在宅医療を推進する薬局が増加中! 在宅訪問サービスをスムーズに始める6つのステップ

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地域医療への貢献の一環として求められている、薬局の在宅訪問。調剤報酬改定や新制度の創設により、薬局の在宅訪問推進の動きは今後もますます高まると予想されています。しかし、在宅医療に乗り出したいものの、なかなか一歩が踏み出せない薬局も多いのではないでしょうか。
今回は、薬局が在宅訪問サービスを始めるために必要な6つのステップを詳しく解説します。薬局経営にお悩みの方、在宅訪問に不安を感じる方は、ぜひご覧ください。
目次
2-2. 薬剤師の教育・指導を行う
2-3. 薬局内の書類を整備する
2-4. 業務フローを設計する
2-5. 管理体制を整える
2-6. 在宅訪問サービスの宣伝・広報を行う
3.まとめ
1.在宅医療における薬局・薬剤師の役割とは
薬局が在宅医療に関わるにあたって、主に下記4つの役割が期待されています。
・医薬品・医療機器・衛生材料の安定した提供・管理 ・薬物療法の提供と多職種連携 ・24時間体制の急変時対応 ・ターミナルケア(緩和ケア・終末期医療)への参加 |
医師が在宅診療を行っても、処方した薬剤がどう飲まれているのかを確認することはできません。そこで重要となるのが、薬剤師の存在です。
薬剤師が定期的に患者さんを訪問すれば、適切な服薬指導や、スピーディーな衛生材料の提供が可能になります。医療機関やケアマネジャーらと情報共有を行えば、異変が起きても迅速に対応することができます。薬剤師の関与は、在宅医療・地域包括ケアの質向上に欠かせないものといえそうです。
(出典:厚生労働省「在宅医療の基盤整備について(その2) 」)
2.薬局の在宅訪問サービスの進め方
薬局が在宅訪問サービス(以下、「在宅訪問」という)を始めるには、本稼働した後に不備がないよう、しっかり準備をして在宅医療の体制を整えることが大切です。ここでは、薬局の在宅訪問サービスを始めるための6つのステップを解説します。
2-1. 届出や申請書を提出する
まずは、薬局が在宅訪問を行う際に必要な手続きを済ませましょう。介護保険と医療保険に関する4種類の届出・申請を行います。
・在宅患者訪問薬剤管理指導に係る届出書
薬局で在宅訪問を始めることを申請する書類です。医療保険における在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定・請求に必要となります。薬局の名称・所在地・訪問薬剤管理指導を行う旨などを、地方厚生(支)局へ届け出ます。
・介護給付費の請求及び受領に関する届
居宅療養管理指導費(介護保険)の請求・受け取りに必要な書類です。事業所番号や請求者、受領口座などを都道府県国保連合会に届け出ます。
・居宅療養管理指導・介護予防居宅療養管理指導事業所の指定に係る記載事項
在宅訪問を行う事業所として認定を受けるために必要な書類です。通常、保険薬局は居宅療養管理指導事業所としてみなし指定されるため、必ずしも提出する必要はありません。ただし、事業停止や指定不要の届出をしている場合は、あらためて各都道府県(市町村)の介護保険の担当部署に指定申請をする必要があります。
・生活保護法等指定介護機関及び中国残留邦人等支援法指定介護機関の指定申請書
生活保護の方、中国残留邦人に対して在宅訪問を行う際に必要な書類です。介護保険法による指定が平成26年7月1日以降であればみなし指定されているため、提出の必要はありません。
上記のほか、在宅訪問では薬剤師が麻薬を扱うこともあるので、麻薬小売業者免許申請を保健所に提出しておきましょう。
2-2. 薬剤師の教育・指導を行う
薬剤師が患者さんの自宅や施設へ訪問して医薬品を届け、服薬指導や管理を行うことを、医療保険で「在宅患者訪問薬剤管理指導」、介護保険では「(介護予防)居宅療養管理指導」といいます。ここではまとめて「在宅患者訪問薬剤管理指導」と表記しますが、指導内容自体は同じです。
在宅薬剤師として働くにあたって、薬剤師に特別な資格は必要ありません。しかし、在宅訪問ではきめ細かなサポートが求められるため、在宅患者訪問薬剤管理指導を適切に行える薬剤師を育てる必要があります。
以下は、薬剤師の在宅患者訪問薬剤管理指導の主な仕事内容です。
・患者宅への医薬品・衛生用品の供給
・患者さんの状況及び処方箋に基づいた調剤
・服薬指導、サポート
・服用状況と副作用のモニタリング
・多職種や薬局内スタッフとの情報共有
薬剤師には、患者さんのささいな体調の変化を敏感に察知し、総合的に判断することが求められます。安全な在宅医療を提供するための責任感や、ケアマネジャーや医師と情報共有するためのコミュニケーションスキルも欠かせません。
採用では、在宅医療や緩和ケアに興味のある薬剤師を雇うとよいでしょう。薬剤師のスキルアップのため、定期的に在宅訪問に関する勉強会を開いたり、セミナーへの参加を支援したりといったサポートも必要です。
2-3. 薬局内の書類を整備する
在宅訪問が認められた薬局には、書類作成や掲示が義務づけられています。在宅訪問をスムーズに始められるように、必要な書類はすべて用意しておきましょう。
・薬局内掲示物
運営規程の概要(介護保険) | 居宅療養管理指導事業者は、事業者ごとに運営規程を定めます。その概要を薬局の見やすい場所に掲示します。 |
介護保険サービス事業者としての掲示(介護保険) | 提供するサービス内容、従業員の勤務体制、利用料金、苦情処理体制など、運営規程の概要を薬局内の見やすい場所に掲示します。 |
在宅患者訪問薬剤管理指導の届出を行っている旨の掲示(医療保険) | 在宅訪問でどのようなサービスを行っているかを、薬局内の見やすい場所に掲示します。 |
無菌製剤処理加算に関する掲示(医療保険) | 厚生局へ届出を行っている場合のみ、薬局内の見やすい場所に掲示します。 |
・利用者にお渡しする書類
訪問薬剤管理指導に係る説明書(医療保険) | 医療保険にて訪問指導を行う場合、トラブル対策のためにも書面で同意をもらっておくことが望ましいです。 |
居宅療養管理指導サービス提供に係わる重要事項説明書/居宅療養管理指導契約書契約書(介護保険) | 介護保険にて在宅訪問を実施する場合、事前に利用者との契約が必要です。2通ずつ作成し、1通は薬局控えで5年間保管します。 |
・薬剤師が作成する書類
薬学的管理指導計画書 | 事前に指導内容や訪問回数などを示した計画書を策定します。最低月1回以上の見直しが必要です。 |
処方医・担当ケアマネジャーへの報告書 | 薬剤師が行った指導内容を記録し、処方医と居宅療養管理指導を実施した場合は担当ケアマネジャーに提出します。 |
・その他
居宅療養管理指導サービス後の領収書 | 医療保険とは分けて、介護保険サービス利用領収書を作成します。 |
2-4. 業務フローを設計する
実際に在宅訪問を行う際の業務フローを設計し、安全に服薬指導を行えるようにします。以下に、薬剤師による在宅訪問の流れを紹介します。
① 在宅訪問の依頼を受ける
患者さんから直接申し出を受けた場合、医療保険利用の場合は担当医に相談し訪問指示を仰ぎます。介護保険サービス利用の場合はケアマネジャーに患者が在宅訪問利用の意向を伝え、その後医師に訪問指示を仰ぎます。
② 必要書類の受け取り・ケアプランの作成
医師から訪問指示を受けたら、その旨が記載された処方箋、患者情報などを受け取ります。在宅訪問薬剤管理指導(居宅療養管理指導)指示依頼書ももらっておくとよいでしょう。居宅療養管理指導を行う場合は、それらの情報をもとに、ケアマネジャーがケアプランを作成します。
③ 各種同意書・契約書の交付・締結
患者(利用者)さんに、在宅訪問の契約内容や料金を説明します。各種同意書や契約書にて、患者さんと薬局とで書面を取り交わします。
④患者用ファイル・データを作成する
訪問薬剤管理指導記録Ⅰ(薬剤服用歴管理記録簿)、訪問薬剤管理指導記録Ⅱ(指導記録)、薬学的管理指導計画表などをまとめ、薬局内で保管する患者さんのデータを作成します。
⑤在宅訪問のサポート開始
訪問計画に沿って、在宅訪問をスタートします。訪問後は、薬学的管理指導記録と、訪問薬剤管理指導報告書(医療保険)もしくは(介護予防)居宅療養管理指導報告書(介護保険)を作成します。
2-5. 管理体制を整える
薬局で在宅訪問を開始する場合、従来の管理体制のままでは薬剤師に負担がかかり、業務効率が悪化する可能性もあります。在宅訪問に適した管理体制を導入し、質のよい在宅医療を提供できるようにしましょう。
たとえば、薬剤師以外のスタッフを雇い業務移譲することで、薬剤師が在宅訪問に専念できます。調剤ロボットなどの導入を検討するのもおすすめです。
また、医師やケアマネジャーらとこまめに情報共有し、在宅医療チームとしての信頼関係を築くことは、患者さんの安全確保にもつながります。薬局からも積極的に情報発信を行い、多職種へ薬局・薬剤師の役割を伝えていきましょう。
2-6. 在宅訪問サービスの宣伝・広報を行う
薬局が在宅訪問サービスを始めたことを宣伝し、多くの人に知ってもらいます。ポスターを掲示する際は、薬局の待合だけでなく、道路側から見える窓ガラスなどにも張り出して通行者にもアピールしましょう。パンフレットを作成したり、ホームページで在宅訪問の情報を公開したりと、さまざまなツールを用いて発信してください。
利用者さんが高齢の場合、なかなか新しいサービスに気づけない可能性もあります。窓口で直接在宅訪問を行っている旨を伝えたり、ご家族に提案したりと、地道に情報発信を続けることが大切です。
3. まとめ
薬局が在宅訪問サービスを始める際には、申請書や届出を提出し、在宅薬局として認定を受ける必要があります。薬剤師の採用・育成、薬局内の書類や掲示物の準備も、忘れずに行いましょう。在宅医療を安全に提供するためには、業務フローの設計や管理体制の整備に取り組むことも大切です。
「KIRARI PRIME」は、薬局経営・在宅薬局の総合支援サービスです。きらり薬局では、大半の店舗で外来と在宅訪問を行うハイブリッド経営を実施しており、在宅患者は8000名を超えています。このノウハウを活かし、在宅薬局・在宅対応のあらゆる課題を解決に取り組んでいるのが「KIRARI PRIME」です。
「KIRARI PRIME」では、在宅ノウハウ勉強会や、きらり薬局の店舗見学を実施するほか、薬価のコスト削減・薬剤師育成など、薬局経営に関わるさまざまなサービスを展開しています。「在宅の始め方がわからない」「在宅を始めたものの軌道に乗らない」など、在宅薬局に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。
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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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