経営者は知っておきたい 「在宅緩和ケア」で薬局ができること

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経営者は知っておきたい 「在宅緩和ケア」で薬局ができること

1. 在宅緩和ケアとは

在宅緩和ケアとは、自宅や居住施設で療養生活を送りながら、適切に身体や心の痛みを和らげる緩和ケアを受けることをいいます。そもそも緩和ケアとは、患者さんの苦痛を和らげて生活の質を高めるためのアプローチのこと。一般的には、末期がんや神経難病といった病気の治療と並行して行われます。緩和ケアは病院でなければ受けられないということはなく、在宅医療チームの体制が整っていれば、自宅で緩和ケアを続けることも可能です。

在宅緩和ケアでは、在宅医師や訪問看護師、薬剤師、ケアマネジャー、介護士らが協力し、自宅でも病院と同等の緩和ケアが提供できるように最善を尽くします。患者さんにとっては、通院の必要がなく、安心できる自宅で過ごせるといったメリットがあります。

在宅緩和ケアの重要性が高まっている背景として、自宅で亡くなる方の増加があります。厚生労働省が発表した「令和3年(2021)人口動態統計」によると、2005年には全体の12.2%だった自宅死亡率は、2021年は17.2%。全体の1/3は、がんで亡くなった方となっています。

在宅緩和ケアは、自宅で穏やかに最期を迎えたいというニーズに応えるほか、病床削減という財政的な狙いもあります。超高齢社会を迎える中で在宅医療の体制整備は急を要しているといえるでしょう。

2. 薬局が「在宅緩和ケア」でできること

薬局の在宅緩和ケアへの参画は、医師の負担軽減、そして安全な在宅医療を進めることに大きな役割を果たします。ここでは、よりよい在宅緩和ケアを提供できるために、地域の薬局ができることを見ていきましょう。

2-1. 24時間対応

在宅緩和ケアでは、患者さんの急変時にいかに迅速に対応できるかが重要となるため、薬局にも24時間対応が求められます。小規模な薬局の場合、少ない薬剤師で土日を含めた24時間対応を提供することは簡単ではありませんが、開局時間外でも電話対応の体制を整えるなど、できることから始めましょう。

薬局が24時間対応に手際よく応じるためには、予想できる事態に備えて事前に準備をしておくことが大切です。たとえば夜間に電話がある場合、急な発熱や我慢できない痛みなどの訴えが多いと考えられるため、解熱剤や鎮痛剤を用意しておくと緊急事態でもスムーズに動けるでしょう。

夜間や休日の対応は頻度こそ高くはないものの、万一の際には迅速に動かなくてはなりません。緊急時には例外も起こり得るため、マニュアルに縛られない柔軟な対応力も必要です。

2-2. 医療用麻薬など薬の常備

在宅緩和ケアでは末期がんなどの終末期にある患者さんも多いため、薬局の準備体制が整っているかどうかが患者さんの存命に大きく関わります。薬局が在宅緩和ケアに関わるためには、医療用麻薬などの特殊な医薬品や医療機材を揃え、患者さんの受け入れ体制を万全に整えておく必要があります。

医療用麻薬にはいくつかの種類があり、患者さんの状態によって使うべき薬剤が異なります。薬局が複数の医療用麻薬を管理することは難しいものの、常時在庫を確保できれば緊急時にも即座に対応できるため、質の高い在宅緩和ケアを提供することが可能です。

また、医療用麻薬などの注射薬では無菌調製が望ましいとされていますクリーンベンチやクリーンルーム(無菌調剤室)の設備も必要です。無菌調剤室については他薬局との共同利用も認められているものの、万一の際にも迅速に対応するためには、薬局内に設置するのが理想といえます。

2-3. 在宅・訪問できる経験豊富な薬剤師の確保

在宅薬剤師には、患者さんの状況や気持ちを考慮し、総合的に判断することが求められます。在宅緩和ケアでは薬剤師の判断が事態を大きく左右するケースもあるため、専門的な薬学的知識はもちろん、臨床場面に関わる十分な経験も必要です。

たとえ薬剤師としての知識・技術が十分にあっても、患者さんやご家族の気持ちに寄り添えなければ、質の高い在宅緩和ケアを提供できているとは言えません。患者さんと密にコミュニケーションを取りつつ、些細な変化に気づいて適切なアドバイスをすることが求められます。

一方で、薬剤師が最初から在宅訪問の知識や経験を備えているわけではありません。まずは薬剤師の在宅医療や緩和ケアに対する意欲を確認し、在宅に関する準備を整えたあとは、積極的に在宅訪問の経験を積んでもらうことが大切です。薬剤師が在宅医療や緩和ケアに対して理解を深められる場を提供することも、薬局経営者の課題といえます。

2-4. 地域とのコミュニケーション、医師との連携

日頃から地域住民とコミュニケーションを取り、薬局に在宅緩和ケアの体制が整っていることを周知しておきましょう。緩和ケアは誰もが受ける可能性がありますが、いざ自分や家族のこととなると不安を感じる人がほとんどです。薬局が緩和ケアに対して情報発信を行い、地域住民が在宅緩和ケアについて理解していれば、いざというときにも安心してケアを受けることができます。地域住民からも、「何かあったときに頼れる薬局」として信頼してもらえるでしょう。

また、在宅緩和ケアでは医師との連携が重要であり、医師からの信頼を得るためには在宅緩和ケアに取り組んでいることを薬局側が積極的にアピールしていく必要があります。在宅緩和ケアに熱心であること・緊急時の体制も十分に整っていることを理解してもらえれば、医療機関との信頼関係が深まるでしょう。カンファレンスにも積極的に参加し、医師や看護師らと情報共有することが大切です。

3. 「在宅緩和ケア対応薬局」の認証をめざす

在宅緩和ケアに取り組む調剤薬局は、一般社団法人日本緩和医療薬学会による「在宅緩和ケア対応薬局」の認証を受けることをひとつの目標としてもよいでしょう。在宅緩和ケア対応薬局とは、緩和ケアに必要な技術や知識を持つ薬剤師が従事しており、かつ在宅緩和ケアの実施に必要な機能要件を満たす保険薬局であることを認める制度です。

在宅緩和ケア対応薬局となるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

・地域連携薬局に認定済み、もしくは1年以内に取得予定

・医療用麻薬や注射薬の提供体制がある

・無菌製剤処理を実施できる(無菌調剤室の設置もしくは共同利用)

・常勤薬剤師(実務歴5年以上)1名以上が学会会員であり、「日本緩和医療薬学会認定緩和薬物療法認定薬剤師」の資格所有者もしくは取得予定、かつ指定した研修を受講・修了予定

・薬剤師の緩和ケア実施に関する実績について、本学会所定の様式に従い3症例(過去

年以内/最低1症例は在宅医療の症例)を提示できる

出典:日本緩和医療薬学会「新規申請要件|薬局認証」

在宅緩和ケア対応薬局であることは、患者さんが自分に適した薬局を選ぶ際の基準となるとともに、医療機関に薬局で在宅緩和ケアの体制が整っていることを証明する材料にもなります。在宅緩和ケアの体制を強化したいと考えている薬局経営者の方は、ぜひ在宅緩和ケア対応薬局の認定も視野に入れてみることをおすすめします。

まとめ

薬局が在宅医療に関わる上で、在宅緩和ケアはなくてはならないものとなっています。在宅緩和ケアでは、薬局は患者さんの状態を把握し、適切な服薬指導を行う必要があります。

在宅緩和ケアにおいては、24時間体制の整備や、在宅訪問に関する経験が豊富な薬剤師の確保、医師との連携が重要です。

「KIRARI PRIME サービス」は、薬局の在宅訪問にまつわるさまざまなお悩みをサポートするサービスです。在宅緩和ケアや麻薬の基礎知識の研修、クリーンベンチの実技指導なども実施しています。それぞれの薬局が抱える患者さんに合わせた在宅訪問のノウハウをお伝えしているので、在宅訪問にお悩みの方はぜひ「KIRARI PRIME サービス」にご相談ください。

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監修薬剤師:原 敦子
HYUGA PRIMARY CARE株式会社
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