診療報酬改定に見る薬局・薬剤師の評価向上ポイント

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診療報酬改定に見る薬局・薬剤師の評価向上ポイント

1. 2022(令和4)年度調剤報酬改定のポイント

昨今は薬価の引き下げが続き、薬価差益により収益を伸ばすのが難しい時代です。安定した薬局経営を続けるには、調剤報酬で確実に点数を取得する必要があります。

しかし、調剤報酬改定により、従来と同じ経営を続けていては点数の加算も難しい状況です。安定した薬局経営を続けるには、時代に沿ったサービスを備えましょう。

ここでは、2022年度調剤報酬改定における重要なテーマと、それに伴う評価の変更点について解説します。
(出典:厚生労働省「令和4年度調剤報酬改定の概要 (調剤) 」

1-1. 対人業務評価の向上

調剤報酬改定では、対物中心から対人中心業務への転換が促されました。「調剤技術料」では「調剤料」が廃止されて「薬剤調整料」が新設。「薬学管理料」では「薬剤服用歴管理指導料」が廃止され、「調剤管理料」と「服薬管理指導料」が新設されました。対物業務である調剤管理料は点数が抑えられ、対人業務に関わる調剤管理料と服薬管理指導料は点数が引き上げられています。

以下に、見直し・新設が行われた対人業務に関わる評価を取り上げます。

・調剤後薬剤管理指導加算

薬局によるインスリンなどの糖尿病治療薬に関わるフォローアップを評価するものです。新設された「服薬管理指導料」に分類され、点数が引き上げられました。

従 来

薬剤服用歴管理指導料 調剤後薬剤管理指導加算  30点

改定後

服薬管理指導料 調剤後薬剤管理指導加算     60点

算定要件

患者の求めに応じ、調剤後に使用状況や副作用の確認など薬学的管理指導を実施後、結果を医療機関に文書にて情報提供を行った場合に算定。(地域支援体制加算の届出が必要)

・服用薬剤調整支援料2

減薬の提案などについて、従来よりも実績を評価するように見直されました。

従 来

服用薬剤調整支援料2   100点

改定後

服用薬剤調整支援料2

① 厚生労働省が定める施設基準を満たす保険薬局が行った場合 110点

② ①以外の場合 90点

算定要件

合計6種類以上の内服薬が処方されている患者に対し、服用中の薬剤について一元的に把握した上で重複投薬の解消を検討、その報告書を処方医に送付した場合に算定。 

・服薬情報提供料3(新設)

入院予定患者の薬の確認を薬局が行うことを評価するものです。医療機関の負担軽減や、円滑な入院を促します。

服薬情報提供料3  50点(3月に1回限り)

算定要件

入院予定の患者について、患者の同意を得た上で服薬情報等を一元的に把握、

また持参した服用薬の整理を行い、医療機関が求める必要な情報を文書により

提供した場合に、3月に1回に限り算定。 これらの内容については薬剤服用歴に

記録する。

・服薬管理指導料の特例(新設)

かかりつけ薬剤師以外の薬剤師が指導にあたった際の特例的評価です。

かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師が対応した場合   59点

算定要件

事情がある場合に患者の同意を得て、かかりつけ薬剤師以外の薬剤師が、

かかりつけ薬剤師と連携して必要な指導を実施した場合、処方箋受付1回につき算定。

1-2. 地域連携の評価充実

地域医療に貢献する薬局を評価するための「地域支援体制加算」が4区分に分けられ、実績を重視する内容となりました。これまで地域支援体制加算は1種類しかなく算定が難しかったものの、4区分になったことで点数を取得しやすくなっています。

・地域支援体制加算

地域支援体制加算では、全区分共通の施設基準と、各区分で必要な実績要件を満たす必要があります。以下に、各区分で必要な実績要件を示します。


(画像元:厚生労働省「令和4年度調剤報酬改定の概要 (調剤) 」

区分

点数

算定要件



調剤基本料1を算定

地域支援体制加算1

39点

❶〜❸を満たし、かつ❹または❺を満たすこと。

地域支援体制加算2

47点

地域支援体制加算1を満たした上で、①〜⑨のうち3つ以上を満たすこと。




調剤基本料1以外を算定

地域支援体制加算3

17点

麻薬小売業者の免許を受けた上で、①〜⑨を3つ以上満たすこと。(④⑦は必須)

地域支援体制加算4

39点

①〜⑨のうち8つ以上の要件を満たすこと。

・連携強化加算(新設)

地域支援体制加算を算定している薬局が、災害や感染症の発生時において、医薬品供給や衛生品管理などのサポート体制を確保した場合に算定できる評価です。

調剤基本料 連携強化加算   2点

算定要件

地域支援体制加算に該当する薬局で、厚生労働省が定める施設基準に適合し、

地方厚生局長に届出を行った薬局で調剤を行った場合に算定。

1-3. 薬局の在宅訪問推進

在宅業務推進のため、在宅訪問での薬学的管理や指導の評価が拡充されました。在宅訪問と併用したいオンライン服薬指導についても点数が引き上げられており、ICT活用も評価対象となっています。

・在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算(新設)

在宅で医療用麻薬持続注射療法を受ける患者さんに対して、状態に応じた薬学的管理及び指導を行う場合の評価です。

在宅患者訪問薬剤管理指導料 在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算  250点

算定要件

在宅で医療用麻薬持続注射療法を行っている患者に対し、投与状況や副作用の有無を確認し、必要な薬学的管理及び指導を行った場合、1回につき所定点数に加算。 麻薬管理指導加算は算定不可。 

・在宅中心静脈栄養法加算(新設)

輸血セットを用いた中心静脈栄養法輸血などの薬剤使用について、在宅訪問にて適切な薬学的管理及び指導を行った場合の評価です。

在宅患者訪問薬剤管理指導料 在宅中心静脈栄養法加算  150点

算定要件

在宅中心静脈栄養法を行っている患者に対し、投与状況や副作用の有無を確認し、必要な薬学的管理及び指導を行った場合、1回につき所定点数に加算。 

・在宅患者オンライン薬剤管理指導料

在宅患者に対する情報通信機器を用いた服薬指導(オンライン服薬指導)について、要件と評価が見直されました。

従 来

在宅患者訪問薬剤管理指導料 在宅患者オンライン服薬指導料  57点

改定後

在宅患者訪問薬剤管理指導料 在宅患者オンライン服薬指導料  59点

算定要件

在宅療養を行う通院困難な患者に対しオンライン服薬指導を行った場合、患者1人につき月4回に限り59点を算定。また、薬剤師1人につき訪問・オンラインと合わせて週40回まで算定可能。

オンライン服薬指導については、ほかにも「在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料(59点)」や「麻薬管理指導加算(22点)」「乳幼児加算(12点)」が新設されています。

2. 薬局が対人業務充実化のためにすべきこと

調剤報酬改定では、薬局の在宅訪問や地域医療への貢献を後押しする内容となっており、薬剤師の薬学的知見を広い分野で発揮することが求められています。安定した薬局経営を見込むためには、以下の3点に注目して薬局の体制を整えましょう。

・在宅訪問と24時間体制の整備

・薬剤師の専門性及びコミュニケーション能力の向上

・医療機関やケアマネジャーらとの連携体制の構築

小規模薬局で薬剤師が不足している場合は、オンライン服薬指導を活用したリモート薬剤師の採用や人材シェアリングによって、在宅訪問・24時間体制に対応する手段を考えましょう。手間のかかる報告書作成などはシステム導入を検討し、業務効率化を実現することが大切です。薬剤師が対人業務に労力と時間を割けるよう、自動化・効率化を進めましょう。

患者さんにきめ細かなサポートを提供する一方で、医療機関やケアマネジャーとの情報共有体制を築くことも重要です。ICTを活用しつつ、薬局・薬剤師から積極的な情報発信を行いましょう。地域包括ケアシステムを担う一員として在宅医療へ進出すると、次の診療報酬改定でも慌てずに対応できるでしょう。

 

まとめ

2022年度診療報酬改定は、対物業務から対人業務への移行を促す内容となっています。薬局の在宅訪問や地域医療への貢献に対する評価が拡充し、算定要件では実績が重視される傾向となりました。調剤後のフォローアップや処方提案など、薬剤師の積極的な在宅医療への参加が求められています。

「KIRARI PRIME サービス」では、薬局の在宅訪問をサポートするさまざまなサービスを展開しています。在宅訪問における業務効率化と情報共有体制の構築には、クラウド型報告書管理システム「ファムケア」が役立ちます。報告書作成にかかる薬剤師の負担を軽減し、リアルタイムでの情報共有を実現するシステムです。

ほかにも、在宅薬剤師の育成、コスト削減提案など、在宅訪問にまつわるさまざまなお悩みを解決します。在宅訪問にお悩みの方は、ぜひ「KIRARI PRIME サービス」にご相談ください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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