かかりつけ薬局・在宅薬局を始めるなら押さえておきたい夜間・休日・深夜訪問加算

かかりつけ薬局には、24時間対応体制が必須です。地域包括ケアシステム構築においても、薬局の夜間・休日対応の需要は高まっています。一方で、在宅医療に取り組む薬局経営者は、「従業員に負担をかけてまで24時間対応をする必要はあるのか?」と悩むケースも少なくないでしょう。
今回の記事では、薬局の夜間・休日対応体制で必要となる体制や人材確保について考察します。また、2024年度調剤報酬改定で新設された、夜間・休日・在宅訪問加算の詳細も解説します。
1. 薬局の夜間・休日対応とは?
24時間対応は、かかりつけ薬局の要件のひとつです。開局時間外にもかかりつけや在宅の患者さんの問い合わせに応じるほか、地域の医療機関と連携して急な外来に対応することもあります。
薬局の夜間・休日対応における主な業務
外来 |
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在宅 |
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薬局における24時間対応は、「常時開局すること」ではなく、「緊急の問い合わせや調剤に対応できること」を意味します。問い合わせの内容次第では、調剤対応や医療機器を提供するために、患者宅を訪問します。
地域連携薬局や健康サポート薬局の要件、そして地域支援体制加算の施設基準にも、夜間・休日対応が含まれています。ただし、これらの届出を行っているにも関わらず、夜間・休日対応を行っていない薬局があることも事実です。また、厚生労働省による2022年の調査では、夜間・休日対応で実際に患者宅へ訪問した薬剤師は約30%に留まっています。(*)
夜間・休日対応を実施するにあたっては、いざという場面で速やかに動けるように、体制を整えておくことが大事です。そのためには、薬局スタッフ全員の協力を得る必要もあります。
(*)出典:厚生労働省「薬局による外来患者への夜間・休日対応、在宅医療における夜間・休日対応について」P27)
2. 薬局の夜間・休日対応で必要な体制
かかりつけ薬局の要件や地域支援体制加算の施設基準となったことで、多くの薬局が夜間・休日対応に乗り出しています。夜間・休日対応に取り組むのであれば、しっかりと受け入れ態勢を整えておくことが大切です。
2-1. 24時間対応に係る人材確保
24時間対応体制を整備するにあたって、最大の課題となるのが人材確保です。薬剤師の負担を軽減するには、複数の薬剤師がローテーションで夜間・休日対応を行うのが好ましいでしょう。しかし、調剤を行う可能性を考慮して、薬局の近くに住む薬剤師が全面的に夜間・休日対応を引き受けるケースも少なくありません。
在宅医療に積極的な薬剤師を採用できればよいですが、医療過疎地や郊外にある薬局では薬剤師の新規採用も厳しいのが現実です。正社員を採用し、夜間・休日対応も行ってもらうとなると、人件費もかさみます。
人員が不足している薬局が24時間対応を行うには、2つの方法が考えられます。ひとつは、近隣の薬局と連携して体制を整備する方法です。薬局間連携は有事の際にも重要なので、信頼できる薬局同士で夜間・休日対応の体制を整備するのは、理想的な地域医療の取り組みと言えるでしょう。
もうひとつは、人材シェアリングを活用する方法です。人材シェアリングとは、深夜や早朝における電話対応等を他社に依頼して、部分的な人材不足を解消するサービスです。24時間対応について既存薬剤師の合意を得られなくても、人材シェアリングを提案することで納得してもらえる可能性があります。当面の間は人材シェアリングを利用し、その間に薬剤師の育成を行い、徐々に薬局で24時間対応体制を構築していくことも可能です。
きらりプライムサービスでは、人材シェアリングサービスを提供しています。地域によっては、弊社より薬剤師を派遣し、訪問調剤を行うことも可能です。 |
2-2. 在宅医療に関連する機能・サービスの整備
夜間・休日に患者さんから連絡があった場合は、電話で対応する以外にも、調剤や訪問、機器提供などが必要となるケースがあります。24時間対応薬局としては、患者さんのどのような不安や悩みにも対応できるよう、万全の体制を整えておくのが理想的です。
夜間・休日対応で薬局に求められる業務
- 無菌製剤
- 麻薬調剤
- 医療的ケア児への薬学的管理・指導
- 小児(15歳未満)への在宅訪問実績
- 高度管理医療機器等販売業の許可
まずは、既存患者さんにとって優先度の高いものから取り組むとよいでしょう。中でも、がん疼痛緩和やターミナルケアにおける麻薬製剤や点滴は緊急度が高いため、薬局内で対応できる設備・技術があると安心です。
2-3. 予想できる問い合わせへの事前準備
在宅患者さんからの夜間・休日対応では、主に以下のような問い合わせが考えられます。
- 薬の飲み合わせや服用方法について
- 急な発熱や頭痛
- インスリンなど必要な薬の手持ち不足
- 薬の副作用の出現
- 医療材料、衛生材料の不足
日頃から患者さんの状態を把握し、夜間・休日の問い合わせを予想できると、急な連絡でも落ち着いて対応できます。患者さんの状態や服薬状況については、かかりつけ薬剤師だけでなく、すべての薬剤師が情報を共有できる仕組みを整えておきましょう。薬歴や報告書等はデジタル化しておくと、いつでも必要な情報を引き出すことができて便利です。
3. 夜間・休日・深夜訪問加算について
2024年度調剤報酬改定では、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1に夜間訪問加算・休日訪問加算・深夜訪問加算が新設されました。ターミナル期の患者さんに対し、必要な処置を施した際に算定できる評価です。
夜間・休日・深夜訪問加算はそれぞれ点数が高いため、24時間対応に取り組む在宅薬局は取得できるチャンスを逃さないようにしましょう。
3-1. 主な算定要件
在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1
【夜間訪問加算・休日訪問加算・深夜訪問加算】の主な算定要件
算定要件 |
対象の患者に対して、医師の求めにより、夜間・休日・深夜に緊急に患者宅を訪問し、必要な薬学的管理及び指導を行った場合 |
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対象患者 |
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点数 |
夜間訪問加算:400点
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算定回数 |
原則として月8回まで |
加算の優先順位は【夜間<休日<深夜】となるため、夜間でも休日に訪問した場合は、休日訪問加算を算定します。なお、要件を満たせば、時間外等加算と併算定することが可能です。
注意点として、夜間や深夜の対象となる場合でも、常態として開局している場合は加算できません。たとえば、平日9:00~21:00を開局時間としている場合、20時に急患の対応をしても、夜間訪問加算の対象とはなりません。
夜間・休日・深夜訪問加算を算定するには、麻薬調剤や無菌製剤への対応が必須となるでしょう。積極的に緩和ケアに取り組む薬局は、算定できる機会も多くなります。
3-2. 薬歴への記載内容
在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料を算定するには、薬学管理料の通則で定められている記載事項に加えて、以下の内容を薬歴等に記す必要があります。
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まとめ
夜間・休日対応は、かかりつけ薬局をはじめ、健康サポート薬局や地域連携薬局の要件となっています。在宅薬局が本当に患者さんが安心できるサービスを提供していくには、24時間対応体制が必須と言えるでしょう。
2024年度調剤報酬改定では、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1に、夜間訪問加算(400点)・休日訪問加算(600点)・深夜訪問加算(1,000点)が新設されました。これらの加算を算定するには、麻薬製剤や無菌製剤に対応し、積極的にターミナルケアに取り組むことが大切です。
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