局が一体感を持って在宅薬局に取り組むためには、事務スタッフからの協力も必要です。事務スタッフの対応や声かけ次第で、かかりつけ薬剤師に対するイメージも変化するでしょう。また、在宅医療に参入するということは、薬剤師だけでなく、事務スタッフの業務負担の増加にもつながります。事務スタッフの負担を考慮しつつ、在宅薬局がめざすべき姿をしっかり伝え、マインドセットを醸成しましょう。
3-3. クリーンルーム等の設備を整える
在宅医療における中心静脈栄養法輸液や麻薬の調製では、クリーンルーム等を利用した無菌調剤が必要です。特に抗がん剤の調製は被爆する恐れもあるなど、薬剤師にとって心身の負担が大きい業務です。
ただ、今後は在宅でターミナルケアを必要とする患者さんが増え、無菌調剤の需要も高まると予想できます。適切な設備と研修を用意し、薬剤師が安心して無菌調剤に取り組める環境を整えましょう。クリーンルームは共同利用も認められているので、自薬局に設置できない場合は近隣の薬局に協力を仰ぐとよいでしょう。
4. 薬局の在宅参入・在宅業務効率化を支援する「きらりプライムサービス」
KIRARI PRIMEサービスは、薬局の在宅医療推進を支援するサービスです。すべての店舗で外来+在宅のハイブリッド経営を行うきらり薬局のノウハウを活かし、在宅薬局経営の課題解決をサポートします。
きらりプライムサービスができること
在宅参入のサポート |
在宅を始めたい薬局に在宅ノウハウをお伝えします。在宅にまつわるお悩みや不安は、何でもご相談ください。 |
オンコール体制構築支援 |
人材シェアリングでは、きらり薬局スタッフによるオンコール対応代行を行っています。自社採用に頼らず、低コストでの24時間体制の構築をサポートします。 |
在宅患者獲得支援 |
地域の医療機関や施設への営業活動を代行します。目標達成の実現へ向けて、薬局の特徴や地域特性に合わせた効果的な営業戦略を設計します。営業ノウハウの蓄積にもお役立てください。 |
人材研修・マインドセット |
薬剤師・スタッフ・管理者育成の研修を実施。在宅実績豊富なきらり薬局の薬剤師を講師として派遣し、早期スキルアップをサポートします。マインドセット、在宅現場研修、緩和ケア等、ご要望に応じた研修を設計します。 |
医薬品購入交渉代行 |
きらりプライムサービスが医薬品卸への価格交渉を代行し、医薬品購入コストの削減を図ります。医薬品卸との関係性や発注方法は変えずに、値引き交渉を実現します。加盟店ネットワークを活かしたデッドストックのマッチングサービスも行っています。 |
きらりプライムサービスでは、在宅参入から在宅業務の効率化、患者獲得まで、在宅薬局経営にまつわるさまざまなご相談に応じています。薬局のビジョンや地域特性に合わせたサポートをご提案するので、何でもご相談ください。
まとめ
薬局が経営課題を解決してサービス多様化に応じるには、在宅医療参入と、それに伴うデジタル化の推進がポイントとなります。オンライン服薬指導を活用すれば、在宅業務の効率化やリモート薬剤師の採用が叶います。ICTを導入した多職種連携の強化や、調剤ロボットによる対物業務の自動化にも踏み切りましょう。
きらりプライムサービスでは、長年にわたる在宅訪問の経験・ノウハウを活かし、在宅薬局経営の課題解決をサポートしています。在宅導入や在宅薬剤師の育成、在宅業務の効率化等、在宅にまつわるお困りごとは何でもご相談ください。
===================監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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