在宅医療推進から他職種との連携まで 地域連携薬局が担う役割

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在宅医療推進から他職種との連携まで 地域連携薬局が担う役割

1. 地域連携薬局・専門医療機関連携薬局とは

地域連携薬局・専門医療機関連携薬局は、どちらも患者さんが安心して自宅や住み慣れた地域で治療を続けられるようにサポートする役目を担います。以下に、それぞれの概要を紹介します。

・地域連携薬局

地域連携薬局とは、外来受診や在宅医療の際に医療機関やほかの薬局と連携し、患者さんの服薬状況を一元的・継続的に管理できる薬局のことです。24時間対応・在宅医療対応を含み、患者さんが病気になったあとも、住み慣れた地域で治療を継続できるようにサポートします。「患者のための薬局ビジョン」の「かかりつけ薬剤師・薬局」機能を満たしています。

・専門医療機関連携薬局

専門医療機関連携薬局とは、がん・HIV・指定難病等の専門医療機関と連携し、高度な薬学管理や特殊な調剤に対応できる薬局を指します。その多くが専門性の高い治療において地域の薬局で中心的な役割を担い、ほかの薬局の専門性向上を支援しており、医薬品の提供や研修なども実施。「患者のための薬局ビジョン」の「高度薬学管理機能」に対応しています。

地域連携薬局・専門医療機関連携薬局となるには、それぞれの規定された要件を満たし、都道府県知事の認定を受ける必要があります。

(出典:厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等 の一部を改正する法律(令和元年法律第63号)の概要」

1-1. 地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の現状

一般社団法人日本保険薬局協会は、2022年8月に「調剤報酬等に係る届出の調査報告書」を公表しています。この調査によると、全国に60733軒ある薬局のうち、地域連携薬局は2664軒、専門医療機関連携薬局は109軒です。このうち、300店舗以上のグループ薬局が占める割合は、地域連携薬局で5割以上、専門医療機関連携薬局で7割以上となっています。

薬局規模別の構成比を見ると、最も多いのが「1薬局」で24.9%、続いて「300薬局以上」の22.4%、「2〜5薬局」の21.5%と続きます。全体としては1〜5店舗の薬局が多いため、今後は小規模薬局がどのように地域連携薬局・専門医療機関連携薬局へ転換していくかが課題となるでしょう。

(出典:一般社団法人 日本保険薬局協会 医療制度検討委員会「調剤報酬等に係る届出の調査報告書」

2. 地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の役割

地域連携薬局・専門医療機関連携薬局は、健康サポート薬局と混同されやすいものの、支援対象が異なります。「病気になった患者さんの地域での治療を支える」のが地域連携薬局、「予防の段階から健康維持・増進を支援する」のが健康サポート薬局です。どちらも地域住民の健康に欠かせない機能を持っており、各薬局が補い合いながら地域全体を支えています。

ここからは、地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の主な役割を解説します。

2-1. 医療機関への情報提供

地域連携薬局は、医師をはじめとした医療機関と連携体制を構築し、随時連絡・報告ができる体制を整えておく必要があります。患者さんが入院する際には、現在飲んでいる薬や副作用歴、アレルギーなどの情報を医療機関へ提供します。

地域連携薬局の認定要件の1つには、情報共有に関する実績が含まれています。具体的には以下の内容について、認定申請前月までの1年間に、月平均30回以上報告した実績が必要です。

・患者さんの入院にあたって情報共有を行った実績

・医療機関からの退院にあたって情報共有を行った実績

・外来の患者さんに関して医療機関と情報共有を行った実績

・居宅等を訪問して情報提供や指導を実施し、その報告書を医療機関へ提出して情報共有を行った実績

(出典:厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の 一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係)」

専門医療機関連携薬局は、専門的な医療機関と治療方針を共有し、継続して情報共有を行うことが求められます。また、専門医療機関連携薬局の認定を受けるためには、がん治療などの専門的な医療機関に対して報告や連絡を行った実績が必要です。

2-2. 退院時カンファレンスへの参加

地域連携薬局は、地域での多職種連携を実現するために、情報提供に関する業務に積極的に取り組む必要があります。退院時カンファレンスへの参加は、特に重要視されています。

退院時カンファレンスでは、医師・看護師・理学療法士・ケアマネジャー・保健師らが参加し、入院後の経過や現在の自立度、退院後に必要なサービス、今後の方針などについて情報共有を行います。薬剤師の役割は、処方案や必要な医薬品・衛生材料が適切であるかを確認し、在宅医療の計画を把握することです。退院時カンファレンスで積極的に発言するためにも、日頃から他職種と綿密なコミュニケーションを取る必要があるでしょう。

なお、専門医療機関連携薬局の薬剤師は、患者さんの治療方針に関する会議に加えて、専門的な医療機関が開催する会議に継続的に参加する必要があります。常に新しい情報を学び、専門的知識をアップデートすることが望まれます。

2-3. 介護施設やほかの薬局等との連携

地域連携薬局・専門医療機関連携薬局は、医療機関・自宅・介護施設をつなぐ役割があり、それぞれの施設と適切な情報連携を図ります。患者さんが利用する介護施設やほかの薬局に積極的に関与して、情報収集・情報提供を行うことが重要です。

地域包括ケアシステムの実現に向けて、地域ケア会議や自立支援ケアマネジメント検討会議、サービス担当者会議に参加することも望まれるでしょう。他職種から患者さんについて尋ねられた際に、薬学的知見からに基づいた評価・指導ができるよう、薬剤師の専門性を確保することも大切です。

地域連携薬局・専門医療機関連携薬局は、ほかの薬局への医薬品提供も行います。保管する医薬品の在庫状況を周知できるような体制を整えておきましょう。専門医療機関連携薬局では、がん等の専門的な医薬品・衛生用品も確保する必要があります。

3. 今後の地域連携薬局・専門医療機関連携薬局に期待される役割

超高齢社会を迎える中で、在宅医療における薬局の需要が高まっています。地域連携薬局は主体的にかかりつけ機能を発揮し、医療機関や介護施設など、地域包括ケアシステムにおける情報連携を先導する役割が求められるでしょう。

専門医療機関連携薬局はまだ少ないものの、特定の病気を治療する患者さんにとっては、なくてはならない薬局です。地域のニーズに応えるためにも、ほかの薬局に向けた研修や情報発信を通し、地域全体の専門性向上に向けた取り組みを積極的に行う必要があります。

地域連携薬局・専門性医療機関連携薬局の認知度は、まだ高くはありません。患者さんが自分に合った薬局を選択し、より安心して在宅医療に取り組めるように、地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の役割について、主体的に情報発信を続けることも大切です。

まとめ

地域連携薬局とは、患者さんが安心して在宅医療を続けられるよう、医療機関や介護施設などと連携し、服薬情報を一元的・継続的に管理できる薬局です。医療機関に対する情報提供、退院時カンファレンスへの参加、ほかの薬局への支援などを行います。専門医療機関連携薬局はがん等の専門的な治療が必要な患者さんに対し、高度な薬学管理や特殊な調剤を行います。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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