在宅薬局・かかりつけ薬局の今後とめざす姿

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在宅薬局・かかりつけ薬局の今後とめざす姿

1. 薬局経営における在宅・かかりつけ機能の重要性

2015年(平成27年)に厚生労働省が策定した「患者のための薬局ビジョン」では、2025年までにすべての薬局をかかりつけ薬局にすることを目標としています。これを踏まえて、2023年(令和5年)3月に「かかりつけ薬剤師・薬局に求められる機能とあるべき姿」が公表されました。

(出典:厚生労働省「患者のための薬局ビジョン概要」
(出典:厚生労働省「かかりつけ薬剤師・薬局に 求められる機能とあるべき姿」

「かかりつけ薬剤師・薬局に求められる機能とあるべき姿」は、在宅医療における薬局の重要性を強調する内容となっており、将来的にはかかりつけ機能に加えてさらなる専門性を備えることをめざしています。今後、薬局に関する施策は、在宅・かかりつけ機能を前提としたものであり、在宅医療に関与しない薬局が安定した経営を続けるのは難しいといえます。

特に、医療機関の近隣に構える門前薬局は、処方箋受付に頼らず、在宅・かかりつけ機能を充実させるための取り組みができるかが生き残りの分かれ目となるでしょう。

2. 在宅薬局・かかりつけ薬局がめざす姿

在宅薬局・かかりつけ薬局には、どのような対応が求められているのでしょうか。ここでは、在宅薬局・かかりつけ薬局がめざす姿について解説します。

2-1. 対人業務の拡充化

在宅・かかりつけ薬局がめざすところは、対物業務から対人業務への移行による、患者本位の医薬分業の実現です。2022年(令和4年)度における調剤報酬改定では、対物業務と対人業務の線引きが明確になり、実績を重視する算定要件となりました。在宅・かかりつけ薬局の推進を受けて、今後の調剤報酬改定でも、さらに対人業務への比重が大きくなると予想できます。

対人業務には、服薬フォローアップや在宅訪問、健康相談などがあります。薬剤師がこれらの対人業務に時間を費やし、患者さんに寄り添った対応を行うには、対物業務の自動化・効率化に取り組む必要があります。ICT活用によって薬局DXを進めることで、小規模な薬局でもかかりつけ薬局として機能できる可能性は十分にあります。

薬剤師には、薬学的知識・技術に加えて、コミュニケーション能力や、介護や福祉に関する専門知識も必要です。薬局でも、勉強会の実施や研修参加支援を行うなど、積極的に薬剤師のスキルアップに臨みましょう。

2-2. 健康サポート薬局・地域連携薬局の両取得

患者さんが自分に適した薬局を選択できるよう、特定の機能を持つ薬局には、表示可能な名称が与えられています。以下は、届出や認定によって薬局に表示できる制度です。

健康サポート薬局

かかりつけ機能に加えて、健康に関するさまざまな相談ができる健康サポート機能を備えた薬局



認定薬局

地域連携薬局

かかりつけ機能に加えて、他職種と連携体制を構築し、患者さんに関する情報提供を行える薬局

専門医療機関連携薬局

がん等の専門的な薬学管理や特殊調剤に対応できる薬局

今後期待されているのが、健康サポート薬局と地域連携薬局の両取得です。かかりつけ薬局の基本的機能(在宅対応・24時間対応)の強化と、服薬情報の一元管理及び多職種連携の実現により、地域包括ケアシステムの一員として住民の健康により深く関わる薬局の姿が描かれています。

がん等の特定の患者さんの来局が多い地域であれば、専門医療機関連携薬局の取得も検討しましょう。専門医療機関連携薬局の数はまだ少ないのが現状ですが、外来にて治療を続けるがん患者さんが増えていることを考慮すると、専門医療機関連携薬局のニーズは高まると予想できます。

3. 在宅薬局・かかりつけ薬局が取り組むべきこと

今後は在宅薬局・かかりつけ薬局がスタンダードとなり、次の段階では「より質の高いサービスを提供できているか」が問われることとなるでしょう。厚生労働省の「かかりつけ薬剤師・薬局に 求められる機能とあるべき姿」をもとに、在宅薬局・かかりつけ薬局が取り組むべきことを解説します。

3-1. 他職種連携・薬薬連携の強化

他職種は薬局からの情報提供を強く求めており、在宅医療における薬局の役割が重要視されています。医療機関は、在宅訪問に対応している薬局を把握できていないケースも多いため、薬局側から積極的な情報発信を行うことが重要です。薬局が対応可能な在宅業務について明示し、医療機関とこまめに情報共有が行える仕組みを整えましょう。

他職種はもちろん、病院薬剤師との連携(薬薬連携)も欠かせません。患者さんの入退院時における服薬状況や副作用発現などを、病院薬剤師と薬局薬剤師が共有することで、服薬情報の継続的・一元的管理が実現します。患者さんが入院を繰り返したり年齢を重ねたりすると治療内容が変わるため、薬薬連携によって常に新しい情報を共有することが大切です。

3-2. 健康サポート機能の推進

今後の薬局には、地域住民の健康維持・増進を支援する役割が期待されています。服薬指導だけでなく、OTC医薬品の情報提供や健康相談窓口の設置など、地域住民の健康の悩みに寄り添う地域密着型の薬局が望まれているのです。予防の段階から地域住民の健康を支え、誕生から終末期まで、すべてのライフステージを通じた健康サポートに取り組みましょう。

薬局単体ではなく、自治体や医療機関と連携し、地域全体としての取り組みに参加することも大切です。各自治体では、薬局を通じた啓発活動や健康づくり事業を行っているので、積極的に参加して地域住民と交流を持ちましょう。

3-3. 地域に根ざした薬局サービスの提供

地域住民にとって利用価値の高い薬局となるには、地域のニーズに応じたサービスを提供することが大切です。利用者が多い時間帯に夜間・休日対応を実施するほか、介護用品等の販売・情報提供や病気予防の健康支援など、地域住民に必要なサービスを提供しましょう。

郊外や医療過疎地にある薬局の場合、オンライン服薬指導や電子薬歴を活用した遠隔でのサービス提供も積極的に検討するべきです。オンライン服薬指導を導入すれば、リモート薬剤師の採用も可能となり、人材不足解消も期待できます。在宅訪問とオンライン服薬指導を併用しつつ、薬剤師の負担を軽減しながらサービスの拡充に努めましょう。

また、地域の薬局間連携を強めることは、感染症や災害といった有事への迅速な対応や、備蓄医薬品の共有・提供に役立ちます。今後は独立した薬局ではなく、さまざまな医療機関や薬局と関わりを持ちながら、地域包括ケアの担い手として在宅薬局・かかりつけ薬局の活躍が期待されているのです。

 

まとめ

在宅薬局・かかりつけ薬局には、在宅医療に主体的に参加し、幅広く地域住民の健康を支援することが望まれています。切れ目のない在宅医療を提供するためには、地域の医療機関と連携し、継続的に情報共有を行う仕組みを整えることが大切です。また、地域のニーズに応じた健康サポートを提供し、地域住民にとって利用価値のある薬局をめざしましょう。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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