リフィル処方箋、薬薬連携、地域連携薬局… 調剤報酬改定で薬局経営はどう変わる?

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リフィル処方箋、薬薬連携、地域連携薬局… 調剤報酬改定で薬局経営はどう変わる?

1. 2024年度(令和6年度)調剤報酬改定の傾向

2024年度(令和6年度)に、6年に1度の「診療報酬」「介護報酬」「障害福祉サービス等報酬」のトリプル改定が行われます。この改定では、ポスト2025年を見据えた医療・介護の提供体制が見直される予定です。

令和6年度診療報酬改定に向けた検討案

  • 地域包括ケア促進に向けた医療・介護・障害サービスの連携強化
  • 医療DX・薬局DX・介護DXの促進
  • 薬局・薬剤師による入退院支援
  • 感染症対策への取り組み
  • 緩和ケアにおける医師と薬剤師の連携
  • 緩和ケアに対応する薬局の負担配慮
  • 高齢者施設における薬剤管理
  • 薬剤師とケアマネジャーの連携
  • 薬剤師と介護支援専門員の連携
  • 口腔ケアにおける歯科医師と薬剤師の連携

(出典:厚生労働省「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会における主なご意見 」

上記は、報酬改定に向けた意見交換会における、主な意見を抽出したものです。あくまでも意見ですが、多職種連携・DX・地域包括ケアといったテーマが重要視されていることがわかります。

なお、令和6年度診療報酬改定時期については、2ヶ月後ろ倒しにしたスケジュール*も検討されています。具体的な施行時期は確定していないため、今後の動向に注意しておきましょう。
(*出典:厚生労働省「医療DXについて(その2)」

2. 2024度調剤報酬改定で、薬局はどう変わるか

2024度の改定に先立ち、2022年度(令和4年度)に、2年に1度の調剤報酬改定が行われました。この改定は、2015年に公表された「患者のための薬局ビジョン」を反映し、対物業務から対人業務へのシフトを促す内容となっています。

2024度の調剤報酬改定では、さらに対人業務の比重が大きくなると予想されます。 ここでは、令和4年度調剤報酬改定のポイントと、令和6年度調剤報酬改定による薬局経営の変化を考察します。

2-1. 報酬の新設で促される対人業務への転換

2022年度調剤報酬改定では、対物業務と対人業務をそれぞれ適切に評価できるよう、評価体系が見直されました。
調剤技術料では、「調剤料」が廃止されて「薬剤調剤料」が新設。さらに、薬学管理料では、「薬剤服用歴管理指導料」が廃止されて「調剤管理料」と「服薬管理指導料」が新設されています。 

・薬剤調剤料(調剤技術料)

旧調剤料に代わって、対物業務の評価として新設されたのが、「薬剤調剤料」です。従来では、内服薬は処方日数に応じて段階的に加算されていたのが、薬剤調剤料では一律24点となっています。 内服薬以外は、旧調剤料から変更はありません。
加算料:自家製剤加算、計量混合調剤加算など

・調剤管理料(薬学管理料)

旧調剤料に代わって、対人業務の評価として新設されたのが、「調剤管理料」です。処方内容の薬学的分析や、薬歴、調剤録、調剤設計などを評価します。内服薬は、処方日数に応じて4段階で算定する仕組みです。
加算料:重複投薬・相互作用等防止加算など

・服薬管理指導料(薬学管理料)

旧薬剤服用歴管理指導料のうち、服薬指導やフォローアップの評価として新設されたのが、「服薬管理指導料」です。 従来の服薬指導に加えて、継続的な服薬状況の把握が求められています。
加算料:麻薬指導加算、乳児服薬指導加算、小児特定加算など

(出典:日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和4年10月1日施行)」) 

2022年度調剤報酬改定によって、対物業務と対人業務の評価が明確に区別されました。対人業務の評価枠が増え、対物業務の点数は実質的な引き下げとなっています。

2024年度調剤報酬改定では、この流れを受けて、さらに対人業務の評価拡充が行われるでしょう。服薬フォローアップや処方提案といった、薬剤師の専門性が活かせる業務には積極的に取り組むことが大切です。

2-2. リフィル処方箋制度による薬剤師の専門性の発揮

「リフィル処方箋」とは、患者さんの症状が安定している場合に限り、医師と薬剤師の適切な連携のもとで、繰り返し使える処方箋のことです。期間内であれば、医師の診察を受けなくても、最大3回まで薬局で薬を受け取ることができます。

リフィル処方箋の運用による薬剤師の役割

  • 処方箋内容と患者さんの状態確認
  • 「次回調剤可能期間」「有効期間」の確認
  • 次回調剤予定日までの服薬フォロー
  • 服薬状況や残薬の有無の把握
  • 患者さんの状態に応じた医療機関への受診勧奨
  • 処方医への情報提供

リフィル処方箋で医師が最も危惧するのは、患者さんの容態管理ができないことによる医療事故の発生でしょう。このため、薬剤師は正確な薬学的管理指導と、医師への適切なフィードバックによって、リフィル処方箋の安全な運用に努めなくてはなりません。

リフィル処方箋制度は、2022年度調剤報酬改定で認められたものの、まだ普及率が高くないのが実情です。ただ、患者さんの負担軽減、国の医療費削減など、リフィル処方箋には大きなメリットがあるため、今後普及・啓発活動が進められていくでしょう。

2024年調剤報酬でも、リフィル処方箋について改定が行われる可能性があります。薬局・薬剤師としても、リフィル処方箋に対応できる体制を整えておきましょう。

2-3. 薬薬連携の強化

薬薬連携とは、病院薬剤師と薬局薬剤師が連携し、入退院における患者さんの薬物療法を切れ目なくサポートする体制のことです。入退院時には患者さんの処方薬や体調に変化が起きやすいため、薬薬連携によって正しい情報を迅速に共有することが求められています。

薬薬連携によって共有する情報

  • 入院前の服用薬
  • 副作用歴
  • アレルギー情報
  • 服薬アドヒアランス
  • 入院中に追加・変更となった薬剤
  • 一般用医薬品や健康食品の摂取状況
  • 薬の服用状況 など

2020年度診療報酬改定では、がんや糖尿病、吸入薬などの領域で、医療機関と保険薬局の連携が評価に加わりました。2022年度の改定でも、薬薬連携に対する評価が新設されています。

薬薬連携から見る2022年度診療報酬改定のポイント(一部)

調剤報酬

服薬情報等提供料3

医療機関からの求めに応じ、薬局が入院予定の患者さんの服薬情報などを文書によって提供した場合に算定


診療報酬

小児特定加算

医療的ケア児などの退院時に、医療機関が薬局に対し、必要な調剤の情報を文書で提供した場合に算定

周術期薬剤管理加算

手術室の薬剤師が病棟薬剤師と連携し、全身麻酔を実施した患者さんに必要な薬学的管理を行った場合に算定

診療報酬を見ると、医療機関でも薬薬連携の重要性が高まっていることがわかります。しかし、回答に時間がかかることや、薬剤師の知識不足などが原因で、薬薬連携は十分に機能していないのが実情です。

薬薬連携の連絡手段となるのは、主にお薬手帳や薬剤情報提供用紙です。しかし、患者さんがお薬手帳の持参を忘れる、記載漏れがあるなど、正確さに欠けることが問題視されています。

スムーズな薬薬連携を実現するには、ICT活用によるオンラインでの情報共有が欠かせないものとなるでしょう。日頃から連絡が取りやすいように、病院薬剤師と薬局薬剤師が顔を合わせる場を設け、お互いに意思疎通を図ることも大切です。

2-4. 地域連携薬局の推進を後押し

「地域連携薬局」とは、医療機関やほかの薬局と連携し、患者さんの在宅療養をサポートする薬局のことです。かかりつけ薬局に対応する認定制度として、2021年よりスタートしました。

地域連携薬局の主な機能・役割

  • 入退院時における円滑な服薬情報の共有
  • 退院時カンファレンス・地域ケア会議への参加
  • 一元的・継続的な薬物療法の提供
  • 在宅対応・24時間対応
  • 無菌製剤への対応

地域包括ケアにおいて、特に課題となるのが入退院時の移行です。医療機関と薬局間で、服薬状況や副作用などの情報を正しく共有できれば、患者さんにより安全な医療を提供することができます。地域連携薬局は地域包括ケアの一員として、患者さんのスムーズな入退院をサポートすることが求められています。

現状では、地域連携薬局の取り組みに関連する加算として、「地域支援体制加算」があります。今後は、地域連携薬局の活動を推進するため、さらなる加算が追加される可能性もあるでしょう。

2-5. 薬局DXの本格化

薬局DXとは、ITツールやデジタル技術を活用して、薬剤師の働き方や組織体制の変革を図ることです。2022年度調剤報酬改定では、オンライン服薬指導の評価が拡充し、リフィル処方箋が導入されるなど、ICT活用が促されました。

多職種連携を円滑化するには、すべての薬局や医療機関でDXを進めていく必要があります。ただ、薬局を含む医療業界では、DXどころか、単なるIT化・デジタル化ですら遅れを取っています。引き続き、2024年度調剤報酬でも薬局DXを推進する改定が加えられるでしょう。

薬局DXによるメリット

・業務効率化による対人業務の充実化
・リアルタイムの情報共有による円滑な連携体制の構築
・ヒューマンエラーの削減
・ペーパーレス化の実現

小規模薬局でも、ITツールやデジタル技術を活用することで、在宅対応・24時間対応を実現できる可能性は十分あります。かかりつけ薬局や地域連携薬局として活躍するためにも、ぜひ薬局DXを進めましょう。

2-6. 薬局・薬剤師へのタスクシフト・シェア

2024年4月から、医師の働き方改革が施行されました。これを受けて、薬局を含む医療現場では、タスクシフト・シェアの動きが加速しています。

医師のタスクシフト・タスクシェアとは

医師のタスクシフト・タスクシェアとは、医師の業務を可能な範囲でほかの医療従事者と分担し、医師の業務負担軽減を図る取り組みのこと。

・タスクシフト(シフティング):医師の業務を他職種が引き受ける、業務移管のこと
・タスクシェア(シェアリング):医師が1人で行っていた業務を、他職種と共同で実施すること

医師のタスクシフト・シェアにより、薬剤師には専門性の高い新たな役割が与えられることになります。たとえば、周術期における薬学的管理、薬物療法に関する説明、医師への処方提案などです。既に医療現場では、薬剤師が積極的に救急医療に関与する事例もあり、薬剤師の活躍の場が広がりつつあります。

2024年度調剤報酬改定では、こうしたタスクシフト・シェアを受けて、薬剤師の専門的な業務への評価が高まる可能性もあるでしょう。薬剤師の技術・知識向上に向けた取り組みが必要です。

3. これからの薬局・薬剤師に求められること

2024年度度調剤報酬改定では、さらに患者本位の医薬分業が進み、対人業務の評価体制が整えられるでしょう。薬局・薬剤師には、地域包括ケアシステムを担う存在として、かかりつけ機能の強化が求められます。

2021年には、特定の機能を持つ薬局を認定する薬局認定制度(専門医療機関連携薬局・地域連携薬局)がスタートしました。かかりつけ薬局、地域サポート薬局も普及しつつあります。これらの専門的な機能や在宅医療への参入が、調剤薬局業界で今後も推進されることは間違いないでしょう。

無菌製剤や麻薬調剤といった医療提供体制の整備や、薬剤師の専門性向上は必須です。一言で言えば、「レベルの高い地域密着型薬局」が求められていると言えます。対人業務の質向上を念頭に置き、うまくICTを活用しながら、地域で活躍する薬局をめざしましょう。

 

まとめ

2024年度(令和6年度)には、診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改訂が行われます。この改定では、2022年度(令和4年度)調剤報酬改定を受けて、在宅訪問や多職種連携といった対人業務の評価拡充が図られるでしょう。

地域包括ケアシステムの構築が急がれる中、薬局経営で重要となるのが、在宅訪問・薬局DX・薬剤師の専門性向上の3つです。在宅医療の質向上のためにも、多方面から対人業務の強化に取り組みましょう。

HYUGA PRIMARY CARE(株)の「KIRARI PRIME サービス」は、在宅薬局のノウハウを提供し、薬局経営のさまざまなお悩みを解決に導くサービスです。在宅業務効率化から在宅患者獲得、薬剤師の人材育成にいたるまで、あらゆるご相談に応じています。在宅薬局経営にお悩みの方は、お気軽に担当者までご相談ください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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