薬局経営者のための「訪問調剤」基礎知識

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薬局経営者のための「訪問調剤」基礎知識

高齢者の割合が増えるにつれ、訪問調剤の需要は間違いなく増していくでしょう。生き残る薬局になるためにも、訪問調剤を行うのは有効な手段です。しかし、どのようにして訪問調剤を始めたらいいのか、どういった申請書が必要なのか気になる方も多いではないでしょうか。

そこで今回は、訪問調剤に必要な書類や始めるための流れなどを詳しく解説します。

目次

訪問調剤とは?

訪問調剤とは、在宅医療や訪問薬剤師管理指導、居宅療養管理指導とも呼ばれるサービスのことです。患者さまの自宅や施設に薬を直接届け、服薬指導や管理を行います。通院や来局が困難な患者さまが自立した生活を送れるようにサポートするものです。

訪問薬剤管理指導は医療保険を使い、居宅療養管理指導は介護保険を使います。訪問調剤にはいろいろな呼び方がありますが、内容に大きな違いはありません。

訪問調剤で必要な届出や申請書は?

訪問調剤を始めるにあたり、さまざまな届出や申請書が必要になります。ここでは主に必要になる4つのものについて見ていきましょう。

 

①在宅患者訪問薬剤管理指導に係る届出

訪問調剤を始めることを認めてもらうための届出です。保険薬局の所在地や名称、電話番号や開設者名を記入し、地方厚生局に提出します。

 

②介護給付費の請求及び受領に関する届

介護保険を使った居宅療養管理指導を行う場合に必要になる届出です。患者さんが実際に払う分以外の金額を介護給付費として薬局が受け取るために必要になります。事業所番号や住所、請求者などを記載して国保連合会介護保険係に提出しましょう。

 

③居宅療養管理指導・介護予防居宅療養管理指導事務所の指定に係る記載事項

在宅医療を行う事業所として薬局が認定を受けるために必要な書類です。保険薬局の場合はもともと介護保険の指定事業所として認められているため、ほとんどの薬局で提出は必要ありません。もし保険薬局でない場合は提出しましょう。

 

④生活保護法指定介護機関指定申請書

生活保護の方や中国残留邦人に対して訪問調剤をする場合に必要な書類です。介護保険法の指定や開設許可日が平成26年6月30日以前の場合にのみ申請が必要になります。事業所名や住所、開設者の氏名などを記載して、生活保護の担当部署へ提出してください。

薬局経営者が知りたい訪問調剤の流れ

訪問調剤を始めるためには、次のような流れを踏むことが一般的です。漏れのないよう、しっかりと準備を進めておきましょう。

 

①申請書や届出の提出

上でもご紹介した、4つの届出や申請書を準備して提出する必要があります。

 

  • 在宅患者訪問薬剤管理指導に係る届出
  • 介護給付費の請求及び受領に関する届
  • 居宅療養管理指導・介護予防居宅療養管理指導事務所の指定に係る記載事項
  • 生活保護法指定介護機関指定申請書

 

医療保険を使うのか介護保険を使うのか、また保険薬局かそうでないのかなどによって必要な書類は異なります。状況に応じて必要なものを提出しましょう。

 

②薬局内の掲示物を作成

訪問調剤を始めるにあたり、薬局内にもいくつか掲示物を掲示しなければなりません。主に次の4つが必要です。

 

  • 運営規定の概要
  • 介護保険サービス提供事業者としての掲示
  • 訪問薬剤管理指導の届出を行なっている旨の掲示
  • 無菌製剤処理加算に関する掲示

 

運営規定の概要は、薬局が居宅療養管理指導を行う事業所として都道府県知事の指定を受けたという証明になります。介護保険を使う場合は介護保険サービス提供事業者としての掲示、医療保険を使う場合は訪問薬剤管理指導の届出を行なっている旨の掲示が必要です。

 

無菌製剤処理加算に関する掲示は、許可を受けている場合にのみ掲示します。掲示する必要はありませんが、このほかに処方医への報告書やケアマネージャーへの情報提供書なども必要です。

 

③契約書類を作成

介護保険を使って訪問調剤を始めるためには、患者さんと契約書を交わす必要があります。そのときに必要なものをあらかじめ準備しておきましょう。契約書は患者さんに渡す分と薬局が保管する分とで合計2通必要です。

訪問薬剤師って何をするの?

訪問薬剤師の役割は、自宅で療養を行う患者さんのサポートを行うことです。「付き添ってくれる人がいないと自力で病院に行くのが難しい」「最期は自宅でゆっくり過ごしたい」などの考えをもった患者さんのケアを24時間体制で行っていきます。

薬剤師だけではなく、医師や歯科医師、看護師や理学療法士などさまざまな専門性をもったスタッフと協力して1人の患者さんをサポートしていくのが訪問薬剤師です。

訪問薬剤師の意義

薬剤師が患者さんのお宅に訪問をして医薬品をお渡しして終わり。ではなくて薬剤師は服薬指導だけでなく、ADLといわれる日常行動動作やQOL(生活の質)の維持を図る、また向上させる役割を担っています。

地域医療では医師や看護師、ケアマネージャーなどのチームが連携するだけでなく、患者さんやご家族、そして地域住民との繋がりも重視されます。

訪問薬剤師はその地域医療のハブとなるために患者さんに最適な医療を受けてもらうだけでなく、ご家族や介護者の負担を軽減することも意義の1つだと考えられています。そして患者さんのご家族と連携をすることで納得する医療を受けて薬の管理を任せられることが訪問薬剤師のやりがいにも繋がります。

薬剤師が訪問するとどんなことが行われる?

訪問薬剤師の仕事内容として、おもに次のものが知られています。

  • 処方箋にもとづいた調剤、監査を行う
  • 患者さんの自宅へ調剤した医薬品をもっていく
  • 服薬管理
  • 服薬指導
  • 副作用のモニタリング
  • 残薬の確認や調整
  • 他業種担当者や薬局内スタッフとの情報共有

在宅医療を受けている患者さんは、多くが高齢者のため嚥下機能が低下していたり、指先をうまく動かせなかったりする方が少なくありません。腎機能や肝機能が低下していることも考えられるため、副作用が出ていないかチェックすることも大切です。

飲み忘れたり体に合わなかったりして薬が残っていることも少なくないので、残薬の確認を行い次回の処方で調整してもらうよう医師への情報共有も行います。

患者さんが訪問薬剤師を利用するメリット

訪問薬剤師の制度を利用することで、患者さんは次のようなメリットを感じられるでしょう。

  • 自宅にいながら薬を受け取れる
  • 日々の生活の様子も加味した薬剤や用法用量に変更してもらえる
  • 気になることは薬剤師にゆっくり相談できる
  • 薬の副作用を早めに見つけてもらえる
  • 残薬の調整をしてもらうことで、むだな薬剤費を払う必要がなくなる

 

このほか、一人で暮らしている高齢者の方だと孤独感が薄れたり、誰かが定期的に自宅を訪ねてくれるという安心感を得られたりすることもメリットです。

 

訪問薬剤師のメリットを患者さんや他業種に理解してもらおう

私たちが訪問薬剤師のメリットを理解しても、それを現場の患者さんや他業種に理解をしてもらわなければ在宅医療を任せてはもらえないでしょう。

実際に患者さんと他業種に場合分けをしてどのように訪問薬剤師の取り組みを理解してもらうかを述べていきます。

 

<患者さんに訪問薬剤師を理解してもらうためにすること>

患者さんにに対しては薬の管理、薬の飲み合わせ、他サプリメントなどの飲み合わせ、剤形や薬の味、医療保険や介護保険に関する知識、話の聞き役になるなど医師や看護師が気が付きにくい薬に関する情報提供をすることを考えます。ただ訪問薬剤師が一方的に話すのではなく、時に家族の悩みであったり、患者さんの生活スタイル、ちょっとした変化に気が付くように世間話などを挟むことも1つです。

 

<他業種に訪問薬剤師を理解してもらうためにすること>

次に患者さんだけでなく医師や看護師、ケアマネージャーなどの他業種に対しても訪問薬剤師のことを理解してもらいましょう。

薬の剤形、薬の値段に関することを定期的に患者さん目線で提案をしたり、新薬に関する情報提供、出荷調整中の医薬品の情報収集からその代替薬を考えていつでも提案できる体制を整えます。他業種によって患者さんからの相談内容も異なります。訪問薬剤は患者さんから薬に関わることの相談が多くなるので、積極的に他業種に対して話しかけて情報共有することが大切です。

訪問調剤のよくある質問

初めての方にとって、訪問調剤はわからないことだらけでしょう。特によくある3つの質問についてここでは見ていきましょう。

①訪問調剤を希望する患者さんにはどうすれば会える?

訪問調剤をするには、まず希望している患者さんと出会う必要があります。患者さまと出会うもっとも多い方法は、医師からの紹介です。訪問調剤が必要と医師が判断した場合に、薬剤師へ相談が来る場合がほとんどを占めています。

 

そのほか、薬剤師の判断で患者さまに訪問調剤を提案したり、患者さんからの希望で始めたりすることもあります。訪問調剤を希望する患者さまが来るのを待つというよりは、医師や薬剤師からアプローチして始めることがほとんどだと思います。

 

②訪問調剤では具体的にどのような業務をするの?

主なサービス業務内容は次のとおりです。

  • 薬を届ける
  • 服薬指導
  • 残薬の調整
  • 薬の保管状況の確認
  • 副作用のモニタリング

 

薬の保管状況の確認や副作用のモニタリング、残薬の調整まで薬剤師の目で見て確認することが調剤薬局の窓口で行う普段の業務と大きく違う点としてあげられます。

 

特に残薬の調整は、訪問調剤では必須の業務です。残薬を確認することが用法用量の変更につながることもあるため、薬を飲めているかどうかは必ず確認します。

 

③訪問調剤を行う際の患者さんの負担金額はいくらくらい?

1割負担の方で、建物内に訪問調剤を行う患者さんが1人しかいない場合、介護保険では517円、医療保険では650円の負担となります。

同じ建物に訪問調剤を必要とする方が2~9人いる場合は、介護保険で378円、医療保険で320円です。10人以上になると、介護保険で341円、医療保険で290円になります。

 

<在宅患者訪問薬剤管理指導料の点数>

・単一建物診療患者が1人の場合は650点

 ・単一建物診療患者が2~9人の場合は 320点

・単一建物診療患者が10人以上の場合は290点

自己負担が1割の方で290~650円の費用を頂くことがあります。

 

<介護報酬>

居宅療養管理指導費で薬局の薬剤師が行う場合

・単一建物居住者が1人の場合 517単位 

・単一建物居住者が2~9人の場合 378単位

・単一建物居住者が10人以上の場合 341単位

まとめ

訪問調剤とは、在宅医療や訪問薬剤管理指導、居宅療養管理指導などと呼ばれるもので、患者さまの自宅や施設を訪問して服薬指導や薬の管理などを行います。訪問調剤を始めるにあたり、在宅患者訪問薬剤管理指導に係る届出や介護給付費の請求及び受領に関する届などの提出が必要です。

また、薬局内に掲示する書類を作成したり、契約書類を準備したりする必要もあります。訪問調剤の必要性が出てきたら用意するものがいろいろとありますので、1つずつ着実に準備をしましょう。

薬局における訪問薬剤管理指導業務(調剤報酬)

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000911825.pdf 参考

 

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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