2025年の薬機法改正で薬局経営者が着目すべきポイント

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長期収載品の選定療養が2024年10月にスタート 薬局が押さえておきたい制度の内容と加算要件

2025年5月、薬機法が改正・公布されました。今回の改正は、医薬品の品質保証や安定供給体制の強化、さらには市販薬販売における無人店舗活用の解禁など、薬局経営に大きな影響を与える内容が含まれています。

この記事では、厚生労働省の薬機法改正についての概要資料を参考に、2025年薬機法改正の全体像を整理した上で、薬局経営者が注目すべき変更点と実務対応のポイントを解説します。

1. 【2025年】薬機法改正の概要

薬機法は、国民の健康を守るために、医薬品や医療機器の品質・安全性を確保することを目的とした法律です。

今回の改正全体の方向性は、安全性の確保・創薬支援・医療アクセスの向上にあります。薬局においては、調剤業務の効率化・デジタル化と同時に、地域住民への健康支援という役割が求められています。

施行日は公布後6ヶ月以内ですが、一部の項目においては、公布後1年後、2年以内、3年以内と、段階的に適用される予定です。

2025年の薬機法改正では、大きく以下の4分野で見直しが行われました。

(出典:厚生労働省|令和7年の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)等の一部改正について

1-1. 医薬品・医療機器等の安全対策の強化

近年、後発医薬品メーカーにおけるGMP違反が相次ぎ、供給不安や医薬品事故への懸念が高まりました。これを受け、薬機法改正では、医薬品の品質・安全性の担保と、医療への信頼維持を目的とし、企業責任の明確化とガバナンス体制の強化が進められます。

  • 製造販売業者における医薬品品質保証責任者・医薬品安全管理責任者の設置義務化
  • 指定医薬品の「医薬品リスク管理計画-RMP」の作成義務
  • 法令違反での役員変更命令

1-2. 医薬品の安定供給体制の強化

人口高齢化や医療需要の増加により、医薬品の需給バランスが不安定になりやすく、薬局や医療現場での供給不足が課題となっています。特に後発医薬品(ジェネリック)については、数年にわたり供給不足が続いている状況です。これを踏まえ、薬機法改正では、製造販売業者に対して供給体制の整備を義務化し、安定的な医薬品の流通を確保する仕組みが見直されました。

  • 電子処方箋管理サービスを活用した現場の需給モニタリング
  • 製造販売承認を一部変更する場合の手続きの見直し
  • 「後発医薬品製造基盤整備基金」の設置

1-3. より活発な創薬が行われる環境の整備

希少疾患や重篤な疾患の治療薬は、開発コストの高さや市場規模の小ささから企業の参入が難しく、日本では欧米に比べて新薬の導入が遅れている傾向にあります。小児用医薬品についても、臨床試験が難しいなどの理由で、開発が進んでいないのが現状です。このため薬機法改正では、より活発な創薬を後押しする環境の整備が進められます。

  • 条件付き承認制度の見直し
  • 小児用医薬品の開発計画の策定を努力義務化
  • 「革新的医薬品等実用化支援基金」の設置

1-4. 薬局機能の強化・市販薬の規制緩和

地域包括ケアや医薬分業の進展に伴い、薬局は調剤拠点から地域の健康インフラへと役割拡大が求められています。しかし、薬剤師の業務負担増や地域偏在が障壁となり、十分なサービス提供が難しいのが現状です。

こうした課題に対応するため、薬機法改正を通じて、薬局機能の強化と市販薬の規制見直しが進められます。ポイントは、DX・効率化・安全性確保の3つです。

  • 調剤業務の一部外部委託を解禁
  • 濫用のおそれのある医薬品販売方法の見直し
  • 薬剤師等のオンライン服薬指導のもとでの一般用医薬品の販売

2. 薬機法改正で薬局経営者が注目すべき変更点

薬機法改正は、薬局をはじめ、製薬企業・製薬販売業者や医療機関など、幅広い主体に影響を及ぼします。ここでは、2025年薬機法改正において、特に薬局経営者が押さえておきたい変更点を取り上げます。

2-1. 調剤業務の一部外部委託が可能に

これまで薬局は調剤工程を自局で完結する必要がありましたが、今回の薬機法改正により、定型的な調剤業務の一部について外部委託が認められました。

想定される委託業務は、一包化、散剤分包、調剤準備などで、今後は徐々に業務範囲を拡大する見通しです。委託・受託には、都道府県知事の許可や、契約書類などが必要となります。

人手不足に悩む中小薬局にとって、調剤業務の外部委託は利便性が高いように感じられるかもしれませんが、実際にはさまざまなリスクも潜んでいます。

調剤業務の外部委託のメリット・デメリット

メリット

デメリット

  • 人材不足を解消できる
  • 薬剤師が服薬指導やフォローアップなどの対人業務に専念できる
  • 調剤にかかる教育コストを削減できる
  • 工程分断により、情報伝達の齟齬や監査体制の弱体化の恐れがある
  • 患者さんの医療安全の担保が難しい
  • 薬局内の医薬品の種類や備蓄が減少し、緊急時の対応能力が低下する
  • 情報漏洩のリスクがある
  • 薬局内で調剤のノウハウが蓄積されにくい

今後、外部委託が進めば、大手チェーン薬局がスケールメリットを活かして受託事業を展開する可能性が高く、中小薬局がコスト競争に巻き込まれる可能性も指摘されています。

外部委託の利用を検討する薬局経営者は、「どの業務を委託すれば効率化できるか」「どこまで自局で担うか」を明確にすることが重要です。さらに、委託先の品質保証体制をチェックする仕組みや、患者さんに説明責任を果たすためのマニュアル整備も欠かせません。

外部委託を業務削減と捉えるのではなく、「経営資源を対人業務へ再投下するための投資」と位置づけて、戦略的に活用することが重要です。

2-2. 市販薬の販売規制が緩和

これまで要指導医薬品や第1類医薬品の販売には、薬剤師(または登録販売者)の対面説明が必須でした。しかし今回の薬機法改正によって、一定条件を満たせば、薬剤師や登録販売者が不在の店舗でも市販薬の購入が可能となります。一部の要指導医薬品についても、オンライン販売が解禁される予定です。

専門家不在店舗でのOTC医薬品の購入にあたっては、薬剤師によるオンライン服薬指導を受けることが条件となります。「オンライン服薬指導+OTC医薬品」の制度によって、夜間や医療過疎地でも、患者さんは速やかに薬を入手できるようになるでしょう。

また、これをきっかけに薬局サービスの幅はさらに広がり、OTC医薬品販売店舗との連携や医薬品の保管状況の確認などが、新たに薬剤師の業務に加えられると考えられます。

2-3. 濫用医薬品に対する若年者販売制限の強化

近年、10〜20代の若年者が、市販薬を濫用するオーバードーズ(OD)が社会問題となっています。これを踏まえ、濫用の恐れのある医薬品を販売する際には、薬剤師が「氏名・年齢・購入理由」などを確認することが義務づけられました。

具体的には、20歳未満の利用者に対しては、大容量製品や複数個の販売を禁止するほか、販売記録の保存や本人確認の徹底が求められます。さらに、濫用の恐れがある医薬品は店舗内での陳列方法にも制限がかかり、患者さんの手の届かない場所で管理する必要があります。

2-4. 健康増進支援薬局の認定

2025年薬機法改正では、新たに「健康増進支援薬局」の認定制度が創設されました。これは、従来の健康サポート薬局を格上げした位置づけで、都道府県知事の認定を受けることで、地域住民の健康増進を支援する薬局として公式に認められる制度です。認定薬局は、「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」に続き、3つ目となります。

健康増進支援薬局では医薬品販売はもちろんのこと、栄養相談、禁煙支援、介護予防、運動習慣改善など、幅広い健康相談を担うことが想定されています。薬局には、調剤・販売だけでなく、地域の健康拠点としての役割を果たすことが期待されています。

健康増進支援薬局については今後制度が整えられる見通しですが、主な機能は健康サポート薬局の機能を引き継ぐものと推測されます。

3. 薬機法改正で薬局が対応すべきポイント

2025年の薬機法改正により、薬局経営者には受け身ではなく、能動的に改革に対応する姿勢が求められています。ここでは、薬局経営の戦略策定にも役立つ、特に重要な対応ポイントを整理します。

3-1. 薬局DXの推進

今回の薬機法改正で導入された<市販薬規制緩和に伴うオンライン服薬指導>は、薬局DXを促す試みのひとつです。今後もデジタル技術を活用した制度やサービスは次々と登場すると予想され、薬局経営においてDX化は避けて通れない課題となっています。

薬局DXを進めることで、以下の効果が期待できます。

  • 患者さん一人ひとりに応じたパーソナライズされた服薬支援の実現
  • 在宅医療や遠隔地域へのサービス提供による薬局の役割拡大
  • 薬剤師の業務負担軽減とリソースの最適化

一方で、DX推進にはコストや人材教育の負担、情報セキュリティリスクといった課題も伴います。システム導入の際には、 薬剤師のITリテラシー教育やセキュリティ意識の向上を含めた運用体制を整備することが大切です。

3-2. 在宅訪問サービスの強化

2025年薬機法改正では、薬剤師の役割が「調剤中心」から「患者さんの生活を支える存在」へとシフトすることが強調されています。中でも在宅訪問サービスは、対人業務の充実や地域医療との連携強化と密接に関わっており、これからの薬局経営を考える上で特に重要なテーマです。

在宅訪問を強化するには、次のような施策があります。

  • 人材配置の適正化

薬剤師が服薬指導や薬学管理などの専門業務に専念できるよう、事務員と業務を切り分け、オペレーションの効率化を図りましょう。訪問スケジュールを考慮し、曜日や時間帯ごとに過不足のないシフトを組むことで、パフォーマンスを発揮しながら無駄な人件費を削減できます。

  • デジタル化・オンライン化の推進

在宅訪問を強化する上でも、薬局DXは不可欠です。特に、オンライン服薬指導と電子処方箋は在宅との親和性が高く、緊急時や遠隔でのスピーディな対応や、薬剤師の業務負担軽減に貢献します。また、書類管理を紙ベースからデジタルへとシフトすることで、情報の一元管理やコスト削減、情報共有の円滑化が図れます。

  • 多職種連携の強化

在宅医療では、医師や看護師、ケアマネジャーなど多職種との密な連携が重要です。リアルタイムで細やかな情報共有を行うには、ICTツールが適しています。また、定期的なカンファレンスや対面ミーティングへ参加して直接コミュニケーションを取ることで、課題の早期発見が可能となり、多職種間の信頼関係も強化されます。

3-3. 健康増進支援薬局としての経営強化

健康増進支援薬局の認定を取得することは、薬局ブランディングの上でも効果的です。「健康のことならこの薬局に相談できる」と地域住民に信頼してもらいやすくなり、長期的な顧客基盤の形成につながります。また、行政や地域包括支援センター、医療機関との連携が進むことで、新たな患者さんとの接点を獲得できる可能性も高まるでしょう。

健康増進支援薬局の認定要件は、健康サポート薬局と同等と考えられますが、詳細は今後整理される見通しです。健康増進支援薬局の認定をめざす薬局は、いつでも対応できるように体制づくりを進めましょう。

認定薬局として備えるべき基本機能

  • 健康相談窓口の設置
  • 行政や地域包括支援センターとの連携推進
  • 栄養や生活習慣改善のサポート
  • 禁煙支援の実施
  • ICTツールを活用した情報共有・連携体制の構築
  • 認定薬剤師による研修修了

さらに、地域住民のニーズに応じた工夫も差別化につながります。

  • 健康アンケートの実施による課題把握
  • 健康情報や服薬指導の動画配信
  • 生活習慣改善プログラムの提供
  • 子育て世帯への健康情報発信
  • 薬物乱用防止の呼びかけ

これらを組み合わせることで、地域に根差した薬局経営が可能となります。薬機法改正に伴う制度変更を機に、健康増進支援薬局としての機能を強化しましょう。

4. まとめ

2025年の薬機法改正では、薬局の対人業務強化やDX化に焦点が当たりました。薬剤師などがいない店舗で市販薬を購入できる仕組みが導入され、調剤業務の一部外部委託も解禁されます。さらに、健康増進支援薬局の創設により、地域住民への健康支援を担う役割が強化されました。

薬局にとっては、オンライン服薬指導や在宅医療体制の整備、健康支援サービスの強化などが重要な施策となるでしょう。地域の健康拠点としての価値向上と、持続的な経営基盤の確立が求められています。

きらりプライムサービスでは、在宅薬局経営の悩みを幅広くサポートしています。在宅患者獲得や薬局DX推進、在宅薬剤師の採用・育成など、薬局経営でのお困りごとは何でもご相談ください。

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