2024年度調剤報酬改定の考え方と改定ポイント

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2024年度調剤報酬改定の考え方と改定ポイント

1. 2024年度調剤報酬改定のポイント

2024年は、6年に1度の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定が行われます。トリプル改定そのものの注目度が高いことに加えて、今回は団塊世代がすべて75歳以上になる2025年の前年に行われるため、各業界から非常に高い関心を集めています。

2025年問題の次には、高齢者人口が最大化して生産年齢人口が急激に減る「2040年問題」があります。2025年、そして2040年を見据えたトリプル改定を控え、厚生労働省は意見交換会を実施し慎重に議論を進めている最中です。

ここでは、2024年度診療報酬改定のポイントを整理します。

1-1. 対物業務から対人業務のさらなる推進

既に2022年度調剤報酬改定で、対物業務の実質的引き下げが行われ、対人業務への転換が推進されています。続く2024年度改定でも対人業務の拡充が進み、在宅訪問や24時間対応といった地域医療への貢献に対する評価制度が整備される見通しです。

2040年に向けて高齢者は増加し、医療・介護現場で働く人が急減します。2024年度トリプル改定では、医療の現場を医療機関から地域へと移すべく、在宅医療を中心とした地域包括ケアシステムの構築に沿った内容となるでしょう。

2024年度調剤報酬改定では、地域貢献度の高い薬局への評価が高く引き上げられると考えられます。2024年を節目に、在宅医療に参入できない薬局は淘汰される可能性があることを頭に入れておきましょう。

1-2. 医療DX推進による医療・自治体・介護領域の連携強化

地域包括ケアシステムの構築で欠かせないのが、多職種連携です。多職種連携については以前から重要性が述べられているものの、現場では十分に機能していないのが現状です。多職種連携を実現するためには、ICTツールの活用によるDX推進が重要だと考えられています。

医療業界はDXが遅れており、リアルタイムでの情報共有や情報の一元管理が最適化されていないという課題があります。患者さんが安心して在宅医療を受けられるよう、薬局・医療機関・自治体・介護施設などが協力し合い、連携強化に向けて足並みを揃えることが大切です。

DX推進は多職種連携だけでなく、薬剤師の働き方改革や対人業務の拡充、コスト削減にもつながります。薬局DXを進めて経営改善を図りましょう。

2. 2024年度・薬価改定のポイント

2024年には、2021年より毎年行われる薬価改定も実施されます。2024年度の薬価改定のポイントを見てみましょう。

2-1. 新薬創出等加算の見直し

2024年度薬価改定では、新薬創出等加算や長期収載品に関する薬価算定のルールについて、抜本的な見直しがされる予定です。

新薬創出等加算は、特許期間満了後に後発品へ置き換えることを前提として、特許期間中の薬価の引き下げを猶予する制度です。薬価を維持して研究開発投資に回すことで新薬創出サイクルを加速させるとともに、未承認薬・適応外薬の問題や、ドラッグ・ラグの解消を目的としています。

新薬創出等加算は2010年から試験的に導入が始まりましたが、度重なる薬価改定により薬価が引き下げられて研究開発投資を回収できず、新薬創出サイクルの促進という本来の目的が果たせていないことが課題となっています。未承認薬・適応外薬の解消も進んでおらず、医療業界からは新薬創出等加算の改善が望まれています。

2024年度の薬価改定では、新薬創出等加算の品目要件を大幅に変更し、企業要件を廃止することも検討されています。調剤報酬改定と合わせて、薬価改定にも注目しておきましょう。
(参照:2024年薬価制度改革に対する意見(厚生労働省)

 

3. 2024年度調剤報酬改定は2ヶ月後ろ倒し・6月1日施行予定

2024年度調剤報酬改定は、2ヵ月後ろ倒しで6月1日に施行される予定です。後ろ倒しとなった背景には、診療報酬改定と同時に検討されている「医療DX令和ビジョン2030」があります。この中で、医療DXにかかる医療機関や薬局の業務負担を軽減するため、施行時期を6月1日施行としてはどうかという議論がなされたのです。

なお、薬価改定は、従来通り4月1日に実施されます。薬価改定に遅れる形で調剤報酬改定が実施されるため、患者さんにも処方箋の内容が変わる可能性があることを伝えておきましょう。

4. 2024年度調剤報酬改定に向けてできること

2024年度調剤報酬改定のキーワードは、「地域包括ケアシステムの構築」と「薬局DXの推進」です。調剤報酬改定で大きな打撃を受けることのないよう、今のうちからできることに取り組んでおきましょう。

  • 在宅医療への対応

まだ在宅訪問体制を整備していない薬局は、早めに着手することをおすすめします。在宅医療の重要性が高まる中、在宅医療への進出をなくして薬局が生き残ることは困難です。すでに在宅訪問をスタートしている薬局は、麻薬調剤や無菌調製などの医療サービスの拡充や、在宅業務の効率化を検討しましょう。

  • 薬局認定制度(地域連携薬局・専門医療機関連携薬局)の取得

かかりつけ薬局はもちろんのこと、地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の認定取得もめざしましょう。認定を受けていれば、薬局の機能やサービスを医療機関や患者さんへわかりやすく伝えることができます。

  • ICTの活用

薬局DXの中でも、まず取り組みたいのがオンライン服薬指導です。オンライン服薬指導は、薬剤師の業務負担を軽減し、在宅医療の円滑化が図れる有用なサービスです。人材不足に悩む薬局は、オンライン服薬指導の導入によってリモート薬剤師を採用することもできます。電子処方箋や電子薬歴、その他SNSなどもうまく活用して、薬局DXを進めましょう。

  • 薬薬連携の強化

病院薬剤師と薬局薬剤師の連携(薬薬連携)は、地域包括ケアシステムの構築で重要なポイントです。患者さんの入退院時に、病院薬剤師の薬局薬剤師がお互いの業務や知識・技術を共有し、切れ目のない薬物療法をサポートすることが求められます。薬薬連携は医師の働き方改革を進める上でも欠かせない要素となるため、今後の調剤報酬改定でも積極的に取り上げられるでしょう。

まとめ

2024年度のトリプル改定では、2025年問題・2040年問題に向けて、地域包括ケアシステムの構築が進むと予想されます。調剤報酬改定では対人業務がさらに推進され、医療DXによる多職種連携の強化が図られるでしょう。

2024年度調剤報酬改定は、2ヶ月後ろ倒しの6月1日より施行予定です。なお、薬価改定については従来通り4月に実施されます。

まだ在宅医療に進出していない薬局は早期に体制を整え、地域医療への貢献をめざしましょう。「KIRARI PRIME サービス」では、薬局の在宅訪問業務をサポートしています。「薬剤師の数が足りないので在宅業務に手が回らない」「在宅訪問を始めたものの患者数が増えない」など、在宅薬局にまつわるさまざまなお悩みは、「KIRARI PRIME サービス」にご相談ください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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