2025年の薬機法改正で薬局経営者が着目すべきポイント

2025年5月、薬機法改正が可決・公布されました。今回の薬機法改正は、医薬品の品質・供給体制の強化や無人店舗での市販薬販売解禁など、多岐にわたる見直しが行われています。
この記事では、厚生労働省の薬機法改正についての概要資料を参考に、2025年薬機法改正の概要と薬局経営者が注目すべき変更点、薬局の対応すべきポイントをまとめます。1. 【2025年】薬機法改正の概要
2. 薬機法改正で薬局経営者が注目すべき変更点
2-1. 調剤業務の一部外部委託が可能に
2-2. 市販薬の販売規制が緩和
2-3. 濫用医薬品に対する若年者販売制限の強化
2-4. 健康増進支援薬局の認定
3. 薬機法改正で薬局が対応すべきポイント
3-1. 対人業務強化・デジタル化に向けた薬剤師の採用・育成
3-2. 在宅サービスの強化
3-3. 健康増進支援薬局としての経営強化
まとめ
1. 【2025年】薬機法改正の概要
薬機法とは、医薬品や医療機器について品質や安全性を確保することを目的とした法律です。薬機法改正案は2025年5月14日に国会で可決され、同月21日より交付されました。
2025年の薬機法改正では、以下4つの点について見直しが行われています。
①医薬品・医療機器等の安全対策の強化
②医薬品の安定供給体制の強化
③より活発な創薬が行われる環境の整備
④薬局機能の強化・市販薬の規制緩和
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(出典:厚生労働省「令和7年の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)等の一部改正について」)
今回の薬機法改正では、医薬品の品質・安全や安定供給を目的とした医薬品のガバナンス強化や情報体制の整備、デジタル技術の活用による医療アクセスの向上が図られています。
薬局においては、対人業務の充実と医療安全確保の強化に向けて、市販薬の規制緩和や調剤業務の外部委託など、画期的な取り組みが盛り込まれている点に注目です。
2. 薬機法改正で薬局経営者が注目すべき変更点
ここでは、2025年薬機法改正において、特に薬局経営者が押さえておきたい変更点を取り上げます。
2-1. 調剤業務の一部外部委託が可能に
2025年薬機法改正では、薬局の調剤業務の一部について、外部委託が認められました。委託できる業務は「定型業務の一部」とされており、今後は一包化以外の業務委託も可能となる見通しです。委託・受託には、書類の提出と都道府県知事の許可等が必要となります。
調剤の業務委託が認められた背景としては、少子高齢化の進展に伴う医療需要の増大や、対人業務の拡充が挙げられます。調剤業務の外部委託化が進めば、中小薬局の人手不足の解消も期待できるでしょう。
一方で、外部委託では受付~調剤~監査~服薬指導の工程が分断されるため、患者さんの医療安全の確保が難しくなるという課題もあります。また、大手チェーン薬局が受託業者として調剤から配送までを一手に引き受けることで、中小薬局が淘汰される可能性も否めません。調剤業務の外部委託については、あらゆるリスクを検討した上で慎重に利用する必要があります。
2-2. 市販薬の販売規制が緩和
従来では、要指導医薬品や第1類医薬品は、薬剤師(または登録販売者)が不在の場合、店頭で購入することができませんでした。しかし今回の薬機法改正によって、一定条件を満たせば、薬剤師や登録販売者がいないコンビニなどでも市販薬の購入が可能となります。一部の要指導医薬品についてもオンライン販売が解禁される予定です。
専門家不在店舗にてOTC医薬品を販売する条件として、薬剤師等によるオンライン服薬指導が義務づけられます。詳しい運用ルールは、今後策定される見通しです。
「オンライン服薬指導+OTC医薬品」の制度によって、夜間や医療過疎地でも、患者さんは速やかに薬を入手できるようになるでしょう。これをきっかけに薬局サービスの幅はさらに広がり、OTC医薬品販売店舗との連携や医薬品の保管状況の確認も、新たに薬剤師の業務に加えられることになります。
2-3. 濫用医薬品に対する若年者販売制限の強化
近年、10〜20代の若年者が市販薬を乱用するオーバードーズが社会問題となっています。これを踏まえ、濫用の恐れのある医薬品を販売する際には、薬剤師が氏名や年齢、購入理由などを確認することが義務づけられました。
薬局では、20歳未満の大容量製品または複数個の販売を禁止すること、該当医薬品については来局者の手の届かない場所へ商品を陳列することなどが必須となります。
2-4. 健康増進支援薬局の認定
薬局に求められる機能と、地域住民の健康の維持・増進を支援する薬局は、都道府県知事により「健康増進支援薬局」として認定されます。認定薬局は、「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」に続き、3つ目です。
従来は届出であった健康サポート薬局が、認定薬局として格上げされ、さらなる知名度向上をめざします。健康増進支援薬局については今後制度が整えられる見通しですが、主な機能は健康サポート薬局の機能を引き継ぐものと推測されます。
3. 薬機法改正で薬局が対応すべきポイント
2025年薬機法改正を受けて、今後薬局経営者が対応すべきポイントを解説します。今後の変化に備えて、設備や体制を整備していきましょう。
3-1. 対人業務強化・デジタル化に向けた薬剤師の採用・育成
今回の薬機法改正で、専門家が不在となるOTC医薬品の販売に対応するためには、オンライン服薬指導への対応が必要となります。今後もデジタル技術を活用した制度は次々と登場すると考えられるため、薬局DXの推進を急ぎましょう。
オンライン服薬指導の運用にあたっては、ICTツールの整備やマニュアル作成のほか、薬剤師のITリテラシー教育も必要です。また、画面越しからでも的確なアドバイスを行うためには、対面とは異なる対人スキルが求められます。デジタル活用スキルと薬剤師としての専門性、そしてオンライン・オフラインでのコミュニケーション力を満遍なく高めることが重要です。
3-2. 在宅サービスの強化
地域住民へ医薬品を適正に提供するためには、薬局の在宅医療への関与が欠かせません。地域の医療機関や介護施設と連携し、円滑な在宅基盤を築くことが求められます。これまで以上に多職種間の連携を密にし、デジタル技術を上手に取り入れて、業務効率化と在宅拡大を図りましょう。
在宅患者さんの症状が複雑化・高度化する中で、麻薬調剤や無菌製剤のニーズも高まっています。今後、薬局に求められる医療ニーズはさらに専門性を増していくでしょう。薬剤師の専門性向上と対人業務の強化を実現するには、薬局運営を支える事務員の活躍も不可欠となります。薬剤師と事務員それぞれのキャリアモデルや在宅業務のオペレーションを見直し、在宅薬局に適したビジネスモデルをつくりましょう。
3-3. 健康増進支援薬局としての経営強化
健康増進支援薬局が認定薬局に加えられたことで、今後健康サポート機能の拡充を図る薬局は増えると予想されます。
健康増進支援薬局の認定要件は、健康サポート薬局と同等と考えられますが、詳細は今後整理される見通しです。健康増進支援薬局の認定をめざす薬局は、いつでも対応できるように体制を整備しておきましょう。
- 健康・介護相談窓口の強化
- 行政や地域包括支援センターとの連携強化
- 栄養支援
- 禁煙支援
- ICTツールを活用した情報連携体制の構築
上記は、健康増進支援(健康サポート)における基本的な機能です。ほかにも、地域住民からアンケートを募ったり、動画解説を配信したりなど、さまざまな取り組みに挑戦することで差別化が図れます。住民に必要なサービスを取り入れて、地域に根付く薬局をめざしましょう。
まとめ
2025年の薬機法改正では、市販薬販売の規制緩和や調剤業務の外部委託の解禁が行われ、認定薬局に健康増進支援薬局が加えられました。薬局には、オンライン服薬指導や健康増進支援にかかる体制の整備、在宅機能の強化に取り組むことが求められています。
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