医薬分業のメリットとは?デメリットの解消方法についても解説!
医薬分業率は、令和3年2月の時点で全国平均76.9%を達成しています。多くの医療機関で医薬分業が進んでいることがわかるでしょう。医薬分業を進めることでさまざまなメリットがあるため、国が推進しているのです。
しかし、医薬分業はメリットだけではありません。ここでは、メリットやデメリット、そもそも医薬分業とはどういうものなのかを見ていきましょう。
またデメリットを解消するにはどういった施策が必要になるのかも考えてみました。
是非、合わせてお読みください。
目次医薬分業とは
医薬分業とは、言葉のとおり医師と薬剤師がそれぞれの役割を分担して行うもののことです。
日本では明治時代の時点ですでに医薬分業が始まっていたと言われています。
そもそも医薬分業とは
薬を処方するのは医師、調剤するのは薬剤師というように医師と薬剤師とで役割をわけることが医薬分業です。日本では明治時代の初めに始まりましたが、ヨーロッパではすでに800年ほどの歴史があります。
医薬分業を行うことで、それぞれの専門家が存分に専門性を発揮できるようになるため、薬の取り違えが減り適切な服薬指導を受けられるようになることがメリットです。
処方せんを発行する院外処方へ
院内処方とは診察を受けた医療機関で処方せんをもらい、その医療機関にある薬局で薬を貰うことを指します。
一方で院外処方は、処方せんを受け取った医療機関とは別の薬局で薬を受け取ることです。医薬分業が進むことで、院内処方ではなく院外処方が進められるようになりました。
院外処方にすることで患者さんがかかりつけ薬局をもてるようになったり、医薬品の管理を行いやすくなったりするのです。院内処方だと医療機関ごとに違う薬局で薬を貰うことになり、お薬の管理がしづらくなることがあります。
薬剤師による管理を手厚くして患者さんの治療をしっかりサポートするために、これからも院外処方が推進されていくでしょう。
医薬分業のメリット
医薬分業は、患者さんの健康を守るうえで大切なものです。では、どのようなメリットがあるのでしょうか。
メリット①処方せんのダブルチェックができる
大きなメリットは、処方せんのダブルチェックができることです。処方せんを発行した医師がまずチェックし、処方せんを受け取った院外の薬局にいる薬剤師が再びチェックをします。
ダブルチェックが必須となることで用法用量や薬剤の記載ミスなどに気がつきやすくなり、大きな副作用を防ぐことにつながるでしょう。患者さんの治療効果を高めることにもつながるため、服薬アドヒアランスも向上できます。
メリット②医薬品を管理するコストを減らせる
医薬分業にすることで、医療機関で保管しておくべき医薬品の量を大幅に削減することが可能です。そのため、医薬品の仕入れにかかるコストや管理するための薬剤師を配置するコストなどを減らせます。
院外処方にすることで医療機関の収入そのものは減ってしまいますが、こういったコストを減らせるため結果的には利益が増えることも考えられるでしょう。
メリット③重複投与や相互作用などを確認しやすい
複数の医療機関に通院している患者さんでは、ときに重複投与となっていることがあります。とくに湿布薬は重複しやすく、あちこちで貰われている方をたびたび見かけるものです。重複投与により副作用が出やすくなるため、薬剤師がしっかりチェックをしなければなりません。
また、さまざまな医療機関でお薬を貰っていると相互作用が起きてしまうこともあるものです。1つの処方せん内では問題なくても、複数の処方せん同士で影響が出ることもあります。院内処方ではこういった重複投与や相互作用に気づきにくいのです。
医薬分業のデメリット
残念ながら、医薬分業はメリットだけではありません。患者さんにとっても医療機関にとってもデメリットがいくつか存在します。
デメリット①医薬品の在庫が多くなりやすい
医療機関の在庫は減りますが、調剤薬局の在庫はどうしても多くなってしまうものです。患者さんがどこの医療機関の処方せんを持って薬局に来るかがわからないため、よく処方されるものは在庫として確保しておく必要があります。
在庫がないと患者さんを待たせてしまい、「すぐに貰えないならほかの薬局に行きます」と言われ機会損失を被ることもあるでしょう。
ある患者さんのためにあまりでない薬を在庫として確保していたのに、その方が突然来なくなって廃棄せざるを得ないということも少なくありません。医薬分業をすることで調剤薬局にはこのような負担がかかります
デメリット②患者さんの手間が増える
院内処方だと、会計が1度だけで済みます。わざわざ外に出て調剤薬局まで足を運ぶ必要もありません。しかし院外処方では、医療機関と調剤薬局のそれぞれで会計をする必要があります。
さらに一旦外に出て調剤薬局まで向かわなければなりません。「具合が悪いのに調剤薬局まで歩いて行くのが大変」と感じる方も多いでしょう。患者さんにとっては二度手間になってしまうことが多く、さらに院外処方のメリットを感じてもらえていないこともあるため、「手間が増えた」とだけ思っている方も多いと思われます。
医薬分業のデメリットを解消するためには?
医薬分業はデメリットがあるかもしれませんが、それらをどう乗り越えていくのか、薬局や薬剤師も全体で考えていく必要があります。こちらで、どのように医薬分業のデメリットが解消できるのかを考えてみました。是非参考にしてください。
在庫をしっかりと管理してコントロールする
医薬品の在庫が過剰になりやすい問題を解決するためには以下の方法を検討してください。
・在庫管理システムの導入:不動在庫の検出や適切な発注点を割り出してくれるサービスを活用する
・医薬品の共同購入:納入価を抑えることにより、在庫金額を減らす
・デットストックの買取サービス活用:在庫の無駄を無くす。捨てるよりも損は少なくて済みます。共同購入のサービスを実施しているところにデットストックの買取は多い。
共同購入で薬の在庫の負担を減らすサービスが多いです。共同購入をしていない薬局は一度検討してみるのも1つの方法です。
オンラインなど新しい取り組みを実施する
医薬分業によって患者さんに手間をかけてしまうケースはあるかと思います。
患者さん目線になり手間を解消するためには以下を実践するのも1つの方法です。
・オンライン服薬指導を実施する
オンライン服薬指導をすることで、直接患者さんが薬局に来なくても服薬指導を実施することが可能になります。急性期の疾患は薬が届くのにタイムラグが発生する恐れがあるので、注意が必要になりますが、慢性疾患などの患者さんや忙しくてなかなか時間が取れない方には向いているサービスと言えるでしょう。
・処方箋画像送信サービスを実施する
事前に処方箋情報を薬局に伝えることにより、入店をしてすぐにお薬を受け取るようにします。薬局側も落ち着いて調剤や監査ができるので、ITで克服できるものは事前に使用してみるのも1つの方法と言えます。
まとめ
日本では着々と医薬分業が進められています。医薬分業を進めることで医師と薬剤師とがそれぞれの職能を発揮し、患者さまの安全を確保できるためです。
処方せんのダブルチェックができたり医薬品の管理コストを下げられたりといったメリットもあります。しかし一方で、調剤薬局の在庫が多くなったり医療費が増えたりなどのデメリットもあるものです。
医薬分業が進められても現在のように門前薬局が多い状況では、メリットを存分に活かせないこともあります。医薬分業のあり方については、これからまだ見直しが必要となるでしょう。
医薬分業のデメリットばかりに目を向けず、薬局として質の高い医療サービスを提供できれば、デメリットを克服して国民にも薬局の素晴らしさを理解してもらえることでしょう。
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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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