いつから始める?在宅薬局のスタート準備ガイド

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いつから始める?在宅薬局のスタート準備ガイド

1. 在宅医療における薬局・薬剤師の役割と意義

在宅薬局とは、自宅や施設で療養生活を送る患者さんに対し、薬剤師が訪問して服薬指導を行うサービスを提供する薬局のことです。介護保険の適用を受けており、要支援・要介護の認定を受けた患者さんに対する在宅訪問は、「(介護予防)居宅療養管理指導」の対象となります。

在宅医療で薬局に期待される役割として、主に以下の4点が挙げられます。

・薬剤管理、薬物療法に関する多職種との情報共有
・医薬品や衛生材料の提供
・急変時対応
・ターミナルケアへの関わり

在宅医療に薬剤師が関与することにより、薬物有害事象の発見や服薬状況の改善が期待できます。特に、高齢者は記憶力の低下などから薬の飲み忘れや飲みすぎが発生しやすいので、訪問薬剤師が定期的に確認し、適切な服薬指導・服薬支援を実施することが大切です。また、重複投薬や飲み合わせ(相互作用)を確認し、問題がある場合は医師に報告及び処方提案を行うことも薬剤師の重要な役割です。

(出典:厚生労働省「在宅医療の基盤整備について(その2)」

2. 在宅薬局スタートの流れ

在宅薬局を始めるには、各種申請や届出を済ませた上で、在宅訪問の準備を整える必要があります。ここでは、薬局が在宅訪問を始めるまでの基本的な流れを見ていきましょう。

2-1. 各種許可申請や届出を行う

在宅薬局を始めるためには、各種許可申請や届出といった手続きを済ませる必要があります。以下に、在宅薬局を始める際に必要な書類をまとめます。

・薬局の在宅訪問開始にあたり必要な届出

書類名称

概要

提出先

在宅患者訪問薬剤管理指導に係る届出書

在宅患者訪問薬剤管理指導料(医療保険)の算定・請求に必要。

地方厚生(支)局

介護給付の請求及び受領に関する届

居宅療養管理指導費(介護保険)の支払い・受領に必要。

都道府県国民健康保険団体連合会

居宅療養管理指導・介護予防居宅療養管理指導事業所の指定に係る記載事項

指定を受ける事業所の概要を記載する書類。保険薬局はみなし認定されているため基本的には提出不要だが、辞退した場合や都道府県によっては提出が必要。

各都道府県の介護保険担当部署

(1)生活保護法等指定介護機関指定申請書

(2)中国残留邦人等支援法指定介護機関指定申請書

(1)は2000年(平成12年)3月31日以前に生活保護法等指定医療機関の指定を受けた薬局は申請不要。

(2)は2008年(平成20年)3月31日以前に生活保護法等指定医療機関の指定を受けた薬局は申請不要。

(1)(2)ともに2014年(平成26年)7月1日以降に新規開設した薬局はみなし指定されているため申請不要。

各都道府県の生活保護・介護保険担当部署

・必要に応じて提出する書類

書類名称

概要

提出先

麻薬小売業者免許申請書

薬局で麻薬を取り扱う場合に必要。

管轄区の保健所等

麻薬小売業者譲渡許可申請書

麻薬小売業者が在庫不足時に麻薬の譲渡・譲受をする場合に必要。

管轄区の保健所等

無菌製剤処理加算の施設基準に係る届出書

クリーンベンチなどで無菌調剤を行う場合に必要。

地方厚生(支)局

申請が通るまで時間がかかることもあるので、余裕を持って提出を済ませましょう。

2-2. 薬局内掲示物や必要書類を作成する

申請や届出を行い、指定を受けた薬局は、掲示物や文書の作成が義務付けられています。速やかにポスターや書類を作成し、在宅訪問薬局としての体制を整えましょう。

・薬局内掲示

運営規定(介護保険)

居宅療養管理指導事業者としての運営規程を薬局内に掲示する。

介護保険サービス提供事業者としての掲示(介護保険)

サービスの内容や勤務体制、利用料金などを薬局内の見やすい場所に掲示する。

訪問薬剤管理指導の届出を行っている旨の掲示 (医療保険)

訪問薬剤管理指導で実施するサービスについて、薬局内の見やすい場所に掲示する。

・契約書類の作成

重要事項説明書

(介護保険)

居宅療養管理指導を行う際は、重要事項等説明書により説明を実施する。患者と薬局が記名押印したものを2通作成し、1通は患者に渡し、1通は薬局で保管する。

契約書(介護保険)

居宅療養管理指導を行う際に、患者と薬局が記名押印した契約書を2通作成し、1通は患者に渡し、1通は薬局で保管する。

・在宅訪問業務にあたり薬剤師の記入が必要な書類の作成

薬学的管理指導計画書

(医療保険、介護保険)

在宅訪問における指導内容や訪問回数を記した計画書。最低でも月1回の見直しを行います。

居宅療養管理指導記録簿(介護保険)

在宅患者訪問薬剤管理指導記録簿(医療保険)

在宅訪問時における指導内容・服薬管理状況を記載する。

医師への報告書

訪問後は報告書を医師に提出する。

居宅療養管理指導サービス後の領収書(介護保険)

医療保険と分けて介護保険用の領収書を発行する。

上記のほか、必要に応じて個人情報取扱同意書なども準備しましょう。

2-3. 薬局内掲示物や必要書類を作成する

在宅訪問の準備が整ったら、在宅訪問サービスを開始したことを周知しましょう。在宅訪問を始めても、患者さんや医療機関などに情報が伝わっていなければ、相談や依頼につながりません。

在宅訪問サービスのパンフレットを作成したり、高齢者向け介護施設(住まい)や地域包括支援センターに営業活動を行ったりと、積極的にアピールしてください。外来患者さんには、窓口で在宅訪問を始めたことを直接伝えてもいいでしょう。

2-4. 薬局内掲示物や必要書類を作成する

在宅訪問の依頼パターンとしては、医療機関から直接依頼されるほか、ケアマネジャーから相談を受けたり、薬剤師から医師に提案したりといったケースがあります。どのような経緯であっても、正式に在宅訪問を開始するには医師からの訪問指示が必要です。

医師から在宅訪問の許可が下りたら、患者さんの情報を確認し、医師と相談しながら訪問計画を立てます。初回訪問では、患者さんの症状や生活状況を詳しく把握するためにも、家族やケアマネジャーらに同席してもらうのが望ましいでしょう。重要事項説明書や契約書を持参して在宅訪問に関する説明を行い、患者さんからの同意を得られたら在宅訪問が始まります。

契約締結後は、訪問スケジュールに準じて定期的な在宅訪問を実施します。訪問後は毎回、医師やケアマネジャーらに報告書を提出し、こまめな情報共有を行いましょう。

3. 在宅薬局をスムーズに進めるポイント

在宅薬局としての意義を果たすためには、質の高い服薬指導や服薬管理を行うとともに、患者さんの受け入れ態勢を整える必要があります。

ここでは、在宅薬局が在宅訪問を成功させるためのポイントを紹介します。

3-1. 医療機関やケアマネジャーらと連携する

在宅医療において最も重要なことは、医療機関やケアマネジャーといった地域の医療福祉関係者との連携体制の構築です。医療機関やケアマネジャーから信頼されている薬局には、真っ先に在宅患者さんの紹介が持ち掛けられます。

医療機関をはじめとする他職種と信頼関係を築くには、コミュニケーションの積み重ねが大切です。薬局・薬剤師としての意見を発信し、患者さんと真剣に向き合っている姿勢を理解してもらえれば、理想的な連携体制が築けるでしょう。

残念ながら、在宅医療における薬局・薬剤師の意義について、他職種や患者さんから十分に理解されていないケースも珍しくありません。自治体や地域包括支援センターが開催する地域ケア会議や多職種連携会議などに積極的に参加し、薬局側から積極的な情報発信をしていくことが重要です。

3-2. クリーンルームなどを設置する

在宅薬局におけるクリーンベンチ、安全キャビネット、クリーンルームの設置は任意ではあるものの、質の高い在宅医療を提供するためには不可欠です。これらの設置によって無菌製剤の調製ができれば、より安全な薬物療法を実施できます。地域包括ケアシステムが推進され、終末期ケアの在宅患者さんが増える中、無菌調剤の需要はますます高まるでしょう。

自薬局での設置が難しい場合は、ほかの薬局のクリーンルームを共同利用するという選択肢もあります。無菌調剤に対応できるよう、薬剤師も知識と技術の習得が必要になります。

3-3. 24時間体制を整える

患者さんは、夜間や受付時間外に体調を崩す可能性があり、突然容態が悪化したらどうしようと不安を感じている方もいるでしょう。薬局が24時間体制を整えていれば、患者さんは安心して在宅医療を受けることができます。

在宅薬局の24時間対応の目的は、患者さんがつらい症状を抱えている際に、必要な医薬品をスムーズに提供して服薬指導・管理を行うことです。臨時処方が求められる大半のケースは、急な発熱や痛みに対するものです。解熱剤や鎮痛剤をいつでも提供できるよう準備することが、薬局の24時間体制構築の第一歩といえます。

3-4. 在宅訪問業務の効率化

在宅訪問を始めると、患者宅への移動や報告書作成など、薬剤師に新たな業務が増えることになります。ただ業務量が増すだけでは、薬剤師からの協力は得られず、訪問軒数を伸ばすこともできません。業務効率化を図り、薬剤師が服薬指導や服薬管理に専念できる環境を整備する必要があります。

在宅訪問業務の中でも、特に対物業務については自動化を進めたい部分です。業務効率化の方法としては、以下のような手段が考えられます。

・システムの導入により、報告書や薬歴の作成をデジタル化する
・ピッキング業務などを薬剤師以外に任せる(薬剤補助員の採用)
・オンライン服薬指導や電子処方箋を導入する

業務効率化によって、薬剤師は患者さんとのコミュニケーションにより多くの時間を充てることができ、対人業務の質が向上します。オンライン服薬指導や電子処方箋など、国が推進するデジタル事業も積極的に導入しましょう。

4. 在宅薬局の運営をサポートする「KIRARI PRIME サービス」

「在宅薬局を始めたいが自信がない」「在宅患者さんとのコミュニケーションに悩んでいる」など、在宅訪問ではさまざまな悩みにぶつかります。そこで活用していただきたいのが、地域密着型の在宅薬局を支援する「KIRARI PRIME サービス」です。

KIRARI PRIME サービスでは、在宅と外来のハイブリッド経営を実践するきらり薬局が、在宅訪問の経営ノウハウをお伝えします。以下は、KIRARI PRIME サービスで提供するサポートの一例です。

・在宅支援報告書作成システム「ファムケア」の提供

・人材シェアリングによる24時間体制の実現

・薬局の強みと地域に応じた在宅患者獲得サポート

・在宅薬剤師・在宅管理者の育成研修

・医薬品仕入交渉代行及びデッドストック活用

「ファムケア」は、在宅訪問に特化したクラウド型報告書作成システムです。在宅訪問に適した入力補助機能が充実しており、外出先からでも記載・送信ができるので、報告書作成業務の効率化が実現します。リアルタイムで情報共有できるファムケアは、オンコール対応や24時間体制の構築にも役立ちます。

ほかにもKIRARI PRIME サービスでは、在宅薬剤師の育成や、在宅患者獲得に向けた営業まで、在宅薬局に関わるさまざまな活動をサポートしています。在宅薬局を始めたい方、在宅訪問で困っている方は、ぜひKIRARI PRIME サービスにご相談ください。

まとめ

在宅薬局は、在宅患者さんが安全に薬物療法を進める上で重要な役割を担っており、多職種と連携を取りつつ、主体的に在宅医療に関わることが求められています。薬局が在宅訪問を開始するには、必要な申請や届出を済ませ、地域の医療機関・介護施設と連携体制を築くことが大切です。

質の高い在宅医療を提供するためには、クリーンルームや安全キャビネット、クリーンベンチの設置や24時間体制の整備、システム導入による業務効率化が必要となります。薬剤師の負担を軽減し、スムーズな在宅訪問体制を整えましょう。

「KIRARI PRIME サービス」は、在宅薬局をサポートするサブスクリプションサービスです。在宅薬局に関する悩みや不安を解決に導き、地域密着型の薬局経営を支援します。ぜひKIRARI PRIME サービスを活用して、リスクを抑えて在宅訪問サービスの開始に取り組んでください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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【当コラムの掲載内容に関するご注意点】
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