薬剤師の在宅訪問サービスとは?

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薬剤師の在宅訪問サービスとは?

在宅訪問サービスの需要はどんどん増しています。少子高齢化の影響に伴って、高齢者の割合が高くなっているためです。

これから生き残れる薬剤師・薬局になるためには、在宅訪問サービスを行うことが一つの条件とも言えるでしょう。とはいえ、在宅訪問サービスを行っている薬剤師の数はまだまだ多くはありません。

そこで今回は、実際にどのような業務を行うのか、在宅訪問サービスを行っていくうえで必要なスキルや資格があるのかなどを解説します。


目次

薬剤師の在宅訪問サービスは実際どんなことするの?

通常の薬局業務とは違い、在宅訪問サービスの内容は少しイメージしづらい方もいるかもしれません。

業務内容は細かく見るといくつかありますが、ここでは主に3つの業務について紹介します。

薬剤師がお薬を届けて管理する

患者さんの自宅に届ける前に行う調剤業務は、通常と変わりありません。処方箋が届いたら調剤を行い、入力や監査まで済ませておきます。

準備ができたら、患者さんの自宅に薬を届けに行きましょう。あらかじめ何日の何時くらいに伺いますと伝えてあるので、その時刻に大幅に遅れないよう時間管理を行いながら訪問して回ります。

高齢者向け介護施設のような集合住宅の場合を見ていきましょう。

薬剤師は薬を届けるだけではありません。患者さんの服薬コンプライアンスの確認、しっかりと飲める剤形かの確認、薬の副作用が出ていないか、栄養状態などの体調変化もチェックします。頓服薬に関しては使用回数などの頻度も必ず確認します。

患者さん個人の自宅に伺う場合も基本的に同様で、家の中にお邪魔して一通りの服薬指導を行い、状況に応じてそのほかの業務も進めていくことが一般的です。

患者さんのお薬の使用状況や生活状況をチェック

服薬指導を行いながら、お薬をきちんと飲めているか、服用するときに何か困っていることはないかをチェックしていきます。

患者さんのお話をしっかり伺うと、指が動かしづらいのでPTPシートだと薬が飛んでいってしまうことがある、どれをどのタイミングで飲んだらいいのか分かりづらいなど、問題が見えてくることが少なくありません。この場合は、一包化したり分包紙の印字をできる限り大きくしたりなどの対応を考えましょう。

施設によって色分けをして朝昼夕の飲み方を決めているところもあります。

また、あわせて生活状況のチェックも行います。

確認しておきたいことの一つにエアコンの稼働状況が挙げられます。高齢者は暑さを感じにくいことが多く、さらに発汗機能が低下しているため熱中症になるリスクが高くなっています。

例えば熱中症で救急搬送される方の約50%は65歳以上の高齢者が占めます。エアコンの操作方法がわからず夏なのに暖房になっていることもあるため、設定も含めてチェックしておきましょう。

そして患者さんによってはエアコン自体が体に悪いと思っていたり、身体的な理由で操作が1人ではできない方もいます。

今回はエアコンを取り上げましたが、薬剤師は気温の確認だけでなく、患者さんの生活背景を考えて在宅医療を実践していきましょう。

訪問後、医師やケアマネジャーに報告

訪問が終わったら、報告書の作成を行います。

  • 訪問日
  • 訪問の目標
  • 薬の服用状況
  • 誰に服薬指導を行ったか
  • 薬の保管状況はどうか
  • 内容を理解しているか
  • 食事は摂れているか
  • 排泄や運動機能に問題はないか

書式により異なりますが、上記のような内容を記入していくことが一般的です。医師用とケアマネジャー用で別々に報告書を作ることもあれば、同じ報告書を共有することもあります。

一つずつ記入していくと大変ですが、薬歴を引用して報告書を作成できる機能もあるのでうまく活用すると作業を効率化が可能です。残薬があった場合は、その旨も記入しておきます。

次回の処方から何日分を差し引いたらよいのかを計算し、医師が分かるように記入しましょう。

もし緊急で医師やケアマネジャーに連絡したい事項があれば、電話で伝えてください。

薬剤師の在宅訪問サービスで必要なスキルや資格は?

薬剤師が在宅訪問サービスを行うにあたって、もっておくことが必須の資格はありません。しいていえば、車の免許は必要になります。1日に何か所か患者さんの自宅を回ることになるため、徒歩や自転車では難しい場合がほとんどです。

車の免許があれば、何かの資格を急いで取る必要はないため、すぐに在宅訪問サービスを始められます。

在宅療養支援認定薬剤師の資格

必要な資格がないとはいえ、在宅訪問サービスを行いながら「この方法で問題ないのだろうか?」と不安に思う方は多いかと思います。そこでおススメしたいのが、在宅療養支援認定薬剤師の資格です。

在宅療養支援認定薬剤師とは、一般社団法人日本在宅薬学会によって認められている認定薬剤師の資格のこと。自宅や施設で療養している患者さんに対して、薬剤師の専門性を発揮しながらチーム医療の一員として活躍するための知識を習得できます。

下記の6つの条件をすべて満たすことで取得が可能です。

  1. 日本国の薬剤師資格を有し3年以上の薬剤師実務経験があること
  2. 薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師、日本病院薬剤師会生涯研修認定薬剤師または日本医療薬学会認定薬剤師であること
  3. 在宅業務の実践による5事例の報告を提出すること
  4. 日本在宅薬学会主催の学術大会に参加していること
  5. バイタルサイン講習会を受講していること

条件と見てもらうとわかるとおり、資格を取得するためには在宅業務の経験が必要になります。そのため、在宅訪問サービスを実際に始めてからでなければ取得できない点に注意が必要です。

患者さんのお話をしっかり聞くスキル

在宅訪問サービスを行うためには、傾聴スキルが必須です。何気ない会話にもしっかりと耳を傾け、患者さんが毎日を過ごすうえで不便なこと、困っていることがないかを聞き取ります。

食事が取れているか、医師に伝えておきたいことはないかなども確認しましょう。

患者さんのお話にしっかりと耳を傾けなければ、在宅訪問サービスを行うメリットを十分に発揮することはできません。

細かなことも逃さず報告するスキル

薬剤師にとっては何気ない情報であっても、医師やケアマネジャーからしたら今後の方針を変えることになるような大きな情報となる場合があります。そのため、報告書を作成するときはどんなに些細なことでも記入する習慣をつけることが大切です。

「以前よりも部屋が散らかっている気がする」「いつもは掃除が行き届いているのに、今日はゴミがいくつか落ちていた」などの情報でも逃さず記入しましょう。

薬剤師の在宅訪問サービスの1日の流れ

在宅訪問サービスに向かうまでの時間は、通常どおり調剤業務を行います。訪問の時間が近づいてきたら、準備をして患者さんの自宅に向かいましょう。

流れ①患者さんの自宅を訪問して服薬指導を行う

調剤と監査が済んだお薬をまとめて、患者さんの自宅に向かいます。必要に応じて今から向かう旨の連絡を患者さんに入れておくようにしてください。

自宅に到着したら、挨拶をして服薬指導を行います。服薬指導を行いながら、飲み忘れがないか、飲みにくいお薬がないかなどを確認してください。お薬カレンダーやお薬ボックスを利用している場合は、セットするところまで行います。

流れ②残薬の確認・患者さんの状態観察

多くの患者さんで残薬があるため、調整を行うことはほぼ必須の業務です。押し入れの奥から大量の残薬が出てくることもあるので、お薬カレンダーやお薬ボックス以外で残っているものがないかも確認しましょう。

ただし、残薬があることを隠したがる患者さんも少なくありません。患者さんとの信頼関係を築いた後でなければ残薬をすべて見せてもらえない場合もあります。

明らかに変色が見られる薬はその場で破棄しましょう。ロットがわかるものは製薬会社のホームページから使用期限を検索できることがあるので調べます。残薬の調整を行う際にハサミやホッチキスを使うことが多いので、持っていっておくと便利です。

残薬調整のほかには、血圧測定やバイタルチェックなども必要に応じて行います。

服薬状況や生活状況を考慮し、処方医へ処方提案も行っていきます。

流れ③報告書の作成・提出

訪問する患者さんの数が多い場合は、記憶が新しいうちにできるだけ次の訪問に向かう前に報告書の作成を行いましょう。数件程度しか訪問しない場合は、後でまとめて記入することもあります。
数人でチームになって訪問するときは、次の訪問先に向かっている車の中で報告書を作成するケースもあります。

今後の薬剤師、在宅訪問サービスの市場は?

在宅訪問サービスの市場は、今後も拡大していくことが予想されます。高齢者の増加に伴い、入院をする病院や入居する施設のベット数が足りなくなります。国策として在宅医療を進めていくような流れとなっています。以上のことからも市場が急激に衰退することは考えにくいでしょう。そして在宅訪問を活用する年齢層は75歳以上が多い点もおさえておきましょう。

総務省統計局の調査によると、75歳以上の高齢者の割合が2025年には17.8%、2040年には20.2%になる見込みです。

在宅訪問サービスを利用している方の大部分は高齢者のため、割合が増えればそれに比例して利用者も増えると考えられます。

まとめ

薬剤師が行う在宅訪問サービスは、患者さんのご自宅に薬剤師が訪問し服薬指導を行い、残薬調整を含む服薬管理や生活状況の考慮した処方提案を行います。

在宅訪問サービスを行うために何か特別な資格が必要になることはありませんが、自信をもって業務にあたりたいとお考えの方は在宅療養支援認定薬剤師の取得を検討してみてください。

傾聴スキルや取得した情報を報告するスキルは必須となるため、在宅訪問サービスが気になっている方は日頃の業務でこれらを心がけておくと役立つでしょう。

訪問調剤時に使用するアイテム一覧です。ぜひ活用してみてください。

お役立ち資料:調剤訪問チェックリスト(DL資料)

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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